17・もうしばらく搾り取られたまえ
( ・ω・)マービィ国って5章の話だったんだなあ。
(遠い目)
日本・とある都心のマンションの一室―――
やや目付きの悪い黒髪セミロングの少女と、
銀髪の美少年が部屋でくつろぎ、
「はー、もう。
新婚だと言うのに、どうしてイチャイチャ☆
ラブラブ出来ないんですかねえ」
「そりぇは仕方ありましぇんよ。
アルプしゃんは向こうで、果樹園という
お仕事がありましゅし……
ていうか、文句があるのなら手伝って来たら
いいんじゃないでしゅか?」
女神・フィオナのぼやきに、お目付け役である
従僕・ナヴィはつっこむ。
「いやまあ、正論なんですけどぉ~。
アルプのお母さま?
結構厳し……くは無いですし、女神として
アタシをもてなしてくださるんですけどぉ。
ママと同じ匂いがするってゆーか―――」
「アルフリーダ様とでしゅか?
まあ確かに、スキの無い身のこなしのような
感じはしましゅたけど……
それは何ていうか、嫁と姑みたいな関係から
来るものではないでしゅかね?」
一般論で返すナヴィに、フィオナは首を
左右に振って、
「それがねー、そういう事は一切感じられ
ないのよ。
むしろ神様として崇めてくれているんだし、
嫁イビリなんか考えもしないってゆーか?」
「じゃあ別に何の問題も無いじゃないでしゅか」
「んんん~……
どう言えばいいんですかねえ。
力関係が、アタシとアタシのママと同様に
なったというか」
なおも首をひねる女神に従僕は、
「完全に子供扱いしているだけでは?
(単にきちんと義娘と扱ってくれている
だけじゃないでしゅか?)」
「本音と建て前どストレートリバース、
ありがとうございます。
子供はいつまで経ってもママには
敵わないのかぁ~」
ぐた~っと床に伸びるフィオナに対し、
「しかし、しょんなに何もする事がなければ、
アルフリーダ様とお話しでもしたらどうで
しゅか?
しょういえば、もうフィオナ様の前世と
来世―――
直してもらったという話でしゅけど」
(■11章30話
ホントにどうなってんですかお宅の家庭参照)
そうナヴィが別の話題を振ると、
「そーだけど、それが何か?」
「しょれ、アルフリーダ様に一度、きちんと確認
取った方がいいのでは。
あの方の事でしゅから、前世か来世どちらかを
直しただけで……
一方はそのまま忘れている、という事も考え
られましゅし」
そう言われた女神は上半身を起こし、
「何かあり得そうな気がしてきたわ、それ。
ちょっとママにかけてみる」
そしてフィオナは自分の端末に向かって
操作を始めると、
『あら、どうしたのフィオナちゃん?』
「あ、ママ?
あの、以前アタシの前世と来世を元に
直したって言ってましたけど―――
ちゃんと前世と来世、両方とも元通りに
なってる?」
『何言っているのよもー。
ちゃんとパパに言われて、前世も来世も……』
と、途中で通話の声が遠くなり―――
女神と従僕が耳をすませると端末から、
『ふんっ!! ほっ!! うひょおっ!!
はっ!! どすこいっ!!』
というアルフリーダの声が聞こえ、やがて
数秒くらい経過した後、
『……ふー……
だ、大丈夫よ!
ちゃーんと前世も来世も、元通りになって
いたわ!』
二人とも『今直したな』と思っても口には
出さず、
「うん、ゴメンねーママ。
ちょっときになっただけだからー」
「さて、しょれではそろそろ、
ほんぺんすたーとしましょう」
│ ■マービィ国・ファーバ邸 │
「……で、何か用ですかね。
女神様とやら」
少しグレーがかかった髪を、首より下に
わずかに長くした―――
科学者のような不健康な雰囲気をまとった
アラサーの男、ジン・ラムキュールと、
「少なくとも俺たちは、もう神様に目を
つけられるような事は、していないん
ですけどお?」
20代前半、ダークブラウンの髪―――
アウトローかお金持ちの放蕩息子のような
雰囲気の青年、ハモス・ファーバが、
そのボサボサ髪を揺らしながら、
突然の訪問者に対応していた。
「いやいや、まー。
別に監視とかガサ入れとかに来たわけじゃ
無いですって」
「一応、このダ女神があなたたちの動向に
関心がありゅと……
まあ適当に付き合ってやってくだしゃい」
フィオナとナヴィは対照的な態度で対峙し、
「そうは言われても、我々としてはそれなりに
忙しい身なのですけどね。
ただ、まあ―――
今こうして忙しく稼げているのは、そちらの
協力があってこそ。
少しの間ならどうぞご自由に……
話せる事なら質問にも応じましょう」
「じゃあその間は休んでも構いませんよねえ。
何せもう、かれこれ朝から昼までずっと、
休ませちゃくれないんですから、この人」
ラムキュールの後にそうファーバが女神に向けて
語ると、
フィオナは片手で口を押さえ、顔を横に
反らしながら、
「こ、この人が休ませてくれな……
ぐふっ♪」
その挙動に
「?? どうしたのですか、女神様は」
二十代後半の男が首を傾げるが、
「聞きたいでしゅか?
耳が腐りましゅけど」
「腐る?
まあ、意味はわかりませんが遠慮して
おきましょう―――」
空気を察したように、ラムキュールは
それ以上の追及を止める。
「あ、えーと……
この国って『連合共同金融安定局』の
お世話になる、第一号になりそうだったん
ですよね?
今はどうなっているんですか?」
それに対し二十代前半の青年が、
「今さらそんな話ですかあ?
とっくに財政健全化が行われましたよ。
『連合共同金融安定局』抜きでね。
はあ……
俺もさっさと財政健全化したいですよお」
「あり?
どうしてあなたが?
まだあの時先物買いで仕込んだ分、
払い切れていないんでしゅか?」
ファーバの言葉にナヴィが聞き返すと、
彼は恨みがましい目でラムキュールを見つめ、
「よりによって、その分をこの人に
借りちゃったんですよお。
さすがに同じ『枠外の者』だった人―――
おかげでまだ搾り取られていますから」
するとアラサーの男はフッ、と笑い、
「破綻するよりマシだろう?
誰があの時、君を救ってやったと思って
いるのかね。
散々、人の事を心配性だの怖気づいただの
言って、忠告を無視した罰だよ。
反省しながら……
もうしばらく搾り取られたまえ」
「ああもう、もう少し優しい先輩が来てくれたら
良かったですよお」
「これでもずいぶんと甘いつもりなのだがね」
後輩をからかいながら諭す先輩という感じで、
ラムキュールは意地悪く笑うが、
「ところで―――
そこにいる女神様はどうしたんですか?
どこか体調でもお悪く……」
そう語るファーバの視線の先には、両腕で
自分を抱くようにして床に転がり―――
悶えるフィオナがいて、
「あ、悪いのは頭の方なので大丈夫でしゅよ。
しょれに治るものではありませんから。
もしお邪魔でしたら外に蹴り出して
きましゅか?」
「いえ、あの」
「そ、そこまでは……」
ナヴィの言葉に、かつての『枠外の者』二人は
顔を見合わせ―――
そろって片手を立てて左右に振った。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在8499名―――
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