06・かなしみのむこうへと
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天界、フィオナの実家―――
そこで母・アルフリーダと娘・フィオナは
激しい言い争いをしており、その横で為す術もなく
父・ユニシスが見守っていた。
「だから短パンよりジャージの方がエロいという事が
どうしてわからないの!」
「邪道よ、ママ!
健康的な露出なくしてエロはあり得ないわ!」
おろおろしつつも、ユニシスは従僕である
ナヴィ(猫Ver)に助言を求める。
「ど、どうしたらいいのかな、アレは」
「お腹が空いたら止めるんじゃないですか?」
本気で心配するユニシスに、投げやりに返すナヴィ。
しかし父親としては気が気でならず―――
「いや、そんな事を言わずに何か解決策を……」
「―――知っておられますか? ユニシス様。
地球で得た知識なのですが、女性は感情的になると
動体視力が1.8倍になるそうです」
「え? それがいったい……」
「そして、女性同士の争いに首をつっこみますと、
高確率でこちらに矛先が向きます。
もし今ユニシス様が、フィオナ様、アルフリーダ様から
『パパはどっち!?』と問われたら応えられますか?」
「い、いやそれは……
つまり?」
「すでにこの場にいる我々に取って許されるのは―――
なるべく動かず、嵐が通り過ぎるのを待つ事だけです。
では、このまま本編行ってみましょう」
│ ■ルコルア国・ファジーの家 │
「ほら、フィオナ様。
そろそろ起きてくだしゃい」
ファジー家のフィオナの寝室で―――
寝起きの悪い女神を、お目付け役が声をかけて
起こしにかかる。
「ふへ、うへへへ、おふぅ……♪
ナヴィまで……♪
大丈夫ですよ、みんなまとめて受け入れる
準備は―――」
「二重の意味で目を覚ますでしゅ」
「ん……?
あ、ここは……お早うございます、ナヴィ」
「夢は見れたでしゅか?
さあ、現実のお時間でしゅよ」
女神が起き上がると同時にツッコミを入れるナヴィ。
「んむむ……なかなか良い目覚めをくれますね」
「と言いましゅより、眷属もアルプ君とファジー君、
2人になりましゅたし、いったい誰を本命にする
つもりなのでしゅか?」
「ハーレムエンドもありだと思いますよアタシは?」
「しょんなに悲しみの向こうへ行きたければ
船でどうぞでしゅ」
「なんでしょう、刺される未来しか見えないんだけど」
女神がお目付け役といつものやり取りをしていると、
扉がノックされ、向こう側から声をかけられる。
「フィオナ様、ナヴィ様、どうかしました?
あの……朝食の用意が出来ておりますけど」
「あ、すぐ行くでしゅよ。
ほら、さっさと用意するでしゅダ女神」
「ふぁーい……」
│ ■バクシア国・首都ブラン │
│ ■ボガッド家屋敷 │
「ラムキュール?」
「あの『枠外の者』、ですか」
ボガッド家に合流したマルゴット、バートレットは、
屋敷の主であるローン・ボガッドと改めて情報を
共有していた。
「ソルトとトニックにルコルアを調査させたのは
私ですから、その事は報告を受けておりますけど」
「ヤツが最近、
ルコルアの鉱山主になったという話は?」
ローンの言葉に、2人はきょとんとした表情を見せる。
「あー、俺たちの時はまだ確定してなかったけど、
アイツ、ついこの前ルコルアでも貴重な鉱石の
鉱山を手に入れたらしい」
「ワシのところでも情報収集はしておる。
それに、大きな売買の話などは、
隠居した今でも誰かしら教えてくれるしな」
「そうですか。
しかし、その事で何か問題でも?」
バートレットが疑問をそのまま口にする。
「ラムキュールはルコルアの商人だが―――
今回の『取引』の額は多過ぎる。
アイツ1人で、とても買えるような
シロモノではない」
「商売は専門外ですが、鉱山は国の監視・管理の目が
厳しいですよ。
それ自体が戦争の理由になるほどの物です。
いくら『枠外の者』とはいえ、少々リスクが
高過ぎるのでは」
「でもラムキュールが鉱山を取得したのは
事実なんですよね?
そこに意図や目的があるのは確かなはず―――
狙いは何なのかしら……」
ローン、マルゴット、バートレットの3人は
悩み考え込む。
「てかさ、フィオナ様が今ちょうど、ルコルアに行って
らっしゃるんだろ?」
「いつか俺たちの前でやってみせたように、
何かアドバイスもらう事は出来ないッスか?」
ソルトとトニックの問いに、マルゴットは首を
左右に振る。
「神託は、眷属の人がいないと出来ないのよ。
アルプか、ファジー君のどちらかがいないと―――
アルプは今果樹園で仕事中だし、ファジー君は
フィオナ様と一緒にルコルアに戻っているし」
「しかし、どこにいても連絡が取れるっていうのは
情報屋泣かせの便利過ぎる能力ッスよね」
「いつでも神託が出来るように、
調整した方がいいんじゃないッスか?」
ソルトとトニックの言葉に、マルゴットは考え込む。
「でも、フィオナ様は―――
人間の生活を最優先に、って仰っているし」
「ですが、この事は一応フィオナ様の耳に
入れておいた方がいいかと。
後は出来る限り―――
こちらも神託を受け取れる体制を整えて
おくようにしましょう」
「フム。ではこの事をフィオナ様に伝え、
対応を仰ごう。
アルプにも話しておいた方がいいだろう。
ソルト君、トニック君―――
来たばかりで悪いが、明日にでも2人のところへ
向かってくれるかね」
ソルトとトニックは、ローンの方を振り向き応える。
「それが俺たちの仕事ッスから」
「じゃあ、俺はアルプさんの果樹園に向かう。
ソルトはルコルアへ向かってくれ」
「俺がルコルアに? 別に構わねーけど……
何か理由でもあるのか?」
「いや、俺は以前、フィオナ様に異教徒の疑いを
かけられているから……」
「?? 異教徒?」
「トニックが―――ですか?
フィオナ様は、果樹の神様だと聞いておりますが」
ローンとバートレットの2人がトニックに視線を向け、
マルゴットは困った表情で顔を下に向ける。
「何か、トニックはフィオナ様にあまり良く
思われていないみたいで。
じゃあソルト、お願い出来ますか?」
「あー、わかった。
んじゃ、俺がルコルア国―――フィオナ様の
ところに行くわ」
「ついでと言っては何だが、ラムキュールの情報も
集めてきてくれ。
ただし、深追いはしないようにな」
「了解ッス!」
こうして5人は―――
今後の方針として、アルプとフィオナに
使いを出す事に決めた。
│ ■ルコルア国・ファジーの家 │
その頃、食事を終えた4人は特にする事もなく
くつろいでいた。
「さて、と。
どうする女神様?
また、情報収集でもしてくるか?」
「え、えっと、そうですね。
でも、あまり動き回ると警戒されるかも
知れませんし―――
今日1日くらいは、家で大人しくしている、
というのもいいんじゃないですか?」
「フィオナ様がそう仰られるのであれば、
そういたしますけど―――」
「ていうか貴女は何をしているでしゅかダ女神」
「い、いやインドアのアタシにいろいろ
求めないでください!
普段のアタシの平日は、瞬きと呼吸に
9割方費やされているんですから」
「まったく……まだ貴女の育てた果樹の方が
いろいろ出来ましゅよ。
果実作ったり、酸素吐いたり、光合成したり」
「え? アタシ植物以下?」
いたたまれずに、ミモザが2人の会話に割って入る。
「ま、まあ無理に何かしなくてもいいと思うよ?
アタイらとしては、久しぶりに故郷でのんびり
出来るしさ」
「そうですよ。
それに、フィオナ様が裏庭で育ててくださった
果実を食べながら、家で過ごせるなんて―――
ボクたちに取っては何より幸せな時間ですっ」
「そ、そうでしょうそうでしょう♪」
「まったく。
まあ、ミモザしゃんとファジー君がそりぇで
良ければいいんでしゅけど」
こうしてルコルア国の4人の方は、1日を
特に動く事なく過ごす事に決めた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在1975名―――