04・やる気がみなぎってまいりますやろ?
( ・ω・)12章は基本エピローグ章とでも
思ってください(惰性)
│ ■フラール国・グラノーラ家屋敷 │
「もしもーし……おぅわ」
「おお、これは立派な修羅場でしゅね」
黒髪セミロングの少女の姿をした女神・
フィオナと、
銀髪の美少年の従僕・ナヴィが訪れた先―――
マルゴットの実家であるグラノーラ家の
屋敷に通された二人は、その惨状を目の当たりに
して思わず声を上げる。
「あ、あ……?
も、もしかしてフィオナ様、ですか?」
ヨロヨロと奥から現れたのは、真っ赤な
ロングヘアーをなびかせたマルゴット嬢、
その人で―――
「来客ですか? マルゴット……
おお、これはフィオナ様にナヴィ様」
彼女からやや遅れて、ホワイトシルバーの
短髪をした、少しやつれた風の貴族青年、
ビューワー伯爵もやって来た。
「あー、あの~。
夫であるアルプからの差し入れで―――」
女神は夫の果樹園から持ってきた果物を見せ、
「と、取り敢えず休憩しましょう。
地球から栄養ドリンクも追加で持って来て
いましゅから」
次いで従僕の少年が荷物を取り出し……
夫婦はもう一組の夫婦を連れて、屋敷の
応接室へと急いだ。
「はぁ……生き返りました」
「本当にありがとうございます……!!」
アルプの果実、そして日本の栄養ドリンクを
混ぜ合わせたある意味スーパードリンクにより、
何とか伯爵夫妻は生気を取り戻す。
「今、フラールとバクシアの併合話で
お忙しいんでしたっけ」
フィオナが話を振ると、
「そうですね。
何せ、連合国始まって以来の出来事ですから」
「ありぇ?
でも以前、マービィ国がグレイン国の属国に
しゃれかけていたような」
バートレットの言葉にナヴィが疑問を口にする。
「あれはあくまでも事実上、属国化するという
話でして―――
実際に併合・吸収するという事では無かった
ので……
今回は文字通り、対等な立場での合体です
からね。
それに序列上位国の支持もありますれば」
マルゴットの話に三人はうなずく。
かつて『枠外の者』が狙ったフラール国、
そして真っ先に立ち向かったバーレンシア侯爵の
出身国、バクシア。
その後ろ盾として、『枠外の者』・『新貴族』に
監視役として加わっていた―――
シフド国のグローマー男爵、
そしてグレイン国のガルディ騎士団長、
さらに人脈としてバーレンシア侯爵と結婚した
ミイト国のレイシェン・シッカ伯爵令嬢、
また元『枠外の者』だが、組織に見切りをつけた
トーリ財閥の姉妹
など、
またバーレンシア侯爵を高く評価している
序列上位国の王妃・王女の支援もあって……
今のところ併合に向けての進捗は順調だという。
「『枠外の者』・『新貴族』もかつての力は
なく、油断は出来ませんが、表立って
対抗するほど愚かではないと思われます。
ですが……」
歯切れの悪い伯爵に変わり、妻が続けて、
「敵対しないのであれば、取り込んだり
懐柔して来たりする場合もありますからね。
アルプにも言った事がありますが、
敵だと表明している敵など怖くはありません。
最も恐ろしいのは―――
味方だと偽って近付いてくる敵ですから」
その説明に女神はうなずき、
「あーそーゆーことね完全に理解した」
「まあしょれは後でこちらがバカでもわかる
ように解説するとしてでしゅね。
やっぱりそのような動きがあるんでしゅか?」
従僕が流れるように暴言で引き継ぐのを見て、
二人は困惑した表情になるが、
「『新貴族』絡みは私が……」
「『枠外の者』絡みであれば、私やボガッド家、
トーリ財閥が目を光らせているので、そこは
問題ないかと。
ただ実際にあの手でこの手で近付いてくるのは
確認しております」
その言葉に、今度はフィオナとナヴィがうなる。
「それで、今はすごく忙しそうですが―――
いったい何がそんなに手間取っているん
でしょうか?」
ふと女神が話の方向を変えると、
「やはり手続きや、併合した場合の税制や法律、
そして物価などに対する調整案、ですかね」
「そのためにはまず、両国の現状を数字で把握
しなければならないのですが……
その量が余りにも膨大過ぎて」
仕事量を思い出したのか、夫婦は二人そろって
大きなため息をつく。
「伯爵様以外に、誰か任せられる人はいないん
でしゅか?」
従僕の美少年の問いに、二人はまた揃って
首を左右に振り、
「実際、フラールは―――
連合国加盟にあたって、無理やり身分制度を
他国に合わせた経緯もありますので。
私より上の公爵や侯爵の身分は、王族の
方々に……
それより下は各地方領主の割り当てられ、
そもそも数も少ないのです」
「他国と交易していた私のグラノーラ家のような
存在があったから―――
まだ間に合っているというところでしょうか。
読み書き計算まで出来る人材でなければ、
数字をまとめる事も出来ませんので」
要は全体的な教育レベルの低さに加えて、
人手不足が問題という事で、
ただこれは長期的な国策でも無ければ、
解決出来ない事態でもあった。
「えぇ……
じゃあいつくらいになったら、落ち着くん
でしょうか」
「ああ、そういえば女神様の世界へ招待されて
いるんでしたっけ。
しかしこの状況では、早くても半年後に
なるかと」
フィオナの問いに、ビューワー伯爵は
申し訳なさそうに答える。
するとナヴィが軽くため息をついて、
「仕方ないでしゅねぇ。
フィオナ様、いったん日本に戻って
もらえましゅか?」
「?? 何をなさるのですか、ナヴィ様」
彼の言葉に、マルゴットが聞き返す。
「ちょっと計算の手助けになるような物を
持ってくるでしゅよ。
じゃあ、行くでしゅよフィオナ様」
「え? ああ、はい?」
何をするのかわからないまま女神は空返事を
して、そのまま二人一緒に姿を消した。
「お待たせしました」
「しゃて、始めましゅか」
五分ほどして、女神と従僕が再び現れた時、
彼らはノートPCを手にしていて、
「な、何でしょうかそれは」
「神器……?」
ビューワー伯爵とマルゴットはおずおずと
たずねるも、
「しょんな大それた物じゃないでしゅよ。
計算機とでも思って頂ければ。
しゃて―――
計算しなければならない書類を持って来て
くだしゃい」
そして応接室に大量の書類が持ち込まれると、
PCを介しての『格闘』が始まった。
「うぅうう~……
て、手が死ぬうぅう~……」
「あなたがPCで計算とか出来ないから、
私が代わりにやっているんでしゅよ。
せめて手書きで数字を記入するくらいは
やってくだしゃい」
素早いキータッチで次々と計算して、
書類を片付けていくナヴィと、
言われた数字を書類に書き込んでいく
フィオナ。
そしてその光景を、伯爵夫妻は驚愕の
目で見つめ、
「し、信じられません……!
我々が行う数ヶ月分の計算がすでに」
「こ、これならあと1時間もあれば、
全ての計算が終わりますわ!」
二人がそう言うと、従僕は女神に向かって、
「ほれ、あと1時間のガマンでしゅよ
フィオナ様。
こりぇが終わればあとは貴女の好き勝手、
めくるめく欲望全開なおもてなしを
出来るでしゅよ」
「あながち間違ってはいないんですが、
言い方ァ!!」
いつものやり取りにマルゴットが近付いて、
「あの、そのおもてなしというのは一体?
女神様の世界に行くってお話ですよね?」
そこでフィオナは彼女に耳打ちし、
「……ほうほう、それはそれは。
結構エグいの好きなんですねフィオナ様は」
「どうでっか?
やる気がみなぎってまいりますやろ?」
「では私もラストスパートといきましょう!」
なぜかエセ関西弁になる女神を前に、令嬢は
意気投合し、
「??
どうしたんですか、マルゴット?」
「あー、まあしょれは地球に着いてからの
お楽しみという事で……」
首を傾げるビューワー伯爵をよそに、
作業は小一時間後、終了したのであった。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在8247名―――
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