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05・いきなり服を着せるなんて



日本・とある都心のマンションの一室―――


横になってふて寝する女神から、お目付け役の猫が

それとなく事情を聞いていた。


「また何かあったんですか?」


「んー、軍神パパにお願いして、もう少し

 武器関係じゃない方向で何か作ろうと

 思ったんですけどねー……」


「まあ、何事も練習ですよ」


「んで、いろいろと作ってみたんですけど」


フィオナの視線の先を見ると、そこには

近代兵器と思われる物がいくつか並んでいた。




「―――何が出来たんですか?」


「軽機関銃MINIMIに、えむつー重機関銃に、

 L16迫撃砲に、あと……」


「もうこれでラスボス倒せばいいんじゃないかな?

 ラスボス戦行こうぜ、エンディング見て感動しようぜ」


「ちょっと! ツッコミを諦めないでください!

 それに欲しくて作った訳じゃないですよ!

 結果的にこうなっただけです!」


「で、どうするんですかコレ」


「あとでパパが回収に来るって。

 ただ、ルコルアで作ったぱんつぁーふぁうすとは、

 後回しになるみたい」


「いや、アレこそ真っ先に回収しないと

 いけないと思うのですが……

 何か理由が?」


「それが、アタシの信仰地域に介入する

 事になるので、役所での手続きがちょっと

 いろいろ必要になるっぽいです」


「どうしてこう、どんどん面倒くさい方向に

 転がるんですかねアナタは。

 狙ってないとはいえ」


「じ、事故みたいなもんですよっ!

 とにかく、本編スタートしましょうっ!!」




│ ■ファジーの家・食卓   │




4人は食事を終えた後、後片付けを済ませ―――

再び同じ席に座っていた。


「―――さてと、出稼ぎの話だったかな」


食事とは打って変わった雰囲気の中、ミモザが

いつもの口調で話し始めた。


「ルコルアは職人の国だけど、当然材料が無ければ

 物は作れない。


 時には必要な素材や材料が手に入らないって事も

 あり得る訳で」


「―――しょれが、さっき言っていた

 『自分で材料や素材を確保する』に、

 つながる訳でしゅか」


「あの、ファジー君の顔色がさっきから……

 話しづらい事なら、別に」


フィオナの言葉に、ファジーはふるふると

首を左右に振る。


「ファジーの―――

 アタイらの両親も腕のいい職人だったんだけど、

 出稼ぎ中に鉱山の事故でね……」


「しょうでしゅたか……」


「まあ、金さえ払えばたいてい素材は確保

 出来るんだけどな。


 でも大半の職人は鉱山の所有者と契約して―――

 年に1週間か2週間、それとも1ヶ月か、

 働く代わりに鉱石や材料の『優先権』をもらう。


 別にアタイらの両親に限った話じゃ無いさ」


「鉱山って、ルコルア国にあるんですか?」


「元々はそのおかげで発展したような国ですから。


 他国から輸入するのは、『輸入した方が安い』

 材料だけで―――

 代えが利かない鉱石や素材に限れば、

 この国原産の物がほとんです」


ようやくファジーが、話の流れに入ってきた。




「そんなに貴重なものなんでしゅか」


「自分で確保って言うから、自分で見つけて

 掘ってくるのかと思ってました」


フィオナの言葉に、ファジーとミモザが一瞬沈黙し、

姉は苦笑しつつ応える。


「そんなんだったらアタイが探して持ってくるよ。


 適当に掘っても見つかるモンじゃないし、

 だからこそ鉱山ってのは、国かよほどの金持ちが

 所有者になってんだ」


「それに、その辺で取れたら貴重でも珍しくも

 ありません。

 鉱山の方が商売出来なくなっちゃいますよ」


「す、すいません。

 適当な事を言ってしまって」


さすがにバツが悪そうに、フィオナは頭を下げる。


「い、いえそんなっ。

 フィオナ様が謝る事では」


「まあ、考えてみりゃ神様が世間知らずじゃない方が

 おかしいしな。


 さてと―――

 そろそろお風呂の用意をさせてもらうぜ。

 ファジーは寝床の準備な」


「は、はいっ」


そして姉弟していは去り―――

女神とお目付け役(人間Ver)が食卓に残された。




│ ■バクシア国・首都ブラン  │

│ ■ボガッド家屋敷      │




「ウム、これでようやく全部か」


ローン・ボガッドが書類に目を通し―――

大きなテーブルには、ソルトとトニックが

席に着いていた。


「フラールの国王急死に、『枠外の者』が

 関わっている可能性は無し、と」


「まー、『枠外の者』だっていくら何でも

 そこまで手は出さないでしょうよゴクゴク」


「彼らは利益に敏感だが、用心深さも一流―――

 という訳か。


 合法的な範囲内で常に事を起こす。

 だからこそたちが悪いとも言えるがな」


「そーッスねポリポリモクモグ」


ボガッドは最後の1枚を読み終えると、

その書類を届けに来た2人に視線を移す。


「君たちの個人的な意見としては……」


「お茶うめえ」


「お菓子おかわりもらえるッスか?」


複雑そうな表情をするボガッドとは対照的に、

ソルトとトニックはくつろいでいた。


「ううむ、情報屋としての見解は無いのかね」


「……スイマセン。あまりそこには

 足を踏み入れないようにしているので」


「俺たちの役目は目と耳ッス。

 先入観があっちゃならない―――


 この世界に入った時の、師匠の受け売り

 ッスけどね」


まだ若いが、それでも情報屋としての能力、

グラノーラの手の者として信用しているボガッドは、

素直に彼らの言い分を受け入れた。




「ふむ、それは失礼した。


 だがそれでも―――『枠外の者』にして

 元の雇い主、ラムキュールについては

 思うところがあるのでは?」


「無いと言えばウソになりますが、

 今までの仕事の―――多くの雇い主の

 1人にしか過ぎませんよ」


「まあもう隠し立てする義理は無いッスけどね。

 あちらも尻尾切りしてくれたんで―――


 気になるなら、もう一度アイツの周辺

 洗ってみますか?」


「ウム……どうも引っ掛かってな。


 ああ、ビューワー君とグラノーラ君が

 合流してからでいい。

 彼らの意見も聞きたいし。


 今日は泊まっていってくれ」


そこへ、ボガッドの妻であるクレアが姿を現した。




「あらあら。もうすっかり平らげて―――

 やっぱり若い人たちの食べっぷりはいいわねえ。


 今、お茶のお代わりもお持ちしますね」


「マジ感謝ッス!」


「出された物は何でも有難く頂きますッ!」


豪華なお茶とお菓子を喜ぶ彼らの表情とは

裏腹に―――

ローン・ボガッドは眉間にシワを寄せて考えていた。


「(しかし―――


 あのラムキュールがルコルア国の鉱山主に

 なったというのは、どういう理由が……?)」




│ ■ルコルア国・ファジーの家  │




「では、おやすみなさい。

 フィオナ様、ナヴィ様」


彼らの寝室の前で、ファジーとミモザ、

そしてフィオナとナヴィの2人組は

それぞれ就寝のあいさつを交わしていた。


「でもどうして、アタイらの寝室にいたんだい?

 部屋間違えちまった?

 同じような間取りだし……」


「い、いえ。念のためです。

 ファジー君は今やアタシの眷属。

 彼に害意が及ばないよう警戒するのは

 当然の事ですので」


「ありがとうございますっ!

 そこまでして頂いて……」


ぺこり、とファジーは頭を下げ―――

ミモザに連れられて同じ寝室へと入っていった。


パタン。


その扉の音を背後に―――

フィオナの寝室の前までやってきた

女神とお目付け役は廊下で対峙する。




「しゃて―――

 言い訳を聞きましゅけど。


 どうしゅてあの2人の寝室で全裸待機

 していたんでしゅか?(微笑み)」


「ナ、ナヴィこそ酷いですよ!

 いきなり服を着せるなんて……!」


「こりぇもうわかりゃねぇな。


 ―――ではなく、どうしゅて服を着ないで

 あの寝室にいたのかを聞いているのでしゅが」


「え? それはやっぱり眷属として―――

 滞在時間も長引いた事ですし、彼の事を知る

 時間がたっぷり出来たという事で」


「そうでしゅか。


 では、もっとゆっくり滞在時間を取っても

 大丈夫という事でしゅね♪(超笑顔)」


「NOおおおおおおお!!」




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在1953名―――




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