20・全力疾走しながら因数分解
遅れて申し訳ございません。
寝落ちしておりました・・・
日本・とある都心のマンションの一室―――
やや目付きの悪い黒髪セミロングの少女と、
同じ黒髪のポニーテールで……
和装に身を包んだ同じくらいの年頃の同性が、
あぐらと正座で向かい合っていた。
「ほーん、悪霊ちゃんの引っ越し荷物って
結構あるんだー」
「あたくしも女ですし―――
それにジャパニーズ・キモノはひと昔前だと
財産ですよ?
それなりの業者を手配して運ばなければ
いけません」
女神と悪霊は、今後タワマンに引っ越す際の
話をしていたのだが、
「確かに、日本の古風な着物って高そう
ですもんねー」
「着物だけではありませんよ?
ダテに数百年、悪霊やっているわけじゃ
ありませんし……
使う日常品からして美術品レベルですわ」
高らかに胸を張る彼女にフィオナはボソッと、
「骨董品……」
「物持ちがいいと言ってくださり
ませんこと!?
古いのは古いと認めますけれども!」
何だかんだ言って、彼女たちは引っ越しの
話題で盛り上がり―――
そしてそんな彼女たちに、頃合いを見て
銀髪の美少年がお茶とお菓子を運んできた。
話が一段落したところで声をかけようと思って、
耳をすませると、
「ほほう陰間茶屋……
そんな素晴らしい存在が日本にあったなんて」
「ええ。美少年のいいお小遣い稼ぎになっていた
はずなんですけどね―――
全ては耶蘇教のせいですよ。
あいつらが同性愛とか禁じるからこんな
つまらない世界に」
それを聞いたナヴィは回れ右をすると、
何も聞かなかった事にして、
「はあ……
しゃて、それではそろそろ本編スタート
しましゅね」
│ ■コザイ国・王都王宮 │
「戻ったよ」
「お待たせしました」
しばらくして―――
頬にクロスの傷を持つ青髪の青年、
バーレンシア侯爵と、
シルバーの短髪を持つ、実年齢より十才は
若そうな、ビューワー伯爵が、
それぞれの恋人を連れて、今後の方針を
話し合う会議から戻ってきた。
「基本的には現状維持、でしたけど」
「戦力をこちらに集中させる案が出て
来ました」
ブロンドの長髪の、女騎士といった風情の
レイシェン・シッカ伯爵と、
真っ赤な長髪のマルゴットが共に、
恋人の上着を脱がしながら語る。
「それでさ、結局こちらの戦力アップって
いうと」
「どうしても外せない方が……」
ブラウンの髪を首まで伸ばした、三白眼の
少女・ミモザと、
一人息子と同じグリーンの長髪を持つ、
妙齢の女性、ソニアが後に続けて入って来て、
「と言われますと?」
銀のロングウェーブの少女、メイが
聞き返し……
それに対しバーレンシア侯爵が、
「眷属の一人、カガミ君を呼んではどうかと
僕が提案したんだ。
それにどうも―――
今回の件自体、仕組まれた疑いが
上がっている」
「そもそも女神様一行をお呼びする、
という案は、コザイ国が考えたものでは
ないらしい。
誰が発案したのか、いつ頃考えられた
のか、これだけの規模の催しにも関わらず
ハッキリしないんだ」
「そして今回、アルプ君とファジー君、
2人がさらわれた事を考えると、
最初から彼らが狙いで仕組まれたもので
ある事はわかる。
そして、他にこれといった事態が起きて
いない事を考えると……」
侯爵と伯爵、二人の貴族男性がいったん
区切ると、それを受け継ぐようにナヴィが、
「なるほど。
つまりあちらに同時多発的に襲うような
戦力は無い。
だかりゃ他が襲われる可能性は低い。
それなら、今魔族が標的にしているであろう
こちらに集中した方がよいという事でしゅか」
そしてそのままフィオナに向き直ると、
「聞いておりましゅかダ女神様」
「なっ何を!
ちゃんと理解していますって!
言っておきますけどアタシ、全力疾走しながら
因数分解出来るくらい頭いいですからね!?」
「すでにその例えで頭の悪さが伝わって
来ましゅが……
まあとにかく、カガミしゃんを呼び出すか
転移で迎えに行くかするでしゅ」
そして第四の眷属の獣人族の少女―――
カガミが呼び出される事となった。
「頼まなくてもやってくる!!
本人でさえ忘れた頃にやってくる!!
とゆーわけでカガミ、参上!!」
やたらテンションの高い、赤茶のツインテールの
少女の出現にみんなは戸惑うが、
「で、何だっけ?
戦うために呼ばれたんだっけ?」
「いや端的に言えばそーなんですけどね。
どうも敵さんの狙いがこっちっぽいので、
それに対応するためだと何度も」
やや疲れ気味のフィオナがカガミに説明する。
「今は敵の出方待ちでもあるから、
しばらくは待機でお願いしましゅ」
「えぇ~、カガミ待つの苦手なんだけど」
「ワガママ言うんじゃありません!!」
そんな女神と眷属、従僕のやり取りを……
周囲は微妙な表情で見つめていた。
│ ■コザイ国・某所 │
コザイ国辺境・洞窟の奥深く―――
限理神・マファーダが潜む地下基地。
そこの主は、配下の四人を魔族を前に、
玉座に座っていた。
「あの少年たちの様子はどうか?」
彼らの世話を担当している女性魔族の二人は、
「今のところは大人しくしております」
「さすがに眷属に選ばれただけあって、
簡単に精神は折れないかと」
その答えに限理神は満足そうにうなずき、
「それで良い―――
テクスとエクシルは、そのまま彼らの
監視を続けよ。
フォルド、ワーダー。
そろそろ『招待状』を出す時が近付いて
いると見るが、どうだ?」
男性魔族の二名は深々と頭を下げ、
「魔力量は十分に確保出来ました」
「いつでもマファーダ様の計画を実行出来る
準備は整っております」
それを聞いた彼らの主は玉座から立ち上がり、
「時は来た……!
あの神々の娘をここへ呼び寄せよ。
眷属の少年たちにも伝えてやるがよい」
「「「「ハッ!」」」」
限理神の命令に、四人の男女の魔族は床へ
視線を落とした。
「誰ですか!?」
グリーンの短髪に、同じ色の瞳を持つ少年―――
アルプが人の気配に上半身を起こす。
そこに現れたのはフォルドとワーダーで、
「そろそろ、君たちの主人である女神を
『招待』する準備が整ったのでね」
「事が済めば帰してやる。
大人しくしているといい」
それを聞いたもう一人の眷属の少年、
ブラウンのやや垂れ目のファジーが片手を挙げ、
「お、大人しくはしているつもりなんですけど。
ちょっとお世話をしてくれる方々が……」
「あの、ちょっと僕たちを構い過ぎと
言いますか―――
あの方々に大人しくして頂けると、その」
少年二人の要求に、彼らは顔を見合わせ、
「まあ……そうだな」
「いっそ魔族の男性陣に預けるという手も。
向こうなら放置されるだろうし」
そうフォルドとワーダーが、彼らを監禁する
場所の移動を提示しようとしたところ、
「っ!?」
「!!」
急に二人の背中に悪寒のようなものが走り、
『余計な事はするな……!!』
『死にたく無ければ立ち去るがよい』
『それか新しい贄を希望する……
出来ればあのナヴィっていう美形さんが
いいです』
と、なぜか邪神のような脅しと、欲望全開の
要望がフォルドとワーダーの頭の中に直接響き、
「ま、まあ頑張ってみる」
「期待はしないでくれ」
そう少年たちに告げると、逃げるように
その場を後にした。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在7823名―――
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