03・まだ帰りたくないの
何かPV数が21000突破しました。
今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m
天界、フィオナの実家―――
そこでナヴィは、自分の主人であるアルフリーダに
直近の報告をしていた。
「―――というわけで、多少のトラブルはあれど
結果的には良い状況で終わっておりまして」
「我が娘ながら、それなりに上手くやっている
ようですね」
一通りの報告を受けて、安堵するアルフリーダ。
それは人も神も変わらない母親の顔で―――
「しかし、これで他国も行動可能となった
わけですが……
そこに元からいた神々とは、何か問題に
ならないでしょうか」
「フィオナは果樹の豊穣の女神ですし、
担当や能力的に衝突する事は無いと思います。
あと、ナヴィから見てどうですか?
個人的に問題に感じるところとかは」
「そうですね。
時々、欲望一直線になるのが困りもの、
くらいですか」
「とても素直ないい子でしょう?
そう思うわよね?
そう思うでしょう?
そうでしょう?
なあ、おい、空気読みなさいよ」
頭をわし掴みにしながら、アルフリーダは
従僕に返答を強制する。
「(そういえばアルフリーダ様も
こういう性格だったわ)」
「ナヴィ、返事は?」
「あ、はい。おっしゃる通りでございますです。
それではそろそろ本編スタートしますね」
│ ■ルコルア国・ファジーの家 │
「フィオナ様、それでは行って参りますっ」
ファジーが玄関口で、他の2人と共に
フィオナに挨拶する。
「気をつけてくださいね。
ナヴィ、2人の護衛をしっかりと務めるように」
「任せておいてくだしゃい」
「あくまでも、ここ最近の雰囲気とか事情とか
噂がわかればいいので―――
危険な真似はしないでください」
「まあ、調べものはお手の物だし。
故郷のココでそこまで目立つコトはしないさ。
じゃ、悪いけど留守番頼むよ、女神様」
結局、話の流れで―――
ファジー、ミモザは情報収集に、そしてナヴィが
彼らの護衛に付く事になった。
│ ■フラール国・グラノーラ家屋敷 │
ところ変わって、フラール国―――
マルゴットが自分の屋敷で、ソルトとトニック、
2人の情報屋に初めて本格的な指示を出そうと
していた。
「先行して情報共有―――ですね」
「ええ。
後はあちらのボガッド家で対応してくれる
はずです。
後で私も、ビューワー様と一緒に
バクシアへ行きますから」
「了解ッス!」
元気良く返事するトニックに、マルゴットは
心配そうに声をかける。
「あと、トニックさん?
あなたがフィオナ様から罰を受けたと
聞いたのですが、何があったのですか?
あのフィオナ様が怒るなんて―――
今までそのような事は無かったのですけど」
「何か異教徒の疑いをかけられまして」
言っている言葉の意味がわからず、マルゴットは
思わず質問を重ねる。
「?? でもフィオナ様って
『果樹の豊穣を司る女神様』だし……
異教徒って何?
菜食主義とかお肉しか食べないとか?」
「いや、フツーに肉も魚も野菜も食べますよ?
果物だってあれば食うだろうし」
「お前、基本何でも食うもんなー。
俺も好き嫌いはあんまり無い方だけど」
「つか、好き嫌い出来るほど豊かな食生活でも
ねーし」
「……なら、どうしてお前だけ罰を受けたんだろう」
「俺が聞きたいわ」
考え込む2人を前に、マルゴットは話を元に戻す。
「まあいいですわ。
今は任務を優先してください。
お渡しする書類はこれです。
お願いします」
│ ■ルコルア国・ファジーの家 │
「フィオナ様!
ただいま戻りましたっ」
「お帰りなさい。お疲れ様」
「久しぶりだったからなあ。
ちょっとあちこち回って時間かかっちまった。
これから昼メシ作るよ。
ちょうど材料も買ってきたし」
「あ、じゃあアタシも手伝っ―――」
「フィオナ様は座っていてくだしゃい」
フィオナの申し出を、すかさずナヴィがカットする。
「いえ、でも少しくらいは―――」
「座っていてくだしゃい(微笑み)」
「でも」
「座りぇ♪(超笑顔)」
見えない火花とプレッシャーをかけるナヴィの前に、
フィオナは屈し、大人しく席に着いた。
何か不穏な空気を感じ取り、思わずファジーが
声をかける。
「あ、あのっ、すぐ終わりますからっ。
お2人はそこでお待ちを」
「そうだね。申し出は嬉しいけど、ある程度
下ごしらえされているヤツ買ってきたからさ。
気を使わないで待っててくれ」
そう言うと姉弟は、台所へと姿を消した。
「なんですか、もー。
以前アルプの家で食事を出された時は、
ママに通報しようとしていたクセに。
だから今回は何か手伝おうと思って」
「あの時は尊大な態度を取っただけでしゅたが、
さすがに命に関わる場合は全力で止めるでしゅよ」
「命に関わるだなんて―――
そんな、大げさな」
「じゃあ、トニックしゃんに食べさせたアレ、
(2章17話参照)
ちゃんと自分で味見しましゅたか?」
「しましたよ!
ちょっと小指がプルプルしましたけど、
大丈夫でした」
「いいでしゅか?
そりぇを世間一般では『大丈夫』とは
言わないんでしゅよ」
「い、いいんですよ!
結果的に異教徒に天罰を
与えたんですから―――」
「何の罪でしゅか、まったく。
とにかく、料理を振舞いたけりぇば、
もっと練習してからでしゅ」
それから取り留めの無い話をして10分ほど後―――
ミモザ、ファジーがそれぞれ料理を持って現れた。
「お待たせしましたっ」
「すいません、仕事もしてきてもらったのに、
お2人にそんな事まで―――」
「気にしないでくれ。
神様には神様の役割ってモンがあるだろ?
あと、食事がてら情報収集して来た事を
報告するよ。
大した事は聞けなかったけどな」
「では、頂くとするでしゅ」
4人は席に着き、改めて食事のあいさつをしてから
料理を口に運んだ。
しばらくして―――
半分ほど食べ終えたところで、ミモザが語り始めた。
「さて、どこから話したモンかな―――
アタイらから見れば故郷だし、そうそう変わって
なさそうに見えたけど」
「ナヴィから見た感じはどうでしたか?」
「んー、小さいでしゅけどしっかりした造りの
家が多かった印象でしゅ。
あと、何か作る音がいつも聞こえてましゅたね」
「ルコルアは職人の国なんです。
フラールが農業国なら、
ルコルアは工業国、とでもいうんでしょうか」
「原材料を仕入れて、それを他国に売って
その金で食料や生活用品を仕入れているんだ。
連合国内でも序列7位の国だし、
まあ中堅どころって感じかな」
生まれ育った祖国だけあって、姉弟は2人の質問に
テキパキと答えていく。
「なるほどでしゅ」
「他に変わった事とかはありませんでしたか?」
「まー景気が良さそうには見えなかったねえ。
ここ10年くらい、素材が入らなかったり
いろいろとトラブルがあるみたいでさ。
そうなると商売あがったりの職人も出てくるよ」
一瞬、ファジーが視線が落とし―――
すぐにその視線を上げてフィオナに向ける。
「1日やそこらではわかる事も少ないと思います。
あの、もう少し滞在して行かれるんですよね?」
「いえ、アタシも『果樹の豊穣』というお役目が
ありますので……
それにあなた達も、今はアルプの果樹園の
従業員なのですから。
様子がわかったら、いったん戻るという事も
選択肢の一つなのでは―――」
「(本当のところは? フィオナ様)」
2人にはわからないように、ナヴィが心の中で
ツッコミを入れる。
「(シャワーもエアコンも無いところに長居したく
ないんだよ! わかって!)」
「一応アタイらは、アルプさんからフィオナ様の
指示に従うようにって言われている。
だから反対はしないけど―――
せっかく雇い主公認で里帰りが出来たんだから、
もうちょっとココにいたいんだけどさ」
「ミ、ミモザ姉っ」
「そりぇでは、あと2、3日調査して
もらいましゅか」
「(へっ!?)」
「恩に着るぜ、ありがとっ!」
「(NOおおおおおおお!!)」
そして、午後の調査に3人が向かう事になり―――
午前中と同じく、フィオナが家に残された。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在1895名―――