29・そのうち何食わぬ顔して現れる
( ・ω・)人間ドック、いろいろ体内に出来ていた
らしいけど何か全部良性っぽいのでニアミス感を
楽しむ(どうにもならないし)
日本・とある都心のマンションの一室―――
目付きの悪い黒髪セミロングの少女と、
カラスのような羽を持った金髪ロングの同性が
対峙して座る。
「それで、聖戦の事はママからだいたい聞いて
いるけど……」
「大方合っていると思います、フィオナ様。
堕天使であるこの我が、堕とされ堕ちまくった
あの一件―――
おそらくは初めての経験でした」
女神は堕天使からその時の状況を聞き、
「堕天使ちゃんでも初めての事だったの?」
「はい。我は堕天使……相手を堕とす事こそが
使命であり生き様のようなもの。
それがああまで堕とされまくるとは」
ふむふむ、とフィオナはうなずき、
「じゃあ堕天使ちゃんが堕とした事がある中で、
比較してどれくらい堕ちていると思う?」
女神の問いに彼女は両目を閉じ、
「―――ですから、経験した事が無い、くらい、
では……
多分、我が堕とした誰よりも堕ちていたかと」
「そんなに、ですか。
ちなみに今後、どこまで堕ちる予定で……?」
「ンなもん決まってますよぉ……!
堕ちるとこまで堕ちるに決まっているじゃ
ないですかぁ……!」
両者ともになぜか顔が上気し、互いにおでこが
くっつくくらいまで接近させる。
「なるほど―――
底の底まで堕ちる予定、という事ですね?」
「知ってますかフィオナ様……?
底って抜けるんですぜゲヘゲヘゲヘ」
やがて互いに女性キャラがしてはいけない笑いを
浮かべると、
「イイデスネー。
その愛の底なし沼に首までどっぷりつかって、
自ら溺れていくスタイル。
それじゃそろそろ、本編スタートしましょう」
│■王都ウィーンテート・カトゥ財閥拠点 │
│■屋敷裏庭 │
女神・フィオナのファイナルアタックとやらが
発動し―――
大量の柑橘系ジュースが降った後、裏庭の
ギャラリーたちが目を開けると、
「い、いない?」
「た、倒したのですか?」
侍女やメイドたちがおそるおそるフィオナたちに
たずねる。
「どーだろー、フィオナ様?」
赤茶のツインテールの髪をした獣人族の少女が、
女神に問うと、
「いいえ、彼らは魔族でも幹部クラスでしょう。
この程度ではやられる事はありません。
きっとそのうち何食わぬ顔して現れるわ」
それはそれでどうなんだろう、という表情に
ギャラリーたちはなるが、顔に出しても口には
出さず……
女神組VS魔族組の戦いは、ここに一応の
幕を閉じた。
│■王都ウィーンテート・カトゥ財閥拠点 │
「しかし、最後はジュースですか。
魔族はジュースに弱いのでしょうか?」
ギャラリーたちは濡れた服を着替え、お風呂に
入って洗い流し、一段落すると―――
改めて屋敷内で戦闘の話題となり、
「あ、あれはデスネー。
普通の人間には効果はありませんが、
魔族だけに効くという聖なるジュースで……
皆さんもおりましたし、巻き添えにする
わけにはいきませんでしたから、それしか
無いと思って発動させたんです」
もちろんアレはただの果汁であり、魔族だけに
効くも何も無いわけだが―――
言い訳だけはもっともらしく言葉を並べる。
「なんと……!」
「我らの身を案じての事でしたか」
「確かに神と魔族の戦いを間近に見るのは、
軽率だったかも知れません」
拠点の従者たちもその説明に納得し、
「ですが、倒したのではないとすれば―――
あの2人、テクスとエクシルはどこに行ったの
でしょうか」
「大方の目星は実はついているんです。
魔族の手先が、アタシたちが巡った土地を
調べているとの情報が入っていまして……
そこを順に調査しているのではないかと」
フィオナの後にカガミが続き、
「ホントはカガミたちもねー、シフド国の後、
グレイン国に行くかミイト国に行くかで
迷ったんだよねー」
「そうです。
どうも調査の手がまだ入っていないのは、
その二ヶ国でしたので―――」
実際にはすでにミイト国の首都ポルトで、
ナヴィとテクス・エクシルは接触していたの
だが、
(■10章04話目(第294話)
「接触は危険よ。二重の意味で」参照)
その時はまだ彼女たちの正体まではわからず、
まだ未調査、もしくは本格的な調べは行われて
いないだろうと見られていた。
「でもその前に、またトーリ財閥拠点に
寄らないとダメかもー」
「?? どうしてですか?」
獣人の言葉に女神は聞き返す。
「だって確か、あの2人をサポートするって
言ってたじゃん。
そのサポート相手が魔族だったんだから、
報告した方がいいと思うよー」
(■10章24話目(第314話)
「現場でナマを直にみられるというのは特権」
参照)
カガミの意見に周囲もうなずき、
「そうですね、いったんトーリ財閥の拠点に
戻り、この事について話してみます」
そこで二人の次の行動は決まり……
カトゥ財閥拠点を後にした。
│■王都ウィーンテート郊外 │
「やれやれ、まいりましたわ」
「フィオナさんが空気を読んでくれて助かり
ましたけど」
その頃、魔族の二人―――
『哄笑の魔女』・テクスと、
『落煌の堕神』・エクシルは、
体についたジュースの汚れを落とし、何とか
一息ついていた。
「でもこれからどうしましょうか。
私たちの正体もバレてしまいましたし」
「あーあ……
結構居心地は良かったんですけどねえ、
人間世界も。
あの工房や同志たちと会えなくなるのは
ちょっと寂しいですね」
グチをこぼしながらとぼとぼと彼女たちは
歩き続け、
「ですが、おおよその目的は達成出来たと
思うわ。
このまま限理神・マファーダの元へ帰れば
任務は終了―――」
そうテクスが言い終わる前に、エクシルが
口を開き、
「ミイト国はあの女神の仲間であるナヴィと
やらに邪魔されたので、まだ調査は不十分だと
思いますけど」
その言葉にもう一方の魔族の女性は両目を閉じ、
「そうは言ってもねぇ~……
間違いなく警戒レベルは上がっていると
思うわよ?
あちらさんだってバカじゃないんだから、
今回の件は情報共有されるでしょうし」
「それよ。魔族と人間とじゃ情報の伝達速度は
まるで異なるわ。
警戒レベルを引き上げられる前に―――
一気にカタをつけるのよ。
私たちなら可能なはず……!」
そこで二人は顔を見合わせ、
「これはマファーダ様の命令をより完全に
こなすものであり、それ以上の喜びは無いわ」
「そう―――
決してBLに関しての私たちの妄想や考察、
またその堪能が不十分だったとか、
もっと楽しみたいとか……!
そういう事ではなく!
決してそういう事ではなく!!」
なぜか魔族は二人して握りこぶしを作って
絶叫し、
「ママー、あの人」
「しっ、見ちゃいけません!!」
郊外ではあるがまばらに人は歩いていて、
それらに敬遠されていた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在7478名―――
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