16・止めて余計な事しないでええええええ
( ・ω・)シフド国からなかなか離れられない
調査中の二人。
日本・とある都心のマンションの一室―――
家主と思われるやや目付きの悪い少女が、
天井に向かって話しかける。
「ねーねーママ。
ナヴィってSだったのMだったの?」
『娘の様子を見に来た会話の第一声が、
性的嗜好についてだった件』
フィオナの母、アルフリーダは呆れながら話す。
『ていうかあの子は従僕にしたと言っても、
眷属じゃないし、家族同然だったし。
ちょうどあなたが神様になる修行中だった
事もあって……
息子っていうかあなたの弟みたいな感じ
だったのよ。
それでSかMかって言われてもねぇ』
実際、ナヴィはまだ子猫だった時代に
彼女に拾われ―――
それ以降、アルフリーダとその夫である
ユニシスに、実の子のように可愛がられ、
また育てられたのである。
「まあ確かに、パパとママが両親みたいな
ものですけど。
でもそうなるとどっち似なんですかね?
性格とか……」
『んー、武器の扱いや格闘、戦い方の知識は
パパ直伝なのよね。
だからパパ似っていうか、私よりは近いと
思うわ』
ふむふむと聞いていたフィオナは、
「じゃあパパってS? M?」
『えっ!?
えーっと……そ、それは……
た、確かに甘えん坊なところもあるけど、
それは私と会った時がずっと年下だった
影響もあってえ……』
するとそこへ銀髪の美少年が入って来て、
「そもそもアルフリーダ様、ユニシス様を
その日の気分で甘やかしたい時に少年に
戻したりするんでしゅから、あまり性格に
関係は無いかと」
当事者であるナヴィがやってくると、
母娘は慌てて取り繕い、
「そっそうですね。
強制的に少年に戻されたんじゃ、甘えん坊に
なっても仕方ありませんよねっ」
『そそ、その通り!
じゃあそろそろ、本編スタートしましょ!』
│ ■シフド国・王家宮殿 │
「……実に素晴らしい出来でした。
テミス、エクリル……」
「このシフド国の芸術の歴史に、間違いなく
刻まれる事となりましょう。
またそれをこの目で見届けられた事―――
改めてお礼を申します」
女神・フィオナと、丸眼鏡に淡いピンクヘアーの
シフド国王女・スカーレッドが眼下に跪く工房の
職人たちに言葉をかける。
そして一番王女に近い位置にいるのは、
限理神・マファーダの配下である……
テクスとエクシルの二人で、
「も、もったいないお言葉です」
「この上ない栄誉にございます」
モデルのスケッチが終わった後―――
一行にお褒めの言葉をかけるために設けられた
謁見の場だが、
女神と序列上位国の王女が、限理神の配下を
称えるという奇妙な光景が広がっていた。
なお、モデルとなったナヴィ・キーラ・カガミの
三人はいつも通りグロッキーとなったため、
謁見の場に出ない事を許され、休んでいる。
そして看病いう名目でメルリアもそこで待機中。
「(どど、どうしましょうエクシル……
いえ、疑われてはいないようなんですけど)」
「(最後の方では私たち、またノリノリで
指示を出していましたからね。
王家お抱えの話とか出たらもはや逃げられ
ないんじゃ……)」
一方で魔族である二人は、別方面で悩みに
悩んでおり、
何とかこれ以上関わりを持たないために、
脳をフル回転させていた。
「それで、是非とも工房に褒美を―――
特にその2人には何か特別に功に報いる
ものをとらせたい。
希望があれば申してみるがよい」
「(やっぱそう来ますよねえええええ!!
そりゃもういっぱい目立っちゃいましたもん
ねえええええ!!)」
「(なるべく静かに穏便にやり過ごそうと思って
いたのに、どうしてこうなった)」
スカーレッド王女の言葉に、二人は何とか
全身全霊で言い訳を探し……
「そっ、それではですね。
一度故郷に帰らせて頂く、というのは可能で
しょうか?
何せこれだけの功績を認めて頂いたの
ですから、ふるさとの両親やみんなに
報告もしたいので!」
ほとんど出まかせのように口から吐かれた
案だったが、それにエクシルも飛びつき、
「そ、そして許されるならば―――
故郷から戻るまでの間に、少しばかり
寄り道をしたいのです。
もっと精進するために、何か良い構図や
設定は無いか、探してみたいと思います!」
かなり強引だがこれでしばらくは離れても、
不思議には思われないだろう。
二人は不安気に王女と女神を見上げるが、
「ふむ、今の状況に満足せず、さらに
精進したいと申すか……
それに故郷に錦を飾りたい、というのも
理解出来る。
では路銀として金貨500枚、そして
わたくしからもそなたたちを賞する書状を
渡そう」
これで何とか切り抜けられそうだ、と思った
二人は安堵のため息をつくが、
「王女様、少しよろしいでしょうか?」
王女の隣りに立っていた女神・フィオナが
片手を挙げ、
「何でしょうか、女神様」
それを見たテクスとエクシルは、
『止めて余計な事しないでええええええ』
と心の中で叫ぶ。
「いえ、この方たちはすでにアタシの同胞、
仲間と言っても差し支えありません。
そして今アタシたちは、とある事情で
連合各国の協力を得られる特権を与えられて
おりますが―――
その一環として、彼女たちに各国を自由に回る
事の出来る、通行証などを発行して頂けないで
しょうか」
「そうですね……
寄り道と言っても、長引く可能性があるわけ
ですから。
ではシフド国王女のわたくしの名を持って、
連合各国をフリーパスになる許可証を発行
しましょう。
すぐに用意するので、後で受け取りなさい」
フィオナとスカーレッド王女のやり取りを受け、
「おお……!
やるじゃねぇか2人とも」
「俺っちたちの工房が、しかも新人が
これだけの栄誉を受けるなんて―――
故郷に帰って死ぬほど自慢してこい!
そして斬新なアイディアを持って帰って
来るんだぜ!!」
実質的に工房のトップ二名、男装の麗人のような
服装のカーレイと、赤とダークブラウンの長髪を
したメヒラが、男言葉で激励し、
謁見はそこで終了した……
「ではこれが路銀―――
あとこれがスカーレッド王女の書状です。
でも本当にいいの?
このまま故郷に出発するなんて」
「一度工房に戻って休んだ方が、
いいんじゃないですか?」
休憩室で工房職人たちが話し合う中、
テクスとエクシルは話を切り出し、
「いっいえ!
出来れば今すぐにでも、故郷に向かいたいと
思いまして!」
「そ、それにモデルとなった方々はまだ回復して
いないという話ですから……
それを他のみなさんにお任せするわけなので、
私たちだけ先に行ってしまうのですから、
休むなんて」
何とか言い訳を絞り出す二人に、カーレイと
メヒラがやって来て、
「まあ早く帰って―――
ご両親に自慢したいんだろうよ」
「こっちは任せな。
気を付けて行くんだぜ、2人とも!」
工房のトップ二名に押され……
半ば逃げるようにして、ようやくテクスと
エクシルはシフド国から解放された。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在7325名―――
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