09・ある意味不治の病だからなぁ
( ・ω・)次回で300回かー(超遠い目)
日本・とある都心のマンションの一室―――
やや目付きの悪い少女が、そのセミロングの
黒髪を手で避けつつ読書に没頭していた。
「……何をなさっておられるのでしゅか、
フィオナ様」
「ん、勉強」
それを聞いた従者の銀髪の少年は、持ってきた
お茶菓子を床に落とす。
「突然まともな事を言わないでくだしゃい。
今世界が滅ぶと思ったじゃないでしゅか」
「そこまでかよ!?」
落としたお菓子を拾いながらのナヴィの言葉に、
女神は反発するも、彼はそのまま会話を続け、
「しかしどうしたのでしゅかいったい。
何かこう―――
フィオナ様の向上心を刺激しゅるような
出来事でもありましたっけ?」
「んー、アルプきゅんを夫にした際、どんな
シチュで楽しむのかいくら考えてもまとまら
なくてー。
それでいろいろと調べておりましたら、結構な
パワーワードが引っ掛かりましてねぇ♪
ほら見て! 『酒池肉林』!
エロくない!?」
そこでお目付け役(人間Ver)の表情は
無になり、
「エロい単語に一喜一憂しゅる中学生でしゅか、
あなたは。
しょれにその言葉……
『酒池肉林』の『肉』は食事のお肉という
意味でしゅよ?
しょこにエロい意味はありましぇんから」
それを聞いた女神の表情は見る間に曇り、
「何でそこまでこの世に絶望したような
表情になるんでしゅか。
感情が忙しい人でしゅね」
「そ……そんな……!!
アタシの想像するような冒涜の肉欲の
サバトは……」
両手で顔をおおい嘆くフィオナにナヴィは、
「あなたが女神であるという事自体が、
何よりの冒涜でしゅよこのダ女神。
しゃてそろそろ、本編スタートしましゅ」
│ ■シフド国 メルリア本屋敷 │
「お久しぶりです、ナヴィ様」
「よく来たね、カガミ」
屋敷の女主人・メルリアと、カガミの兄・
キーラが二人を出迎え、
「トーリ家からの手紙は着いていると
思いましゅが」
「限理神・マファーダの手先がこの国に
入ったみたいでねー。
連中が何を調べているか追ってきたの」
女神の従者と、赤茶・ツインテールの獣人族の
少女が目的について語る。
「まあ、とにかくゆっくりと説明して
頂きましょう」
ピンクの長髪を揺らしながら身を翻し、
彼女の案内の元―――
銀髪の巻き毛の獣人族の少年と共に、
二人は屋敷の奥へと招かれた。
「フラール、バクシア、ルコルアと……
女神様たちの辿った国を追って、
調査しているという事ですか」
「そして今度はここ、ミイト国に現れる、と」
メルリアとキーラが、書類を見ながら確認し、
「戦いに来たわけではありましぇんから、
国内を自由に移動する許可を頂こうかと
思いましゅて」
「シャロレー正妃様には、すでに書簡を
出しているわ。
何でも、限理神・マファーダに関しては
連合諸国の最優先事項と聞いております。
報せてさえおけば問題は無いでしょう」
女神の従僕の言葉に、そつなく女主人は答える。
「でねー、深く関わっているとしたら―――
やっぱりここの印刷工房かなって。
それでキーラ兄、あのねあのね」
「断る」
妹が話し終える前に兄は即座に拒否する。
「ぶーぶー。
まだ何も言ってないじゃないのー」
「どうせ絵のモデルになれって言うんだろ?
アレすっごく疲れるんだよ。
体力的にも精神的にも……」
カガミはキーラに反発するが、彼の方もまた
負けじと抵抗し、
「別にいいでしょう?
何かが減るってわけでもないのに」
メルリアが同性の肩を持ち擁護するが、
「いえアレは―――
ゴリゴリと何かが削られましゅよ?」
「なかなか疲れが取れないっていうのかな。
質が違うというか」
モデル経験のある男性陣はなおも消極的な
態度を取り続ける。
『ナヴィ……
これも任務の1つです……
味方や仲間の要求を受け入れるのも、
使命だと思いなさい……
あ、それと絡みは貴方が下になっている構図を
いくつか所望します』
「こんな時に神託使うんじゃないでしゅダ女神。
どこまでも欲望に忠実でしゅね」
突然のフィオナからの神託に、彼は眉間に
シワを寄せて―――
「まあまあ♪
商業ギルド本部長のジアもあなたたちに
会いたがっているし……
カーレイやメヒラも待っているから。
それに印刷業の手配は彼女たち無しでは
出来なかったのよ?
会わないのは義理に欠けるんじゃ
ないかしら?」
メヒラの名前が出て来たところで、カガミは
急に縮こまり、
「え? あの人もかー……
カガミちょっと苦手なんだけど」
と言う妹の片方の肩をガッチリとキーラが
つかみ、
「お前だけ逃げようとするなよな?」
「こうなるのはわかっていたはずでしゅよ?」
もう片側をナヴィにつかまれ―――
メルリアはそれを満面の笑みで見ていた。
│ ■職人ギルド街・印刷工房 │
「おぉう来た来た♪
贄が……♪」
「ナマで見ると違いますねえ。
これからどんなポーズをさせるかと考える
だけでも……ブッフォ♪」
「今から飛ばすと持ちませんよ?
時間はタップリあるんですから♪」
小一時間ほどして―――
工房に到着したナヴィとキーラは、どす黒い
熱気に囲まれていた。
「ここは工房と聞いておりましゅたが、
いつから病人だらけに?」
「アッハッハ!
まーある意味不治の病だからなぁ」
ナヴィのツッコミに、男装の麗人といった体の
カーレイが豪快に笑い、
「みんな良い素材が来て舞い上がってんだよ。
ま、俺っちに任せてくれ。
極上に仕上げて見せるぜ?」
「うわ、もう視線だけでヤバいよこの人!」
赤い長髪をハーフアップまとめたメヒラが、
カガミをジロジロと見ながら話す。
「ここに来ると、殺気とは違う何かが
全身にまとわりつくんだよね……」
キーラがすでに疲れた表情でため息をつくと、
それを見ていたダークブラウンの長髪をした
商業ギルド本部長が、
「それにしても―――
こうまで売上が伸びるなんてね。
ボウマン子爵家の支援もあるし、
今では誰も『女に商売は無理』だなんて
言う者はいないわ。
何せ商業ギルドで一番の利益を上げている
ところですもの」
そんな彼女に、メルリア家の当主が隣りから、
「おかげ様でカトゥ家も儲けさせてもらって
いるわ、ジア。
そういえば、ボウマン子爵家のベラ様は
どうしているのだ?」
「アーユ様と一緒に『モデル探し』に
出かけているそうよ?
隠居したし、時間とお金はタップリ
持っていらっしゃるから」
「孫と一緒に、ですか。
羨ましい老後だこと」
そんなやり取りの外側で……
入ったばかりの新人二人が顔色を変えていた。
テミスとエクリル―――
その正体は限理神の配下、テクスとエクシル
である。
二人は小声でヒソヒソと話し合い、
「いつか来るとは思っていましたけど……
昨日の今日というのは早過ぎない?」
「100%バレるでしょ、これ。
どうする? 今のうちに撤退する?」
さすがに顔を知られているナヴィが、
それもこんなに早く来るとは思わず、
動揺の色が彼女たちに見られるが、
「いや、でも―――
ここを逃したらもうこんな機会は
訪れないかも」
「そ、そうね……
私たちがここに潜入したのは、彼らの資金源や
人脈をより深く探るため。
それに彼だってまさか、すでに私たちが
潜入しているなんて思いもしないでしょう」
そう言ってテクスとエクシルはナヴィの方へ
視線を移すが、
「ホラ、何か疲れているっぽいし。
移動後、すぐにこっちに来たので警戒も
していないわ」
「そ、そうね。
少なくともあの時の、常時気を張るような
気配も感じないし―――
よし、可能な限り調査を続行するわよ!」
こうして調査する側とそれを追う側……
四人が混同する奇妙な状況となった。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在7211名―――
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