30・いえ、ずっと異世界ファンタジーでしたよ?
( ・ω・)暑さ、ピークを過ぎたかな(渇望)
日本・とある都心のマンションの一室―――
家主と思われる目付きの悪い少女が、
ワンカールロングの、コウモリの翼とシッポで
コスプレしたような女の子と、PCのモニターに
注目する。
「おー、結構来ますねコレ。
いきなり振り向いたところに……」
「だだだ大丈夫ですよー。
心霊動画なんてほとんど作り物ですし?
科学の発展した現在に、幽霊だのお化けだの
いるはずがありませんから」
彼女たちが見ているのはとある動画サイトで、
『心霊』を検索してその動画に見入っていたが、
「おぅ人外ども。
お茶が入りましたでしゅよ」
「うひょおっ!?」
「あぴぃっ!?」
女神とサキュバスは飛び上がらんばかりに、
肩をビクンと震わせる。
「……神様と夢魔が幽霊とか見てどうして
怖がるんでしゅか。
あなた方、それ以上の存在でしょうに」
銀髪の少年がため息をつきつつ、お茶を
二人の前に置く。
「そそそそーは言いましてもですねえ。
やっぱりこういうのって演出次第?
なところがあるじゃないですか」
「じゃじゃ、じゃあナヴィさんは怖がらないん
ですかー?
そういうのが見えたり聞こえたりしても」
フィオナとサキュバスが反発するが、
「んー……
そういうの、普段から見えてましゅし」
そう言ってジッと空中の一点を彼は見つめ、
「あの、ナ、ナヴィさん?
何を見つめておられますのん?」
「ああ、そういえば猫って何も無い場所を
じっと見つめていたりしますもんねー」
少女二人はお互いに両手をつなぎ合い、
小刻みに震えだす。
「冗談でしゅよ。
第一、今は悪霊だっていましゅのに―――
しょんなのにいちいち驚いたり怖がったりして
どうするんでしゅか」
「あー、そういえば悪霊ちゃんいましたね」
「お、脅かさないでくださいよー。
本当にもう」
その言葉にフィオナとサキュバスは冷静さを
取り戻すが、
「今日のところは何もいましぇんから、
安心してくだしゃい」
「あー良かったよかった。
……ん?」
「……今日、は……?」
ナヴィはその問いに視線を露骨に反らし、
「待って待って!
今日のところはって何!?
今日のところはって!!」
「えーしょんな事言いましゅたかねえ(棒」
ありぇ?
私、何て言いましゅたっけ?」
「かかか確認しないでください!!
不安になるでしょう!?」
少女二人の不安が加速する中―――
彼はそんな彼女たちをおいて、
「しゃて、そろそろ……
本編スタートしましゅか」
│■フラール国・バクシア国代官館(改3)│
「あ~……
つっかれたぁ」
「お疲れ様です、レンジ様」
職場兼自宅で―――
バーレンシア侯爵は、婚約者のレイシェンを
隣りに、ソファでくつろいでいた。
「ずいぶんと大々的にやりましたからねえ」
「バクシアに取っては、歴史に残る1日と
なったでしょう」
ビューワー伯爵に恋人のマルゴットが、
侯爵と伯爵令嬢の対面に二人して座り、
「『勇者様』ですからね。
国を挙げてのお祭りにもなりましょう」
「縁続きになった、フラールの王族も
ご出席なされていましたし……
序列上位国からも、王侯貴族がご参列
なさっておりましたから」
第一眷属の少年・アルプと―――
その母・ソニアがしみじみと語る。
結局あの後、バクシアは大々的に『勇者』、
バーレンシア侯爵を公表する事にした。
そのお披露目にはグレイン・シフド・ミイトを
始めとして、連合各国が代表を送り、
また限理神・マファーダがこの世界に出現し、
バーレンシア侯爵によって退けられた事は
公開されたが、
未だこの世界に限理神が留まっている事は
上層部だけが知るトップシークレットにされた。
そしてその対応の一切がバーレンシア侯爵に
一任され、
各国とも、マファーダに関しては最優先で
便宜を図るよう……
密約がなされたのであった。
「しょしてフィオナ様。
『アンカー』と今後の事を話し合った
はずでしゅよね?
しょれで良かったのでしゅか?」
ナヴィが女神に思い出したかのように
質問すると、
「ちゃ、ちゃーんとその通りにしたじゃ
ないですか!」
焦りながら女神は答え、
「まあ無難だとは思いますけど―――
正直、敵の総数も居場所もわからないん
ですから」
メイがフォローするように語り……
フィオナはその時の事を回想していた。
―――少女回想中―――
【 おー、勇者様ねえ 】
【 それに邪神ときたか…… 】
【 何か異世界ファンタジーっぽくね? 】
「いえ、ずっと異世界ファンタジーでしたよ?」
『アンカー』陣の言いように、思わず
フィオナは反発するが、
【 いや、それで今後どうしましょうって
言われてもなぁ 】
【 データが少な過ぎます 】
【 まあそちらの侯爵さんが言うように?
あっちも情報収集してるんだろうけどさ 】
相談という事で彼らに話を持っていったのだが、
いつ何をしてくるかわからない相手―――
という事で、『アンカー』たちも対応・対策を
答えられない。
「な、何でもいいんですよっ!
とにかくそれっぽい考えや計画を言って
頂ければ」
【 ぶっちゃけ過ぎw 】
【 とはいえ、何かでお茶を濁しておくか 】
【 まぁ無くはねーけどさぁ 】
一応、策はあるようなので、フィオナはそれに
すがりつくように、
「で、では……!
『アンカー』は今のスレで……700!
聞きたい事は―――
限理神・マファーダの出現に対する
今後の対策!!
―――さあ、アタシを導き給え……!!」
>>700
【 眷属をそれぞれの国に帰らせろ 】
【 何かしてきた土地ではあるし、
見張りも兼ねてって事で 】
―――少女回想終了―――
という事で、
ファジー・ミモザ組
→ルコルアへ
ポーラ・シモン組
→バクシアへ
カガミ
→オリイヴ国へ
と、それぞれの眷属を故郷へ帰らせる事に
なったのである。
「うーみゅ……
しょれにしてもこりぇ、戦力分散に
なったりは」
ナヴィが両腕を組んで考え込むと、
「んー、そこまで深刻にとらえなくても
いいんじゃないかなあ?
これまで通りだったら、各個撃破される
危険もあったけど―――
今は各国の後ろ盾を得た状態だし。
それに眷属のいる場所へは女神様が
転移出来るんだ。
軍や国が派遣している人員で防いでいる間に、
駆け付ける事は可能なはずだよ」
「そっ、そういう事ですよわかりましたか
ナヴィさん?」
侯爵の後にフィオナがドヤ顔で続く。
「……まあ確かに言われてみれば、
しょこまで危ない状態でもないみたい
でしゅね。
しばらく様子見といきましゅか」
そこで話は一段落し―――
アルプの果樹園で作られた果実で、
一息つく事になった。
│ ■バクシア国・首都ブラン │
「ふーん……
奉公労働者の解放に成功したって聞いたけど。
その裏で、主導していた『枠外の者』が一名、
亡くなっている―――
意外と実力行使派なのかもね、その
フィオナとやらは」
限理神・マファーダの部下の一人、テクスは、
フラールを一通り調べた後、バクシアで調査を
行っていた。
『枠外の者』の一人、ザック・ボガッドは……
アルプの母、ソニア救出の際にアルフリーダに
〆られていたが、そこまで彼女には
わからず―――
「テクス、ここにいたの」
「エクシルこそ、どこへ行ってたの。
バクシアを調査していたんじゃなかったの」
裏路地でフードを被りながら、人外の女性二人は
情報を交換し合う。
「勇者認定の儀式だか何かで人が多くて―――
ここは後回しにして、先にルコルアまで足を
伸ばしていたのよ。
そっちは何かわかった?」
「奉公労働者の解放について調べたけど、
都合よく『枠外の者』が一名死んでいるわ。
(■1章14話 ママ最強参照)
もしかすると―――
かなり好戦的なのかも知れないわよ、
あのお嬢さん」
メモらしき紙をひらひらさせてエクスが
答えると、
「じゃあこっちと大差は無さそうね。
ルコルアでの鉱山開発に、大規模な火力兵器が
投入された形跡があるの。
住人たちからは、『雷を呼んだ』と称されて
いるみたい」
(■3章27話
守りたいものがあるんだろ?参照)
エクシルの返しに、テクスは目を丸くし、
「……何それ。
『果樹の豊穣を司る』女神―――
じゃなかったの?」
「軍神ユニシスの娘でもあるのよ?
噂とは言い切れないわ。
とにかくもっと情報を集めましょう。
下手をすると軍隊の規模で対応する必要が
出てくると思う」
二人はお互いにうなずくと……
次の調査対象へ向けて、その姿を闇に溶かした。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在7088名―――
―――10章へ続く―――
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