27・真っすぐな瞳で蔑んでくる貴方も素敵
( ・ω・)タイトルが前回のままだったと
五分前に気付く(終わったと思ったら
何かが残っているタイプ)
日本・とある都心のマンションの一室―――
やや目付きの悪い黒髪セミロングの少女が、
端末に向かって話し合う銀髪の少年の背中を
見つめる。
「はい、はい。
そうでしゅね。出来るだけ急いで頂けりぇば。
よろしくお願いしましゅ」
そこで相手先との会話を終了し、フィオナの方へ
ナヴィは向き直る。
「ど、どうでした?」
「店に注文が殺到していたようで、
15分ほど遅れるそうでしゅ」
「あー、あの店人気あるからなー……
ってそうじゃないんですよ!
限理神・マファーダについて天界市役所に
調べてもらっているんでしょーが!」
女神が言い返すと、従僕はフゥ、と一息ついて、
「そんな事言ってもしょうがないでしゅよ。
あのお2人の討伐記録だけでも膨大なデータに
なるらしくて。
人間でいえばコンビニに行く感覚で、
893の事務所や反社会団体を〆て回って
いたようなものでしゅからね」
「軍神に、時と成長を司る女神だもんね。
どうしてその力を受け継がせてくれなかったの
マイペアレンツ……」
そこでナヴィは首を傾げ、
「え、でも『果樹の豊穣を司る』女神に
なったのは、フィオナ様の志望だったのでは?
しょれより、神様が進路選択制だった事に
私は驚きましゅたが」
(■24話・
もっとちゃんと考えて進路決めようよ参照)
「えーだってー、世界を救うとか魔王を
倒すとかー、そんなの二次元とかなろうだけで
やってりゃいいじゃんって思ってたし」
「言葉の一つ一つにブーメランとフラグ機能が
搭載されておりましゅが、大丈夫でしゅか?
まあいいでしゅ。
そろそろ本編スタートしましゅよ」
│ ■コザイ国・王都高級宿 │
「戻ったよー」
「お疲れ様でしゅ、侯爵様。
栄養ドリンクは足りましゅたか?」
バーレンシア侯爵一行が王宮から帰ってきて、
女神たちと合流する。
侯爵とナヴィのやり取りを聞いて、フィオナは
首を傾げ、
「あり?
いつの間に栄養ドリンク持たせたんですか?」
「調査が長期になると思って、いくつか
持ってきていたんでしゅよ。
交渉とか精神的な疲れも伴いましゅからね。
しょれで、そのまま代表として侯爵様に
渡していたんでしゅ」
すると、頬にクロスの傷のある悪人面の彼は
気弱そうな表情になって、
「ああ、そういえばビンは回収したんだけど、
あれマイヤー伯爵殿たちにも飲ませてみたん
だよね。
大丈夫かな?」
「それなら問題ないでしゅよ。
物的証拠が残るといろいろと面倒な事に
なるだけでしゅので」
それを聞いたシッカ伯爵令嬢やビューワー伯爵、
マルゴットがホッと胸をなでおろす。
「しょれに、あの2人に飲ませたのは
いい判断だと思いましゅ。
神様やフィオナ様に対して懐疑的でしゅた
からね。
まあ仕方の無い事かも知れないんでしゅけど、
ええ、まあ」
「ああ真っすぐな瞳で蔑んでくる貴方も素敵」
いつもの主従のやり取りを、どういう表情をして
見たらいいのかわからない女神一行。
「あの、それで―――
結局王宮での話し合いはどうなったので
しょうか?」
グリーンの短髪をした少年―――
フィオナの第一眷属にして夫(予定)が、
本題を切り出し、
「まあ、そうよね。
そこは出資者として」
「……聞いておかなければ、ならない案件……」
トーリ財閥の姉妹が興味津々で話に割り込み、
「んー、じゃあ説明しておくよ」
バーレンシア侯爵が身軽になろうと上着を
脱ぎ、それをレイシェンが受け取る。
「ではお飲み物を用意いたしますね」
「あ、ではお手伝いします」
そこでネーブルがお茶の準備をしに奥へ、
そしてメイもそれに続き、
「あ、お菓子ならカガミがもう持って
きてるよー」
「食べているだけって言いません? それ」
獣人族の少女のツッコミにマルゴットが答え、
苦笑と共に部屋の空気が和らいだ。
「つまり、要約しますと―――
・今回コザイ国で出現した『邪悪な存在』は、
女神の庇護を受けたバーレンシア侯爵様
一行が退けた。
・連合各国で侯爵様を『勇者』と認定。
今後はどの国も『勇者』として扱い、
協力する事に。
・限理神・マファーダとやらについては、
各国で情報共有し、侯爵様を中心に対応に
あたる事。
・限理神・マファーダの狙いがわからず、
再度の侵攻や襲撃がある可能性については、
下手に民衆に知らせると騒動を引き起こす
恐れがあるため……
その事は上層部のみで止めておき、外に
漏らさない事。
という事でまとまりました」
シルバーの短髪の貴族青年が、司会のように
全員を前に概要を語る。
「おおー、名実共に『勇者』―――
バーレンシア侯爵となるわけですね」
「はいっ!
そして今こそ、レンジ様のお名前が
世界中に轟く時が来たのです!!」
フィオナの言葉に、金髪ロングの女性騎士ふうの
伯爵令嬢が、大きな胸を張り、
望んでないんだけどな……とボソッと語る
侯爵に、周囲はなだめるように取り囲む。
「限理神・マファーダですか……
フィオナ様でもどんな存在かわからないの
ですか?」
アルプが話の方向を変えるよう、女神に
質問する。
「アタシのパパとママの事を知っていた
みたいですし―――
多分、両親が過去に戦い、討伐か封印した
存在だと思います。
どうしてこの世界にいるのか、どうやって
来たのかはわかりませんが」
「今、それについて調べてもらっている
でしゅよ。
何か判明次第、情報共有しましゅので」
女神主従の説明に、全員がうなずいて同意する。
「その時間というのは」
「……どれくらい、かかる……?」
シンデリン・ベルティーユ姉妹が、商人の性と
いうか、締め切りに厳しめな顔になる。
「えーと、あの、結構かかる?
ていうかまあそこはお役所仕事なのでー」
しどろもどろになるフィオナにナヴィが
フォローに入り、
「あのお二人は、それこそ数百を超える世界を
渡り歩いていましゅからね。
記録はありましゅが、恐らく一度倒した相手が
再び、しかも別世界で復活しゅるなんて―――
初めての事態だと思いましゅ」
改めて異常事態だという事を告げるナヴィ。
その言葉に、全員が緊張感を持った顔になる。
「そんなに……」
「何か本格的に、神様の世界に関わる感じが
してきますねー」
アルプとメイが感想を口にすると、みんなが
無言でうなずき―――
話し合いは一段落した。
│ ■コザイ国・王都 │
「もう行かれるのか、女神様」
「はい。
眷属を待たせておりますし、今回の事を
早く知らせないと」
人通りの少ない寂れた裏通りで―――
グレイン国から来た二名、マイヤー伯爵と
ガルディ騎士団長にフィオナを始めとした
一行はあいさつする。
「ここに来た時と同様、また『転移』を
使うのかい?
羨ましいねぇ」
薄桜色の短髪の青年が軽口を叩き、
「まあ、早くいかないとまた注目されて
しまうので……
ではお2人とも、グレイン国への対応は
お任せしましたよ」
バーレンシア侯爵がそう言って頭を下げると、
「では行きます!」
と、女神の掛け声と共に、女神一行は
一瞬で姿を消した。
「……やれやれ。
他の上層部を説得するのに、骨が折れそうだ」
「まあこの目で見ちゃいましたからねえ。
それじゃ、我々も帰るとしましょう」
フィオナたちが姿を消したのを見届けると、
彼らもその足を反転させた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在7040名―――
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