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26・ウン、アタシ悪くない悪くない

( ・ω・)今夜は雨降ったのでまだ涼しい。


日本・とある都心のマンションの一室―――


端末に向かってお互い、思い思いの方を向く、


やや目付きの悪い黒髪セミロングの少女と、

黄色に近い首までの長さの金髪をウルフカットに

した、半人半獣の狐耳の女の子がいた。


「うにゅうううっ!!

 そこから逆転するの!?

 ワーフォックスちゃん激強!」


「んっふっふっ。

 何とかこれで2対2―――

 最後までもつれ込みましたよ」


フィオナが彼女と何かの対戦ゲームを

しているところ、銀髪の少年がお茶とお菓子を

持って登場する。


「そんなに強いんでしゅか、ワーフォックスさん。

 どのようなゲームを」


「いやぁ~、パズルゲームなんだけどね。

 意外と強くってこれが」


その問いにナヴィはワーフォックスの方を

向いて、


「パズルでしゅか。

 何かこうイメージとしましゅては、

 アクションとか強い感じでしゅたけど」


それを聞いた彼女は狐耳をピクピクと動かし、


「そっちも好きですけど、それだと私が

 どうしても有利なようで……」


「鬼の反射神経に操作スピードですからね。

 さすがはビースト、野生―――」


フムフムと二人の会話を聞いていたナヴィは、

そこで改めて端末の画面をのぞき、


「しょれで、こちらはどういうふうに

 強いのでしゅか?」


「ややギャンブル要素のある

 パズルなんだけどねー……

 戦略というかロジックや確率を無視して

 突っ込んでくるというか」


「でも負ける時は一方的に負けますけどね」


そこでナヴィはワーフォックスの方を向いて、


「んー、ちなみにどういうふうに……」


「あ、やって見せますよ。

 フィオナ様、最終戦です!


 ……で、ここで野生のカンで!

 バン!! ビュー!! ドーン!! です!」


すると女神も自分の端末を持って、


「おっとぉアタシだって負けませんよ!

 ふひょおっ! どすこいっ!

 ごっつぁんですっ!!」


「あなたまで同じように返してどうするん

 でしゅか。

 しかも微妙にアレンジを加えて―――


 まあいいでしゅ。

 そろそろ本編スタートしましゅ」




│ ■コザイ国・王都高級宿 │




「フィオナ様は?」


「ナヴィ様と一緒に、今後の事について

 話し合っているそうです」


黒髪黒目の少年の問いに、グリーンの短髪の

少年が答える。


王宮での歓迎パーティーを受けた

『勇者様』御一行は―――

改めて王に謁見するメンバーを除いて、

コザイ国滞在の拠点としている宿屋へと

戻って来ていた。


逆に宿屋から王宮へ呼ばれた者もいる。

ビューワー伯爵の婚約者である、マルゴットだ。


対照的に戻って来たのはネーブルで、

ミイト国有数の財閥の従者とはいえ、平民。

そのため謁見の場に出る事は許されず、

フィオナ、ナヴィと共に宿屋へ帰って来ていた。


「グラノーラさんは伯爵様の妻となる人だから、

 同行は許されたんでしょうけど……」


「……ネーブルお兄ちゃんを出席させなかった

 罪は重い……

 商売でこの国を干乾びせてやる……」


自分の恋人をないがしろにされたと判断した

紫色の長髪にトロンとした目をした姉、そして

自分と同じくらいのストレートの髪の―――

無表情の妹が、不満を露わにする。


「余計なトラブルを起こさないでください。

 シンデリン様、ベルティーユ様」


「でもでもぉ?

 どうしてフィオナ様たちまで戻って来たの?


 バーレンシア侯爵様を勇者と認めたのは、

 女神・フィオナ様でしょ?」


身分・立場でいうのであれば、神様である

フィオナ、そして従僕であるナヴィまで

戻された事に、カガミは首を傾げるが、


「マイヤー伯爵様が止めたようですよ。


 序列下位国が上位国より先に、女神様に

 お目通しされたとなると……

 あとあと厄介な事になるからって」


人間たちはうんうんとうなずくが、赤茶の

ツインテールをした獣人族の少女は、


「めんどくさーい」


火の玉ストレートで感想を述べ、それが

周りの苦笑を誘った。




「う~ん……」


「う~みゅ……」


その頃、宿屋の別室では―――

フィオナとナヴィ主従が同じ表情で、同じ事に

悩んでいた。


「パパやママに聞いても、心当たりありまくりで

 わからない、って言うし」


「まあ確かに、どこぞで封印したり討伐した

 邪神が、転移したり転生したりしていたら、

 把握なんて出来ないでしゅよ」


限理神・マファーダと名乗った神について

聞くため、二人はユニシス、アルフリーダに

連絡を取った。


そして軍神・女神の答えは―――


『ママと一緒に倒しただけでも、ざっと百を

 超えているだろうし』


『パパに会う前、私だけでも結構討伐しまくって

 いたのよねえ。


 そんな昔の事、いちいち覚えていられないって

 ゆーかー?』


事実、フィオナの両親は神としては別格であり、

さらに夫婦神となってからはその力と実績は

天界からも一目置かれるほどで、


だからこそある程度の逸脱いつだつやワガママは、

見逃されていたのである。


「一応、役所に確認してもらってみる、とは

 言われたけどぉ~」


「文字通りお役所仕事でしゅからね。

 時間はかかると思いましゅ」


特にナヴィはルールー家で、役所との折衝せっしょう

一手に引き受けている事もあり……

その情報が届くのは問題解決した後だろうな、

くらいに認識していた。


「まー何かあってもあの2人の責任だし?

 ウン、アタシ悪くない悪くない」


「現実逃避はいいでしゅけど、すでに

 ターゲットになっていると思いましゅよ?


 今後の対応は決めておいた方がいいと

 思いましゅ」


この後、二人の間で話し合いがなされたが、

建設的な意見が出て来る気配は無かった。




│ ■コザイ国・王宮 │




「いやー、緊張したー」


「お疲れ様でした、レンジ」


頬にクロスの傷を持つ一見悪人面の侯爵を、

婚約者のレイシェンがねぎらう。


「しかし良かったのですか?

 『勇者』認定を引き受けて」


「各国にも通達するという流れになって

 おりましたが……」


ビューワー伯爵とマルゴットが、同じカップル同士

相手を気遣い、


「仕方あるまいよ。

 今回の騒動は大き過ぎる。


 下手に隠し立てした方が、痛くも無い腹を

 探られかねん」


「あの人知を超えた存在―――

 限理神・マファーダとやらは未だどこかに

 潜伏しており、


 さらに、明らかに同行していた女神、その

 両親を敵視していた。


 こんな事実を公表してしまえば、

 民衆は動揺ではすまない事になるでしょう」


グレイン国から来た二人、マイヤー伯爵と

ガルディ騎士団長は、肩をすくめて語る。


「ま、そういう意味では僕は、いい隠れみのというか

 話をそらすにはもってこいだしねえ」


「そ、そのような事は」


ブロンドの長髪を持つ彼女が、否定するように

話すが、


「まあ、君に取っても悪い話ではなかろう。


 特に『枠外の者、『新貴族』―――

 双方を敵に回して戦っている侯爵様の事だ。

 各国ともこれで、君に味方が出来る」


「特に弱小国は、この2つの勢力を恐れて

 表立おもてだって行動出来なかったからねえ。


 それが連合国のお墨付きを得て、

 協力出来るようになったんですから」


グレイン国の伯爵と騎士団長の説明に、

侯爵はぽりぽりと頬をかく。


「とにかく、いったん宿屋へ戻りましょう。

 女神・フィオナ様が何らかの策を打ち出して

 くれているかも」


「そ、そうですよ。

 女神様に関係しているのは事実みたいですし、

 あの方から今後の方針を伺いましょう」


白銀の短髪の青年貴族は戻る事を提案し、

その恋人である真っ赤な長髪を持った彼女は、

ふと手持ちのバッグに手を付ける。


その手には、地球の栄養ドリンクが握られていて、


「どうぞ、侯爵様。

 ナヴィ様が念のためにと、持たせてくれた

 物です」


「うわ、すっごく有難い!

 頂きます!」


彼はそれを受け取ると、慣れた手付きで

フタを開け、腰を片手にゴクゴクと飲み始める。


「……それは?」


初めて見る物を前に、筋肉質のアラフィフの

伯爵と、長身のピンクに似た白い短髪を持つ

騎士団長が興味深そうに視線を向け、


「女神様から頂いたポーションです。

 お一つどうですか?」


二人は顔を見合わせ、やがてそれぞれが

手を伸ばし、


「……ねじって開けるのか。

 甘い匂いがするが」


「女神様の、ねえ。

 これはご利益がありそうだ」


そして口に含んだ彼らは、目をカッと

見開き、


「何だ、これは……!

 飲んだ端から効いてくるような」


「はは、これが女神のポーションですか!


 これはますます、神様というのを信じない

 わけにはいきません!」


グレイン国の二人は身を以て栄養ドリンクの

効果を確かめ―――

より協力する意思を固めた。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在7017名―――



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

基本、土曜日の午前1時更新です。

休日のお供にどうぞ。


みなさまのブックマーク・評価・感想を

お待ちしております。

それが何よりのモチベーションアップとなります。


(;・∀・)カクヨムでも書いています。

こちらもよろしくお願いします。


【ゲーセンダンジョン繁盛記】

https://kakuyomu.jp/works/16817330649291247894

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