25・なぜにどうしてアタシは放置気味?
( ・ω・)ミモザとファジーはミイト国滞在で
良かったんだよな……(把握能力の欠如)
日本・とある都心のマンションの一室―――
黒髪セミロングの少女の目付きの悪い少女と、
同居人に短い銀髪の少年が対峙する。
「むぐむぐ。
邪神ちゃんのお土産美味しいですねぇ。
手作りだって、このお菓子」
「本当にそうでしゅねえ。
身元というか経歴は非常識なんでしゅけど、
こういう人付き合いというか……
礼儀や日常に関しては常識人なんしゅよね、
あの人たち」
人外娘五人衆の事を思い出しながら、
二人はティータイムに耽る。
「でもあれだけ派手で見た目が非常識なコが
一気に5人も増えた時にはねー。
ほらアタシってキャラ薄いし、ちょっと
焦っちゃったりしたものよ。
あれだけインパクトが濃いコたちが来ると
やっぱりー」
女神・フィオナが淡々と語ると、従僕である
ナヴィは飲食をいったん止め、
「『ほらアタシってキャラ薄いし』―――
笑えましぇんから」
「笑えよ」
真顔のナヴィに超笑顔で答えるフィオナ。
「まぁそれはそれとして……
あのコたち以外、人外娘が増える可能性って
無いわよね?」
「そりぇを私に言われましゅても。
何ででしゅか?」
再びティータイムを開始した二人は、世間話に
興じる。
「だってあのコたち、あなたが連れて来たような
ものじゃないの」
「ありぇは勝手に懐かりぇたというか、
ターゲットになったというか―――
でもあれだけ濃いメンバーはそうそう
来ないと思うでしゅよ。
邪神サキュバス堕天使悪霊ワーフォックスって」
そこでお互いにウンウンとうなずき合い、
「字面にすると改めてすごいメンバーね。
でもこれ以上はアタシの影が薄くなっちゃうし、
ホント気をつけないと」
「笑えましぇんから」
「笑えよ」
真顔のナヴィにフィオナは再び超笑顔で答え、
「はあ、まあ茶番はここまでにしましょう。
そろそろ本編スタートしましゅね」
│ ■コザイ国・王宮 │
「勇者殿!!
いや、バーレンシア侯爵殿……!
よくぞ邪神を退けてくださった!
貴殿こそ伝説の勇者―――」
遺跡から石像を消滅し、また崩落して穴が開いた
事は、その日のうちにコザイ国王都に伝わり、
伝承の『勇者』とされたバーレンシア侯爵と、
その一行は王宮に招かれ、歓待を受けていた。
「ははは、いやあの?
僕、何もしていないんだけど……」
頬にクロスの傷のある侯爵は、やや引きつった
笑顔でしゃべろうとするが、
「今はやめておいた方がいい、侯爵殿。
突然王都に現れた時の出来事も相まって、
この国の誰もが侯爵殿を勇者と疑って
いない」
「下手に誤解を取ろうとすると、却って
混乱しちゃうと思うねぇ。
落ち着くのを待って、事情を話した方が
いいんじゃない?」
グレイン国から来た、マイヤー伯爵と
ガルディ騎士団長が横から忠告する。
「あの遺跡から上空へと何かが舞い上がったのは、
王都からでも見えたらしいですから。
『勇者様』と見られているのでしたら、
むしろその後の対応を聞いてもらえるかと」
彼の婚約者であるレイシェンも、二人に
同調して静観する事を促す。
「まあ仕方ないかー……
でも、どう考えてもフィオナ様所縁の
ものっぽかったけど―――
それも踏まえて後で相談、かなあ」
達観したようにため息をつくと、侯爵は方々から
賞賛と質問を受け入れる事を覚悟した。
「んむむむむむ~……
なぜにどうしてアタシは放置気味?」
侯爵を囲む人だかりを見て、複雑な表情の
女神が一人。
「まぁそれはしょうがないといいましゅか……
現に何もしていないわけでしゅし、そもそも
相手もこっちを信じないでどこかへ消えて
しまいましゅたし」
その隣りで、ナヴィが現実と状況を語る。
「何つーか、最後の最後まで相手にされて
いなかった感じ?
もしくは現実逃避というか―――」
パーティーで出された料理を頬張りながら、
フィオナと同じ夫を持つメイも続く。
そしてその夫はというと、
「あ、あのうフィオナ様、メイさん。
何も2人で両側から腕を組まなくても」
グリーンの短髪の少年が正装に身を包み、
二人の妻(予定)に挟まれるようにして
両腕にしがみつかれていた。
「……ていうかカガミしゃん?
どうして貴女も私にしがみつくんでしゅか?」
彼の言う通り、赤茶のツインテールの獣人族の
少女が、片腕に抱き着くようにしていて、
「いやいや甘いのですよー。
今を時めく勇者様御一行! ですよ?
フリーの男なんて良いターゲットです。
ほら、アレ」
と、彼女の視線の先を見ると―――
「ん? あれはビューワー伯爵さんと
マルゴットさん?
しょれにネーブルさんに、トーリ財閥の
姉妹も」
銀髪の貴族青年は、赤髪の勝ち気な強さの
目をした女性が、
黒髪黒目の少年は……
お揃いのバイオレットヘアーの姉妹が、
まるで周囲からガードするような動きで
女性を寄せ付けないでいた。
「何ていうか―――
ナワバリに入って来た相手を威嚇する
鮎のような動き」
「例えがあまりにも具体的過ぎるんですが」
その光景に対し主従は言葉を交わしていたが、
「あれ?
でも、男性って……
マイヤー伯爵様とガルディ騎士団長様は」
「あっ」
アルプの言葉に、メイを始め女性陣はそちらへと
目をやると―――
「いや、落ち着かれよ。
そういう話はパーティーの後で」
「独身は独身ですけどね?
ちょっとまだ身を固めるのは早いって
いうかー?」
見ると、アラフォーの筋肉質の男性と、
薄桜色の短髪をした長身の男性が、
女性たちの相手に四苦八苦していた。
「……はあ、まいった。
王族相手の交渉より疲れたわい」
「あの女性のパワーは目を見張るものが
ありますねぇ」
パーティーが一段落した後、グレイン国の二名は
ぐったりとソファに腰をかける。
「意外ですわね。
あっさりとかわすか、遠回しに断るかと
思ったのですが」
マイヤー伯爵の元婚約者である、金髪ロングの
女性が目を丸くして驚く。
「めでたい席で、そんな野暮な真似は
せんよ」
「それに女性相手だと何かこう、使う力が
違うって言いますか」
騎士団長も軽口の中にため息をつき、
その体を休める。
「ま、まあ―――
おかげで僕たちは助かりましたよ」
バーレンシア侯爵が頭をペコリと下げ、
「しょれで、これからどうなりましゅ?」
ナヴィが今後について話を切り出すと、
フラールの伯爵が、
「王を交えて、詳細を話す事になるでしょうね。
ただ今回のようなお祝いの席とは異なり、
出席出来る者は限られるかと」
言外に、貴族以外は出られないだろうと
ビューワー伯爵は告げる。
「じゃあそれまでに、情報はまとめておかないと
いけないわけだけど」
「……私たちも……
詳しい事は……聞いていない……」
シンデリンとベルティーユ姉妹が、
ネーブルを挟んで意見を出し、
「とはいえ、あの場にいた私たちも
何が何だか」
と、トーリ財閥の従者の少年が、
フィオナとナヴィに視線を向ける。
「んんん~……
パパとママに関わっているっぽいのは
確かなんですけど」
「勝手に勘違いして勝手にどこかへ
行ってしまいましゅたから。
限理神・マファーダと名乗っていましゅたし、
確認すれば何かわかるかも知れないでしゅ」
そこでマイヤー伯爵はうなずいた後、
「確かなのは、危機が去ったわけではないと
いう事だな?
女神・フィオナ様。
それにナヴィ殿―――
早急な確認をお願いしたい」
そう言って頭を下げる伯爵に一同驚き、
「フィオナ様が女神と、認めるのですか?」
最も驚いていたのはレイシェンで、
彼女はそれを問い質すが、
「あれだけ自分の常識外の事が次々と起きては、
認めるも認めないも無い。
この目で見た事は事実。
ならば、それを無視して行動は出来ん」
「さすがに当事者ですしねぇ。
それに、あの時感じた力はどう考えても
人知を超えたもの。
というわけでよろしくお願いしますよ、
女神さま♪」
まるでお手上げのように両手を挙げ、
それでも軽口のガルディに―――
周囲は苦笑で答えた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在7007名―――
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