24・もっとちゃんと考えて進路決めようよ
( ・ω・)現実逃避は基本( いろいろと )
日本・とある都心のマンションの一室―――
天使のような、それでいて黒い羽を持った少女と、
髪ロングのポニーテールで、和装に身を包んだ
少女が手持ちの端末に視線を落とす。
さらに家主のやや目付きの悪い少女が、
一緒になって―――
「うおぉおお!!
怖い! 悪霊ちゃんマジ怖ぇ!!」
「本気で追いかけ方というか追い詰め方が……!
ただのゲーム画面なのに本気で寒気が」
フィオナと堕天使が焦りまくり、そして
名指しされた悪霊は―――
「待~てえぇえええ~……」
複数の人間を一人が追いかけて倒す系のゲームで、
追う側となった彼女は女神と堕天使を追い詰める。
「ヤバい捕まった!
お願い話し合おう暴力は止めましょう!」
「いやこの手のゲームで世界初の試みをしないで。
捕まってもまだ助かる可能性が―――」
そして三人はゲームを堪能し、
「いやー悪霊ちゃんの迫力はすごかった!」
「やっぱり本職っていうかー」
フィオナと堕天使は一息つき、
「……本職ゆーな。
まあでも、久しぶりで楽しかったです……
はい……」
ロングの黒髪を後ろでポニーテールにまとめた、
和服の少女は微笑む。
「いやーしかし何ですね。
最近はキャラとか服装とかいろいろ変えられる
そうですから……
追いかける側がイケメンとかならすごく
面白そうになるんですけどね」
「いや、それなら我、絶対逃げませんけど。
むしろこっちから行くぞって感じで」
女神と堕天使は意見を交わし、
「……それなら……
逃げる方のキャラをイケメン・美少年に
するとか……」
「「それだ!!」」
悪霊の意見に他二名が即座に賛同し、
「久しぶりにまともなゲームやっていりゅと
思えば、この人たちは……」
そこへシルバーの短髪の、従者であり
お目付け役(人間Ver)の少年が
飲み物とお茶菓子を持って現れ、
「いやあやっぱり狩りとか逃げるとかいうのは、
本能を刺激しましてですねゲヘゲヘゲヘ。
あ、そういえばナヴィって半人半獣にも
なれるんでしたっけ。
そしたら追いかけてくる時はそれで、
襲ってくる時だけ人間に戻るというのは?」
「えー!?
それは魅力半減ですよフィオナ様!」
「……わたくしはどちらでも……!」
女神の言葉に、堕天使と悪霊も参戦し、
「また面倒なところに飛び火したでしゅね。
そろそろ本編スタートしましゅよ」
│ ■コザイ国・某所遺跡 │
『えっ』
「えっ」
しばしの問答の後、邪悪な石像と女神は同時に
声を上げ、
『ちょっとお伺いしますが、あなたの
父親のお名前は?』
「軍神ユニシス!
ユニシス・ルールーですっ!!」
フィオナは元気いっぱいに答え、
『で、では……
母親のお名前は』
「アルフリーダ・ルールー。
時と成長を司る女神ですっ!!」
『…………』
そこで石像は悩むように沈黙し、少し間を
置いた後、
『それでお嬢さんは……』
「果樹の豊穣を司る優しき女神っ!
フィオナ・ルールーですっ!!」
石像は困ったように視線を彼女の従僕、
ナヴィに向けるが、
『この少女のお父さんは軍神ユニシス……
で合ってます?』
「はい。
その通りでしゅ」
『そしてお母さんはアルフリーダと』
「間違いないでしゅ」
石像はまた黙り込み、それを見ていた
マイヤー伯爵とガルディ騎士団長は困惑しながら
周囲に問う。
「何だ?
あの少女が女神で、さらに両親もまた神だと?」
「まあ神様の子供が神なのはわかりますが、
それでどうしてあの石像は悩んでいるんです?」
その質問に―――
バーレンシア侯爵にシッカ伯爵令嬢、
ビューワー伯爵・ネーブルも答えられず……
『……その少女が果樹の豊穣の女神と言ったが、
合ってる?』
「はい。
軍神と時と成長を司る女神の間に生まれた、
フィオナ・ルールーでしゅ」
『いや何で?
それだけ強力な両親の間に生まれて、
何で能力が果実系?』
「いや、ええ。
言いたい事は多々あるでしょうが、
この人は正真正銘、あの2人の血を引く
女神でしゅ。
本当に世の中っておかしいでしゅよね?」
そこでフィオナが話に割り込み、
「ちょっと!
アタシだって好きで柑橘類生産目指してた
わけじゃないんですよ!
ただ神様の修行の過程でいろいろと、
進路に詰まったといいますか」
『ダメじゃないの!
もっとちゃんと考えて進路決めようよ!』
「アタシだって神様やるの初めてだったから、
仕方ないじゃないですかー!!
ていうかあの時決まらなかったら、また
最初から100年くらい修行だって言われて
たんですー!!
ヤダー! そんなの絶対ヤダー!!」
周囲が困惑しながら、石像を女神のやり取りを
見守る。
『ハァハァ……
い、いや待て……
ユニシスにアルフリーダ、2人が偶然
たまたま同じ名前だという可能性も―――』
「今度は現実逃避にシフトし始めましゅたね。
残念でしゅが、軍神と時と成長を司る女神……
このお2人がユニシス様とアルフリーダ様と
いうのは、天界が保証しましゅよ」
『…………』
この日、石像の何度かの沈黙が訪れた後、
グレイン国と女神の一行は固唾を飲んで
状況の進展に注目していたが、
『……よし、わかった。
で、オチはまだか?』
「どりぇだけ信じたくないんでしゅか。
気持ちはわからなくもないでしゅけど」
あくまでも認められない石像と、容赦なく
切り返すナヴィの間で問答は続けられ、
『なるほど、なるほど……
この限理神・マファーダ。
自分を封印せし神々の気配を見紛うはずも無し。
つまり……
何だ、これは夢か』
「絶対認めたくないという気持ちがひしひしと
伝わってきましゅ。
ここまでくるともう何ていうか」
呆れた表情で返すナヴィに、
『ええいうるさい!!
封印されてより幾度も別世界、別次元へ
転生を繰り返してきたのだ!!
そこでようやくつかんだあの神どもの
手掛かり!!
ここで無駄な時間を費やしている暇は無い!!
ではさらばだ……!!』
そこで地響きのような振動が遺跡内に響き―――
やがて地震のように立っていられなくなるまで
激しくなると、
「……!
皆、注意して!」
「何かにつかまって―――」
侯爵とレイシェンが互いにかばい合うように
抱き合い、
「フィオナ様!!」
「メイさん!!」
ビューワー伯爵がフィオナを、ネーブルが
メイを抱きしめるようにして、
そしてマイヤーとガルディは激しい振動の中、
それでも剣の構えを崩さず直立し、
時間にしてそれは三十秒も無かったが―――
やがて収まると、
「……光?」
「天井まで穴が……
いや、待ってください。
あの石像が……!」
グレイン国から来た二人が、目の前の光景に
愕然とする。
そこには、先ほどまであった石像は無く―――
遺跡上部で崩壊して出来たであろう穴から、
光が差し込んで、
「あり!?
あの石像がいませんよ?」
「ほ、本当です……
どこかに行ったんでしょうか?」
フィオナとメイがそれぞれ口を開くと、
ナヴィも周囲を見渡し、
「…………
ひとまず出ましょうか。
遺跡の外の人たちも心配して
いるでしょうし」
彼の発言に、誰からともなくうなずき―――
一行はその場を後にした。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6991名―――
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