14・相談先は
ひっそりと1万PV突破。
ありがとうございます。
日本、とある都心部のマンションの一室。
そこに住む女神・フィオナと
お目付け役兼サポート役の猫・ナヴィが
冷蔵庫の中をのぞいていた。
「ずいぶんと食材が多いみたいですが―――
どうしてこう無計画に物を買うんですか。
今日明日食べる分だけで十分でしょう?」
「えっと、その……
最近、練習しているんです。
この前、アルプの料理を食べてみて―――
やっぱり自分も料理の1つも出来た方が
いいかなって。
いずれ弟夫になる彼にも食べさせて
あげたいし」
ちゃんとした目的があると聞いたお目付け役は、
女神に向かって頭を下げた。
「向上心があるのはいい事です。
先ほどのは失言でした、謝ります。
それで、どのような物を作っているんですか?」
「あ! えっとね、実はすでに作ったのが
あるんですけど―――
味見も兼ねて、食べてもらえます?」
「それは構いませんが―――
フィオナ様の事を信じていない訳ですが、
ご自分で味見はされましたか?」
「ドストレートに言ってくれますね。
まあ確かに試食はまだですけど」
「では半分ほど食べてみてください。
残り半分を私が頂きましょう」
「じゃあその前に人間の姿になってね。
ではまず、アタシから―――」
パク。
「ぐはぁ!? げはっ!? ごふばあっ!!
ごぶっ、ぐぷばあっ!!」
自分の料理を口にした後、女神フィオナは
1分ほど床をのたうち回った。
手足をビクビクと引きつらせた後、呼吸を
整えながらゆっくりと起き上がる。
「さ、さあ……
どうぞ……食べてみて」
「え? 何でそうなるの?
そんな展開じゃなかったよね?
決して絶対に断じてそんな展開じゃ
なかったですよね?」
「し、仕方ありませんね。
でも捨てるのももったいないし……
冷蔵庫にまたしまっておきますか」
「ちゃんと『食べるな危険』って
メモしておいてくださいね。
では、そろそろ本編入ります」
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家・食卓 │
ところ変わって、アルプの家―――
そこで侵入者の2人は、旧知の人物と
相対していた。
「……裏切り者?」
「違うのか?
伝書バトが来なかったら、そうだと見なして
行動を起こせ―――
それが俺たちが受けた依頼だ」
「あー、それがラムキュールさんとやらが
言っていた事ですか」
「しょの行動とは? フィオナ様」
ファジーの顔に一瞬視線を向けると、またすぐに
元に戻す。
「んー……今ちょっとココでは」
「言っとくけどな、アタイはちゃんと依頼は
果たしたし、ラムキュールに話はつけて
来たんだぞ」
「とはいえなあ……」
「俺たちだって仕事だし。
明日のご飯のためには働かなければ」
「相変わらず貧乏なんだね……
まあ人の事は言えないんだけどさ」
ポリポリと頬をかきつつ、ミモザは苦笑し、
それにつられるようにソルトとトニックも
口元をゆがめた。
「しょもしょも、この2人とはどういう関係
なのでしゅか?」
「腐れ縁って言ってましたよね。
ファジー君は知ってる?」
女神とお目付け役の質問に、ふるふる、と
ファジーは首を左右に振った。
「そりゃファジーは知らないさ。
アタイがこの世界―――情報屋をやり始めた時の
仲間だったからね。
でも―――こんな『汚れ仕事』をするような
人間じゃ無かったはずだぜ」
「まあ、正直なところ見張りだけで済むと
思ってたからな。
俺たちも見通しが甘かった」
「……アンタたち、
今までもこんな『仕事』を?」
眉間にシワを寄せて、ミモザが問い詰める。
その視線から逃れるように、トニックが
顔を背けた。
「さすがにこんな危ない橋を渡ったのは
今回が初めてだ。
依頼料もそれなりに高かったしな」
「ま、潮時ってヤツかねえ。
煮るなり焼くなり役人に突き出すなり、
好きにしてくれ」
旧知のミモザが来た事で観念したのか、
半ばヤケ気味にソルトが返す。
「依頼―――察するにラムキュールさんから
でしょうが、断る事は出来ないんですか?
ミモザさんみたいに」
フィオナの問いに、2人は投げヤリな態度で
応える。
「どうやってミモザは断ったのか知らねーが、
すでに前金もらっちまっているし」
「依頼料は金貨10枚で、違約金は
その10倍だ。
逆立ちしたって払える額じゃねえよ」
「じゅっ!?」
話を聞いていたファジーが思わず叫ぶ。
「ほれ、ココに金貨100枚あるじゃろ?」
「「ひゃくっ!?」」
フィオナが机の上に置いた袋を見て、
今度はソルトとトニック、2人が驚きの
声を上げる。
「ちょ……っ、い、いいのかい!?」
「アルプから、この金貨の使い道については
一任されておりますし―――
問題無いと思いますよ?」
あまりの展開に呆気に取られる2人と、
そして姉弟。
女神とお目付け役は当然というようにその光景を
対照的に流していた。
「なあ、ミモザ―――
何者なんだ、この人たちは」
「―――神様と、その使いだよ」
―――ミモザ説明中―――
「……マジか」
「こりゃ、何とかなるかも知れないな」
フィオナはともかく、ナヴィの実力を目の当たりに
している2人は、ミモザの説明を素直に飲み込んだ。
「??
違約金は片付きましゅたし、
他に何か問題でも?」
「依頼人、ラムキュールの旦那の事さ。
俺たちへの依頼を見てわかるように―――
一筋縄ではいかない相手って事はわかるだろ」
「それに、俺たちへの依頼は犯罪スレスレ
どころじゃないんだ。
この『弱み』を握られている以上、
安心は出来ない」
「ったく。
身の程をわきまえない依頼なんか
受けるから―――」
「まあまあ。
今は彼らをどうやって『枠外の者』と
手を切れさせるか、それを考えませんと」
「とはいえなあ……
あまり時間もねーぞ?
アイツだってバカじゃない、コイツラから
いつまで経っても連絡が無ければ、すぐに
次の手を打ってくるだろ」
みんながめいめいに考え込むのを前に、
ナヴィが女神に提案する。
「うみゅ……
また『アンカー』に頼るのはどうでしゅか?」
「え” でもそれは」
「きちんと条件付きでならば大丈夫だと
思いましゅよ?
今回は―――
『相談する人』を決めましょう」
「相談する先は―――
アルプ、バートレットさん、マルゴットさん、
ローン・ボガッドさん、あと……」
「一応、2人までと決めておきましゅか。
それと―――その、ラムキュールとやらも
除外で」
「では、今回の質問は―――
『枠外の者と手を切る、その相談先』……
「『アンカー』、指定は新スレ400と410!
―――さあ、アタシを導き給ええぇえっ!!」
>>400
【 1:バートレット 】
「あの貴族さんですか。
まあ無難なところでしゅね」
「さて、2人目は―――」
>>410
【 2:バーレンシア侯爵 】
「ん?」
「お?」
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在1256名―――