14・だってアタシなら絶対そうするから
( ・ω・)暖かくなると代謝が上がる
(そしてトイレが近くなる)
日本・とある都心のマンションの一室―――
やや目付きの悪い少女と、コスプレのような
コウモリの翼と小悪魔のシッポを付けた……
ワンカールロングの少女が向かい合って座る。
「いやー、暖かくなってきましたね。
サキュバスちゃん」
「日中とか、暑い時があるくらいですから。
ウチのメイド喫茶、冷房つけ始めましたもん。
いやー文明の利器ってやっぱいいですわー」
女神と人外が、互いの近況について話し合う。
「あり?
以前、電気代が上がり過ぎって―――
そういうのナシになっていたんじゃ
ありませんでしたっけ?」
「あ、それは暖房です。
冷房は汗かいちゃうとお化粧くずれちゃったり
するので……
さすがにそれは必要という判断で」
そこへお目付け役の少年、ナヴィがお茶を持って
入室して来て、
「お仕事大変でしゅね、サキュバスさん。
それに引き換えどこかの女神と来たら……」
「登場と同時にディスりに入るとは、
また腕を上げたようねナヴィ」
主従のやり取りを見て、ブラウンの髪の少女が
口を開き、
「フィオナさんは別にお仕事がありますから、
地球では無理に何かする事も」
「そっそうですよねサキュバスちゃん!
そう! アタシには異世界での崇高な使命が
あるのでございますよ!
だからここにいるのは単なる息抜き!
休息と充電期間でもあるのです!」
ガッツポーズを決める女神に、銀髪の従者は
ため息をついて、
「そうでしゅねえ。
そもそも働くとしましゅても、4年以上も
充電していましゅので……
履歴書の経歴的にも厳しいかと」
それを聞いたサキュバスは少し表情を固くし、
「えっ?
あー……う、ウン。
だ、大丈夫ですよフィオナさん。
ウチに来る子もスゴい経歴の方いますし
(個人の感想です)」
「そこだけ妙に現実的にならないでください!
ああもうっ!
それじゃ本編スタートしますね!」
│ ■ミイト国・首都ポルト │
│ ■シンデリン(トーリ)家屋敷 │
「はあ、なるほど。
それで私もコザイ国へと―――
そういう事なんですね?」
黒髪黒目の、執事風の衣装の少年は、
主人である姉妹の背後で受け答えする。
「しょれをまず話すように伝えておいた
はずなんでしゅが」
「あれ? そーだっけ?」
銀髪の女神の従僕が語ると、赤茶のツインテールの
獣人族の少女がキョトンとして答える。
「まあ、お話はわかりました」
「……ん……
でもネーブルお兄ちゃんが行くなら……
当然、私たちも行く……」
屋敷の主人で、トーリ財閥の姉妹である―――
シンデリン・ベルティーユ姉妹がうなずき、
「ええと……
僕は別に構わないと思うけど……」
「フィオナ様?
あの、まだ回復しないでしょうか?」
バーレンシア侯爵に、婚約者でるシッカ伯爵令嬢が
心配そうに女神の方向に視線を送る。
そこには一人―――
ソファに体を預けるグロッキー状態の
女神がおり、
「あ~……
結構大人数の移動になったのでぇ~……
まぁでも大丈夫かと。
ファジーとミモザさんはこの屋敷に
置いて頂ければ」
そこに名指しされた、共に同じブラウンの
髪を持つ姉弟が頭を下げる。
「も、申し訳ございませんフィオナ様っ」
「とはいえ、ファジーは必要だったんだろ?
『眷属のいる場所へ転移出来る』だっけ。
そのために来たんだから」
そこで白銀の短髪の伯爵と、恋人の真っ赤な
長髪を持つ豪商の娘も話に加わり、
「フラールにアルプ君、バクシアにポーラさん、
そしてミイト国にファジー君を配置する事で、
三国間の転移が可能になったんですよね?」
「最後にカガミさんをコザイ国へ先行して
もらえれば―――
四ヶ国の移動が瞬時に……
ま、まあフィオナ様の体力次第ですけど」
二人の説明通り、今トーリ財閥の屋敷には……
ナヴィを始めとして、
バーレンシア侯爵とシッカ伯爵令嬢、
ビューワー伯爵とマルゴット令嬢、
ファジー・ミモザ姉弟、そしてメイと……
女神一人で先行していたカガミを除く、
計8人を連れて転移してきていた。
「ていうかフィオナ様や?
わたくしまでミイト国に移動する理由は
なかったのでは? では?」
第三眷属の妹が不満を露わにするが、
「ふざくんな。
どーしてアナタ1人、アルプの側に
置いてこなきゃいけないのよ。
どうせ置いてきたら薬も使って、
あんな事やこんな事を企んでいたに
決まっていますよ。
だってアタシなら絶対そうするから」
「おうよくわかっているじゃございませんかぁ。
せっかくわたくし1人いろいろと堪能しようと
思っていた矢先に」
それを周囲はどんな表情で見たらいいのか
わからず、困惑していたが、
「とにかく!
『アンカー』に指定されたメンバーは
揃えられたでしゅよ。
バーレンシア侯爵様、ビューワー伯爵様、
シッカ伯爵令嬢―――
それにネーブルしゃん。
このメンバーを中心にコザイ国の遺跡に
向かう、こりぇが今の目的でしゅから」
ナヴィの一言で話が強引にまとめられ、
「と、とにかく……
アタシの体力が回復するまでちょっと
お時間をば。
それまではみなさん、各自準備をお願い
してもよろしくて?」
そこでパープルの長髪にトロンとした
目付きの姉、そして自分と同じくらいの
ストレートの髪の―――
日本人形のような表情の妹が、
「そうですね……」
「……私たちは、フィオナ様のお世話を
させて頂きますけど……
男性陣の方々は……?」
その言葉に、頬にクロスの傷のある―――
青みがかった短髪の侯爵と、
年相応には見えない、若々しい外見の
伯爵青年が立ちあがる。
「待っている間に腕がなまっても
いけないしねえ、バートレット君」
「一手、お相手願いましょうか。
レンジさん」
二人の後に、メンバーの一人である少年も
続いて、
「じゃあ私も、出来ればお願いします。
そういえばナヴィさんは―――
あの軍神の方から、何か学んでは
おられないのでしょうか」
「んー、それなりに教えてもらっては
いましゅよ?
いい機会でしゅから、やってみましゅか?」
「ぜ、是非!!」
深々と女神の従僕に頭を下げる、
トーリ財閥の従者兼護衛。
「わたくしも後でお邪魔するわね、
ネーブル君」
レイシェンが彼にあいさつし、
ネーブルも一礼するとナヴィと共に部屋を
後にする。
すると部屋に残っている男性は、
第二眷属の少年・ファジーだけとなり、
「あー……
どうする、ファジー?
少し休むか?」
大勢の女性の中で一人だけ異性というのは
恥ずかしかったのか、姉の助け船に弟は
しがみつく。
「あ、う、ウン。
でもミモザ姉はお話があるだろうから、
残ってて。
ボクは1人でも大丈夫だから―――」
そこでシンデリンが片手を挙げて、
「じゃあお部屋まで案内するから、
そこで休んでいるといいわ」
「……ん……
トイレもお風呂も揃っている部屋だから、
……大丈夫……」
その説明に彼は驚くも、姉と財閥の娘、
二人に抱えられるようにして部屋を出て―――
そしてすぐに女性だけが部屋に帰ってきた。
女性陣だけになった部屋の中……
まず彼女たちは周囲を見渡し、
その後忍者のように各方向の壁に耳を付け、
それぞれが無言でうなずき返すと、
「レイシェンさん、どうです?」
唯一、ソファに横たわっていたフィオナが問う。
「大丈夫です。
周囲に気配は……ありません。
聞かれる心配はまずないかと」
その答えに、女性陣は色めき立ち―――
「それじゃあそれじゃあ、あのお薬の成果を
聞かせてもらえるかなっ?」
カガミが真っ先に口を開き、
「ではネーブルの―――
どっちから説明しましょうか」
「……うつ伏せに押し倒すモードのお兄ちゃんと、
子犬のように甘えて来るモードのお兄ちゃん……
どちらから先に聞く……?」
それを皮切りに室内の温度は一気に上がり―――
異様な興奮と熱気に包まれた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6856名―――
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