12・あけましておめでとうございます(棒
( ・ω・)会社がエアコンをガンガン効かせて
くれるので、返って冬物が手放せない。
日本・とある都心のマンションの一室―――
黒髪セミロングにやや目付きの悪い少女と、
同じ黒の長髪をワンレングスにした少女が……
隣り合って何かを拝むように上半身を上下させる。
「ぜひとも、今度こそアタシの推しを……!」
「ワタクシの想い人をぉおおお……!!」
二人の前には祭壇らしき物があり―――
そこへ向かって狂信とも呼ぶべき願いを
投げかける。
「フィオナ様に邪神さん……
2人して何をしようとしているんでしゅかね?
ていうかマンションの中にこんな物を
作られても困るのでしゅが。
いったいこれは何でしゅか?」
そこへ、シルバーの短髪をした、中性的な
顔立ちの少年が姿を現すと同時にツッコミを
入れる。
「これは、アタシたちの願望を達成するための
触媒にして媒体……」
「この祭壇の力で、ワタクシたちの希望を
呼び寄せるのです……」
少女たちの回答を聞いたナヴィはため息をつき、
恐らくは邪神ベースであろうその祭壇を見て、
「それで、これでいったい何を?
まるで何かを召喚でもするような―――」
その問いにフィオナと邪神は顔の前で
握りこぶしを作り、
「次のガチャで、アタシたちの推しキャラが
来るよう祈っております!」
「これもある意味召喚……!」
その答えに、ナヴィは事も無げにうなずき、
「わざわざそんな事で、こんな大仰なものを……
まあどうでもいいでしゅけど、終わったら
片付けてくだしゃいね」
「あ、すぐ終わるから大丈夫よ」
「それじゃ祈りも捧げましたしやってみましょう。
せーの……」
彼女たちが自分の端末を操作し始め、やがて
結果が出たのか祭壇の方へ近づく。
するとフィオナは掲げられたロウソクを手に取って
へし折り、邪神は土台に蹴りを入れ、
「えー何この結果。
しかもダブリが複数って舐めてるの?」
「しょせんは精神的なものですか。
まったく、ちょっとは時代についてきなさいよ」
その対応を見たお目付け役の少年は、
「手の平返しが光の速さでしゅね。
あと邪神さん、貴女はその祭壇で崇められる
方では……
まあいいや。
もう本編スタートしましょう」
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
「ふぃいいい~……」
第一眷属の家、その食堂エリアで、女神が
上半身をテーブルに投げ出し、
「だ、大丈夫ですかフィオナ様?」
「とりあえず飲み物を―――」
眷属である少年二人、アルプとファジーが
彼女を両側から介抱するように起こす。
「定期的な情報共有ですが、今回はナヴィ様と
カガミさんが持ってきたものもありましたから」
「それに最近のフィオナ様は、その、いろいろと
お忙しかったと聞いておりますので」
同じフラール国出身の、ビューワー伯爵と
その妻(予定)のマルゴットが気遣う言葉をかけ、
「しかし、大々的にグレイン国が調査に入るって
事は、やっぱり何かあるんだろうねえ」
「あの人……
マイヤー伯爵は無駄な行動はしません。
何か目的あってか―――
それとも脅威となり得る何かがあったのかと
推測出来ます」
次いでバクシア代官であるバーレンシア侯爵、
そして婚約者のシッカ伯爵令嬢が、定期連絡の
内容を補足する。
今回はバクシアにいるボガッド家とシモンに、
眷属であるポーラを通じて神託を行ったのだが、
ナヴィ・カガミ組が調べてきた情報が加わり、
それらに対する考察もなされ、神託が長時間に
渡って継続。
結果として、グロッキーな女神が一人
出来上がったのであった。
「いったんお休みするかい、女神様?」
ミモザが心配して声をかけると、
「あ~……
そうですねえ。
でも、今後の方針? を決めておかないと」
両側からアルプとファジー、眷属の少年に
支えられながら、何とか口を開く。
「こりゃ重症ですね。
いつもなら―――
『両手に花ですよゲヘゲヘゲヘ♪』
くらい言っているはずですし」
メイが両腕を組んで感想を語り、
「まあ確かにそうでしゅ」
「疲れると欲望までダウンするんだねー」
ナヴィとカガミもそれを見て感想を口にする。
「でも、今後の方針と言いましても……
そのようにお疲れでは、考えもまとまらない
のでは」
そこで第一眷属の母であるソニアが、
心配してフィオナに聞き返すが、
「いえ、アタシには奥の手が……!
本編シナリオでは今年初めての出番―――
作者すら忘れかけていた設定……!
『アンカー』に丸投げ、いやお任せを!!」
高らかに腕を突き上げる女神に、その従僕が
手を下ろさせ、
「メタりゅな。
まあでも、情報共有するいい機会かも
しれましぇんね。
では、彼らと連絡を―――」
地球、自分の部屋のPCを通じて……
彼女は『アンカー』たちへ語り掛けた。
【 よお……久しぶりだな…… 】
【 あけましておめでとうございます(棒 】
【 3月も終わりになって、今頃何の用だ? 】
「(いきなり辛辣なごあいさつですねー。
それに、2月中旬くらいに『バレンタインデー』
について聞いてますよ?)」
女神はそれなりに反論を試みるが、
【 そりゃ季節のあいさつみてーなモンだろ 】
【 まあいい。
で? 何か本編で進展があったのか? 】
一応聞いてみる姿勢になる『アンカー』たち。
そこでフィオナは、コザイ国の遺跡やグレイン国の
動きについて説明すると、
【 操られた狂戦士に、出身国の遺跡ねえ 】
【 ナヴィやカガミが妙な気配を感じた?
ラスボスのフラグが立ちまくってんなー 】
【 いやそもそもシリアスにならんだろ、
この女神の物語は 】
口々に言いたい放題の『アンカー』に、
「(でも、パパとママが選んでくれた信仰地域
ですしー、アタシもその心配はしていないん
ですけど)」
【 まーたこの子は、そうやってフラグを…… 】
【 で、何だっけ? 今後の方針? 】
【 グレイン国が調査団を派遣する事は
決まってんのね。する事無くないか? 】
その書き込みを女神は素直に受け止め、
「(それでいいのならいいんですけどー、
何かちょっと盛り上がりに欠けると
いいますか)」
【 ほう、盛り上がり……とな? 】
【 なるほど、確かに面白味にかけるであるな 】
【 であるならば――― 】
「(おお、ノってきてくれたようですね?
では『アンカー』は今のスレで……200!
聞きたい事は―――
『コザイ国の遺跡の情報を交えての、
今後の方針』!
―――さあ、アタシを導き給え……!!)」
そしてそのレス番号を待つ事数分、
PC上の画面に現れたのは、
>>200
【 剣闘会に出たメンバーを中心に
パーティー編成、後遺跡に派遣 】
「(……えっ?)」
それを見た女神は、一瞬思考を停止させる。
【 パーティー結成は基本でしょ 】
【 しかも女神様公認での派遣やでぇ 】
【 先が期待出来る展開じゃないか…… 】
「(あの、それでもし何も起きなかったら?)」
すかさず女神は不安な問いを返すが、
【 そこを何とかするのが神サマでしょ 】
【 盛り上げてくれって言ったんだから、
後は頑張れ♪ 】
【 平和で良かった、でもいいし 】
そこでフィオナは、後悔と悔悟の思考の海に
沈んでいった。
「どうしました、女神様?」
「な、何か良からぬ神託でも―――」
バーレンシア侯爵とビューワー伯爵の声で、
女神は意識を現実へと戻す。
「あ、な、何でもありません。
ただ念のため、遺跡に向かって頂けたらなーと。
出来ればその―――
バーレンシア侯爵とビューワー伯爵、
それにシッカ伯爵令嬢を中心に?」
それを聞いて、食堂にいた一行がそれぞれ
顔を見合わせた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6836名―――
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