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13・ネズミを捕まえるのは猫の役目



日本、とある都心部のマンションの一室。


そこの家主と思われる少女が、TVを見ながら

くつろいでいた。


「ねーねーナヴィ。

 何かコスプレのお祭りをやっている

 みたいなんですけど」


その言葉に反応し、猫の姿をした同居人が

TVをのぞき込む。


「これは『はろうぃん』というお祭りらしいですね。

 この国独自のものではありませんが、

 本来は子供たちが仮装してお菓子をもらう

 ものだそうです」


「ふーん。

 アタシがやったんじゃダメ?」


「うーん……

 まあこの国では年齢関係なくやっているようですが。

 アルプ君やファジー君くらいがギリギリではないで

 しょうか?

 シモン君でもキツい気が」


「そっかー。

 あの2人がやってくれたら面白そうですけど」


「(……あの2人が……)」




―――ナヴィ想像中―――




「と、とりっくおあとりーと!

 (アルプ・デビル着ぐるみ)」


「お菓子をくれないとイタズラ

 しちゃいますよ!

 (ファジー・猫着ぐるみ)」


「おっけーかもん!!(byフィオナ)」


「えっ?(byアルプ)」


「えっ?(byファジー)」


「さあ、存分にいたずらしてください!


 少年に合法的にいたずらされるなんて、

 本当にいいお祭りです!

 ハロウィン様々ですよ!

 何をされるのかと思うと今から興奮して

 仕方ありません!


 来ないのならこっちから行くぞ!!」




―――ナヴィ想像終了―――




「なるほどこれは酷い」


「?? 何の話?」


独り言のようにつぶやくお目付け役に、

女神は聞き返す。


「いえ。かなり正確な未来予知が見えただけ

 ですので。


 それではそろそろ本編に入りましょう」




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │




「……ん?」


「どうした、トニック?」


アルプの実家近くまで来て、双眼鏡らしき物で

家を見張っていたトニックは、相棒に見たままの

状況と疑問を伝える。


「家の外に誰か1人出てきた。

 ファジーかな?」


「こっちとしては好都合だ。

 もう少し、家から離れるまで待つか」


外に出てきたのはナヴィなのだが、その事を

知るはずも無い2人は、気配を殺しながら

後を付ける事にした。




―――10数分後―――




アルプの家から500メートルも離れただろうか、

果樹園のある一区画まで、ナヴィは移動していた。

そしてその後をソルトとトニック、2人組が尾行する。


「オイ、ソルト。

 で、どうするよ?」


「挟み撃ちにするか?

 それとも話しかけて、大人しくしてもらうか?」


「私としては、2人いっぺんに来てもらった方が

 手間がはぶけるのでしゅが」


「いや、手間取る事は別にねーだろ。

 そりゃ逃げられたりしたら面倒だが」


「逃げる先ってあの家だけだしな」


「そりぇはちょっと困るでしゅよ。

 ファジー君を怖がらしぇたくないので」


「いやだからファジーってガキなら……!?」


ここでようやく違和感に気付き、声の方向に

振り返る。

それはそのまま彼らの背後に位置していた。




「え? え?

 さっきまで俺たちの前方にいなかったか?」


「いましゅたよ?

 そりぇが何か」


「いや何かじゃねーよ!

 いつの間に背後に!?」


その見た目とは裏腹に、ただならぬ気配を

察知して、両者は距離を取るために飛ぶ。


「ああ―――

 だから、こうしゅて、でしゅね」


彼は身をかがめると、地面をうようにして

並行に飛行するかのような姿勢で移動する。


そして、ソルトという男の背後に回った。


「ンなっ!?」


「こ、コイツ……!?」


背後を取られたソルト、そしてその様を見ていた

トニックは、ほとんど同時に驚きの声を上げる。


それは、その動きに対してだけではなく―――

外見に対するものも混じっていた。


顔の輪郭はうっすらと動物のような体毛に

おおわれ―――

その細い指先からは鋭い爪、

そして腰下には長いシッポが揺れる。




「じゅ、獣人が何でこんなところに!?」


「チクショウ、ファジーってガキが獣人だなんて

 聞いてねーぞ!!」


不審な二人組は、明らかな予想外に思わず

動揺の叫びを上げる。


「んー、1つ言っておきましゅが、私は

 ファジー君じゃないでしゅよ?」


「「へ?」」


間の抜けたような声を同時に出すソルトとトニック。


「人違いって事か?

 いやでも、弟らしき人物は他には……」


「あの女の子しかいなかったはず」


「あー……それがファジー君でしゅよ」


頭をポリポリとかきながら、苦笑しつつ

『彼女』の正体を明かす。


「は? あ? へ!?」


「ミモザに妹っていたっけ?」


「それは貴方たちに心がありゅなら触れてあげないで

 くだしゃい。

 そりぇはともかく―――


 大人しくしてもらいましゅよ」




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家・食卓       │




「あ、あの、お茶をどうぞ?」


「あ、ああ」


「ありがとよ?」


しばらくして―――

ソルトとトニック、2人はイスに縛られ、

食卓に『座らされて』いた。


固定されているのは体とイス、そして足で、

両手は自由にされ、飲食くらいは出来るよう

配慮されている。


もちろん、ナヴィの監視下に置かれた状態が前提で。


「しゃて、お話を聞かしぇて頂きたいのでしゅが」


「聞きてーのはこっちだぜ。

 ミモザの弟だと思ってたのは実は獣人で、

 手も足も出ずに一方的にボコられるわ」


「そんで、本物のファジーとやらは女の子の

 格好をしていて、何がどうなってんだ?」


「だからこれは違うんですっ!!

 ミモザ姉のせいですっ!!」


当然の疑問に、すぐに抗議の声を上げるファジー。




「質問しているのはこちらなのでしゅが……

 やはり『枠外の者』絡みでしゅか?」


「…………」


『枠外の者』という単語が出た途端、

彼らは口をつぐんだ。


「じゅいぶんと口がカタいようでしゅね?


 まあ、雇い主を売るというのは、

 今後の信用に関わるでしょうし」


そこへ、ドタバタと足音が近づいてきた。


「ファジー、無事かっ!?」


「大丈夫ですよ、ナヴィがいるんですから―――

 あら、お客さん?」


「―――って、アンタらは……!」


急いで部屋に入ってきたミモザとフィオナだが、

一方は2人の顔を知っているのか、違う反応を見せる。


「ミモザしゃんは知っているんでしゅか?

 この2人―――」


「……ああ。昔の腐れ縁さ。

 でも、ありがとう。

 ファジーを守ってくれた上に、コイツらまで

 捕まえてくれて」


「いえ。前にもお話しゅたように―――


 ねじゅみを捕まえるのは、わたしの役目でしゅので」




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在1233名―――




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