09・頑張ろうぜ、女神様!
( ・ω・)仕事がキツくなるとなぜか
小説も捗る(社畜体質)
日本・とある都心のマンションの一室―――
やや目付きの悪い黒髪セミロングの少女と、
金髪のウルフカットを首まで伸ばした半人半獣の
女の子が、コタツを挟んで対峙する。
「うあぁ~……
フィオナさんのところはあったかいですねぇ」
「あー、ワーフォックスちゃんの働いている
お店って―――
経費削減で、お客さんが来ない間はエアコン
切っちゃっているんだっけ」
人外組は基本メイド喫茶で働いており……
そのあたりの事情をサキュバスから聞いていた
女神は、同情しながら話す。
「だったら火付けて暖まっちゃいけないん
ですかーって聞いたら、みんな笑うん
ですもん、酷いですよ!」
「それはむしろ笑い話として済ませてくれた事に
感謝するべきだと思いますが」
二人が入っているコタツの中から、
お目付け役(猫Ver)の声が聞こえ、
「あ~……
私もナヴィ様みたく、小さい獣の姿に
なれたらなあ」
「ん~……
私は元猫という出自ですから、これが本来の
姿なのですが。
異世界のカガミさんだって、別に変身出来たり
するわけじゃないですし」
向こうの獣人族の少女の話となり、
二人はそれに食いついて、
「そういえばナヴィ。
あなた結構、カガミちゃんと一緒に
行動している事が多いわよね?」
「へー、そうなんですか?
で、でで……っ、そ、その方とはどのような
ご関係なのでございますでしょうか?」
フィオナの後に続いたワーフォックスは、やや
上ずった声を出すが、
「いや、どうと言われましても。
神経を使う仲と言いましょうか」
コタツの中からの回答に、フィオナと半人半獣の
少女は顔を見合わせ、
「??」
「それは……いったい?」
意味不明というように返す二人に、
「一緒に行動している時は特にですね、
興味のある物を発見してそこから
動かなくなったり……
いつの間にか行方不明になっていたり……
目的地とは違う方向に駆け出したり……
まあいろいろですね」
それを聞いたワーフォックスは両目を閉じて、
「何ていうか、理解は出来るんですけど。
私も獣人ですし。
ただ友達にはなれるけど、一緒に仕事は
したくない人というか」
「確かに微妙なラインにいる人ですね。
お兄さんたちも苦労してそうでしたし。
まあそろそろ、本編スタートしましょうか」
│ ■コザイ国・某所遺跡 │
「ふみゅう……
相当古いでしゅね」
「そーだね。
さっき適当なところに蹴りを入れてみたけど、
すぐ壊れちゃう感じ」
「うかつに触るなって言いましゅたよね?」
「うん。
だからちょっと足で―――」
石造りの建物の中を、銀髪の少年と赤茶の
ツインテールの少女が進む。
「わかりましゅた。
蹴ったり頭突きするのも禁止しましゅ。
あと体当たりも」
「えー!?
じゃあ興味があるもの見つけたらどうしたら
いいの!?」
「貴女の場合は興味本位と言うよりも、
破壊衝動に近い気がするのでしゅが」
遺跡の中に照明は無く、もちろん暗闇なのだが、
元猫のナヴィと獣人族のカガミは夜目が利き、
辺りを改めて見回す。
「しかし―――
妙な気配がここにあったのは確かに感じるの
でしゅが、今は何とも」
「確かにヘンな匂いはしたねー。
もう出て行っちゃってから長いとか?」
彼女はクンクンと鼻を鳴らす。
「だとしゅると、ここはすでにもぬけの殻……
という事でしゅか」
「どーする?
ここにもあの2人、グレイン国の人の匂いが
残っていたけど」
カガミは、マイヤー伯爵とガルディ騎士団長の
存在について指摘すると、
「今は敵というわけではないでしゅし、
あのゲルータ選手についても調べると言って
ましゅたから―――
行き先が同じになるのは不思議ではないでしゅ。
まあ、いったん人のいる場所に行って
情報収集してから、フラールに戻りましゅよ」
「ほーい」
こうして彼らは方針を決め―――
遺跡を後にした。
『この……匂い……間違いない……
あの憎き神どもの……匂い……』
彼らが去った後―――
遺跡に何者かの声が響き渡ったが、その声は
そのまま暗闇に溶けていった。
│ ■フラール国・ビューワー家館 │
「……う~ん」
「お目覚めになりました? バートレット」
貴族の屋敷、その寝室で―――
若い男女がベッドの中で言葉を交わす。
「ああ、おはよう。マルゴット。
しかしずいぶんと深く寝てしまったな……
前後不覚になるまで眠るのはいつ以来だろうか」
年齢の割には端正な顔立ちの伯爵は、その
銀髪をかきあげ、
「可愛い寝顔でしたわよ♪
バートレット」
気の強そうな目をした、真っ赤な長髪を持つ
彼女は、微笑みながら語り掛ける。
「次からは叫んで飛び起きるとしようか」
意地悪そうに苦笑しながら話す彼に、
彼女はウインクで返す。
「しかし何だかだるいな……
夢も見なかったほど眠ったのに」
「つ、疲れがまだ取れていないんじゃない?
まだ横になってて。
私、飲み物か何か持ってくるから」
フィオナからもらった薬をしっかり使った
後ろめたさからか、マルゴットは先にベッドから
抜け出し―――
寝室を後にした。
│ ■フラール国・バクシア国代官館(改3) │
「バーレンシア侯爵様」
「おはようございます」
代官館の一室で、二人の少年が頭を下げる。
第一眷属のアルプと、第二眷属のファジー。
彼らは他国の侯爵を前に座り、
「ああ、今日も果物を届けてくれたんだね。
ありがとう。
少し実家に送っているけど、すぐに
無くなっちゃうってさ」
館の主、レンジ・バーレンシンアは
にこやかに対応する。
「ところで、女神様は?
ご健勝かい?」
頬のクロスの傷を撫でながら、彼は世間話に移る。
「あ、はい。
最近はシッカ伯爵令嬢様を始め、女性で
話し合う事が多いようですけど」
「今日も何か、アルプさんのお母さんを始め、
ミモザ姉まで混ざって話し合っている
みたいで……
何を話しているんでしょうか」
グリーンの瞳と髪のアルプと、姉譲りのブラウンの
短髪を持つファジーが同時に首を傾げるが、
「あー……
経験から言うけど、男は女性同士の話に
首を突っ込まない方がいいと思う。
下手に介入するとこちらに矛先が向く」
微妙な表情で語る侯爵を前に、少年二人も
微妙な顔になり―――
微妙な空気が室内に流れた。
│ ■アルプの家 │
「あ、あの~……
複製とはいえですね、結構アタシの体力とか
精神力とか使うんですけど……」
その頃フィオナは同性の伯爵を始め―――
義母・夫が同じ妻に囲まれていた。
「そこを何とか!」
「一番重い労働は、先にやっておくのが
農業の基本ですよ?」
「確認はいくらやっても足りる事は
無いしー」
それを遠目で第二眷属の姉・ミモザも見ていたが、
「いやさあ……
別に、薬なんか無くてもみんな恋人に
なったんだろ?
何をそんなに焦って―――」
すると、ブロンドの長髪をした女性騎士ふうの
伯爵令嬢が彼女に近付き、一枚の紙を見せる。
「……これは?」
「ここまで確認された薬の『効果』です。
これを見ても同じ事が言えますか?
ミモザさん」
すると、彼女もフィオナに近寄って、
「頑張ろうぜ、女神様!」
「イヤアァアアアアア!!」
そしてフィオナは引き続き、その作業に
追われる事となった。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6789名―――
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