08・薬も何も入っていない安心安全なお茶
( ・ω・)ギリギリで題名を考えていない
事に気付く。
日本・とある都心のマンションの一室―――
ペットと思われるシルバーの長毛種の猫が、
とある母と娘の会話を見守っていた。
「フィオナちゃん?」
「ははい」
抜群のプロポーションを持つその女性は正座し、
ブロンドの長髪を重力に任せて垂らしながら
目前の黒髪セミロングの少女へ視線を向ける。
「あなたの世界で、あなたの身の回りで
出まわっている媚薬について、ちょーっと
聞きたい事がありまして」
「あああ実はですねー。
アタシも『果樹の豊穣を司る優しき女神』
ですしぃ?
グレイン国で手に入れたアレ、ちょっと
複製出来ないかなーって作っちゃって。
それで抜け駆け的に?
アルプに使ってみたら……」
そこでアルフリーダは両腕を組んで考え込む。
「おかしいと思ったのよねえ。
だってアレ、相手が複数いなければただの
媚薬だったから。
つまり―――
アグレッシヴビーストモードになるのは、
アルプ君とフィオナちゃん・メイさんとか、
ネーブル君とトーリ家の姉妹とか。
男性1人に対し女性2人とかの場合のみ。
……のはず。
それでどうなったの?」
ずい、と顔を近付ける母親に、娘は降参するように
口を開き、
「い、今のところ……
ミモザさん、レイシェンさんで検証済み。
残っているのはマルゴットさんですが、
こっちも時間の問題かと」
そこでフィオナはナヴィに気付いたのか、
助けを求めるように視線を送るが、
「そんな顔したってダメですよ。
怒られるような事をしたのが悪いんですから。
だからこそアルフリーダ様も―――
通常の手順を経ず、いきなりマンション内に
転移して来たんでしょう。
それだけ緊急の案件だったという事ですよ。
きちんとご主人様に叱られてください」
そう返すナヴィに、主人である女神は
きょとんとして、
「??
別にフィオナちゃん、怒られるような事は
してないわよ?」
「へ?」
「えっ?」
一人と一匹が疑問の声を上げると彼女は続けて、
「だってあの薬というか素材は向こうのものだし、
別世界から持ち込んだわけでもないから―――
フィオナちゃんの能力で複製を作るのは反則って
わけじゃないし、少なくとも今回は問題ないわ」
「じゃ、じゃあどうしてアタシに
詰め寄るような……」
娘がおずおずと母親にたずねると、
「だってねえ!
あの複数相手じゃないと燃え上がらない薬が、
1人相手で使えるって言うのよ!?
そういうお薬も無いわけじゃないけど、
入手するのに一苦労で……」
「あ、無いわけじゃないんですね」
「まあちょっとフィオナちゃんにもこの前、
一回お祝いでゲフンゴホン。
(■8章48話
可愛い声で可愛くない事を参照)
さあよこしなさいくださいフィオナちゃん!」
その女神を前に、フィオナはホッとしながらも、
「びっくりしたぁ~……
でもそれならママ、どうしていきなり
転移してきたの?
フツーに玄関からやって来れば……」
「居ても立っても居られなかったの!
それにパパに見つからずに来る必要があったし。
合理的な選択でしょ?」
「その前に道徳的な選択をして欲しかったと
思いますが。
まあそろそろ、本編スタートしましょう」
│ ■コザイ国・某所 │
「ふーみゅ……
こんなところに遺跡が―――」
銀髪の少年と、赤茶のツインテールをした少女が
とある石造りの古い文化遺産のような建造物の
前に立つ。
「くんくん……
あのマイヤーとガルディって人も、ここに
いたみたいだねー。
匂いが薄くなっているから、もういない
っぽいけど」
「そうでしゅか。
カガミしゃん、他に妙な気配は感じ
ましぇんか?」
すると彼女は顔を左右に動かしながら、
鼻を鳴らし、
「う~ん……
これと言って妙な感じはしないねー」
「そうでしゅか」
そこでナヴィは少し考え込む。
「(さっきまでピリピリと何か感じて
いたのでしゅが……
この遺跡の前に到着した途端、ピタリと
止まったんでしゅよねえ。
気のせいでしゅかね……?)」
「どうしたのナヴィさん?」
カガミの声で、彼は現実に引き戻され、
「何でもないでしゅ。
一応、中を調べてみるでしゅよ」
そして獣人族の少女と共に―――
遺跡の中へと入っていった。
│ ■コザイ国・王宮 │
「では、例の写しはこれに……
しかし、何百年も昔の伝承など調べて、
どうするのですか?」
いかにもな官僚ふうの男が、グレイン国からの
使者に頭を下げながら訪ねる。
「何、珍しい遺跡があると聞いたのでな。
我が国の学者に、いい土産が出来た」
白髪の目立つ頭に痩せすぎとも思える頬、
しかし筋肉質の体つきのアラフォーの男と、
「もし本格的な調査・発掘計画などが
持ち上がったら―――
グレイン国から膨大な予算が見込める
でしょうねえ」
桜色の短髪の青年が、その鋭い眼光とは対照的に
軽い口調で対応する。
「も、もしそうしてくだされば……
ろくな農業以外何も無い我が国としては、
大変ありがたい事です!
どうかよろしくお願いいたします!
マイヤー伯爵様、ガルディ騎士団長様!」
ぺこぺこと頭を下げまくる男に、彼らは軽く
手を振って、
「では一応、誰もあの遺跡に近付かないよう
お願いしたい。
現場保全がなされていれば、こちら側で
調査させて頂くので」
「は、はあ……
あの辺は元より、誰も入る用が無い土地では
ありますが。
わかりました。
必ず陛下にお伝えしておきます」
伯爵の指示に従う意を示し、彼は一礼すると
その場を去っていった。
「意外とすんなり通りましたな、伯爵」
「グレイン国から調査隊が来れば―――
こちらからの持ち出しだし、向こうからすれば
ちょっとした経済効果が見込めるのだろう。
そもそも彼らに、反対するだけの力があるとは
思えんが」
ガルディの問いにマイヤーはあっさりと答える。
「さて、本国に戻ったら……
一応バーレンシア侯爵にも連絡しておくか。
…………」
「??
どうしました、伯爵?」
そこで沈黙する彼に、王室騎士団長はたずね、
「いや、何でもない。
規模はどれくらいがいいかと思っただけだ」
二人はそのままそろって歩き始め―――
「(……『何も無い我が国としては』、か。
本当に何も無ければいいのだが、な)」
マイヤー伯爵は何かの不穏な予感を抱き、
すぐにそれを頭から振り払った。
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
「あの、フィオナ様。これ……」
「だだだ、大丈夫ですよ!?
薬も何も入っていない安心安全な
お茶ですからっ!!」
その頃、第一眷属の実家では―――
グリーンの瞳と短髪を持つ少年が、仕える女神と
過ごしており、
「いくら何でも焦り過ぎでしょう、フィオナ様」
「アルプ、ファジー君と一緒にお風呂入って
きちゃいなさい」
メイと母親のフォローで、アルプと第二眷属の
少年、ブラウンの短髪の少年は一緒に浴場へと
向かい、女性陣だけが残る。
「ていうかさ……
あの薬って複数相手じゃなけりゃ、ただの
『自分に素直に正直になる』って効能じゃ
なかったっけ?」
弟と同じ、ブラウンの髪を首まで伸ばした
ミモザがフィオナに問う。
「いやあそれが……
アタシの能力で増やしたら、その。
何かそうなっちゃったらしくて?」
それを聞いた、彼女に取っては義母のソニアが
目を妖しく輝かせ、
「そうですか……
じゃあ、もっといろいろ複製してみては?」
その発言をきっかけに、女性陣の熱気が上昇した。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6776名―――
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