07・らってトラブって無いひゃない
( ・ω・)恋愛系にも公募しているけど、
恋愛しているかなあ(待て)
日本・とある都心のマンションの一室―――
黒髪セミロングの家主の少女と、同じ黒の長髪を
ポニーテールにまとめた同性が対峙する。
「ふぅ、ようやくバレンタインイベが終わって、
一息付きました」
「ああ、そういえば……
あたくしのお店でも、そんな催しをやって
おりましたね……」
女神と悪霊は事も無げに、当たり障りの無い
会話を交わす。
「そういえば悪霊ちゃん。
あなたは昔から日本にいるんでしょ?
こういう伝統に無いものっていいの?」
「別に思うところは……
流行廃りはもうずいぶんと見て来ましたし……
そもそも外来宗教なんて仏教も同じでしょう……
それに、結構どん欲にこの国は、何でも吸収して
きていますから……」
彼女の言葉にフィオナはうんうんとうなずく。
「チョコ自体はそれこそ、二百年くらい昔から
入ってましたけどね……
『しょこらいと』とか言って……」
「うおー、そんな昔から」
驚く女神を前に悪霊は一息ついて、
「……それはそうと……
今年は本命がいたのでしょう?
それはいかに……?」
「げへげへげへ……
よくぞ聞いてくれました。
そりゃあもうたっぷりと食べて頂いて、
アタシもたぁくさん食べましたとも。
いやもう胸焼け起こすくらいに」
ゲス顔で答えるフィオナに、悪霊ちゃんは
微笑みで返し―――
「あらあら……♪
あまり甘いものを食べ過ぎますと、
太りますわよ……♪」
「いやいやぁ♪
その後、しっかり『運動』しましたしねぇ。
メイさんも混じって3人で。
あ、でも―――
アタシとメイさんは少しずつお腹が太って
いくかも、なんて♪」
「それは……♪
ちょっと気が早いんじゃ
ございませんこと……?」
そのやり取りを、お茶とお菓子を持ってきていた
お目付け役(人間Ver)の少年は―――
遠目、あるいは遠い目で見つめ、
「はあ……
それじゃそろそろ、本編スタート
しましゅかね」
│ ■コザイ国・某所 │
「ふみゅ。意外と時間がかかったような
気がしましゅが……
取り敢えず着きましゅたね」
シルバーの短髪に、猫のような縦線の瞳をした
少年が、同行者の少女に語り掛ける。
「ホントだねー。
2・3日で到着すると思ってたのに」
赤茶のツインテールの獣人族の少女は、
辺りを見回しながら答える。
すると彼はその少女の頬を両手で引っ張り、
「あなたが―――
カガミしゃんが興味を引いた場所へ突然
方向転換したり、気付いたらいなくなったり
していなければ予定通りについたんでしゅが」
「へ~。
らってトラブって無いひゃない。
ナフィ様のにほいは覚えているからぁ、
ちゃんとあひょから追いかけるひゅもり
でひたしぃ?」
「一緒にいる人間が突然行方不明になるのも、
トラブルの範囲だと思ってくだしゃい」
そこでナヴィは彼女の頬から手を離すと、
「さてと……
あのグレイン国で感じた気配、確かに
残ってましゅね。
やはりこの国に何かありそうでしゅ」
「え? もう終わりなのー?
もうちょっと乱暴でも良かったのにー。
そのまま服を破いて好きにしても」
「発情すんな。
しょれと、他に覚えのある匂いもするよう
でしゅけど」
その言葉に、カガミもフンフンと鼻を鳴らし、
「んー?
コレ、マイヤー伯爵って人と、あの騎士団長?
っぽいねー」
「しょういえばあの2人も不審に思っていた
ようでしゅしね。
敵対はしないでしょうが、一応用心しながら
探りましゅか」
こうしてナヴィとカガミは、コザイ国での
調査を開始した。
│ ■フラール国・バクシア国代官館(改3) │
「あ、レンジ様―――
お早うございます」
「ああ、お早う。
もう疲れは取れたかい?
急に寝込んだりするから驚いたよ」
レイシェンは館の主にあいさつすると、
すぐに姿勢を整える。
「ご、ごめんなさい。
フラールに到着したばかりですぐ―――」
彼女はそのブロンドの長髪を垂らすように
頭を下げるが、
「いや、慣れない土地なら仕方ないよ。
そうそう。
数日前、アルプ君とファジー君も来ていたん
だけど―――
どうも風邪が流行っているっぽくてね。
僕もちょっとだるい時があったし。
無理はしないで欲しい」
一見、頬にクロスの傷を持つ悪人顔の侯爵が、
優しく頬えみながら恋人を気遣う。
「お仕事は?」
「ここ最近はこれと言って無いかな。
グレインへ行った時の物が溜まっていたけど、
それももう片付きそうだし。
バクシアへ行った奉公労働者もほとんど
帰ってきたって話で……
僕の仕事もこれで一段落すると思うと、
感慨深いなあ」
実はバクシア・フラールの両国民の間で
人気のある彼は、そのまま外交官として
残るよう手配されているのだが……
当人はまだその事を知らされていない。
「あ、そうだ。
マイヤー伯爵様からお手紙が来てたんだ。
何でも今、コザイ国に行っている
そうなんだけど」
「コザイ国?
確か連合国の中でも、かなり小さい国だと
記憶していますが……」
レイシェンが首を傾げると、バーレンシア侯爵は
続けて、
「ほら、グレイン国の剣闘会で僕と決勝戦で
戦ったゲルータ選手。
彼の祖国なんだよ。
伯爵自ら、そこまで行って調べているみたい」
「ああ、そういえば不審がっていましたからね。
それにしても自らとは―――
あの人らしいと言えばらしいですけど」
かつての婚約者の行動に、彼女はため息をつく。
「じゃあ朝食にしようか。
まだアルプ君たちが持ってきてくれたフルーツも
あるし、デザートは期待していいよ」
「はい、レンジ様」
そして伯爵令嬢は侯爵の腕に手を回し、
二人で食堂へと向かった。
│ ■フラール国・ビューワー家館 │
「えーと……
フィオナ様、私たちはそういうものに
頼らなくても」
「そう言いながらガッチリつかんで
放しませんねマルゴットさん」
女神とマルゴットは奪い合うかのように、
一本の薬ビンをガッチリと握りしめる。
同時刻―――
フィオナ一行はバートレット・ビューワー伯爵の
館へ、フルーツを届けに来ていたのだが、
伯爵の相手はアルプに任せ……
女神とメイは豪商の娘と相対していた。
「いっいえこれは、せっかくフィオナ様が
下賜してくださった物でありますから……!」
その光景を見ながらメイが自嘲気味に笑い、
「汗と息がすごい事になってますよ
マルゴットさん。
正直に言えばいいでしょう、獣と化した
伯爵様が見たいと……!」
フルーツを届けるというのは表面上の理由で、
アルプには知らされていなかったのだが、
女神ともう一人の妻(予定)は、賛同者という名の
道連れを増やすため―――
例の薬を布教しに来ていたのだった。
(ファジー&ミモザはアルプの家で留守番)
「い、一応後学のために聞いておきたいのですが、
使ったら、ど、どのような感じに?」
「あ、アタシとメイさんが―――
お昼過ぎまで起き上がれないくらいには?
あと、ファジーの方はあんまり覚えていない
らしく……
これは何度か確認、して、ますか、らっ!」
そこでマルゴットが力を抜くと、フィオナもまた
ゆっくりした動作で薬ビンをテーブルの上に置き、
「で、では……
使う機会は無いと思いますが―――
もしかしたら何かの拍子に気まぐれで偶然
思いもよらず使うかも知れませんのでっ」
真っ赤な長髪をした女性が両手でそっと、
そのビンを受け取ると、女神と第三眷属の妹は
軍人のように最敬礼し、
「ご武運を……!」
「アルプきゅん一人相手でわたくしたち、
腰が抜けたかと思うくらいでしたからね。
ま、覚悟はしておいてください♪」
それを聞いたマルゴットがゴクリと喉を鳴らし、
部屋に沈黙が訪れた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6769名―――
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
基本、土曜日の午前1時更新です。
休日のお供にどうぞ。
みなさまのブックマーク・評価・感想を
お待ちしております。
それが何よりのモチベーションアップとなります。