05・後々巻き込まれる何かが
( ・ω・)今回は0時更新に切り上げ
(午前1時からメンテナンスのため)
日本・とある都心のマンションの一室―――
リビングで、コウモリの翼を持つ少女と、
黒髪セミロングの少女が、コタツに入りながら
くつろぐ。
「うぁ~……暖かい。
たまんねッス。
最近はホント寒くなり過ぎてもー」
「でもサキュバスちゃんの職場ってメイド喫茶
ですよね?
寒いって事あんまり無いんじゃ」
女神・フィオナは彼女に問い質すが、
「いやねー。
経費削減? ってヤツで……
室内温度を控えめにしたり、お客さんが
来ない時は切ったりしてるんで」
「う~ん、セコいですねー。
儲かってないわけじゃないでしょうに」
お茶請けを食べながら、二人は雑談に興じ、
「フィオナ様のところは?
やっぱ24時間点けっぱですか?」
「基本はそうですけど―――
ママから、ある程度寒さに慣れておいた
方がいいってこの前アドバイスされまして」
サキュバスはブラウンのワンカールごと首を傾げ、
「アルフリーダ様が?
そりゃまたどーして」
「いやホラ、アタシ……
晴れてアルプとカップルになったじゃ
ないですか」
「?? それに何の関係が?」
余計ワケがわからなくなった彼女は、
質問を重ねる。
「それがですねー、
『暖房効かなくなっちゃった』『壊れちゃった』
ってネタはいろいろと使えるって事らしいん
ですよホラお互い人肌で暖まりましょうとか
一緒にくっついて離れないでーとか」
「ほうほう。
さすがはアルフリーダ様、目の付け所が
違う……!
これは参考にしないといけませんねぇ?」
少女たちが悪代官と商人のような顔になるのを、
お茶のお代わりを持ってきた銀髪の少年が遠目で
見つめ―――
「寒波ですら何かネタになるんでしゅか。
たくましいというかポジティブというか……
まあそろそろ、本編スタートしましゅ」
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
「ナヴィ様とカガミさんは―――
調査に行かれたんですか」
「何か気になる事でも」
同じグリーンの髪を持つ母子が、昼食の用意を
しながら語り掛ける。
その先は、女神と第三眷属の妹の少女二人。
「そおっすねぇ~……」
「グレイン国でちょっといろいろあったみたい
なので、その再調査とか言ってましたけど……」
フィオナとメイは、ぐったりした感じで答え、
「あの、大丈夫ですか?
疲れが取れていないんでしょうか。
ミモザ姉も、何だか少し具合が悪い
みたいで……」
第二眷属の少年、ファジーが心配そうに
女性陣を見つめる。
「ああいや、アタイのは健康っていうより
精神的なモンだから……」
「奇遇ですねーアタシもですよミモザさん」
「女の子ってホラ、いろいろあるからぁ」
少女たちはテーブルに突っ伏すように、
上半身をその上に投げ出す。
「お母さんは大丈夫?」
「私は果樹園で働いてきたもの。
鍛え方が違いますよ。
フィオナ様たちは―――
この前、マルゴットさんやシッカ伯爵令嬢様が
来られたでしょう?
そこで結構おしゃべりしていたみたいですし、
女性同士のお話って、結構疲れるんですよ。
そうですよね、フィオナ様?」
ニッコリと笑うソニアに、女神その他の女性陣は
目を背け、
「(うぅう、て、手強い……
これが義母ってヤツですかぁ)」
「(それは違くね?)」
「(てゆーか何でアタイまで……
アタイはただ、ファジーと結ばれただけで
関係ねーと思うんだけど)」
それぞれ、不満を抱きつつも口には出せず―――
「そういえば、マルゴットさんにシッカ伯爵様って
どういうご用件で来たんですか?」
「そういえば、ボクたちに会っても―――
忙しいのか軽く挨拶するだけで帰っちゃったん
だよね」
グリーンの瞳の少年と、姉と同じブラウンの
短髪を持つ眷属が、同時に首を傾げ、
「フィオナ様、メイさん。
長く話していたようですけど、何かありました?」
「おぶっふぅう!?」
「おっひゅうぅううっ!?」
いきなり話の矛先を向けられた女神と少女は、
人類には早過ぎる動きで上半身を起こし、
「後でミモザ姉も加わったみたいだけど、
そんなに重要な話だったの?」
「モキュキュッキュッ!?」
こちらもまた、人類には早過ぎる叫び声で
弟に答える。
「もきゅ……?
ミモザ姉、何か変な物でも食べたの?」
「フィオナ様もメイさんも、だいぶお疲れの
ご様子に見えます。
少し休まれた方がいいのでは……」
ファジーとアルプが三人の反応に対し、
困惑しながら休息を勧め、
「そうねえ。
今はこれといって忙しい作業もありませんし。
昼食の後は自室でお休みになられたら―――
何かあれば、アルプとファジー君を
行かせますので」
第一眷属の母親の言葉に三人は力無くうなずき、
その申し出に従う事にした。
なお、様子見に二人の少年を向かわせる際、
ソニアは『つい』『うっかり』、例の薬の飲ませて
しまってから行かせるのだが……
その話はまた後日。
│ ■コザイ国・某所 │
「しかし、見事なまでに何も無いところだな。
これなら、マービィ国の方がまだマシだ」
グレイン国のマイヤー伯爵は、のどかな風景を
見ながら感想を口にする。
「序列上位国以外なんて、どこもこんな
モノでしょ。
しかし、ンなところに―――
本当にあるんでしょうかねえ?」
同じグレイン国の王室騎士団長、ガルディもまた、
呆れながら率直に印象を語る。
「『魔王』の伝説か……
我が国では一笑に付すようなおとぎ話だが、
王宮では後生大事に言い伝えていたようだしな」
「おとぎ話を笑い飛ばすには、合理的に発達した
文明が―――
伝説の裏に潜む真実を見抜くには、高い見識が
必要。
我が国ですら、それが出来る者は多くない
でしょう。
ましてや、こんな辺境におかれては」
二人が、道とも呼べない獣道を進んでいくと、
やがて石で作られた遺跡のようなものが現れ、
「フム。どう見るかね」
「ここ百年や二百年前のものじゃないのは、
確かでしょうね。
我が国の歴史学者どもを呼んだら、
泣いて喜びそうです」
その遺跡を前にして、伯爵と騎士団長は
視線を交わし、
「……あの伝承が本当だったとして、
ゲルータ選手との関わりがあると思うか?」
アラフォーの男の問いに、青年はプッ、と
吹き出し、
「魔王復活とやらがですか。
もしそうだとしたら―――
勇者様にもご登場頂かなければ、物語として
バランスが悪い気がしますねぇ?」
彼がからかうように笑うと、
「ふふふ……
もしかしたら、すでに会っている人物かも
知れんぞ?」
初老の男もまた、苦笑で返した。
│ ■フラール国・バクシア国代官館(改3) │
「ぶうぅえっくしょいっ!!」
同時刻―――
フラール国にてバーレンシア侯爵が、大きな
くしゃみを発し、
「だ、大丈夫ですか? レンジ様」
一緒にいたレイシェンが驚いて駆け寄る。
「ちょ、ちょっと自分でもびっくりした……
何か僕の知らないところで、後々巻き込まれる
何かが起きているような―――」
■レンジ・バーレンシア
特別称号『真なる勇者』
(■7章8話 よくぞあそこから盛り返した参照)
「風邪でも召されたのではないですか?
バクシアの後、いろいろと国を行き来
しましたから……
今日はお薬でも飲んで、早めに寝た方が
よろしいかと」
「そうするかあ……
じゃあゴメン、後よろしく……」
彼女はふらふらと寝室へ向かう侯爵を見送ると、
(お薬……
フィオナ様から頂いたお薬―――
使 う 時 は 今 !!)
レイシェンは無言でガッツポーズのような
姿勢で、心の中で叫んだ。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6741名―――
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