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03・かなりクルものがあります

( ・ω・)今の会社に入社してから

二度目の引っ越し(多いな?)


日本・とある都心のマンションの一室―――


やや目付きの悪い少女が、同じくらいの年齢の

ワンレングスで顔半分が隠れている同性と

相対する。


「そういえばフィオナさん」


「?? 何でしょ邪神ちゃん」


お互い、飲み物を飲んだりスマホに操作したり

しながら、会話を交わす。


「異世界のアルプさんですけど―――

 いずれ結婚するんですよね?」


「そりゃーもちろんでございますが」


一瞬で顔をニヤけさせ、ヨダレを垂らす女神に、


「いえ、いつくらいにするのかなって。

 それに、神様と人間って寿命も成長も違う

 でしょうし」


「あ~……

 そうですね、確かにそういう問題も

 ありますけど」


そこでふと、会話の内容は女神の両親へと移り、


「確か、フィオナさんのお父さんも元人間

 だったんだよね。


 その時はどうしたの?」


「結構若くして結婚したって聞いてますよ?

 それに、人間として生きていた時に軍神に

 なったって話ですから。


 でも馴れ初めとか、詳しい事はあまり

 知らないんですよね」


ご両親なのに? と首を傾げる邪神だったが、


「まあ、いくら子供と言っても―――

 身内の前で話すのは恥ずかしいのかな?」


「それもあると思いますが……

 あ、その話はこのヘンで終わりにしておいた

 方が」


すると彼女はフィオナに近付いて、


「え~なに何ナニ~?

 そう言われると余計知りたくなるじゃないの」


意地悪そうな笑顔を浮かべ―――

女神に密着するように距離を詰める邪神。


しかしその時、グラッと床が揺れて、


「わっ、わわ!

 じ、地震!?」


慌てふためく邪神とは対照的に、フィオナの方は

これと言って動じず……

そこへ人間の少年の姿のお目付け役も入って来て、


「もしかしてお2人とも、アルフリーダ様の

 恋バナでもしておりましゅたか?」


「はい?

 何でそんなピンポイントで内容がわかるん

 ですか?」


ナヴィの指摘に彼女は目を丸くするが、


「ああ、邪神ちゃんは知らないだろうけど―――

 ウチのママ、自分の恋バナを知らないところで

 される可能性のある場所に、トラップを仕掛けて

 いるのよ。


 これ以上やってみる?

 多分、いくら何でも爆発まではしないと

 思っているけど……」

(■3章20話

「女子力で完全に負けている」参照)


「前から思っていたんですけど、フィオナさんの

 ところ、夜の生活や恋愛絡みが生死に関わり

 過ぎておられませんか!?」


邪神は抗議とも驚きとも取れない大声を出し、


「えー、でもママだし」


アルフリーダ(ご主人)様でしゅし」


「ダメだこの人たち!

 環境に完全に適応していらっしゃる……!」


二人の反応に対し、彼女は納得と諦めが

入り混じった目を向ける。


そんな邪神を見て、女神と従僕は―――


「それじゃあそろそろ」


「本編スタートしましゅ」




│ ■フラール国・バクシア国代官館(改3) │




「でも本当に良かったのかい?

 レイシェンの本国ではなく、またバクシアでも

 なくても―――」


フラール国唯一の代官館……

何度か修復と改築が行われた、いずれ外交官施設・

大使館になる予定の建物の一室で、


頬にクロスの傷のある、一見すると悪人面の

侯爵は、婚約者である伯爵令嬢を気遣う。


「とんでもございません。

 レンジ様のところへお嫁に行くのですから、

 ミイト国で挙式するのは微妙でしたし……」


ロングの金髪の美女が、夫予定の彼に答える。


「あーそうか。

 そうすると、婿養子むこようしって思われちゃうのか。


 ていうか僕の実家、未だにそう思っている人

 多いからなあ」


侯爵と伯爵では、明らかに彼の方が位は上―――

しかし連合国の序列で言えば、上位三ヶ国の伯爵と

それ以外の国の侯爵とでは、格が違う。


バーレンシア侯爵家の人たちが勘違いしても、

仕方の無い事ではあった。


「わたくしも、レンジ様のお義父様とお義母様に

 何度も嫁ぎに来たと申し上げたのですが……」


「アレ多分、冗談か……

 もしくは何かのお芝居と思っているんじゃ

 ないかなあ。


 使用人たちも僕についてくる気満々で……」


『ドッキリ』という概念が異世界にあるかどうかは

ともかくとして、それに近い気持ちを抱いていた。


「そういえばレンジ様。

 ビューワー伯爵殿が剣闘会の決勝戦で戦った、

 あの剣士についてですけど」


「ゲルータ選手だっけ。

 確か、マイヤー伯爵殿の方で調べているん

 だよね?


 何かあったの?」


婚約者の言葉に彼は聞き返す。


「あの剣士はコザイ国出身とわかって

 おりますので、その国へ調査へ向かうとの

 事です。


 また何かあれば、こちらへ報せると」


「確かにあれは気になるところだからねえ。

 でもその前に―――」


夫婦予定のカップルは、大量の書類を前に

同時にため息をつく。


「フラールでの新規ビジネスの許可や、

 支店を出すむねの申請書……


 いや、今でも僕はまだ代官だから、

 仕事としてしなきゃならないのはわかって

 いるんだけど」


「多分、ほとんどが『枠外の者』の手の者だと

 思いますわ。


 利に敏感というのもあるでしょうけど―――

 今のうちに、レンジ様に恭順きょうじゅんの意を示しておく、

 という狙いがあるんでしょうね。


 まったく変わり身の早い」


事実、レイシェンの指摘は当たっており、

また『女神の一行』の行動の流れに逆らわなかった

者たちは、それなりの利益を上げ……


さらに、今を時めくバーレンシア侯爵は

『新貴族』との戦いをグレイン国での剣闘会で

示しており―――


そんな彼に刃向かうリスクを考えると、

同調・追従は当然の結果と言えた。


「取り敢えず片付けちゃおうか。

 レイシェンも手伝って」


「はい! もちろんですわ」


こうしてカップルは、事務処理に手を

付け始めた。




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




「へー、バーレンシア侯爵、フラールに

 戻ってたんだ」


「ええ。

 それで今、アルプ以外の方々は……

 伯爵様のお屋敷で代官館へ持って行く

 献上品を選定していますわ」


合同結婚式の話が出てから数日後……

フィオナはアルプの家で、その母ソニアから

近況報告を受けていた。


「お母さん、僕も行かなくて良かったのかな」


吸い込まれそうなグリーンの瞳を持つ少年が、

母親に問う。


「だって、私たちの果物はしょっちゅう持って

 行っているので、代わり映えしないから……

 ファジーちゃんとミモザさんに、ルコルア産の

 果物を選んでもらっているの」


「あー、それで……

 あの2人が向かったんですか。


 で、カガミちゃんとナヴィ様は護衛と」


第三眷属の妹が、飲み物をテーブルの上に置く。

息子と一緒の鮮やかな緑の長髪をした女性は、

そんな彼女に向かい、


「メイさんは?

 もうご両親には報告したんですか?

 アルプの事……」


「あ、はい。

 一応手紙で―――」


すると、何か手作業をしていたソニアは

フィオナとメイに挟まれて座っている、

息子アルプの対面の席に腰を下ろし、


「それで、どうかしら?

 アルプちゃんはあなたたちの夫として」


「お、お母さんっ!」


顔を真っ赤にして彼は抗議するが、

母親はニコニコしながら姿勢を崩さず、


「(これは……思ったよりキツいですね。

 嫉妬されたり敵対されたりするのなら

 ともかく―――)」


作り笑いを浮かべる女神の横で、姉と同じ

銀のロングウェーブの長髪をした少女も、


「(好意的ではあるんでしょうが……

 こう、根掘り葉掘り聞かれるのも

 かなりクルものがあります。


 しかも当人の目の前で……!

 これ何てプレイ?)」


小声で意思疎通する妻予定の二名。

そこでソニアは矛先をアルプに変更し、


「アルプちゃんはどう?

 この2人は『良かった』?」


とらえ方によっては意味深な質問にもなる言葉を

ソニアは使い、


「ぶうぇええっ!?

 ぶえぇええっ!?」


「いえあのっ、当方初モノでしたから

 具合には自信がッッ」


フィオナとメイは慌てふためくが、


「??

 えっと、良かったからこそ結婚を約束

 したんだけど?」


恐らく素直に受け止めたであろうアルプは、

首を傾げながら答え、


「ふぅん?

 じゃあ、どのヘンが『良かった』のかなー?」


母親の質問はなおも続き―――

女神ともう一人の恋人の少女は、撃沈したように

顔をテーブルにつっぷした。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在6712名―――



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

基本、土曜日の午前1時更新です。

休日のお供にどうぞ。


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