02・(注)女神
( ・ω・)冬になると電気代が下がる体質
(両親ともに雪国産)
日本・とある都心のマンションの一室―――
昼下がりに、のんびりとくつろぐ部屋の主らしき
少女が一人。
「は~……
邪神ちゃんたちも仕事始めっていうし、
のどかな日々が戻ってきましたねえ」
「少なくとも貴女は地球じゃ、毎日が
のどかでしょうが」
そこへシルバーの毛並みをした、長毛種の
お目付け役(猫Ver)が通りかかる。
「あ、ナヴィ。
晩御飯はどうするー?
ウーバーか出前かコンビニか……
それともどっか食べに行く?」
そのセミロングの黒髪を揺らし、女神は
上半身を彼へと向ける。
「そうですね。
ただ、私はちょっとこれから出かけて
きますので……
もしよろしければ、帰りに何か買って
きますが」
「へー、どこ行くの?」
「実家ですよ」
それを聞いたフィオナは、この世の終わりのような
顔を見せ―――
「え? 死にたいの?」
「帰省する際に決して出てこない
パワーワードが聞こえたような。
いやまあ、この時期実家に近付く意味は
私もわかってはいるんですけど」
そこでナヴィは猫の前足でスマホを取り出し、
器用に画面の方を彼女へ向ける。
「あり?
パパからのSOSコールじゃん。
ママ、今年は電源切ってなかったんだ」
「いえ、このメッセージは多分PCからです。
おそらく時間指定で、メールを送信するように
していたのではないかと」
彼はスマホをしまうと、大きく伸びをして、
「では行ってきますか。
私が顔を見せれば一応、中断はするかと
思いますし」
「パパの事よろしくねー。
それじゃそろそろこちらも……
本編スタートしますか」
│ ■フラール国・グラノーラ家屋敷 │
「えっ!?
じゃあ、合同でやるというお話が
あるんですか」
「ええ。
バーレンシア侯爵様なら知らない仲では
ありませんし。
シッカ伯爵令嬢と正式に婚約発表をしてから、
ここ、フラールで私たちと一緒に―――
式を挙げないかと打診されていまして」
グリーンの澄んだ瞳と短髪の少年が、
屋敷の主である、真っ赤なロングヘアーの
女性と語り合う。
「我が国とバクシアの王家も乗り気のようです。
リーディル陛下が、バクシア国王の妹君の娘、
フラウア様とご成婚された事で縁戚だし、
お二方の信頼も厚い。
侯爵様の実績を考えれば、当然の事と思います」
シルバーの短髪をした、実年齢よりは十は
若く見える三十代の伯爵が言葉をつなぐ。
「でもこうして3人でいるなんて……
何か久しぶりのような気がしますね」
「おや、私は仲間外れですかな?」
執事風の初老の男性が、飲み物を持って
来ながら語る。
「そんな事ないわ、爺。
あなたもよく仕えてきてくれたわ」
マルゴットが微笑んで返すと、他の三人もまた
笑顔になった。
「そういえばご結婚のお話ですけど……
フラールでするんですよね?
バートレット様やマルゴット様はともかく、
バーレンシア侯爵様はバクシアでするという
お話が出なかったんでしょうか?」
アルプの問いに、カップルになった男女が、
「それがね。
フラールの民衆の人気がすごく高くて……
本来なら、もう代官は必要無いので侯爵様も
本国に帰還しなければならないんだけど」
「何らかの形で彼を置いて欲しいと、
平民貴族問わず要望があるようなのです。
すでにバクシアの外交官という形で居続けて
もらえるよう、手配されているとの事」
豪商の娘と青年貴族が苦笑しながら答える。
「でも侯爵様……
あまりそういうのを望んでいないところが
ありますからね。
フィオナ様に頼んで、天界の胃薬でも
持って来てもらおうかな」
アルプがつぶやくように話すと、
「そういえばアルプは、メイと共にフィオナ様の
住まわれる家に招待されたとか」
「女神様に招かれたなんて、この国どころか
連合国でも前代未聞よ!
それで、どんなところだった?」
ビューワー伯爵とグラノーラ令嬢の言葉に、
第一眷属の少年は顔を上気させて、
「すごかったです!
建物が、この前行ったグレイン国の王宮の
それよりも高くって!
本当に雲の上にいるみたいでした!
フィオナ様はその最上階にお住まいに
なられていて―――
あ! ナヴィ様が猫になったお姿も見ました!
それでも、そこはまだフィオナ様の家では
無かったんですよ。
別荘というか、神殿は他にあるって」
興奮しながら話すアルプに三人は聞き入って
いたが、
「あ……っ、そ、そうです。
確か、あまり他の人にはしゃべらないよう、
言われていたんでした」
恥ずかしそうに視線を下へ向ける少年に、
「大丈夫ですよ、秘密にしますから」
「それにフィオナ様も、私たちに話したところで
怒らないでしょう」
伯爵と豪商の娘はフォローするように話す。
「でも、そういえばマルゴット様」
「なぁに?」
「……僕、実は伯爵様とは仲がお悪いのかと
思ってました。
特に、奉公労働者の件があってから―――
すごくバートレット様に怒っているように
見えて」
話の方向を変えようとしてか、少年は別の
話題を振る。
するとマルゴットは顔を赤くして、
「あ、あれはね……
私も大人気なかったっていうか。
まともな商人の間では、バクシアの目的……
引いては『枠外の者』の狙いはわかっていたの。
それに対して何の手も打たないのかって」
そこで彼女は結婚予定の夫へ向き直り、
「改めて謝罪するわ、ごめんなさい。
今思うと、八つ当たり以外の何物でも
なかったわね……」
「それは仕方の無い事です。
先王の急死があったとはいえ―――
後手後手に回っていたのは事実ですから」
少し空気が重くなってきたところで、
「でっ、でもっ!
フィオナ様がこの世界に介入を決めたのは、
それがきっかけだったと言ってました!
フィオナ様も、あれは運命だったと言って
おりましたし―――
神様もそう仰っておられるのですからっ」
慌てて割って入ってきたアルプを前に、
大人たちは苦笑し、和やかな空気となった。
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
「あ~……だっりぃ……
寝すぎたかなぁ」
「すいません、まさか昼過ぎまで寝てしまう
なんて……」
お昼になり、ミモザとファジー、姉弟がだるそうに
姿を現す。
「夜中まで激しい運動をし過ぎたんじゃ
ないですかぁ~ゲフゲフゲフ♪」
(注)女神がヒロインらしからぬ笑顔で、
二人を出迎えるが、
「そ、そりゃまあ晴れて恋人同士になったん
だから、ヤる事はヤるよ」
「ヤベぇ順調に真っすぐ色ボケしてやがる。
フィオナ様、コイツは強敵だぜ……!」
メイが続けて対応し、いつの間にかナヴィが
ファジーの背後から耳を塞いでいた。
「しょういう生々しい話は普通、他人の家では
しないものだと思うんでしゅけど」
「そうだよ!
後で女だけになった時に共有するのが
マナーでしょ!」
カガミも当然のように参戦し、
「しょういう事でも無いと思うんでしゅが」
赤茶の獣人族の少女を前に、女神の従僕は
ため息をつく。
そこへ、家の主人であるソニアが顔を見せ、
「そろそろお昼にしましょう。
ナヴィ様、ファジーちゃん。
グラノーラ家のお屋敷までアルプを呼びに
行ってくれないかしら?」
「わかったでしゅ」
「行ってきます」
と、二人は彼女の言う事に従い、扉の向こうへと
消えて、
「あ、じゃあアタイも……」
「それならカガミもー」
ついて行こうとする少女たちの腕をソニアは
つかみ、
「いえ―――
こうやって女だけが残ったわけですから……
お話し頂けますよね?
フィオナ様、メイさん、ミモザさん?」
名指しされた三人は―――
蛇ににらまれた蛙のように体を硬直させた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6694名―――
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