01・それだけの器だと思うのですよ
( ・ω・)9章スタートです!
去年の初更新は1月1日だったなあ(遠い目)
日本・とある都心のマンションの一室―――
「新年明けまして、おめでとーございます」
長い黒髪のワンレングスで片方の顔が
隠れている少女があいさつする。
「今年もよろしくお願いしまーす」
次いで、ブロンドのロングウェーブをした髪の、
天使のような、それでいて黒い羽を持つ少女が
頭を下げ、
「本年もどうぞよろしく……」
ロングの黒髪をポニーテールにまとめた、
和装に身を包んだ少女が正座で一礼する。
「邪神ちゃんも堕天使ちゃんもカタいってー。
アタシだって日本人じゃないし。
そこまでかしこまらなくても。
……って、悪霊ちゃんは日本人か」
この部屋の主である、黒髪セミロングの女神が、
くだけた態度で返礼する。
「お正月くらいピシッとしてくだしゃい。
……と言いたいところでしゅが、そこまで
こだわる必要も無いでしゅしね。
もうあっちは出来上がっていましゅし」
シルバーの短髪に猫目をした少年の視線の先を
見ると、
「カーッ、これが日本酒かあ!
効っくなあコレ!」
「うまっ、料理うまっ!
ナヴィ様の手料理うまっ!!」
そこには、コウモリのような翼のある少女と、
金髪の半人半獣の女の子が飲み食いしており、
「サキュバスちゃんにワーフォックスちゃん……」
「本能と欲望に正直な方々ですから」
フィオナと堕天使がそれを遠目で見つめ、
「……そういえばフィオナさん。
ご両親へのあいさつは?
出来れば、あたくしたちも年始のあいさつに
お伺いしたいのですが……」
悪霊が切り出すと、フィオナ・ナヴィ主従コンビは
片手を垂直に立てて振り、
「聖戦から年末年始にかけては―――
ウチは基本出入り禁止ですから」
「行ってもいいでしゅけど、命と引き換えにする
くらいの覚悟でないと」
「あいさつが命がけ……!?」
そんな悪霊の肩を、邪神と堕天使が両側から
つかみ、
「いやー、そりゃねえ。
姫始め?」
「どーして悪霊ちゃんが知らないのかなー?」
ニヤニヤする二人に悪霊は姿勢を正し、
「……古い事を知っておいでなのですね。
でも、姫始めは柔らかく炊いたご飯を食べる
お正月の儀式ですけど……
別にそれを邪魔してはいけないほどの事では
無かったような……」
「え? いやー」
「そういう事ではなく?」
予想外の答えだったのか、邪神と堕天使は
ポカンとなるが、
「……では、どういう意味なのでしょうか?
あたくしは古い霊なので、今時の事情に
うとくて……
教えて頂けません?」
ジリジリとにじり寄る悪霊に、二人はその分
後退していき―――
「あれはわかってて言っているでしゅね」
「悪霊ちゃーん、もうそのへんで」
フィオナとナヴィが助け舟を出し、
「……そうですね……
ではこのあたりで……
……日本文化であたくしと張り合おうなど、
百年早くてよ?」
ニコリと笑う和装の彼女に、邪神と堕天使は
ブンブンと首を上下に振り―――
「じゃあ、取り敢えず食べましょうか」
女神が三人と共に、サキュバスとワーフォックスが
すでに飲み食いしているテーブルへ向かい、
「おー、来た来た♪」
「そういや、そっちの姫始めはどうだった?」
「まあそのへんはおいおい……
ゲヘゲヘゲヘ♪」
合流してヒロインらしからぬ笑い声をあげる
フィオナを、従僕が暖かい目で見つめ、
「では、こっちもそろそろ……
本編スタートしましゅ。
しょして皆様、明けましておめでとう
ございましゅ」
ナヴィが新年のあいさつを告げた。
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
「ふあぁ~……
平和ですねえ」
果樹の豊穣を司る女神があくびをし、
「すいません、今のところお手伝いしてもらう
ほどの事も無くて……
それに、グラノーラ家から人手も頂いて
おりますから、忙しくなるのはもう少し
先かと」
息子と同じ鮮やかなグリーンの長髪をした女性が、
申し訳なさそうに語り、テーブルの上に飲み物を
差し出す。
「い、いいえお義母さま!
その時になりましたら、ぜひガンガン
お使いください!」
第三眷属の妹である、銀のロングウェーブの髪の
少女、メイがすかさず答え、
「あー!
アタシだって豊穣の女神なんですから!
神様としてその時が来たらきっちり
しっかりと……!
そういえばお義母さま。
アタシの眷属、アルプはどこへ出かけて
いるんですか?」
慌ててフィオナも追随するが、そこでふと
話題の方向性を変える。
「あの子ならグラノーラ家……
マルゴットさんのお屋敷に行っています。
ほら、ビューワー伯爵様との婚約が
決まりましたので」
あーあー、と女神と少女は首を上下に振る。
「ファジー君とミモザさんも―――
アレ以来すっごく仲良くなりましたしねえ」
「あの2人も寝ているんですかね?
ちょっと起こしてきます?」
フィオナとメイの質問に、ソニアは軽く首を
横に振って、
「取り立ててして頂く事も無いですし、
休める時に休んでもらいましょう。
それでお2人とも―――
ウチのアルプとの進展は?」
その問いに、二人は口にふくんでいた水分を
お互いにかけるように噴き出した。
「ごぶっごぶふっ!?
ししし進展とは!?」
「おおお落ち着いてくださいフィオナ様!
まずはお顔を拭いて……!」
取り乱すフィオナとメイを、妙齢の女性は
涼し気な目で見守る。
「これでも母親ですもの。
あの子の変化はわかりますわ。
でもあの子もねえ……
どちらを選ぶのかと思ったら、まさか
両方なんて。
お父さんに何て報告したらいいかしら」
微笑みと困惑が入り混じった表情で、ソニアは
片方の頬に手を付ける。
「ま、まあ……
アルプさんはそれだけの器だと思うのですよ
ハイ」
「か、神様を妻にするくらいですから―――
奥様の1人や2人、どうとでもなると?
そう思いますですよ!」
二人はやや壊れた言葉ながらも何とか受け答えし、
それを聞いた義母(予定)は何かに気づいたように
顔を上げて、
「私はアルプの意思を尊重しますし、反対する気は
毛頭ありませんけど……
フィオナ様のご両親はどうなのでしょう。
もう既成事実は知っているのですか?」
すると女神の少女は胸を張って、
「そのヘンはウチ、結構オープンですから。
パパもママもだいたいのところはもうわかって
ますよ」
「グレイン国でも一度降臨されましたし、
別に反対とかはしていなかったかと」
ふむふむ、とソニアはいったんうなずいて、
「メイさんの方は?
ご両親へはもうこの事を?」
そこで彼女はカチャ、と飲み物についていた
スプーンを落とし、
「ヤバ……
そういえば全然言ってなかったような」
「メイさんのご両親って―――
シオニムさん、レンさんでしたっけ。
いやちょっとそりゃマズいんじゃ」
あたふたと慌てる少女に、年上の女性は
ふぅ、と一息ついて、
「まずお母さんにだけでも連絡した方が
いいんじゃない?
その上でお母さんからお父さんに話して
もらった方が、いろいろと……」
ソニアから年の功とも言うべき助言に、
フィオナとメイは耳を傾け、時間は過ぎて
いった。
「ふーみゅ……」
「どうしたの、ナヴィさん?」
その頃、女神の従僕は―――
獣人族の少女と一緒に、果樹園を散策していた。
「いえ、グレイン国での一件が気になりましゅて。
あれから同じような気配は感じないのでしゅが」
ナヴィは人間の姿から半獣人のような姿となり、
警戒するようにあたりを見回す。
「気にする事ないんじゃない?
確かにアレはおかしな感じだったけど……」
カガミは赤茶のツインテールを揺らし、
ナヴィの周辺を踊るように動き回る。
「気のせいだといいんでしゅけどね。
そろそろ、家に戻りましゅか」
そこで彼は半獣人から完全な人間の姿へと
戻り、その後を獣人の少女がシッポを振りながら
ついていった。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6687名―――
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