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48・可愛い声で可愛くない事を

( ・ω・)年末年始も普通に更新!

(それだけが取り柄)


天界・フィオナの神殿じっか―――


「あ~……

 う~ん、これは―――」


腰まである金のロングヘアーをたなびかせ、

モデルのような凹凸の体型の女神がうなる。


「アルフリーダ様。

 定期の報告ですが……おや?

 何をしていらっしゃるんですか?」


そこへ彼女の従僕である、シルバーの長毛種の猫が

やって来て―――


「あ、ナヴィ。

 報告ね、ちょっと待ってて」


そう言って彼女は耳に付けていた装置を外すと、

向き直る。


「はあ、それでは……」


そして彼は、主人にいつもの報告を始めた。




「……奇妙な力、ねえ。

 しかも人外の―――


 私たちに近い『力』?」


「神、と呼べるようなものではなく、

 むしろ対極にあるような力でしたが……


 気になったので今回の報告に加えました」


トントン、と指先でテーブルを叩きながら、

彼女は考え込む。


「ちょっとタイミングがねー。

 私とパパが向こうに行った後で、というのが

 気になるわ。


 後でパパの耳にも入れて置いた方がいいかしら」


「それがよろしいかと。


 ところで、何をしていらっしゃったんですか?」


アルフリーダの後方にあるモニターに、

ナヴィが視線を送ると、


「いやまあ、ねえ?

 せっかくフィオナちゃんが自分の部屋に男を

 引っ張り込むまで成長した事だし―――

 その成果をこの目と耳で確かめたいと思って」


「あの聖戦クリスマスの日のものですか。

 まあアルフリーダ様ですし何も言う事は

 ありませんけど……


 そういえばあの日の後、私が戻って来たら

 部屋が散らかっていた上に、フィオナ様も

 メイさんも疲労困憊ひろうこんぱいしていたんですよね。


 アルプ君は寝過ごした程度でしたけど。

 何があったのか、記憶もあいまいのようで」


主従はプライバシーゼロの会話をし、

そこで主がふと首を傾げ、


「聖戦の日って、あなたは家にいなかったの?」


「さすがにあそこに居続けられるほどの

 勇者ではないですよ。


 邪神さんたちと一緒に―――

 悪霊さんの家で過ごしていました」


人外とはいえ女性五人と聖戦の夜を過ごしたという

彼に、女神は目元を緩ませるが、すぐに戻り、


「……どうせあのコたちの事だから、

 お互いにけん制し合って手が出せなかったん

 でしょうけどね」


「まったくもってその通りだったわけですが。

 それで、フィオナ様の身に何が?」


従僕の質問に女神は端末を操作する。

するとモニターに動画が再生され、

主従揃ってのぞきこむと―――


『らめっ、らめええっ!!』

『許ひてぇ! 許ひてぇえ!!』

『だめっ、これ以上らめえぇええ!!』

『ダメ、止めて、止め……止めないで!!』


それを見たナヴィはアルフリーダへ視線を向け、


「……何ですかこれは」


「いやーあの2人の事だから、どうせ

 積極的な事は出来ないだろうなーと

 思って。


 それで時々パパに服用させている、

 ちょっと理性吹っ飛びーのお薬を

 アルプ君の食事に混ぜたんだけど……」


モニターの動画を止めると、アルフリーダは

気まずそうに、


「ま、まあ!

 アルプ君はともかく、あの2人には忘れられない

 クリスマスになったでしょう!」


「ある意味そうとも言えますね。


 それじゃそろそろ、本編スタートしましょう」




│ ■グレイン国・王宮中庭施設   │




「では、名残り惜しいですが……」


「わらわとしても、『バクシアの鬼神』、

 『フラールの剣聖』―――

 そして『ミイト国の剣姫』を迎えて剣闘会を

 もよおせた事……


 我が国の騎士団長、副団長との試合、

 また騎士団を鍛え直してくださった事、

 とても誇りに思っております」


ボリュームのある艶をたたえた黒髪をなびかせ、

グレイシア王妃が眼下の三人を称える。


剣闘会も終わり、グレイン国から離れる事になり、

別れの挨拶として御目通りを願い出て、


バーレンシア侯爵にビューワー伯爵、

そしてシッカ伯爵令嬢がひざまいて、王妃の言葉を

受け取っていた。


「これで―――

 『新貴族』などという跳ねっかえりどもも、

 大人しくなるであろう。


 『枠外の者』についても、面白そうな事を

 仕掛けているようだしのう。


 そなたらの活躍、今後も期待しておるぞ」


貴族の三人はこうして謁見えっけんを終え―――

一行の待つ宿泊部屋へと戻る事にした。




│ ■バーレンシア侯爵一行宿泊部屋 │




「あ、侯爵様!

 お帰りなさい」


「もう準備は済んでおりますけど……

 すぐたれますか?」


アルプとファジーが三人を出迎え、


「あー、そんなに急がなくてもいいよ。

 どうせ帰りはみんな馬車だよね?」


「そうですね。

 眷属のみなさんが揃っちゃっていますから。


 アタシの『移転』あれば、眷属の出身地か

 眷属がいる場所へすぐに移動出来るん

 ですけど―――


 さすがに荷物までとなると」


侯爵の言葉にフィオナが受け答える。

彼女の視線の先には大量の荷物がまとめて置かれ、


「改めて見るとすごいですね……

 これ全部、男子禁制の本ですか」


白銀の短髪の伯爵が、目を見開きながら

感想を述べる。


「ほ、本というより要望書?」


「あ、あの事業は―――

 『枠外の者』の女性陣営を始め、様々な

 女性層を取り込む目的もありますので」


ロングのブロンドヘアーをした女騎士ふうの

女性と、赤い長髪の豪商の娘……

レイシェンとマルゴットがやや戸惑いながら

答え、


「多分半分は、グレイシア王妃様始め―――

 この国の王宮からだよ」


「ちょーっと盛り上がってしまいまして、

 あはは……」


ミモザとポーラが苦笑しつつ補足する。


「でもさばけるの?

 いくらトーリ財閥でも、これは」


メイが心配そうにシンデリンとベルティーユ姉妹に

声と一緒に視線を向けるが、


「あ、大丈夫。

 王妃様から資金提供の約束を取り付けたから」


「……私たちの国……

 ミイト国のシャロレー正妃様にも打診して

 くださるそう……!


 あとシフド国のスカーレッド王女にも……」


それを聞いたシモンが、頭の後ろに手をやり、


「序列上位三ヶ国が後ろ盾になるのかよ」


「アレがですか……

 嫌な国家規模の事業ですね」


続けて、大まかな内容を知っているネーブルは、

目を線のように細くする。


「まあそこまでのプロジェクトになったら、

 手を出して来る連中はいないでしゅよ」


「出して来たらカガミが八つ裂きに

 するけどねっ♪」


「可愛い声で可愛くない事を言わないで

 くだしゃい」


最後に、ナヴィとカガミのやり取りで

締められた。




「僕は一度ミイト国に立ち寄るけど―――

 みんなは?」


ティータイムとなり、頬にクロスの傷がある侯爵が

何気なく問う。


「ミイト国?

 バクシアへ戻る前に、ですか?」


ビューワー伯爵が聞き返すと、彼は照れながら、


「シッカ伯爵家へ、その、一応挨拶に」


それを聞いて、隣りに座っていたレイシェンの

顔も赤くなる。


「ここ最近でカップルになった方々も

 多いですから……」


マルゴットがうなずきながら語り、


「貴族様となると、そういう事はおろそかに

 出来ませんしね」


「……私たちも帰ったら……

 両親を説得しなければ……」


トーリ財閥の姉妹も自分たちの立場を

思い出したのか、気合いを入れる。


「アタイらはアルプさんの家に戻るか。

 ルコルアの家に帰っても何も無いしな」


「その前にバクシアのボガット家に顔見せ

 しないと」


「例の商売についても、クレアさんや

 ソニアさんに話す事が―――」


全員が、帰る、もしくは帰った後の事で

話に花を咲かせている時……

部屋にノックの音が響き、


「はい、どちら様でしょうか」


メイの言葉に返ってきたのは、


「マイヤーとガルディ騎士団長だ。

 少々話をしたいのだが、いいかね?」


その答えに、全員が顔を見合わせた。




「すまんね。

 ただ、グレイン国から出て行く前に、

 どうしても話しておきたい事があった」


「と言っても用があるのは―――

 あの剣闘会に出た人間だけなんだけど」


その肩幅に比べ、痩せ過ぎとも思える顔の

四十くらいの伯爵と、


ピンクに近い白い短髪をした、鋭い眼光の

王室騎士団長が、長年の友に対するような

気安さで話し始めた。


「剣闘会に出た、と仰いますと―――

 僕とビューワー伯爵、シッカ伯爵令嬢、

 ネーブル君になりますが」


「ああ。

 それで、決勝戦についてだが……


 率直に言おう。

 『新貴族』も『枠外の者』も、あれには

 関与していない。


 何か気付いた事はなかったか、同じ剣士として

 問いたい」


バーレンシア侯爵の言葉に、マイヤー伯爵は

すぐに言葉を繋げて聞き返す。


「一言で言って、異常でしたけど」


「そういえば、あの選手は大丈夫だったん

 でしょうか」


侯爵と伯爵のカップルがまず答え、


「ゲルータ選手についてだけどねぇ、

 ケガはまあ……完治すれば元通りとまでは

 いかないまでも、訓練次第というところだと

 医者は言っていたよ。


 それより問題は―――

 どうも本人、試合中の記憶が無いらしいんだ」


ガルディの説明に、周囲にいた出場しなかった

面々もざわつく。

直接事情聴取したナヴィを除いて。


「直接戦った私としましては……


 何か人にあらざる力を感じました。

 悪い方面に、ですが。


 フィオナ様を女神とするのであれば、

 あれはまるで―――」


その先の言葉をバートレットは飲み込んだ。

そして次を待たず、


「いや、参考になったよ。

 確かにあの力は尋常じんじょうではなかった。


 それでは失礼する」


「それと、先日の王室騎士団の訓練について

 礼を言っておくよ。


 アイツらもいい薬になっただろう。

 じゃ、気を付けてお帰りください」


彼らは一礼して退出し、部屋の中は微妙な

雰囲気になるが、


「えー、どうするんですかこの空気」


「オイ神様、お前何も感じてないんでしゅか」


ポカンとするフィオナにナヴィがツッコミを

入れるも、


「え、えっと―――

 フィオナ様が何も感じないのであれば、

 安全なのでは?」


「そ、そうですよっ。

 それほどたいして危険ではないという

 事です!」


アルプとファジーが眷属としてフォローに

入り―――

その後はなし崩しに帰り支度の話となった。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在6614名―――




―――9章へ続く―――




( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

基本、土曜日の午前1時更新です。

休日のお供にどうぞ。


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