47・相手が異性でなければ浮気ではない
( ・ω・)さすがに出勤前と寝る前の一時間は
暖房をかける事に(木の床は寒さがこもる)
日本・とある都心のマンションの一室―――
黒髪セミロングの、家主と思われる少女と、
シルバーのロングウェーブの髪を持つ同世代の
同性が、リビングで語り合っていた。
「ほうほう、ここがフィオナ様の……
まるで別世界。
さすがに神の住まう神殿―――」
「あ、いやココは別荘みたいなものですから。
まだメイさんには神の世界は早いかなーって。
だからアタシが拠点としている、個人用のウチに
来てもらったんです」
女神と一緒にいるのは、第三眷属の妹で……
興味津々で部屋の中を見回る。
「いやしかし、外の景色は見えないように
して頂けませんか?
こんな高い場所、わたくしは生まれて初めてで」
「あー、ここマンションでも最上階ですからね。
あっちの世界のどんなお城より高いと思います
から……」
カーテンを閉めるフィオナの後ろで、従僕の
お目付け役(人間Ver)が入ってきて、
「いらっしゃいませ。
何気にあの世界からは初めてのお客様
でしゅね。
というか、フィオナ様の事でしゅから、
真っ先にアルプ君を呼ぶかと思いましゅたが」
シルバーの短髪に縦線の猫の目を持つ少年は、
お茶とお菓子をテーブルに置く。
「あ、アルプはこの後すぐに来ますが、
その前に彼女を呼んだんです。
彼を招待するにあたり、先に彼女に来てもらって
注意点を洗っておこうかと」
「しかし、こんな高い場所にお風呂もトイレも
何もかもあるのですか。
それもご実家ではなく、別荘。
ここで彼と一夜を共に出来たら―――
まさに天にも昇る気持ちになりますわ……♪」
そこでコホン、とナヴィが咳払いして、
「それはそうと、よくメイさんを異世界に
連れて来る事が出来ましゅたね?
眷属でもなし、手続きが大変だったのでは」
「いやー、そりゃもう。
天界市役所から一時滞在と条件の説明、
その申請書……
書類、10枚以上ありましたよ。
しかしこれも全ては、我が弟夫……
アルプきゅんのため―――」
握りこぶしを作るフィオナに、従僕の少年は
ジト目で、
「……私はまた、1人では勢いがつかず
再びヘタレるかも知れないから、
メイさんを呼んだかと思いましゅたよ」
その言葉に女神と少女は、
「ななな何言っているんですかー。
そそそそんな事はー」
「ぬ、抜け駆け禁止って事ですよねー。
だって2人ともアルプ君の妻になったん
ですしー」
彼は目が泳ぎまくっているフィオナとメイに、
ため息をつきつつ、
「はあ……
しょれではそろそろ、本編スタートしましゅ」
│ ■グレイン国・王宮中庭施設 │
│ ■バーレンシア侯爵一行宿泊部屋 │
「ふぁあああ……
いやあ、あそこまで妄想と欲望で盛り上がるとは
思いませんでしたね」
「グレイシア王妃様始め、熱気が違いました
からね」
フィオナがまずベッドから身を起こし、
続けてメイが近くのイスで伸びをする。
「結局、最後はシモン君まで……」
「ファジーもなあ……
いや、素材としては極上ってのはわかるん
だけどさ」
第三眷属の、銀のロングウェーブの少女と、
第二眷属の姉がブラウンの髪をかきあげて、
話題に加わりながら、ソファーから起き上がり、
「こう言っちゃなんだけどさー。
みんな身内とか恋人をネタにするのはいいの?」
火の玉ストレートで、赤茶のツインテールの
獣人族が切り込む。
「まあそこはホラ。
相手が異性でなければ浮気ではないって
ゆーか?」
「そういうカガミさんは―――
兄であるリオネルさんやキーラさんが、
ネタにされたらどうするんだい?」
ポーラとミモザが聞き返すと、
「大好物!!」
ガッツポーズを決める彼女を前に、
ウンウンとうなずく者と目をそらす者の
二通りの反応に分かれる。
そこへノックの音が響き、
「フィオナ様。
もう起きていらっしゃいますか?」
第一眷属の少年の声に、全員が朝の身支度を
始めた。
「あり?
アルプ君とファジー君と……」
「シモン君だけ?」
宿泊にあてられた―――
そのさらに中央の大きな部屋へ来ると、
小学校高学年くらいの少年二人と、それより
若干年上の褐色肌の同性が出迎える。
フィオナとポーラの問いに、グリーンの短髪と
瞳を持つ少年が、
「バーレンシア侯爵様始め、剣闘会に出ていた
方々は―――
バクシアの王室騎士団の稽古の指導へ
出かけています」
「グラノーラ令嬢やトーリ財閥のご姉妹も、
その付き添いで」
次いで、姉と同じブラウンの髪の少年も
補足するように説明する。
「多分、2・3日はそっちに行ってるんじゃ
ねーの?
俺たちは特に何も言われてねぇし―――
後は帰るだけ。
まあ、侯爵様たちが戻ってくるまで自由時間
ってわけだ」
シモンが最後に答えると、女神はキョロキョロと
辺りを見回し、
「えーと、ナヴィの姿が見えないんですけど」
それを聞いたアルプとファジーは、
「そういえば……
さっきまでいたんですけど」
「どこかへ行くとは言ってませんでしたし、
すぐに戻って来られるのでは?」
少なくとも、長時間見ていないわけではないと
判明したので―――
それもそうか、とみんなが流す。
「ナヴィさんなら、何があったって
大丈夫デショー」
「まあ、それもそうですね。
みなさんはこれからどうします?」
カガミの後に女神が今後の事について
話し出し、話題はそちらに集中した。
│ ■剣闘会 会場施設内救護室 │
「う~ん……
何がどうなってんだ、こりゃあ」
スキンヘッドの剣士―――
ゲルータは、ベッドに横たわりながら、
まだ状況を整理出来ないでいた。
視線の先は、剣闘会の準優勝を称える書状に
数々の賞品……
そして報奨金として金貨の詰まった袋。
「話によると―――
あの『フラールの剣聖』相手に、死闘を
繰り広げたという事だが。
いくら何でも俺にそんな実力があるとは」
彼自身、大会にエントリーするくらいだから、
それなりに自信はあった。
同時に、自他の腕前を分析・把握出来る程度の
能力もあり……
それだけに、ケガをしたとはいえ大会の結果は、
素直に受け入れられるものではなかった。
「失礼しましゅ。
あなたが、ゲルータ選手でしゅね?」
「あ? ああ」
空返事を返した先には、銀髪の―――
少女と見紛うような少年が立っていて、
そして瞬時にその戦闘能力も理解し、
体が身構えようとするが、
「あいたたたた!!」
「む、無理はしないでくだしゃい。
しょのままで結構でしゅ。
私はナヴィといいます。
少々、あなたに聞きたい事がありましゅて」
ゲルータは観念したように大人しくなり、
「どっちかというと―――
俺の方が聞きたい事がたくさんあるんだが」
「わかっていましゅ。
今のあなたからは妙な気配は消えて
いましゅから……
ご自分がわかっている範囲でいいでしゅので、
お聞かせ願えましぇんか?」
そこでゲルータは、素直にナヴィの事情聴取に
応じ始めた。
「ふーみゅ……
二試合目の後から記憶があいまいだと」
「ああ。
そっから先は、ここのベッドで目覚めたのが
一番新しい記憶だ。
そういや、同じく剣闘会に出場していた、
お偉いさんや騎士団長とやらも―――
何やら聞きたがっていたようだが。
何せ、本当に記憶がねぇんだよ」
彼の答えに女神の従者は眉間にシワを寄せる。
ウソは言っていないのだろう。
そしてマイヤー伯爵やガルディ騎士団長まで、
話を聞きに来たという事は……
彼らの想定外の事が起きたという事を意味している。
「(少なくとも『新貴族』や『枠外の者』は
関与していない?
アレが人為的に引き起こされたものでは
ないのだとしましゅたら―――
後でアルフリーダ様やユニシス様に
報告・相談でしゅねコレは)」
一人考えるナヴィに、不安になったのかゲルータが
口を開き、
「な、なあ。
俺は何か、ヤバい事に巻き込まれているのか?」
「いえ、それはないでしゅ。
もうあなたからは妙な気配はしましぇんし……
お大事にしてくだしゃい、では」
そう言うと彼の前で少年は姿を消し、
「……
夢だな、こりゃ」
ゲルータはそのまま、ベッドの上で両目を閉じた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6599名―――
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