46・そこはホラ、妄想の力で何とでも
( ・ω・)今章は多分、あと1話か2話で
終わります(次章ネタ考えねば)
日本・とある都心のマンションの一室―――
黒髪セミロングの目付きのやや鋭い少女と、
狐耳の女の子がリビングでくつろいでいた。
「はー……
最近、めっきり寒くなってきましたね」
「フィオナさんはあまり外出しないから、
関係ないでしょー」
豊穣の女神と、ワーフォックスの少女は
ホットカーペットの上で語り合う。
「いやいや。
たまーに外に出るのが結構厳しいんですよ。
めっちゃ温度差を感じるってゆーかー」
「まあ私のように毛皮があるでもなく……
そこはキツイでしょうね」
そこでフィオナはきょとんとして、
「そうなんですか?
ワーフォックスちゃんは平気?」
「そりゃあ、人狼ならぬ人狐ですから―――
ある程度の温度変化には耐えられますよ。
それに狐って、いろいろな環境に対応
出来ますから」
ふと女神は、同じリビングの段違いの床に
設置されたコタツを見て、
「じゃあアレに入ったまま出てこない、
何て事もないんだ?」
「ナヴィ様や猫じゃないんですから。
そんな事ありませんって」
そう言う彼女はすでにコタツの中から
答えていて、
「ああ!! いつの間に!?」
「お約束ですねー」
そこへ、お茶とお菓子をお目付け役(人間Ver)の
少年が運んできて、
「分類上、ネコ目イヌ科の亜科でしゅからねえ。
しょれに動物に近ければ近いほど―――
狭く暖かく安全な場所に抗えるわけもなく。
まあそろそろ、本編スタートしましゅか」
│ ■グレイン国・王都ウィーンテート │
│ ■剣闘会 会場施設の一室 │
「おー、やっぱりビューワー伯爵様が勝ったんだ!
歓声がここまで聞こえてきたぜ」
「でも対戦相手って、そんなに強かったんですか?」
ネーブルが一時的に休息している控室で―――
ミモザとファジーが女神一行を出迎える。
「強い……っていうか、何かおかしかったんです」
「結局は伯爵様が優勝しましたけど」
フィオナと、彼女の第一眷属の少年・アルプが
困惑しながら語り、
「それで、伯爵様たちは?」
「……侯爵様や、シッカ伯爵令嬢の姿も
見えないけど……」
ロングのバイオレットヘアーの姉と、
姉と同じ色の髪を、自分の身長と同じくらいに
伸ばした妹―――
トーリ財閥の姉妹が聞いてくる。
「出場者は今、剣闘会の閉会式に出席しているぜ。
お嬢もその付き添いで」
「ネーブルさんにも連絡が来ませんでしたか?」
シモンとポーラが、他のメンバーについて
説明するが、
「あー……
来ましたし、出れないほどでは無かったの
ですが……」
黒髪黒目の少年は、シンデリンとベルティーユに
両腕をつかまれるようにして苦笑する。
「まあ、負傷者まで出ろとは言わないでしょうし、
あの対戦相手……ゲルータ選手も治療していると
思いましゅから」
「カガミもびっくりしたよアレー。
ちょっとガッツがあり過ぎだよねー」
女神の従僕と、第四眷属の獣人族の少女が
感想を口にし―――
「(後で、ユニシス様・アルフリーダ様に
報告の必要がありましゅかね)」
「ん? 何か言ったナヴィ?」
「いえ別に」
ぼそりと言った言葉をフィオナに聞かれた彼は、
それを誤魔化した。
│ ■剣闘会 会場施設内救護室 │
「う……ここは?」
一通り治療を受けていたゲルータ選手は―――
ベッドの上で目を覚ました。
「お目覚めかな?」
そこで、頬がくぼみ、顔は平均以上に痩せている
白髪交じりの短髪の男が、彼を見下ろす。
その隣りには、180cmを超える身長の
目付きの鋭い青年もいて、
「だ、誰だアンタら?
……い、いててててて!?」
スキンヘッドの男は上半身を起こそうとするが、
そこで自分の腕の状態を初めて確認したようで……
「なな、何だぁ!?
お、俺の腕が……」
「覚えていないのか?」
ガルディが男の行動を不審がり、聞き返す。
「お、覚えてねぇも何も―――
そ、そうだ!
剣闘会はどうなったんだ!?」
「フラールの剣聖……
あのビューワー伯爵を相手に決勝戦を戦い、
敗れた。
それでも準優勝だよ、おめでとう」
淡々と語るマイヤー伯爵に対し、ゲルータは
目を白黒させ、
「け、決勝……戦? 準優勝?
俺はまだ、二試合目を終わったばかりで」
彼の言葉に、伯爵と王室騎士団長は顔を見合わせた。
│ ■グレイン国・王宮中庭 │
「はー……
これで一通り終わったかな?」
「想定外の事もありましたが、無事に終了して
良かったです」
レンズの裏から三白眼の目をのぞかせる侯爵様が、
恋人である伯爵令嬢と隣り同士、片膝を地につけて
語り合う。
その前では、一緒に跪くシルバーの短髪の
青年貴族と―――
上段にグレイン国王妃が国王と共に鎮座し、
「此度の剣闘会での優勝を称える。
バートレット・ビューワー伯爵」
「その腕前、確かに見届けました。
『フラールの剣聖』―――
『バクシアの鬼神』、『ミイト国の剣姫』も……
噂に違わぬ実力の持ち主でした」
王族より称賛の言葉を頂き、三人は頭を下げる。
いくつかの問答の後、王は退出し……
王妃がその豊かな黒髪を左右に揺らし、段上より
降りて来た。
「堅苦しいのはここまでにしようぞ。
しかし、シッカ伯爵令嬢の活躍には、
目を見張るものがあった。
あのように女性が強くなれば―――
男どもも大きな顔は出来ぬであろう」
金髪ロングの、いかにもな女性騎士の装いの
彼女に向かって語り掛け、
「でもわたくしの場合……
より強い殿方が夫になりますから」
「ノロケるのう、と言いたいところであるが、
確かにそれだけの実力はあるじゃろう」
バーレンシア侯爵の方を彼女が見ると、
彼は赤面して視線を落とす。
「そういえば、あのバスタ副団長を負かした
少年の姿が見えぬが……」
「ネーブルなら、まだ試合の後の疲れが
取れていないとの事でして」
やや離れた場所から、マルゴットが答える。
そこでグレイシア王妃は男性陣に向かって、
「すまぬが、シッカ伯爵令嬢を少し借りても良いか?
女性剣士は珍しいというのもあるが、
あれだけの戦いを見せてくれたのだ。
彼女の話を聞けば、我が国の女性も強く
なろうて」
いたずらっぽく笑う王妃に、侯爵と伯爵は、
「後でちゃんとお返し頂ければ」
「男としては―――
あまり強くなられても考えものですけどね」
二人もまた軽口で返し、後には女性陣が
残される形となった。
「……行ったか?」
「はい。お2人とも宿泊する部屋まで戻られた
ようです」
一人の侍女が王妃に報告すると、周囲のメイドや
護衛の女性騎士などが集まってきて、
「今回の組み合わせは、っと……
ネーブル×バスタ副騎士団長、
バーレンシア侯爵×マイヤー伯爵―――」
グレイシア王妃が話の口火を切ると、
「バートレット様は優勝ですけど、絡みは
少なかったですし」
「それは仕方がないといいますか」
マルゴットとレイシェンがそれぞれ続く。
「そこはホラ、妄想の力で何とでも」
「……5人がそろぞれ絡むとなると……
10通りの組み合わせが……」
いつの間にかシンデリンとベルティーユ姉妹が
加わり、
「受けと攻めを逆転させれば、その倍に
なるじゃないですか」
「そこに気付くとはやはり天才か……」
「さすが女神様!
目の付け所が違うねー!」
フィオナとメイ、カガミもしれっと参戦し、
「ま、まあ女神様もこう言ってんなら……
公認って事でいいの、かな?」
「い、一応『女神の導き』の重要な収入源にも
なりつつありますし。
意見を出し合うのもやぶさかではない、かと?」
ミモザとポーラも、言い訳のように参加して―――
女性陣は大いに盛り上がりを見せた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6578名―――
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