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45・あの人ちょっとガマン強くない?

( ・ω・)最高気温が10度以上あると楽。

(寒さに強く暑さに弱い)


日本・とある都心のマンションの一室―――


欧米モデルのようなプロポーションを持つ、

ブロンドの長髪を持つ女性と―――

黒髪セミロングの目付きの鋭い少女が、

一緒になって荷物の梱包や片付けに追われていた。


「もー、フィオナちゃん。

 あなたいったいどれだけ買い込んだのよ」


「こ、これでも量は減らしたんですよ!

 涙を飲んで捨てたのもありますし……!」


母と娘が大量の薄い本相手に奮闘ふんとうする光景を前に、

銀髪の少年は呆れながら声をかける。


「このマンション、結構大きいと思うん

 でしゅけど―――

 いったいどこにこれだけのいかがわしい本を」


「ほらーだから言ったじゃない。

 現物だけじゃなくデータ化しておきなさいって」


「私が言いたいのはそういう事じゃ

 ないのでしゅが、アルフリーダ様」


主従のやり取りの後、娘の方の女神は


「いやでもそこはホラ……

 ラッキースケベっていうか、部屋でわざと

 アルプに見つかるようにして―――

 『きゃっえっちなほんみつかっちゃった♪』

 というシチュのためでもあって」


「百歩譲ってそれ狙いはアリだとしても、

 BLは無いと思いましゅよフィオナ様」


冷静にツッコミを入れるナヴィに対し、


「考えるな!」


「感じるんだ!!」


母娘のほぼ同時の答えに彼は両目を閉じ、


「考えてもわかりましぇんし、

 感じられる何かもないんでしゅけれど……


 理解出来ない私はきっと正常だと思いましゅ。

 そうでしゅよね?

 誰かそうと言ってくだしゃい。


 ……それではそろそろ、本編スタート

 しましゅか」




│ ■グレイン国・王都ウィーンテート   │

│ ■剣闘会会場             │




『こ……これはすごい試合になってきました!


 ゲルータ選手、まだ勝負を捨てておりません!

 明らかに折れた腕で、まだ木剣を持ち続けて

 おります!!』


拡声器のような道具で実況が伝えられると、

観客席は異様な盛り上がりを見せる。


異常な相手を前に、バートレットはさっき頭の中に

響いた、説明のような声を整理していた。


「(軍神の加護……

 それに、危険の度合い? がさらに上がって

 いるとも言っていた。


 いずれにしろ、尋常じんじょうならざる何かが起きて

 いる事は間違いない)」


構えながら一定の距離を取り、現状を把握する。


「(だが―――

 彼の肉体に対して効果が薄いのは、

 今の状況から明らかだ。


 どこか弱点は無いのか……?)」


伯爵は改めて対戦相手を見据える。

そんな彼を、恋人であるマルゴットは不安そうに

見上げ、


「も、もう十分でしょう!

 相手も腕が折れていますし、これ以上試合を

 続ける事は……!」


青みがかった短髪の侯爵は、深くため息を

ついて、


「とはいえ、相手が参ったって言ったわけでも

 ないし―――

 しかもまだやる気満々みたい」


「明らかに異常なのはわかりますが、

 続行の意思を捨てていないのですから」


ミイト国の『剣姫』も―――

彼の言葉に同調する。


そしてやや離れた場所で、グレイン国の剣士三人が

小声で話し合っており、


「もしや、あの『小細工』の影響か……!?」


「落ち着いてください、マイヤー伯爵。

 ありゃわずかに麻痺させる程度のモンです。


 どう逆立ちしたって、あんな事にはなりません」


アラフィフの伯爵に、チェリーブロッサムの短髪の

騎士団長が答える。


「我々以外に何か企む者が……?」


特徴的なエアリーの髪型の副騎士団長が、自身の

疑問を口にするが、


「『新貴族』とは別の勢力が?

 まさか『枠外の者』?」


「いや、我らに横やりを入れるほどの度胸は、

 連中にはないでしょ。


 それはそれで問題ですけどねぇ……」


『新貴族』『枠外の者』―――

そのどちらでもない勢力・存在を暗に認め、

ガルディは眉間にシワを寄せた。




「うわ、うわわわわ……

 何であの人まだ戦ってんの!?

 あの人ちょっとガマン強くない?」


「フィオナ様、ガマンでどうにかなる段階じゃ

 ないと思うんですけど―――」


観客席ではフィオナが恋人となったアルプの

片腕にしがみつき、


「ちょちょちょっとフィオナ様?

 そう言ってアルプに抱き着く理由にして

 いませんかぁ?」


「いえあの、メイさんも僕の片腕をしっかりと」


その反対側で、シルバーのウェービーヘアーをした

少女が、少年の片腕を両腕でつかんでいた。


「いやでも、ちょっと異常だろこりゃ」


「試合を続けても大丈夫なんでしょうか」


シモン・ポーラのカップルが不安そうに見つめ、


「まあ確かにヘンだよねー。

 あのゲルータとかいう人?」


「…………」


獣人族の少女の言葉に、ナヴィは答えず、

ただジッと試合場を見下ろす。


「ねーねーナヴィさん。

 聞いてる? カガミの話聞いてる?

 ねーったら」


空気を読まない赤茶のツインテールの少女は、

そのまま銀髪の少年をぐいぐいと押すように

体を密着させ、


「聞いているでしゅよ。

 だからやめてくだしゃい。


 ……確かにあの相手から、妙な気配が

 するんでしゅよ。

 でもしょれはどちらかというと―――」


そう彼が言いかけたところ、客席が一気に

沸き起こり、


「おお!?」


「ま、また打ち合い始めたようです!」


女神と第一眷属の言葉で、彼の話はいったん

打ち切られた。




「シャアアアッ!!

 キィエエエッ!!」


「く……!

 この……っ!」


握力と勢いだけで降りかぶってくるゲルータの

木剣は、ビューワー伯爵を追い詰める。


「(『新貴族』か『枠外の者』の刺客か?

 いや、そういう気配ではない。


 人とは異なる、何か―――

 次元の違う力を相手にしているような……


 ?? いや、今何か……!?)」


追い込まれているように見えて、伯爵は相手選手を

冷静に見ていた。


それは彼だけではなく―――

その木剣。


「(あの、黒いモヤのような物は何だ?

 ゲルータの体にそれは見えない。


 彼が手にしている……

 あの木剣だけに、ヘビのようにまとわり

 ついている!


 つまり本体は―――)」


「バートレット様!?」


「!?」


「ビューワー君、何を?」


真っ赤なロングヘアーの恋人と、レイシェン、

そしてバーレンシア侯爵が、檀上だんじょうの彼の構えを見て

思わず声を上げる。


ビューワー伯爵は片手に剣を持ち……

まるでレイピア、フェンシングのように剣先を

相手へと向けていた。


「妙な構えだな。

 だが、この期に及んでこけおどしのような手が

 通用する相手とも思えんが」


「何をする気でしょうかねえ」


「―――!

 来ます!」


マイヤー伯爵・ガルディ・バスタの騎士団組が

その行方を目で追う中、戦闘は再開され、


「ガアアッ!!」


「―――ハッ!!」


次の瞬間、両者の木剣は『くっついて』いた。


正確には、バートレットの木剣の剣先が……

ゲルータの持つ得物の刀身部分、わずかな

刃の場所を突いていて―――


しばらくそのまま、両者とも微動びどうだにせず、

周囲や観客は固唾かたずを飲んで見守っていたが、


「あ……?」


「見ろ、木剣が……!」


それを見て、客席がざわつき始める。


ゲルータの方の木剣が、ボロボロと崩れ始め―――

その刀身部分は完全に粉々となり、


「ウググ……グガァ……」


断末魔のようにゲルータがつぶやくと、

そのまま前のめりに倒れた。


十秒ほどその光景に、誰もが沈黙していたが、


『勝者―――

 『フラールの剣聖』!!

 バートレット・ビューワー伯爵ー!!


 ビューワー伯爵の優勝です!!』


拡声器で決着が伝えられると……

観客席は一瞬間を置いて、大歓声に包まれた。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在6561名―――



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

基本、土曜日の午前1時更新です。

休日のお供にどうぞ。


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