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43・妄想会議の中身を言わないように

( ・ω・)やはり休日があると執筆スペースが

落ちる(自己責任)


日本・とある都心のマンションの一室―――


「お~……

 やはりコレはいいものですねえ。

 さすが日本文化」


やや目付きの鋭い黒髪セミロングの少女が、

コタツに入りながら独り言のように語る。


「基本、空調が効いているので―――

 出す理由はあまりないのですが」


コタツの中から、お目付け役(猫Ver)の

声が聞こえ、


「じゃあしまいます?」


「全力でお断りします」


フィオナの言葉に速攻で返すナヴィ。


「まあ猫ですものね、アナタ。

 狭くて暖かくて身を隠す事の出来る……

 それにあらがう事など不可能でしょう」


「何でフィオナ様に言われると、正論でも

 ムカつくんでしょうね」


「いやムカつかないで」


いつも通りのやりとりをする主従。

そして彼は話題を変え、


「そういえば、部屋にやけにコスプレ衣装が

 増えてきているような気がするのですが」


「あー、まあアタシもアルプとそういう仲だし?

 そろそろウチにご招待するにしろ―――

 ベッドインプロレスの準備もしておかなければ」


ナヴィはコタツの中で、カカカッと後ろ足で

頭をかき、


「まあ別にいいですけど……

 それがアルプ君の好みかどうかは

 わかりませんよ?」


「そりゃ多少は戸惑うかもしれないけど、

 それも含めていいスパイスになるじゃないの」


フィオナの返しに彼は続けて、


「だいたい異世界のものなんですから、

 当人にしてみれば奇異でしかないのでは」


「えー? そうかなあ。

 そこはアタシが優しくリードしてあければ

 いいだけだし」


そこで従僕はフー、とため息をついて、


「いや男って結構繊細な生き物ですからね?

 フィオナ様が着る物次第ではドン引きになる

 可能性も」


「え? あのコスプレ衣装ってアルプに着てもらう

 ヤツだけど」


女神の答えに、従僕はコタツから頭を出して、


「前言撤回。

 というかいきなり相手にそんな高度なプレイを

 要求すんな」


「そんなのわからないじゃない!

 病みつきになるかもしれないじゃないの!」


「そんな心の病にかかって欲しくないんですが」


あくまでも一般論で諭すように語るナヴィ。

それに対してフィオナは、


「それにコスプレは初めてじゃないわよ?

 ハロウィンの時、何でも着てくれたんだから!」


それを聞いたナヴィは目を線のように細くして、


「順当に軍神(ユニシス様)と同じ道をたどっていますね……」


「何か言った? ナヴィ」


「いえ……


 それじゃそろそろ、本編スタートしましょう」




│ ■グレイン国・王都ウィーンテート   │

│ ■剣闘会会場             │




「シッ!」


「ハァアッ!」


ガルディが縦に打ち込むと―――

レイシェンは横に木剣を構えてガードし、


返す彼女の打ち込みを、互いに合わせるように

彼は十字の形にして受け止める。


「やってられないねぇ。

 さすがはミイト国の『剣姫けんき』―――


 ただ少しは疲れてきたかな?」


「男女の体力差くらいは……

 わたくしも理解しているつもりですわ。


 長期戦は不利。

 ですが、あなたにも急ぐ理由があるのでは

 なくて?」


一定の距離を取り、ピンクと白の中間色の短髪の

騎士団長と、金髪の女性剣士はうっすらと汗を

にじませる。


『これは……

 先ほどのバーレンシア侯爵とマイヤー伯爵の

 戦いを彷彿ほうふつとさせる―――


 お互い、全く引きません!!

 この戦いも長期戦となるのか!?』


審判役が拡声器で実況を行い、それに合わせて

観客席のボルテージも上がる。


「あのガルディという方―――

 このまま、シッカ伯爵令嬢の体力を削る

 おつもりでしょうか」


試合場のすぐ下で、マルゴットが不安そうな

声を上げ、


「いえ、それはないでしょう。

 私との戦いが控えているのは、彼も

 承知しているはず」


「だよねぇ。

 それにあの騎士団長―――

 対人戦のベテランのはずだし、余計な体力を

 使うような真似はしないはず。


 でも、一気にカタを付けるような奥の手が

 あるかな?」


ビューワー伯爵とバーレンシア侯爵が、

冷静に分析し、試合の行方を見守る。




「あれが『剣姫』か……!

 ホントにすげぇのが集まってたんだね、ウチ」


「でも相手の人も互角に戦っていますよ。

 どっちが勝つのか―――」


ミモザの腕にしがみつきながら、弟のファジーが

語り、


「ふーみゅ」


「?? どうしたの、ナヴィさん」


シルバーの短髪に猫のような目をした少年に、

獣人族の少女が問いかける。


「どうもあのガルディという人―――

 長期戦にするつもりは無いようでしゅ。


 後でビューワー伯爵が控えているからで

 しょうが」


「でもあのレイシェンって人も強いんでしょ?

 どうやってー?」


ナヴィの言葉にカガミが聞き返し、


「そうだよナヴィさん。

 アタイも、そう簡単に決着がつくとは

 思えねぇ」


「何か卑怯な手を使ってくるとか……?」


同じブラウンの髪をした姉弟も続くが、


「んー、そういう気配はないでしゅ。

 (そもそも軍神の加護で、多少の事は

 ガード出来ているでしょうし)


 ただ相手は騎士団長でしゅからね。

 一筋縄ひとすじなわではいかないのは、レイシェンさんも

 わかっているはずでしゅよ」


そう言いながら彼は、檀上の試合を見下ろした。




「さて行くかぁ。


 出来れば最後の最後まで隠し通したかった

 『手』だけど―――

 出し惜しみ出来る相手じゃないしねぇ」


「……どうぞ。

 期待しておりますわ」


ガルディが達観したかのように話すと、

レイシェンもまた、頬に一筋の汗を流し、


そして騎士団長の方から動いた。




「―――ッ!?」


彼は後ろを向いたかと思うと、そのまま

後方ジャンプ……

レイシェンの方へ向かって飛んできた。


高いジャンプではなく、地面スレスレを飛ぶような

もので、ほとんど水平に突進する。


レイシェンはその場から動かず―――


「(意表をつく動きですが……

 それ以上ではありません!


 必ず反転し攻撃に転じるはず!

 どこから来てもわたくしに―――

 死角はありません!)」


彼女の読み通り、ガルディは向けていた背を

正面に戻す。


「な!?」


明らかに伯爵令嬢の顔に動揺が浮かんだ。

それを見たガルディは対照的に微笑の

表情となる。


「(自分の実力に自信があり―――

 何が来ても対応出来ると思ったから、

 その場から引かなかったのだろうが、


 ただの意表をつく攻撃だと思っていたら、

 まだまだ未熟って事だ)」


彼は相手に背中を向けると同時に……

木剣を持ち換えていた。


利き腕の右から左へと。


通常、剣の腕はどちらで持っているかも

重要な要因ファクターとなる。


ガルディは過酷な訓練の果てに、左でも剣を

扱えるようになっていた。


「―――もらった!!」


「あ……!」


レイシェンの肩に騎士団長の木剣が届こうと

していた、その時……




―――軍神の加護が発動します―――




「!?」


「えっ!?」


二人は同時に驚いていた。


確かにガルディの木剣は彼女の肩へと

振り下ろされ……

決して軽くはないダメージを与えた。


だが同時に、レイシェンは体をその場で反転、

さらに仰向けに倒れ込むような形で―――

上にいるガルディは彼女を飛び越えるように

すれ違い、


そこへレイシェンが持っていた木剣が、

彼の脇腹へと叩き込まれた。


「ちぃっ!」


『向こう側』へと着地したガルディはすぐに体勢を

建て直し、木剣を構える。


レイシェンもまた片膝をつきながらも起き上がって

いたが、彼女は木剣を手放しており―――

打たれた肩をかばいながら、


「……参りましたわ」


それを聞いた審判が拡声器を持ち上げ、


『勝者―――

 グレイン国・王室騎士団長……


 アイリ・ガルディー!!』


決着が高らかに告げられると、観客席が

大きく沸き返った。




│ ■剣闘会 会場施設の一室       │




「お、この歓声は……」


「決着したみたいですね。

 でも、どちらが勝ったんでしょうか」


シモンとアルプが宙を見上げながら、

お互いに口を開く。


彼らはネーブルのベッドの近くでイスに

座っていたのだが、


「……勝者は、アイリ・ガルディと

 聞こえましたから。


 残念ながら、シッカ伯爵令嬢は負けて

 しまったようですね」


寝ていた彼が上半身を起こして、

聞こえていた情報を共有する。


「それで―――

 シンデリン様、ベルティーユ様。


 フィオナ様、メイさん、ポーラさんと

 一緒に何を話し合っているんですか?


 試合終わってしまいましたよ?」


見ると、部屋の片隅に女性陣が集まっていて、


「だ、だって男女の試合って見ていても

 つまらなくて。

 (私も気にはしていたわよ、ええ)」


「……やっぱり、男同士がぶつかり合う

 試合じゃないと……妄想がはかどらない……

 (……後で情報共有するから大丈夫……)」


まずトーリ財閥の姉妹が本音と建て前を

逆転させながら話し、


「お2人とも逆です!

 気持ちはわかりますが!!」


「それより妄想会議の中身を言わないように

 お願いします!」


それを聞いたシモンとネーブルは、

『何も見なかった、聞かなかった』と

無言で合意を結び……

アルプはただ意味がわからず首を傾げていた。




│ ■剣闘会会場             │




その頃……

ようやくレイシェンは、バーレンシア侯爵に

肩を借りて立ち上がり―――

そこへ勝者が歩み寄る。


しかしその足取りは、片足を引きずりながらで、


「ガルディ殿、その足は……」


侯爵が心配そうにたずねると、


「着地をミスっちゃったかねえ。


 ま、どの道こんなんじゃ―――

 『フラールの剣聖』とは無理かなあ」


最後、彼が脇腹に受けた攻撃は……

ダメージそのものはたいした事はなかったが、

着地を不安定にさせるには十分で、


次の試合が行われる直前、ガルディの試合放棄が

伝えられたのだった。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在6544名―――



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

基本、土曜日の午前1時更新です。

休日のお供にどうぞ。


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