42・……お兄ちゃんに関しては無制限……!
( ・ω・)四回目のコロナワクチン
行ってきます(なぜか土曜日)
日本・とある都心のマンションの一室―――
自分の部屋であたふたする女神・フィオナを、
お目付け役(猫Ver)が見守っていた。
「……何をしていらっしゃるんですかね、
フィオナ様」
シルバーの毛並みを持つ長毛種の猫が、
黒髪セミロングの、目付きのキツい少女に向かって
話しかける。
「あ、ちょ、ちょっと―――
彼氏を部屋に呼ぶ予行練習っていうか?」
「……
地球である必要あります、それ?
天界でするならともかく―――
こっちは別荘というか一時滞在の場所で」
ナヴィのツッコミに女神は頭を振って、
「だ・か・ら!
予行演習なんですよ。
いきなり本当の部屋に上げるのはちょっと
ハードル高いでしょ?
ここならそんなに荷物持ってきてないし」
「いやだってここには、いかがわしい本とか、
いかがわしい動画とか、
いかがわしい媒体があると思うんですけれども」
「え? でも実家の1/10くらいだし」
「黙れフィオナ様」
いつも通りのやり取りをする主従。
そこで女神は腰に両手を付けて、
「だいたい、いくらアタシだってそこのところは
考えてますよ。
だからこそ、うまく隠し場所を考えなければ
ならないんです。
タンスやカーペットの下などに」
「いや、Gじゃないんですから……」
呆れながら答えるナヴィ。
そこで彼女はため息をついて、
「でもねー、いくら隠してもママには
見つかっちゃうんですよ。
あの目を誤魔化せるくらいに気合い入れないと」
すると突然、室内にアルフリーダの声が響き、
『あ、フィオナちゃん?
実家のあなたの部屋片付けたんだけど―――
18禁の本、作者とジャンル別に整頓して
机の上に置いておいたから』
「ママァアーン!?」
叫び声と共に、抗議を始める女神を横目に
従僕は、
「はぁ……
それではそろそろ、本編スタートしますか」
│ ■グレイン国・王都ウィーンテート │
│ ■剣闘会 会場施設の一室 │
「……そうですか。
バーレンシア侯爵様も……
せっかくの大舞台で申し訳ありません、
フィオナ様」
バスタ副団長との試合で勝ったものの―――
試合続行が不可能となっていたネーブルは、
見舞いに来ていた女神に頭を下げる。
「べ、別に責めてるわけじゃないからっ。
ただ現状の共有としてね?
それにすっごく盛り上がったから―――
目的は達成していると思うわ、ウン」
フィオナが慌ててフォローに入り、
黒髪黒目の少年をなぐさめる。
「でもあの侯爵様まで棄権なさるなんて……
信じられないわ」
「……残っているのは……
シッカ伯爵令嬢と、ビューワー伯爵様……」
シンデリンとベルティーユも驚きを隠せず、
姉妹で目を丸くしていた。
「それでネーブルさん、具合は大丈夫ですか?」
アルプが不安そうな声でたずねる。
「たいしたケガはありません。
ただ体力的に、これ以上の試合は無理だなって
思いましたので―――」
それを聞いて、グリーンの短髪と瞳を持つ、
第一眷属の少年はホッとした表情になり、
「でもさすがはグレイン国の施設……
こんな豪華な部屋があったなんて」
メイが室内の高価そうな調度品や、彼が寝ている
ベッドを見回していると、
「あ、それはトーリ財閥の権力と金に物を言わせて
運び入れました!」
「……夫(予定)であるお兄ちゃんを……
不自由な部屋で……休ませたりしない……!」
同じバイオレットヘアーを持つ―――
ややトロンとした目付きの姉と、日本人形のように
無表情の妹が、力のこもった声で答える。
「控室か休憩部屋にしちゃ、おかしいと
思ったけどよ」
「やりたい放題ですね……」
シモンとポーラが呆れながら感想を述べる。
「ネーブルのためなら、お金に糸目はつけないわ」
「……お兄ちゃんに関しては無制限……!」
トーリ財閥の姉妹が鼻息荒く語り、
「おおー、大切にされていますねえ。
まあ今はゆっくりと休んでください」
女神はベッドの上のネーブルをねぎらい、
「でもフィオナ様。
相手の方も―――
バスタ様とマイヤー伯爵様がトーナメントから
敗退していますので、残るは……!」
「ガルディ騎士団長だけですね。
このままいけばシッカ伯爵令嬢とあたります。
Bトーナメントは……
ビューワー伯爵様がおりますが、めぼしい相手は
いないかと」
アルプとメイの説明で―――
勝ち残っているのは、女神一行は二人。
対してあちらは一人。
有利だという事をみんなで共有する。
その時、室外から観客の歓声が聞こえ、
「……!
始まったみたいですね」
フィオナの声に、全員が視線を上へと向けた。
『ではこれより剣闘会本戦―――
Aトーナメント決勝!
ミイト国の『剣姫』……
レイシェン・シッカ伯爵令嬢と、
本国グレイン出身・王室騎士団長、
アイリ・ガルディとの試合を始めます!』
審判役の男性の声に、金髪の女性剣士と―――
淡い桜色の短髪をした男性が中央に歩み寄る。
「やれやれ……
バスタ君もマイヤー伯爵様も敗退とは。
責任重大だねぇ、まったく」
「バーレンシア侯爵様を棄権に追い込んだ
だけでも―――
想定外としか言いようがありませんわ。
でもその事については感謝しております。
わたくしと侯爵様の対戦をなくして
頂いて」
彼女は、檀上の下の当人に視線を送る。
「休まなくて大丈夫ですか?」
「まあケガしたってワケじゃないし、
応援する事くらいしか出来ないから」
「律儀ですね、侯爵様」
バートレットとマルゴットに挟まれるようにして、
彼は檀上のレイシェンに手を振り返した。
「あ、ナヴィ様」
「カガミさんも」
ミモザとファジーが、観客席で―――
女神の従僕と獣人族の少女と合流する。
「あれ?
フィオナ様たちはどこに行きましゅた?」
「みんな、ネーブルさんの見舞いに行ってる。
アタイらは試合を見届けるために残った」
シルバーの短髪の少年と、ブラウンの髪に
三白眼の目をした少女が情報を共有する。
「ナヴィ様たちの方は……
何か動きは」
「一応、周辺を警戒して回っていたけど、
これといって特に無かったよー」
姉と同じブラウンの、短い髪をした少年の問いに、
赤茶のツインテールをした獣人の女の子が答える。
「んー、そうでしゅね。
強いて言えば……
何か肌というか髪というか―――
ピリピリ来たような感じが試合中に」
ナヴィが気になった事を説明し始めたところ、
歓声が一気に沸き起こり、
「おっ!
始まったみてーだぞ!」
ミモザの声に、全員が試合へ視線を戻した。
「シュッ!」
「ハァッ!」
ガルディの打ち込みに反応し、レイシェンが
打ち返す。
避ける事はなく、まるで木剣同士が吸い込まれる
ように、切り結び―――
数回打ち合ったかと思うと、二人は同時に離れて
距離を取る。
「フー……」
「はぁああ……!」
そして呼吸を整え、再度同時に突進。
打ち合わせでもしたかのような、息ピッタリの
動きに、湧いていた観客席もいつしか静まり返る。
「これがミイト国の『剣姫』―――
聞くと見るとじゃ大違いだねぇ」
「お気に召しませんでしたか?」
騎士団長の言葉に、彼女がいたずらっぽく返すと、
「ご馳走だとしたら……
食べ切れないってところだよ。
ウチの騎士団員を鍛え直して欲しいくらいだ」
「それこそ侯爵様にお願いしてくださいな。
彼、わたくしより強いですよ?」
苦笑するガルディと微笑むレイシェン。
そして彼は頭を振って、
「そんで、あんたを倒しても『フラールの剣聖』が
次に待っているってわけか。
何の罰ゲームだよ、コレ」
「さあ?
こういうのを天罰って言うんじゃないかしら」
彼女の答えを合図のようにして、打ち合いが
再開された。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6538名―――
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