41・これって3人絡みでって事になりませんか?
( ・ω・)次回こそトーリ財閥の3人の
出番はあります(予定は未定)
日本・とある都心のマンションの一室―――
「えーはいはい……
だーかーらー、いくらこっちに住んでいると
言っても、何でも知っているわけじゃないん
ですって。
わかったわ。
適当に調べておくから」
黒髪セミロングの少女が端末を手に話している
ところへ―――
シルバーの長毛種の猫が通りかかり、
「どうしたんですかフィオナ様。
お話し中でしたか?」
「あー、もう終わったから大丈夫。
神の修行時代、一緒だった友達からね。
そのコから相談を持ち掛けられて」
女神は端末をしまうと、ごろんと体を絨毯の上に
寝転がせる。
「えっ?
フィオナ様に友達っていたんですか?」
「まず驚くところがそこかい」
いつもの調子で話すナヴィに、彼女もいつもの
態度で返す。
「それで、どのようなご相談を……」
「あー、地球っていうかこの国って治安
いいでしょ?
あとママが周囲の神々に話しまくっているって
いうのもあって―――
こっちに来るのがプチブームになっている
らしいのよ」
ふむふむ、と従僕(猫Ver)はうなずき、
「それでこっち来たら、何が美味しいかとか、
見どころとか聞かれまくって……
アタシはただ住んでいるだけであって、
専門家でも何でも無いってーの!」
「まあ基本的にインドアという名の引きこもり
ゲーム廃人ですし。
でも友人なら、少しは調べてあげても
いいんじゃないでしょうか」
ナヴィの返しに、フィオナは首を左右に振り、
「そりゃネット見ればたいてい情報は転がって
いるけど、いざ実際行ってみると違うものよ。
なかなかナマの情報って無いんだって。
この前なんて、秋田の郷土料理って看板の
店に入ったら……
『いぶりがっこ』が無かったのよ!
(※いぶりがっこ=たくあんの燻製干し。
秋田県の郷土料理)
秋田料理を名乗っておきながら、アレは
許せないわ!!」
「ずいぶんとマニアックな方向に詳しいじゃ
ねーか。
日本を堪能しているようで何より。
それじゃそろそろ、本編スタートします」
│ ■グレイン国・王都ウィーンテート │
│ ■剣闘会 会場 │
「ふうぅううう……
いい加減、諦めてくれませんかねえ?」
「フー……
それはこっちのセリフだよ。
私の倍くらい動いているだろうに―――
戦いの体力配分というものを、よくわかっている
ようだ」
頬にクロスの傷のある侯爵と、初老とも思える
伯爵との戦いは……
すでに十五分ほど経過していた。
短いようにも思えるが、切り結んだ回数はそれこそ
三十を超え―――
その度に観客席は静寂と喧騒に切り替わる。
『Bトーナメント準決勝、バーレンシア侯爵と
マイヤー伯爵の戦い……!
長丁場になってまいりました!
まさにどちらが勝つのかわかりません!
事実上の決勝戦と言っても過言ではない!!
『バクシアの鬼神』か、それとも武名を馳せた
我が国のリーゾット・マイヤーか!
勝利の女神はどちらに微笑むのかぁー!?』
実況みたいに拡声器のような道具で観客席に
声が届けられ―――
その度に観客席は盛り上がっていく。
それを当事者の二人は苦笑いしながら聞いて、
「女神なら僕についているから……
勝つのは僕かな」
「そういえば貴公は、『枠外の者』『新貴族』に
対抗する組織―――
『女神の導き』の指導者的存在であったな。
そんなにその女神とやらは……
ご利益があるのかね?」
そこで侯爵は、伯爵の問いにフッ、と笑って、
「僕は指導者なんてガラじゃないですよ。
『女神の導き』についても、いつの間にか
巻き込まれたっていうか……
それにマイヤー殿は勘違いしています。
僕の女神は―――」
彼は、つい最近恋仲になった伯爵令嬢の顔を
思い出す。
それを察したのか、伯爵もまたかつての
婚約者を思い浮かべ、
「なるほど……な。
彼女を許容したその度量、少しばかり
嫉妬を感じるよ。
だが、それを聞いた以上―――
こちらもむざむざと負けるわけにはいかん」
その言葉の後、伯爵は片膝をつくと……
木剣を水平に構えた。
「……!
雰囲気が変わりました」
「雰囲気?」
シルバーの短髪の青年伯爵に、真っ赤な長髪の
恋人が、彼の片腕に回した腕に力を込める。
「次の一撃に全てを賭ける気でしょう」
「全て、ですか……?
バートレット様」
心配そうに声を上げるマルゴットの肩を、
伯爵はやさしく抱き寄せた。
「?? 何か時代劇っぽい構えですね」
「じだいげき?」
「でも何か、緊張感が増したような」
フィオナの言葉に、アルプが聞き返し―――
メイは檀上に釘付けのまま感想を述べる。
「気迫がすげぇ……
次で決める気か」
「侯爵様……ッ!」
ファジーがしがみつくのを姉のミモザは抱きしめ、
「止まり……ましたね」
「バーレンシア侯爵様も、微動だにしねぇぞ」
ポーラとシモンも、観客も―――
固唾を飲んで見守っていた。
「あ、あれは……!」
「うわ、あの人―――
ガチの本気か。
あの構えをするなんて相当だぞ」
Aトーナメントの試合場付近から見ていた
レイシェンとガルディは、それぞれ驚きの
声を上げる。
素人ではない男女は、決着が近い事を肌で
感じ取っていた。
「……おかしいでしゅね」
「?? 何がー? ナヴィ様」
銀の短髪の少年が、赤茶のツインテールの獣人族の
少女と一緒に―――
普通の人間では来る事の出来ない高所で試合を
見つめていた。
「次で決めようというのはわかりましゅが、
あのマイヤー伯爵という人、まだ少しは
余力を残しているはずでしゅ。
精神力勝負に入ったのなら、決着を急ぐ
理由がわかりません」
「そうなの?
カガミよくわかんないー」
そして二人が試合場に再び視線を向け―――
「―――ハッ!!」
「!?」
次の瞬間、リーゾット・マイヤーは『突進』した。
それはただの突撃、木剣を横にしたままの……
まるで体当たりにも見え、
「(ガードしたままこちらへ!?
しかし速い!!
どこにこんな体力が……
―――まさか!)」
「(気付いたようだな。
これまでの戦い、私は……
全ての速度を少しだけ落として戦ってきた。
相手の戦力の分析は最も重要だ。
だから長く付き合ってもらった。
私の実力を把握したと思わせるために……!
この切り札のため。
だが私も木剣を横に構える事で、『策あり』
という事は伝えたつもりだ。
突きでも切るでも無いこの突進―――
さあどうする、『バクシアの鬼神』!!)」
それは両者ともに瞬時の思考。
さらに木剣を横にしたままの突撃は、突きなのか
切るなのかわからず、対応に戸惑う。
実力が拮抗している場合……
その動揺は命取りとなり、
「もらった!!」
「―――ッ!!」
至近距離まで詰めた時点で、マイヤー伯爵は
木剣の構えを変え、上段に振りかぶる。
―――軍神の加護が発動します―――
「……な」
伯爵には眼前の光景が理解出来なかった。
自分が打ち込む瞬間……
もはや自身でも止める事は不可能、という段階まで
攻撃速度を上げたその時、
侯爵は木剣を持っていなかった。
素手となった彼は、木剣を両手で挟むように
頭上で受け止めていて、
「……は?」
さらにはバーレンシア本人すら、その事に
驚いているようだった。
「あ、あれはフィオナ様のお父様が見せた技!」
かつてユニシスが侯爵との稽古で見せた、
真剣白刃取り。
グリーンの短髪と瞳を持つ、第一眷属の少年が
身を乗り出して叫び、
「で、でもこれって―――」
「どっちの勝ち?」
女神と、ロングウェーブの銀髪を持つ第三眷属の
妹が顔を見合わせる。
檀上では、柄を握る伯爵と刀身部分を挟む侯爵が
対峙していたが、
やがて疲れ果てたかのように、マイヤー伯爵が
剣を放し―――
そして両ひざをついた。
「……参った参った。降参だ」
その声が審判役の男に入り、片手を挙げて
決着を宣言する。
『勝者―――
『バクシアの鬼神』……!
レンジ・バーレンシア侯爵ー!!』
拡声器で勝者が伝えられると、一瞬の沈黙の後、
観客席は歓声に包まれた。
すでに伯爵の残りの体力は無かったようで、
慌てて担架が運び込まれ、彼はそれに乗せられる。
バーレンシア侯爵は彼に近付いて身を屈め、
「最後のあれは予想外でしたよ」
「それ以上に君は予想外だったがな」
お互いに苦笑しながら、健闘を称え合う。
「では、答えは……」
どうして『枠外の者』・『新貴族』に与して
いるのか―――
約束通り、改めて彼が問うと、
「……私ごとき年寄りを倒せぬ世代に、
道を譲り、未来を任せるつもりはない。
この答えでは不満かね?」
「ちょっと厳し過ぎる気がします……」
そしてお互いに笑うと、侯爵もまたその場に
片膝をつき、
「侯爵様!」
「バーレンシア様!!」
バートレットとマルゴットが駆け上がり、
両肩を貸して檀上から降りていった。
「フィオナ様!
バーレンシア侯爵様の勝ちです!!」
「……って、フィオナ様?」
アルプとファジーが喜んでいると、
いつの間にか女性陣が集まっていて、
「いやーやっぱり侯爵×伯爵でしょ」
「何言っているんですか!
伯爵×侯爵に決まっています!!」
「最後にビューワー伯爵様も上がって
きましたから―――
これって3人絡みでって事になりませんか?」
「お、お前天才か!?」
女神・メイ・ポーラ・ミモザが何事かを
話し合っているのを―――
アルプ・ファジー・シモンの男性陣が遠目で
眺めていた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6528名―――
( ・ω・)最後まで読んでくださり
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