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39・ヒャッハーしちゃう人が多いので

( ・ω・)野良や外ネコが素直に撫でさせて

くれる季節(いつもは逃げられる)


日本・とある都心のマンションの一室―――


家主と思われる黒髪セミロングの少女が、

シルバーの長毛種の猫を撫でながら、


「ねーねーナヴィ。

 ハロウィンなんだけど、今年は何着るの?

 アタシの希望としては前やった逆バニーとか

 ですね」


「一度も着た事ねぇよンなモン」


女神・フィオナの要求をお目付け役(猫Ver)は

あっさりと断り、


「ていうか、ようやくアルプ君と結ばれたん

 ですから―――

 そちらに頼んだらいいんじゃないですか?」


「え? そりゃもうやったんだけど」


「やったんかい。

 でもそれならどうして私に?」


首を傾げるナヴィに、主筋の女神は、


「えーだって……

 何でも『はい! 着させて頂きます!!』

 なんだもの。


 従順なのはいいんだけど、もうちょっとこう、

 恥じらいとか抵抗とかあっても」


「面倒くさい人ですね。

 着て欲しいのか欲しくないのか、

 どっちなんですか」


目を線のように細めて呆れる従僕に、


「あ、でもね完全に恥じらいが無いってわけじゃ

 なくて結構着るのに時間がかかるっていうか

 やっぱり心のどこかで戸惑っているって感じで

 それでいてでもアタシに喜んでもらえるっていう

 ご奉仕と忠義の気持ちがあってそれでその様子を

 横で見ているのがこれがまた」


「何だかんだ言って楽しんでいるようで何より」


そこで室内に、もう一人の女性の声が響く。


『わかる! わかるわフィオナちゃん……!


 パパもねそんな感じ。

 最初はすごく勢いがあって嬉々(きき)として私の

 いう事を聞いてくれるんだけど―――


 着替えているうちに、やっぱり衣装によっては

 時間がかかっちゃって。

 それでそのうち段々と、『アレ? ボク何して

 いるんだろう……』って心のどこかで思い始めて

 その葛藤かっとうを眺めるのがこれがまた』


「そう! それです!!

 さっすがママ、わかってますねー!」


アルフリーダと母子の間で会話が盛り上がるのを

見ながら、ナヴィはフゥ、と一息ついて、


「遺伝子に何の問題もなく何よりです。


 それじゃそろそろ、本編スタートしますね」




│ ■グレイン国・王都ウィーンテート   │

│ ■剣闘会 会場            │




「んー、このままいけばビューワー君との

 対戦になるかなあ」


「わかりませんよ。

 マイヤー伯爵……あの『新貴族』がこちら側の

 トーナメントにおります。


 このまま勝ち進めば侯爵様と当たりますが、

 相当な実力者かと」


青みがかった短髪を指先でいじりながら語る

バーレンシア侯爵を前に、三十過ぎとは思えない

細面の伯爵が受け答える。


「うん。

 そこはレイシェンから聞いているんだけど。


 何で『新貴族』やってて、『枠外の者』と

 関わっているのかわからない人物。


 でもまあ武人としての興味はあるよ。

 あの身のこなし―――」


「……ご武運を」


そこで侯爵と伯爵の話が一区切りしたところ、


「レンジ様!」


「バートレット様、お疲れ様です」


金髪の女騎士といった体の令嬢と、

真っ赤なロングヘアーの豪商の娘が、

それぞれの伴侶へと駆け寄ってきた。


「そういえば、レイシェンのいる方の

 トーナメントって、あの王室騎士団長が

 いるんだっけ」


「はい。

 さすがにこの国の騎士団のトップ―――

 簡単には勝たせてくれないでしょう。


 負ける気もございませんが」


バーレンシア侯爵とシッカ伯爵令嬢が言葉を

交わし、


「マルゴット。

 ネーブル君の具合はどうでしたか?」


「トーリ財閥の姉妹が付き添っていますので、

 しばらく休めば大丈夫との事でした。


 これで実質、あちらのトーナメントは……

 シッカ伯爵様とガルディ騎士団長、

 どちらかが決勝に進む事になると思われます。


 それよりバートレット様も―――

 試合の疲れは」


ビューワー伯爵とグラノーラ令嬢もまた、

自然にファーストネームで呼び合う。


「今のところ、相手は決して弱くはありませんが、

 全力で戦うほどの者も」


「あのバスタって副騎士団長?

 あれくらいじゃないとねえ。


 しかしネーブル君もすごかったなー。

 最後に何か一気に速度と力が増したように

 見えたけど……

 僕が戦っていたらどうなっていたか」


彼らはすでに三試合ほどこなしていたが、

それによる疲労はほとんどなく―――


「『新貴族』、『枠外の者』が絡んで

 おりますから、何か仕掛けてくると

 思っていたのですが」


「さすがに試合中までとなると……

 考え過ぎでしたか。

 でも、皆さん油断はなさらないで

 ください」


レイシェンとマルゴットの忠告に、男性陣は

表情を引き締め―――

次の試合を待つ事になった。




「……効果が見られない?」


「ええ。例の『麻痺毒』についてですが、

 3人ともピンピンしてます。

 警戒している様子もありませんねえ」

(■8章26話「時間無制限一本勝負」参照)


その頃―――

マイヤー伯爵とガルディ騎士団長は、

それまでの試合の分析を行っていた。


「対策が行われていた?


 いや、あの小細工を思いついたのは

 剣闘会の決定後だ。

 こんな短期間で中和剤を用意出来るとは」


伯爵は痩せこけた頬を撫でながら、

疑問を口にし、


「まあこちらとしましては、ちょうどいいです

 けどねぇ。


 あのマイヤー伯爵の『元』婚約者―――

 このままいけば当たりますけど。


 ミイト国の『剣姫けんき』……

 ぜひともその実力を確かめてみたかったので」


軽い口調で、しかしその鋭い目つきはそのままで

王室騎士団長は語る。


「―――同感だな。


 小細工が効かないのであればむしろ、

 全力で相手が出来る」


両腕を組みながらマイヤー伯爵は同意し、


「お手並み拝見といきましょう」


「君も彼女を甘く見ない事だ。

 あれは私の婚約者だった頃よりも手強いぞ?

 いろいろと、な」


互いに微笑を交わし合い―――

彼らは次の対戦相手を待った。




「おりょ~?」


会場の観客席の中で、女神が間の抜けた

声を上げる。


「?? フィオナ様?」


「どうかしましたか?」


アルプとメイが反応して聞き返す。


「あ~……

 今ちょっと、バーレンシア侯爵や

 ビューワー伯爵、レイシェンさんの姿が

 見えたんだけど―――


 あれ、もしかしたらパパの『加護』が

 付いちゃっているかも」


グリーンの短髪と瞳を持つ少年と、

銀のロングウェーブの髪を持つ少女が

顔を見合わせ、


「ええと」


「それって?」


二人の問いに、女神は眉間にシワを寄せて、


「パパ、軍神だから―――

 あの戦闘タイプの人たちってちょうど

 『加護』を受けやすいのよね。


 パパももしかしたら……

 無意識で授けちゃったのかも」


横で聞いていたファジーとミモザが寄ってきて、


「あの~……」


「つまりどういう事?」


同じブラウンの髪の姉弟にフィオナは、


「今思えばネーブルさんもそうでしたけど、

 戦闘に対してめっちゃ有利になっている感じ?


 毒とか麻痺とか無効化して、いざという時に

 力と速度が2倍になるような」


そこでシモンとポーラも会話に入って来て、


「いや、そりゃスゲーけどさ」


「それって大丈夫なんでしょうか?」




「良くないでしゅねー。

 多分、ユニシス様もあの4人を

 気に入ったんでしょうけど。


 フィオナ様と違って戦闘向きでしゅからねえ。

 ユニシス様の加護は」


そこから離れた場所で―――

女神の従僕が頭を痛ませていて、


「そんなにマズい事ー?」


赤茶のツインテールの獣人族の少女が、

隣りで付き添いながら問う。


「まあ、あの4人なら問題ないと思うん

 でしゅけどね。


 下手に加護を与えると、その力で

 ヒャッハーしちゃう人が多いので」


「んー、カガミよくわかんない」


猫のように後ろ足で頭をかくカガミを横に、

ナヴィは深く息を吐いた。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在6513名―――



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

基本、土曜日の午前1時更新です。

休日のお供にどうぞ。


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