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38・すいません止まりませんでした

( ・ω・)最近、何でも高くなり過ぎ。


日本・とある都心のマンションの一室―――


家主と思われる黒髪セミロングの少女と、

いかにも小悪魔といった、ブラウンのワンカール

ロングの髪の、小さなコウモリの翼をもった少女が

対峙していた。


「お父さんとお母さん、そのアルプって子に

 会ったんだ?


 そんでお2人のご評価は?」


「月並みですが、『娘をよろしくお願いします』

 みたいな?


 第一眷属でしたし、ママはともかくパパとは直接

 会ってはいませんでしたけど―――

 アタシとの付き合いは長かったですから。

 ナヴィから報告も上がっていたでしょうし」


ふむふむ、とサキュバスはうなずき、


「でも、ユニシス様とアルフリーダ様って―――

 『軍神』と『時と成長をつかさどる女神』でしょう?


 あなたの世界に行って大丈夫だったの、それ?」


彼女の質問にフィオナはきょとんとして、


「まあ確かにパパもママも別格の神様ですけど……

 別に暴れたりしたわけではありませんから。


 模擬戦で稽古けいこを付けてあげただけですし、

 その後はすぐ帰りましたよ」


女神の答えにサキュバスは両目を閉じ、


「んー、でもさ。

 そこまで力の強い神様が異世界へ飛んだと

 なると、結構影響ありそうな気がする。


 本当に何も無かったの?」


「ええぇ……

 そう言われると何か怖いんですけど」


フィオナは両腕を組んで考え込み、


「あ、でも―――

 ママが帰る前に女性陣を集めて、

 『全部脱がせた方がいいだろう』派と、

 『少しは残した方が興奮する』派に別れて

 議論を交わしていたましたが」


「それは断然『少しは残した方が興奮する』

 でしょうが。

 そんな議題があったのなら私も参加しましたのに」


そこで二派について議論を始める彼女たちを

見つめる、お目付け役(猫Ver)が一匹。


「はあ……


 それじゃそろそろ、本編スタートしますかね」




│ ■グレイン国・王都ウィーンテート   │

│ ■剣闘会 会場            │




「ではこれより剣闘会本戦―――

 Aトーナメント1回戦、


 シフド国出身・ネーブルと、

 本国グレイン出身・王室騎士団副団長……

 フェルゼン・バスタとの試合を始めます!」


大会当日、午前中で予選を終え―――

午後になって本大会が開始された。


会場となったのは、ローマのコロッセオのような

円形の施設で、大勢の観客の熱気が支配する。


そして地上には、試合をする場として四角形の

檀上が二つ用意されていた。

(トーナメントが二つに別れているため)


そんな中、フィオナ・アルプ・メイ組と、

ファジー・ミモザ組、シモン・ポーラ組が―――

客席から試合の檀上を見下ろしていた。


「確か、ネーブルさんに因縁付けてきたっていう」


緑の髪と目をした少年が口を開き、


「そうです、あの人です。

 まあ返り討ちでしたけど」


「ていうか王室騎士団副団長でしょ。

 その人に勝つっていったい……」


女神と銀のロングウェーブの少女がそれに続き、


「予選も軽々と突破していましたし」


「あの年齢であの身のこなしは、確かにスゲェよ」


同じブラウンの短髪の少年と、首までの長さの

女性―――

姉弟が感想を述べる。


「俺より年下だよな。

 それでトーリ財閥の護衛務めてんだろ?」


「リベンジマッチというところでしょうが、

 さて、どうなるでしょうか」


褐色肌の果実店の跡継ぎの少年と、

第三眷属の少女が改めて檀上の二人を

見守るように視線を送り……


「……始めっ!!」


審判と思われる男性の掛け声で―――

檀上の黒髪黒目の少年と、ブロンドを

エアリーにまとめた青年が同時に、

木剣ぼっけんを構えた。




「こっち異常ナーシ!

 そっちはー?」


会場の最上段の、普通の人間なら上って

来れないと思われる高所で―――

赤茶のツインテールをした獣人族の少女が、

もう一人の獣人族らしい少年と合流する。


「こっちも特に無いでしゅね、カガミさん。


 まあこれだけ衆人環視の中……

 何か仕掛けてくるとは考えにくいでしゅけど」


シルバーの短髪に猫のような目をした従僕、

ナヴィはカガミに答える。


「という事はー、試合中は大丈夫かな?」


「恐らくは。しょれに、もし大会中に何か起こそう

 ものなら……

 主催したグレイン国のメンツを潰す事に

 なりましゅからね。


 『枠外の者』であれ『新貴族』であれ―――

 そこまでのリスクは取らないでしょう。


 じゃあこのまま観戦といきましゅか」


女神の従僕と第四眷属の少女は、『特等席』で

その戦いを見る事にした。




「ハッ! タアッ!!」


長身の副団長から、突きと振り下ろしを混ぜて、

ネーブルの体へ木剣が繰り出される。


「……」


そしてそれを受け流すように、少年は木剣を

合わせる。

バスタの、素早くはあるが派手な動きに比べ、

ネーブルはほとんど動いているように見えず、

その動きは対照的であった。


合図でもしたかのように、二人同時に距離を取り、

そこで場内が沸き起こる。


「あの騎士団副団長が強いのは当然として―――

 相手のガキは何なんだ!?」


「防戦一方に見えたが……

 最低限の動きで見切っているのか」


「しかし副団長、あれだけ動いても全く

 疲れた様子が見えねぇぞ」


腕に覚えのある者からは、驚きと分析が、


「副団長様ー!!

 がんばってー!!」


「ネーブル様、こっち向いてー!!」


「美少年と美青年が打ち合う……!

 このシチュは燃えますわぁあ……♪」


女性陣からは二人の外見も相まって、

黄色い声援が送られた。


「……どうしたのかな。

 『先日』より疲労の色が濃いが」


「ちょっと驚いただけですよ。

 あなたこそ、この前とは動きが全く違う」


お互いに戦いを止め、言葉を交わす。




「ほう、本来の動きが戻ったようですな」


「もともと負けるような相手ではない。


 確かにあの少年の技量も目を見張る

 ものがあるが……

 我が王室騎士団の副団長は、コネや運で

 なれるものではないからな」


檀上のすぐ側、出場者が控える区域で―――

ガルディ王室騎士団長と、マイヤー伯爵が

隣り合って試合を見つめる。


事実バスタの実力は本物であり―――

ただ傲慢ごうまんから来る油断だったと、先の敗因を

マイヤー伯爵は見抜いていた。


だからこそこの試合は、小細工無しで

挑ませたのである。


「これなら、もう心配はありませんかねえ」


ピンクに似た白い短髪の青年は微笑みながらも、

その鋭い眼光だけはそのままで、


「あと2・3年すればわからんがな。

 後は想定外の事でも起きなければ―――」


そして彼らの前で、二人は再び打ち合い始めた。




「(く……!

 まるで別人のようだ。


 打ち返される、あしらわれる事すら計算に入れて

 連撃されているような―――)」


ネーブルが焦る一方で、バスタもまた

困惑していて、


「(ここまでやっても追い詰め切れないと

 いうのか……!?


 仕方がない。

 出来れば優勝を狙いたかったが―――

 余力を残せる相手ではない。


 君は何としてでもここで倒す!!)」


バスタはさらに連撃の速度を上げた。

ラストスパートとでもいうように。


上段に、袈裟懸けさがけに、真横に、そして下からも、

分身でもしたかのように速度と手数は増え―――


「ネーブル!!」


「……ネーブルお兄ちゃん……!!」


出場者の付き人として檀上近くにいた、

シンデリンとベルティーユが悲痛な声を上げる。


その応援に応えようとするも、彼の体は

限界に近く……


―――軍神の加護が発動します―――


「ッ!?」


「何!?」


ネーブルとバスタ、両者は驚きの声を上げ、

そして―――

片方の木剣が空高く舞い上がる。


少年の手には木剣が、青年の手にはそれが無く、

会場は静まり返っていたが、


「―――Aトーナメント1回戦、

 勝者、ネーブル!!」


審判が試合結果を告げると共に、大歓声が

沸き起こり……


そして同時に二人とも、両ひざを地面についた。


それを見たやや垂れ目の姉と、ビスクドールの

ような美しさを持つ妹―――

共にロングのバイオレットヘアーの姉妹が、

檀上へと駆けあがる。


「大丈夫、ネーブル!?

 あなたの勝ちよ!」


「……ん……良かった……

 ちょっと調子悪そうに……見えたから……」


安堵している表情の姉妹に、彼は小さな声で、


「(……誰のせいだと思っているんですか。

 いくら何でも朝までって。

 だからこういう戦い方しか出来なかったん

 です!)」


「(すいません止まりませんでした)」


「(……途中からシンデリンお姉さまと、

 どちらかが先に寝て、起きていた方が

 ネーブルお兄ちゃんを独占出来るかで、

 戦っていたから……)


二人に肩をかつがれながら、勝者は檀上を降り、


「……バスタ。最後のアレは何だ?」


「わ、わかりません……

 まるで急に力が膨れ上がったような。


 機会を頂いておきながら、申し訳

 ありません……!」


騎士団長に副団長は深々と頭を下げるが、


「いや、良くやった。

 まさかあんな手を隠し持っていたとはな。


 あちらも―――

 もう試合続行は出来まい」


マイヤー伯爵の言う通り、試合終了から

しばらくして……

ネーブルの棄権が伝えられたのだった。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在6501名―――



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

基本、土曜日の午前1時更新です。

休日のお供にどうぞ。


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