36・ここぞとばかりに欲望を解放
( ・ω・)今章は40話超えるかもなー
(残り数話で話をまとめるビジョンが見えない)
日本・とある都心のマンションの一室―――
家主と思われる、黒髪セミロングの少女が、
顔の片方がワンレングスで隠れている訪問者を
前に対峙する。
「ふーん。
じゃあご両親公認の仲になったんだ。
しかしメイさんという人間と一緒でもいいって、
理解があるというかフトコロが広いというか」
「それだけアルプの魅力があるという事ですよ!
でもまあ、意外だったのはマルゴットさん
ですかね。
あっさりビューワー伯爵さんとくっついたし」
女神・フィオナはお客さんとして来た、
邪神と情報共有をしていた。
「話を聞いていると、他のカップルさんも……
ようやくっていうかなるようになったと
いうか―――」
「これでやっとスタートラインって
ところですよ邪神ちゃん」
それでも一区切りついた事で余裕が出来たのか、
フィオナは大きく安堵のため息をつく。
「そうね。
彼氏をご両親に紹介するのは終わったけど、
彼のお義母さんへのご挨拶はまだでしょ?」
そこで女神の動きは、一時停止ボタンを
押したかのようにピタッと止まる。
「どしたの?
そのアルプ君のお母さんってそんなに
怖い人?」
その問いにフィオナは首を左右に振るも、
「いえ、すごく優しい人ですよ?
ただなんていうかねー……
ママと同じ匂いがするのよ。
『この人には逆らっちゃなんねえ』というか、
逆らえないってゆーか……」
「ま……まあ、お父さんが亡くなった後、
女手一人で育ててきたんだし、プレッシャー
みたいなものじゃない?
可愛い一人息子を取られちゃうんだから、
多少の事は、ねえ」
邪神は女神の不安を何とか和らげようと、
言葉を選んでフォローする。
「そっ、そうですよねっ。
ずっとアルプを守ってきたんですし、
少しは思うところがあっても!
それじゃ、そろそろ本編スタートしますかっ!」
│ ■グレイン国・王宮中庭施設別室 │
「……姿を消した?」
マイヤー伯爵はその報告を聞いて、鋭い眼光で
報告者に聞き返す。
「そそ、それが……!
本当にいなくなったのです!
建物、門、王宮前から王都に至るまで見張らせて
いたのですが―――
あの凄腕の剣客の姿はどこにも」
バスタ副騎士団長は全身から汗を拭き出すように、
釈明する。
「あまりウチの者をいじめないでください、伯爵。
ですが、という事は……
剣闘会に参加する意思は無い、という事か?
何のために、我々の前にその姿と実力を
見せつけたのだ……?」
ガルディ王室騎士団長が両目を閉じて考える。
「例の小細工はどうします?」
貴族にしては筋肉質の伯爵に、薄い桜色の短髪の
騎士団長は問うが、
「あの剣客が出てくれば、とも思ったが―――
出てこないのであれば変更は無い。
しかし全く相手の意図が読めん。
何のために最強とも言える戦力を、あんな
大々的な場で披露したのだ?」
「り、理解いたしかねます……」
伯爵の言葉に、ブロンドの副団長が同調する。
まさかユニシスが模擬戦を行った経緯が、
・娘のために動いてくれている人間に稽古を
つけてあげる。
・妻と娘の前でたまにはパパらしくいい格好を
したかった。
とは夢にも思わず―――
その後も三人は苦悩するのだった。
│ ■グレイン国・王宮中庭施設 │
│ ■バーレンシア侯爵一行宿泊部屋 │
「うーみゅ。
なるようになったと思うんでしゅが」
「あの2人は何をしてるのかなー?」
シルバーの短髪の美少年と、赤茶のツインテールの
獣人族の少女が、同じ方向を見て感想を述べる。
その先には、女神・フィオナと―――
銀のロングウェーブの髪の少女・メイが、
燃え尽きたように、大きめのソファに頭を
互いにくっつけるにして……
左右対称でうなだれていた。
「いやあ……
一仕事終えたような、それでいて
不完全燃焼のような?」
「何より、お互いに記憶が吹っ飛んでいるって事が
どーしても……」
女神と第三眷属の妹は、ぐちをこぼすように
答えるが、
「それで、アルプ君はどこに?」
ナヴィの問いに彼女たちは頭だけ起こし、
「奥の部屋で寝てます」
「何か、体がすごくだるいとかで……
まーわたくしたちもそうですけど」
女神の従者は会話をスルーしようとしたが、
「2人相手でしょ?
アルプさんの方が疲れてないー?」
「どうして私があえて口に出さないように
している事を、躊躇なく口に
するんでしゅかね……」
彼はカガミのストレート発言に頭を抱える。
「そういえば他のみんなは?」
フィオナの言葉通り、広い室内には今話している
四人以外おらず―――
「バーレンシア侯爵さん・ビューワー伯爵さん・
ネーブル君は剣の稽古でしゅ。
セットでレイシェンさん・マルゴットさん・
トーリ財閥の姉妹がそれにくっついて行ってる
感じでしゅね。
シモン君は―――
ポーラさんと一緒にまた商談でしゅよ」
「ミモザさんは?」
メイからの質問に、今度はカガミが元気な声で、
「厨房に行ってるよー。
ファジー君がお手伝いに行っているから、
そのまたお手伝いだって」
「あ~……
それならアタシも手伝えるかも~……」
だるそうな声だけで提案する女神にナヴィは、
「まあ、大人しくしててくだしゃい」
「え~……?
ちょっと休めば大丈夫だからぁ」
すると彼は真剣な顔で、
「普段から何を作りだすかわからないのに―――
今のテンションで生物兵器を作り出されたら、
予想が付かないし対処が出来ないんでしゅよ」
「そんなぁ~……
人をしょっちゅうヘンな物を生み出している
みたいにぃ~……」
「違うとでも?」
主従の会話を、他の二人はどんな顔で聞いたら
いいのか困惑していると、
「……あ、ごめんなさい。
い、今起きました……」
フラフラと、グリーン・アイとそれと同じ色の
短髪の少年が、奥の個室から出てきた。
しかしどう見ても、体力が完全に回復しているとは
言い難く―――
「ア、アルプ!
無理はしないでください。
さあ、アタシが癒してあげますから……!」
「そうですよさあこちらへ!
わたくしの胸の中でゆっくり休んでください!」
フィオナ・メイは体こそ起き上がらないものの、
両手を彼に向かって差し出す。
「どさくさに紛れてここぞとばかりに欲望を
解放しゅるな」
「こーゆー時は驚くほど息ピッタリだねー」
ナヴィとカガミが呆れながら話すと、
「ん……はい……」
まだ意識がもうろうとしているのか、
第一眷属の彼はおぼつかない足どりで
彼女たちのもとへと……
そして、フィオナとメイが頭をくっつけるように
左右対称になっている、その前で跪くと、
「……スー……」
彼女たちに体を預けて寝息を立て始めた。
「(こここっこれは!!
メイさん、アタシのところに顔を向けて
寝てますよ!
つまりアタシの勝ちです!!)」
「(ちーがーいーまーすー!!
体はわたくしのところへ寄っているんですから、
フィオナ様より信頼度は上ですー!!)」
アルプを起こさないように、小声でバトルが
繰り広げられ―――
「ねーねー、これってノロケってゆーヤツ?」
「多分違うと思いましゅ。
偶然望んでもいない幸運に遭遇したので、
その主導権を相手に渡さないようにしている
だけかと」
カガミとナヴィの前で、その不毛な小競り合いは、
出掛けていたメンバーが帰ってくるまで続いた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6488名―――
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