33・どうよこの間違ったベクトルへの行動力
( ・ω・)四周年です!!
……え?(迫真の驚き)
日本・とある都心のマンションの一室―――
ペットと思しきシルバーの長毛種の猫が、
家主と思われる黒髪セミロングの少女とたわむれる。
「あ~……
この時期はソシャゲの季節イベも一段落して、
落ち着きますねえ」
「それはいいのですが―――
リアルのイベントを気にしてもらわないと」
ナヴィの言葉にフィオナは首を傾げ、
「リアル? 何かありましたっけ?」
「一応この小説……
連載期間だけは四周年を迎えるんですよ」
その答えに彼女は姿勢を正し、
「おおー、もうそんなになるんですか。
思えば長い道のりでした……
あれはまだアタシがイルカだった頃―――」
「ナチュラルおとぎ話始めるな。
しかし、何か言う事は無いんですか?
毎年こういう記念はほとんどやらないような
感じですけど」
『ごふっ』
ムー、と女神は眉間にシワを寄せて、
「まあ触れた事があるの、せいぜい二周年の時
くらいでしたからねえ。
(■6章4話 めっちゃ気になりますけど参照)
それにあの作者の執筆ペース考えると、そういう
特別な事をやる余力は無いんじゃないかと」
「普通に週に三作品連載してますからねえ。
ちょっと自分のペース配分を把握してないんじゃ
ないかと。
もう何年執筆活動やってるんだか」
『ぐふっ』
そこでフィオナはペットボトルに手を伸ばし、
水分補給しながら、
「それにしても本当にこう、こういう時に
何もしないから、PV数も上がらないん
ですよねー」
「まあまあ。
人間に羽はやして飛べって言うような
ものでしょう。
無理なものは無理ですよ」
『ぐはっ』
一息ついた一人と一匹は顔を見合わせ、
「うーん……
なかなかつぶれないわねこの作者」
「まあこの辺にしておいてあげてもいいんじゃ
ないでしょうか。
読者の皆様―――
四周年にも関わらず何も用意しなかった作者は
キッチリとシメておきましたので、どうかご勘弁
ください。
それではそろそろ、本編スタートしましょう」
│ ■グレイン国・王宮中庭施設 │
│ ■バーレンシア侯爵一行宿泊部屋 │
「むうぅうう~……」
「フィオナちゃん、いい加減諦めたら?
それに目標というか目的は達したでしょう?
アルプを弟夫にするっていう―――
第一段階というか既成事実は出来たじゃないの」
フィオナに与えられた個室の中……
母親であるアルフリーダも降臨し、母子でこれまでの
経過を思い返していた。
「でもなーんか納得いかないですよ。
1対1の人の方が、すんなりうまくいったって
いうのはわかりますけどぉ~」
ロングのゴールドヘアーと―――
抜群のプロポーションを持つ、時と成長を司る
女神は、ヤレヤレと両手を広げながら、
「だって、レイシェンさんはすごく頑張って
いたじゃないの。
いくらバーレンシア君が超鈍感だったとしても、
気付かなきゃウソでしょ。
マルゴットさんも、ビューワー君とは長年の
戦友みたいなものだし、ポーラさんもそう。
シモン君のためにって陰日向なく動いていたし。
ミモザさんについてはファジー君のため……
言うまでも無いって感じね」
「うむむむ」
母親から事実という名の正論を突き付けられ、
フィオナはうなる。
「まあアナタとメイさんの場合は下手に共闘して
しまったのがねー。
あの姉妹さんもそうなんだけど、普段は
アグレッシブなくせに、土壇場というか
本番に弱いっていうか……」
「至極ごもっともです返す言葉もございません」
立ち上がって扇子で口元を隠すアルフリーダに対し、
その足元で娘は土下座する。
「でもまーやっとこれで主従以上恋人未満は
終わったし、フィオナちゃんも私と同じく、
彼の事、神様にしちゃう?」
「ま、まあ……
そのへんはおいおい考えるってゆーかー。
メイさんの扱いもありますし」
その時、室内にもう一人気配が増え……
「ん?」
「あっ」
母子の前で、うつむき気味に出現した男性がいた。
褐色肌にミドルショートの黒髪をした、十代後半か
二十代そこそこに見え―――
彼はプルプルと震えながら立っていて、
「ほう……
出番が遅かったじゃないか」byアルフリーダ
「いらっしゃいませ、パパ♪」byフィオナ
フィオナにパパと呼ばれた軍神ユニシスは―――
ふり絞るような声で、
「……アルフリーダさん?
これはどういう事かな? かな?」
「フィオナちゃんは、私とパパの娘から……
『女』になったって事よ」
「すごかった……です。
記憶が消し飛ぶくらい」
それを聞いた彼は窓際へと向かい―――
「うおおぉおおお!!
この世界の娘持ちのお父さん!!
僕に力を分けてくれえぇえええ!!」
アルフリーダはそんなユニシスの背後に近付き、
チョップをお見舞いする。
「あだっ!」
「一応ここ、王宮のようだからやめてね?
まあ私が防音魔法かけているから、
どんなに大声出しても聞かれる心配は無いけど」
「まーでも確かに、パパには聞いてもらう必要が
ありますよねえ」
こうして両親と娘―――
家族水入らずで、話し合いが行われる事になった。
「いろいろ目移りしていると思ってたけど、
結局あの子になったのかあ」
「ね? だから言ったでしょ?
アルプちゃんと結婚するって」
父親と母親の話に、娘は
「えっ?
わ、わかっていたんですか?」
すると両親は顔を見合わせた後、プッと吹き出し、
「そりゃあね。
こう見えても親なんだしさ」
「超ベリーハードモードになった信仰地域に
しがみついたのだって、あの子のためじゃない。
他の候補はカモフラージュというか、
本命になかなか手を出せない言い訳にしていた
だけでしょ?」
両親、特に母親の指摘は鋭く―――
フィオナは深く息を吐いて、
「じゃ、じゃあ……
アルプを弟夫に迎え入れるのは、
2人とも賛成だったんですね?」
「いやでもそこはちょーっと男同士の話し合いを
したいところだなぁウン」
「コラ」
大人げない夫に対し、妻はツッコミを入れる。
「だってなあ……
聞くところによると、薬を使ったって話だし。
それで合意というか同意と言えるのかというと
微妙じゃないか?」
ユニシスの指摘に、アルフリーダはフィオナを
抱き寄せて父親に向け、
「ちなみに盛ったのはウチの娘。
どうよこの間違ったベクトルへの行動力」
「えー、買い被り過ぎですってぇ♪」
「ああウン、褒めているわけじゃないのよ」
妻と娘のやり取りを前に、ユニシスはどんな顔を
したらいいのかわからなくなるが、
「しかし何だ……
ママとしてはいいのかい?
2人相手というのは―――」
「まあメイちゃんなら問題は無いでしょう。
それに……」
ここでアルフリーダは夫にアイコンタクトをして、
「(薬使って2人がかりでようやく、ですから……
多分1人だけなら永遠にくっつかないわよ?
このコ)」
「(それは確かに……)」
ユニシスが納得すると、妻である女神は娘の方へ
振り返り、
「ちなみに、私はアルプちゃんと付き合うの、
全面的に賛成です」
「え!? 何で!?」
アルフリーダの言葉に夫は思わず聞き返すが、
「え、だって……
私だって神様として最初の神託地域でパパを
見つけたんだし―――
一番最初の眷属が、そのまま恋人になって
夫になって……
私の娘もそうなるなんて、これもう運命やん?」
母である女神は体をクネクネさせながら答え、
それに対して軍神は赤面する。
「おーおー、こういう機会までノロケに
使いますかあ」
そう言いながらもフィオナは顔をニヤニヤさせる。
そこでアルフリーダは真顔に戻り、
「まっ、お互い希望する人と一緒になれたんだから
いいんじゃない?
後はこれから、くっついたり離れたり
交換したりして―――
長々と話数を稼ぐような事をしなければ」
「止めてくださいママ!
それは多方面というかいろんなところというか
不特定多数にケンカ売る事になりますから!!」
焦るフィオナと、涼しげな表情のアルフリーダの
やり取りを、ユニシスは不思議そうに見つめていた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6459名―――
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