31・それは3人同時という事で
( ・ω・)18禁でないと表現に
神経を使う(本当か?)
日本・とある都心のマンションの一室―――
家主と思われる少女と、ペットと思しき
一匹の猫がくつろぎ……
そしてもう一人、ワンレングスの黒髪をした
少女が同室にいた。
「邪神ちゃん、どうして今日は家に?」
黒髪セミロングの女神は、もともと鋭い目つきを
崩さず、口元だけ笑顔でたずねる。
「いえもちろんナヴィ様のご尊顔を拝しに
ですけど?
あぁ、猫のお姿でも尊い……♪」
すりすりと、シルバーの毛並みの長毛種に頬を
すりつける彼女にナヴィは、
「まあどういう理由でもいいんですけどね。
トラブルさえ起こしてなければ」
「あぁん、このクールな態度がまた……♪」
抱きしめる腕をするっと抜けて―――
お目付け役(猫Ver)はフィオナの下へ。
「しかし、堕天使や悪霊はともかくとして……
邪神ちゃんって日本に来て大丈夫なの?
地元で何かする事とか、使命とか無かったん
ですか?」
「ン? 何? 田舎者扱いしてる?
田舎舐めないでよ空気とかめっちゃ
美味しいよコラ?」
「どういうところに噛みつくんですか」
いきなり臨戦態勢になる邪神に、すかさず
ナヴィがつっこんでたしなめる。
「いやでも邪神ちゃん、邪神でしょ?
世界征服とか、そういう何かあるんじゃ
ないのかなーって」
「そもそもワタクシは自分を邪神と称した
事なんて無いわよ。
第一、邪神ってわざわざ名乗る神様っている?」
それもそうか、と女神と従僕は顔を見合わせる。
「ああいうのって結局―――
教義が違ったり、異教との戦いで敗れたり
した結果の、後付けみたいなモンだからね」
やれやれ、と両手を広げ……
邪神と呼ばれる少女はため息をつく。
「まー勝てば官軍って言いますしねー。
『オマエ本当に神かよ』って言いたくなる
神もいますしー」
「そうですねえ。
特に(心が)邪(しまな)神なら
いつも見ているのですが」
主従のやり取りを、微妙な表情で邪神は見つめ……
「どーゆー意味?」
「いえ特に他意はございません。
それではそろそろ、本編スタートしましょう」
│ ■グレイン国・王宮中庭施設 │
│ ■バーレンシア侯爵一行宿泊部屋 │
「ほんじゃまあ―――
正式に『剣闘会』の日程が決まったので、
共有しておくね。
これから三日後に開催で、場所と日程、
人数は……」
バーレンシア侯爵が、フォックスタイプの眼鏡を
かけ直しながら、集まった全員に説明する。
「私でも名を聞いた事のある剣豪も、そこそこ
出るみたいです。
さすがグレイン国……
出場希望者には、高速馬車まで用意して
招致しているようですよ」
実年齢より若く見える、ビューワー伯爵も
書類に目を通す。
「グレイン国からはあの3人……
マイヤー伯爵様に王室騎士団からガルディ団長、
バスタ副団長―――
他数名ですか。
確かにこれでは、1日では終わらない
でしょうね」
この世界では珍しい、黒髪黒目のトーリ財閥の
従者、ネーブルが続けて語る。
「こちらからは、侯爵様に伯爵様、
ネーブルさんも出るんですよねっ」
グリーンの短髪にやや垂れ目のグリーン・アイを
した第一眷属の少年・アルプが確認するように
口を開き、
「シッカ伯爵令嬢様も出るんですよね?
頑張ってください!」
第二眷属の少年・ファジーが、そのブラウンの
髪と瞳をレイシェンに向ける。
「おぶふっ!?
そそそ、そうです!
わたくしも女神様の名に恥じぬように」
いかにもな女性騎士といった彼女は、その金色の
長髪を振り乱して答え、
「……何かさ、この前女性だけで集まっていた
ようだけど―――
それ以来緊張しているように見えるんだが、
何かあったか? ポーラ」
「いいいっ、いえその。
女性は女性で、いろいろと考える事も
ございまして」
褐色肌の少年・シモンの問いに―――
第三眷属であるポーラはその銀のロングウェーブの
髪を揺らし、視線を露骨に反らす。
ネーブルも、自分の主筋にあたる姉妹に
目を向けるが、
共に長いバイオレットヘアーを持つ、シンデリンと
ベルティーユは、それぞれ明後日の方向を向き、
「いったい何があったんでしゅかね、
ミモザさん、カガミさん」
シルバーの短髪を持つ女神の従僕・ナヴィが、
ブラウンの髪の第二眷属の姉と―――
赤茶のツインテールの獣人族の少女に質問するが、
「えっ!?
いやまあ、ヤボ用っていうかそりゃ」
「んー、それはナイショ。
ね、フィオナ様」
彼女たちはそのまま女神に振って、
「そそそそそーですね。
お、男の人には話せないって事もあるんデスヨ。
決して! いかがわしい事とか何かの企みとか、
そういう事はありませんから!
そうでしょ!? メイさんマルゴットさん!」
フィオナはそれをそのまま、同一目的の女性
二名へパスする。
「ハイッ!
フィオナ様の仰る通りでございます!」
「だ、男性陣にはその関係無いといいますか、
いえ厳密にはあるんですけど説明出来ないと
申し上げましょうかその」
姉と同じ銀のロングウェーブの髪を持つメイは、
直立不動でなぜか最敬礼をし、
マルゴットは真っ赤なロングヘアーが乱れるにも
関わらず、早口で話す。
「あー、えーと……
確か男子禁制の品を扱っていたっけ。
それについてはお任せするから―――
そちらで進めておいてね」
いい感じに勘違いしたバーレンシア侯爵の言葉に
すがるように、女性陣は張り子のオモチャの虎の
ように、首を上下に動かした。
「……行った?」
「……ん……
少なくともここに、異性はいない……」
トーリ財閥の姉妹が、すっかり静かになった
室内で声を発する。
例の男子禁制本にかこつけて―――
その相談をするという理由で、男性陣に
退室してもらったのだ。
「まあ聞かせられないという点では、
間違っていませんが」
「んでんで?
ターゲットは?
今のところどーなってんの?」
マルゴットがふぅ、と一息つくのと対照的に、
カガミがテンション高めで話を切り出す。
「えーと、一応……
アタシ・メイさん・マルゴットさんが
アルプ君、
シンデリンさんとベルティーユさんが
ネーブルさん、
ポーラさんがシモン君、
レイシェンさんがバーレンシア侯爵、
ミモザさんが―――
ファジー君とナヴィ狙い、でしたよね?」
全員がコクコクとうなずく中、ミモザだけは
「う……でもぉ、その、やっぱアタイ
まだ心の準備ってモンが」
もじもじと体をよじる少女を見て、
ポーラ・メイ姉妹が、
「何ていうか意外です。
一番性格がサバサバしていると
思ってましたのに」
「まあいざとなったら……
の典型的なタイプだね」
指摘を受けたミモザは、
「だーっ、わかったよ!
2人いっぺんに受け入れてやらぁ!
どこからでも来いってんだ!!」
両手を握りこぶしにして吠える少女に、
フィオナが、
「え? それは3人同時という事で」
「そういう意味じゃねーよ!!
それ言ったらフィオナ様は4人同時
だろうが!!」
「わー、女神様げひんー」
カガミもからかうように話すが、そのシッポが
ガシッとつかまれ、
「へ!? な、何ミモザさん?」
「こうなったらアンタも道連れよ……!
ここまで話聞いたんだから混ざりなさい!」
「え? え?
だ、だってカガミには相手いないしー」
いきなり参戦要請された獣人族の少女は
戸惑うも、
「せ、戦力は多い方がいいかも?」byフィオナ
「ふ、不測の事態が起きるかも知れないし」
byメイ
「獣人族だし、抑えてもらうにはちょうど
いいかも……」byシンデリン
「……ん……
ここまで来て協力しない、というのは
ナシ……!」byベルティーユ
「確かに、獣人族の力ならたいていの人間は
抵抗出来ませんし」byマルゴット
複数で挑む者たちはカガミの有用性を認め、
「そ、そうですね。
そちらはそれで……」byレイシェン
「こっちは1対1だし、
まあそっちは不安なら……
でも手が必要な時はお願いします」byポーラ
一人で挑む者たちも、暗にいざという時の
協力のため、その存在を容認した。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6436名―――
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