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30・残さず食べなさい

( ・ω・)涼しいと筆が進む

(そして寒いと(略))


日本・とある都心のマンションの一室―――


「あー……

 やっと涼しくなってきましたねー」


「そもそもフィオナ様、ほとんど表に出ないから

 暑いも涼しいも無いと思うんですけど」


家主である女神と、従僕である猫がリビングの

カーペットの上でくつろぐ。


「まあ確かにねー。

 行くとしてもコンビニとか、聖地あきはばらくらいだし。


 時々、邪神ちゃんたちのお店とか見に行ったり

 して―――」


「そういうところだけはアクティブなんですから。

 まったく。


 でもそれだけ暑ければ、最近やっている

 ウーバーなんとかに頼めばいいんじゃ

 ないですか?」


そこで黒髪セミロングの少女は、両目を閉じて


「いやー女性の一人暮らしで、そういうのに

 頼むのって怖いじゃないですか。


 配達してくれる相手が、12才から15才

 くらいの美少年で―――

 それが汗だくで来てくれるっていうのなら

 考えなくもないですけど」


「まったくもってブレないですね。

 そもそもこの国では、その年齢の子が

 バイトするのも厳しいでしょうに」


妄想に現実を突きつける主従のやり取りに、

突然声が室内に響く。


『フフフ……

 甘いわねフィオナちゃん』


「そ、その声は……ママ!?」


「アルフリーダ様……!」


天井を見上げるフィオナに続いて、ナヴィも

姿勢を正す。


「あ、甘いってどーゆー事ですか、ママ?」


『ねえ、フィオナちゃん。

 『シュレディンガーの猫』って知ってる?』


「一応、いろいろなラノベやゲームに引用されて

 いるので、話だけは」


それを聞いたアルフリーダはひと呼吸置いて、


『それなら話は早いわ。


 『物事は観測するまで、状態は確定しない』

 つまり―――』


「つ、つまり?」


『フィオナちゃんが配達を頼んだ相手が、

 ウチの扉を開けるまで……

 滝のように汗を流した美少年でないとは

 言い切れないわ!


 少なくとも配達が届くまで、その妄想に

 ひたり放題なのよ!!』


母親の言葉に、娘は立ち尽くし―――


「な、なるほど……!

 さすがママです!」


『妄想は待つだけでは来てくれないのよ、

 フィオナちゃん。


 じゃあこの辺で失礼するわねー♪』


そしてアルフリーダの声と気配は消え、

同時にフィオナは注文のためスマホへ向かう。


その女神の母娘のやり取りを見ていた従僕は、


「ええと神様として言う事がそれでいいので

 しょうかいいんですね。


 それじゃそろそろ、本編スタートします」




│ ■グレイン国・王宮中庭施設   │

│ ■バーレンシア侯爵一行宿泊部屋 │




「……よし。

 ここには女性以外いませんね?」


女神・フィオナの呼びかけに、


「はい」


「男性陣は全員、お風呂へ行ってますから」


徴税官の姉妹が、無風の室内なのにシルバーの

ロングウェーブの髪をなびかせながら答える。


「ではさっそく。

 『コレ』についてですが―――」


マルゴットが真っ赤なロングヘアーが揺れるにも

構わず……

その隙間から気の強そうな視線をテーブルの

上へと向ける。


そこには、ただの何の変哲もない、木の枝が

置かれており、


「これが……ですか」


「……特に……匂いも、無い……

 でも、女神様のお墨付き……!」


同じバイオレットヘアーの、トーリ財閥の姉妹が

静かに見つめる。


「あー、カガミにはわかるよー。

 かすかにだけど、すごくヘンな匂いがするー」


赤茶のツインテールをした獣人族の少女が、

フンフンと鼻を鳴らす。


「う、噂には聞いた事がありますが―――

 これが本当に」


その横でやや警戒しながら、鎧姿のブロンドの

女性が、遠巻きにそれを見つめていた。


媚薬びやく効果のある木……!


 これを煎じて飲めば―――

 ようやっとくんずほぐれつの関係に

 なるんですよねゲヘゲヘゲヘ」


フィオナがその小枝を挟むようにして、

両手を添え、


「女神様のする顔じゃないですよジュルリ」


「メイ、そういうあなたもよジュル」


ポーラとメイが姉妹そろってヨダレを垂らし、


「そうですよ。

 こういう時こそ落ち着かなければ」


「後は……実行あるのみ。

 邪魔する要素は、私の迷いのみ」


「おー、目が血走ってて怖-い」


言葉とは裏腹に興奮状態のマルゴットと

レイシェンに、カガミがツッコミを入れる。


そこから少し離れたところに、両腕を組んで悩む

ブラウンの髪の少女が一人。


「あり? ミモザさん?」


「どしたん?

 1人だけノリが悪いけど」


女神とメイが彼女に近付いて声をかける。


「いやあ、さ……

 こういうの使っていいのかなーって。


 それにアタイ、ファジーとは何つーか

 自然に結ばれたいっていうか。

 いやナヴィさんを諦めたわけじゃないけど、

 何かこうごっちゃになって」


もじもじしながら答える彼女の両肩に、

トーリ財閥の姉妹がポン、と手を乗せて、


「ここまで来てそりゃー無いでしょ」


「……ここに来て1人だけ抜けるのは……

 許されない……許さない……」


有無を言わさないプレッシャーをかけられ、


「い、いやだってさ!

 アンタらは―――

 複数対一でいくんだろ!?


 こっちは一対一でいくんだよ!

 そりゃ緊張もするってもんで……!」


その返しに、アルプを狙っているフィオナ・

メイ・マルゴット組と、


ネーブルを狙っているシンデリン・ベルティーユ

姉妹はひるむが、


「いえ、でもねぇ?」


「わたくしもとっくに覚悟完了しておりますが、

 何か?」


ポーラはシモン、レイシェンはバーレンシア侯爵を

狙う機会を逃してなるかと―――

背景を燃え上がらせる。


そんな彼女たちにミモザは両手の手の平を向けて

抵抗し、


「だ、だからちょっと待ってくれよ。


 ファジーもナヴィさんも捨てがたいんだってば!

 そ、それに、相手がどう思っているのかも」


するとフィオナが彼女の前へ歩み寄り、

ニッコリと微笑んで、


「アタシも以前……

 ママに相談した事があります。


 もし好きな人が同時に複数出来た場合、

 どうしたらいいのか―――


 その時、ママはこう言いました……」


ゴクリ、と周囲の女性陣が喉を鳴らす中、

女神はゆっくりと口を開き、


「『もしあなたが、多くの異性の間で悩んだ時……


 残さず食べなさい』


 と……!」


そこでしばらく沈黙が訪れ―――

フィオナは続けて、


「だって神様だしー。

 器ってモンが違うしー。


 相手が人間なら大勢従えてもいいでしょ?

 違う?」


「さ、さすが神様……」


「格が違った……!」


ポーラ・メイ姉妹が感心して答え、


「そ、そうよ……

 ネーブルなら姉妹丼もいける器のはず!」


「……ん……でも……

 2人以上は許さない……!」


それにトーリ財閥の姉妹が続き、


「い、いやだってそれでいいのかい!?

 それにフィオナ様、今回アンタは残さず

 『食べられる』側だろ!?


 第一、ナヴィ様だってアタイが取っちまう事に

 なるかも知れないんだぜ!?」


わたわたしながらミモザが言い返すも、


「それなら、ファジー君1人に絞れば

 いいだけの話でしょう」


「往生際が悪いぞ。

 いい加減、覚悟を決めるのだ……!」


「わー2人とも、ヒロインがしちゃいけない

 顔してるー」


マルゴットとレイシェンの連携に、すかさず

カガミがツッコミを入れ―――

がっくりとミモザは敗北を受け入れたかのように

うなだれた。




│ ■グレイン国・王宮中庭施設別室   │




同じ頃―――

別室で、マイヤー伯爵と王室騎士団の二名が、

丸テーブルに座ってある物を見つめていた。


「……これは?」


筋肉質のアラフォーの男性が、それについて

たずねる。


「いえ、平民の一行が郊外の森へ行っていたという

 情報があったでしょう。


 何でも、ある木を熱心に見回っていたようで……

 これがその木の皮と枝です」


チェリーブロッサムの短髪をしたガルディ団長が、

目の前の品の説明をする。


「……効果は? 何なのだ?」


「それが無名の木でありまして、記録には

 無いそうです。


 ただまあ、現物を確保しておいた方が

 よろしいかと思いまして」


その答えに、マイヤー伯爵はトントン、と

指でテーブルを叩き、


「……そうか。

 その木で木剣を作るのも面白いかも知れんな」


「と言いますと?」


伯爵は手に取った枝を見つめながら、


「お前たちの行動は全て筒抜けだと―――

 知らしめてやる事が出来る。


 まあ、気付けばの話だが」


「なかなかいい趣味をしておりますね。

 まあ、悪くないと思いますよ」


彼の苦笑を横に、マイヤー伯爵は枝をテーブルの

上に戻した。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在6424名―――



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

基本、土曜日の午前1時更新です。

休日のお供にどうぞ。


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