29・ここで一気に決めたいと思っています
( ・ω・)何か一気に評価が+10pt増えました。
応援ありがとうございます!
日本・とある都心のマンションの一室―――
そこで銀の長毛をした猫を挟んで、二人の少女が
対峙するように座る。
「さて本日は5人目、最後のゲスト―――」
「本日はこの方!
ワーフォックスちゃんです!」
黒髪セミロングの、やや目付きの悪い女神は、
お目付け役(猫Ver)と共に、同席している
獣人の少女を紹介する。
黄色に近い首までの長さの金髪を、ウルフカットに
した狐耳の少女は、
「近況報告……でしたっけ?
アルフリーダ様に身元保証人になって
頂いている手前、それはいいのですが。
私の場合、聞いてもあまり面白い事は
無いと思いますよ?」
頭をカシカシとかきながら、やや困った顔で
答える。
「そーなんですか?
その耳とシッポはモフモフ好きには
たまらないかと」
「コスプレの中では定番ですしね。
店員さんの中にはそれなりの美形さんも
いますし―――
店内の人気で言いますと、私は中堅くらいって
感じです」
むむぅ、と女神の主従はうなる。
「後はですねぇ~……
まあモテるっちゃモテるんですけど、
その、客層が」
「?? と言いますと?」
「悪霊さんのように、お年寄りに人気だとか」
狐耳の少女の問いに、フィオナとナヴィが
聞き返す。
「いえ、店じゃなくてですね。
近くに猫カフェが何件かあるんですけど、
よくそこにお呼ばれするですよ。
私が行くと文字通り、猫まっしぐら!
みたいな感じで懐かれて」
それを聞いた女神と従僕は微妙な表情になり、
「う~ん」
「それはまた、何と言いますか」
ワーフォックスの少女は、出された飲み物を
グイッと流し込み、
「猫にモテてもしょーがないですよ!
第一我、捕食者ぞ!?
お狐様ぞ!?
それなのにあんなにゴロゴロと―――
……『本命』は無関心なのにぃ~……」
恨めしそうな目でナヴィを見るが、当人は、
「??」
ワーフォックスの言葉を証明するかのように、
ただ首を傾げる。
「うぅううぅ~……」
涙目になる彼女を見て、さすがに気の毒と
思ったのか、
「で、でもそれだけ猫に好かれるって、
何かマタタビみたいな匂いや味を出してるとか?
ホラ、ナヴィ。
何か感じる?」
フィオナはそう言ってナヴィをワーフォックスへと
押し付け、
猫の姿の彼は、彼女をフンフンと嗅ぎながら、
周囲を回るようにして―――
さらにペロッと手を舐めてみる。
「うーん……
これと言って特別な匂いや味は、
感じませんけど」
「そ、そう?」
お目付け役の報告に、フィオナはそっと
ワーフォックスの顔を見てみるが、
そこには幸福絶頂というような表情の
彼女がいて……
「アリガトウゴザイマシタふぃおなサマ。
今後トモヨロシクオ願イシマス」
「いえいえ。
良き協力関係を続けて頂ければ」
二人の会話に、ナヴィは首を傾げ―――
「どうしてワーフォックスさんは、ヨダレと
鼻血を垂らして幸せそうにしているのですか?
まあいいです。
それそろ、本編スタートしましょう」
│ ■グレイン国 │
│ ■王都ウィーンテート │
「どう? ファジー君。
何か見つかった?」
「アルプにい……アルプさん。
果実のある木は見つけましたけど、
フィオナ様のお目に叶うかどうかは」
グリーンの短髪をした、第一眷属の少年と―――
ブラウンの髪の、気弱そうな目をした第二眷属の
男の子が、木々の中を探索する。
「果実は商売上でしか扱っていませんし、
専門というわけではありませんから……
シモン君を連れて来れば良かったかしら」
「うーん、シモン君も商品として扱っている
だけで―――
別に生態まで詳しいとは限りませんよ。
ただグレイン国は穀物を中心に生産している
国家なので、どんな果実でも見込みはあると
思いますが」
真っ赤な長髪を持つ商人、マルゴットと、
銀のロングウェーブの髪を持つ第三眷属の妹、
メイが状況を受け答えし、
「いやそりゃ、フィオナ様に任せりゃいいんじゃ
ないかい?
果実の豊穣を司る女神なんだし」
第二眷属の姉、ブラウンのミドルショートの
髪と、気の強そうな瞳のミモザが、そのまま
フィオナに疑問をパスする。
「え? えーとですね。
そういうのは専門の人が」
「おい女神。
お前以上の専門家はいないんでしゅよ」
すかさずシルバーの短髪の、獣のような目を持つ
従僕につっこまれ、
「そ、そーは言いましてですねえ……ん?」
フィオナはうっそうとした木々、茂みの中を
見渡し、
「おおお、これは……!
見える、アタシにも見えますよ!
果実とその効果が―――
スゲー、まるでゲームの鑑定みたい」
「そういえばもう200話以上やっているのに、
果樹の女神らしい事をしゅるなんて、片手で
数えるくらいでしゅからねえ……」
女神の驚きに、遠い目をして語るナヴィ。
「で、どうだい?
何が見える、女神様」
「えーとえーと……お?」
ミモザの問いにより目を凝らし……
ある地点で視線をストップしたフィオナは、
「ちょっと女性陣集合」
と、マルゴット・メル・ミモザを呼び寄せると
同時に、アルプ・ファジー・ナヴィから離れた。
「どうしました、女神様」
「いったい何が―――」
豪商の令嬢と徴税官の娘が質問すると、
彼女は一本の小枝を手にする。
「何だってんだい、この木の切れ端が」
ミモザが説明を促すと、
「じ、実はですね、コレ」
ボソボソとフィオナは小声で語り始めた。
「むむむ」
「いやでも、う~ん……」
マルゴットとメルは両腕を組んで悩み始め、
「あたいは? まあ、その……
やぶさかではない?」
「このチャンスはなかなか―――
アタシは、ここで一気に決めたいと
思っています!」
ミモザも戸惑うが、女神が胸の前で
握りこぶしを作ると、
「―――やりましょう」
「女神様のお心のままに」
「そうだな。
そろそろ、覚悟を決めるか」
三人の女性陣がフィオナに追随する。
それを遠巻きに見ていた男性陣は、
「何か見つけたんでしょうか?」
「ずいぶんと、真剣に話し合ってますね」
アルプとファジーが顔を見合わせ、
「……まあ、そういう物にでも頼らないと、
進展は無さそうでしゅしねえ」
少年二人がその言葉に首を傾げる中、ナヴィは
大きく深く息を吐いた。
│ ■グレイン国・王宮中庭施設別室 │
「……それだけかね。
連中の動きは」
「ええ。『女神』と呼ばれる少女とその
平民一行は、郊外の森へ―――
バーレンシア侯爵を始めとする貴族一行は、
同じ貴族層へ挨拶回りに、
トーリ財閥は富裕層のお得意様回りに、
シモンという果実店の少年は、ポーラという
女性と共に、我が国の同じ商売をしている店へ
商談を持ち掛けているそうです」
チェリーブロッサムの短髪の騎士団長は、
白髪交じりの、筋肉質の体をしたアラフォーの
男へ報告する。
「し、しかし……
同じ身分層の挨拶回りはわかります。
お得意様回りも、商談も―――
平民たちが郊外の森へ出かけた、という
ところだけ、何か違和感が」
ブロンドヘアーをエアリーにまとめた青年―――
バスタが、自分の上司であるガルディ団長と、
マイヤー伯爵におずおずとたずねる。
「何でも、同行している『女神』が、
果実の神様とやら……
らしいと聞いております」
「何か美味しい果物でも、見つけているんじゃ
ないかね?」
笑い合う騎士団長と伯爵を前に、
副騎士団長は何も言えず―――
「……まあいい。
剣闘会までもう時間は無い。
小細工にしろ何か企むにしろ、地の利・
時節の有利は我々にある。
バスタ。
お前にはあのネーブルとかいう少年と、
再戦の機会を与えてやる。
次こそは必ず勝て。
グレイン王室騎士団の名にかけてな」
「は、ははっ!!」
バスタは深々と頭を下げ―――
室内に沈黙が訪れた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6416名―――
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
基本、土曜日の午前1時更新です。
休日のお供にどうぞ。
みなさまのブックマーク・評価・感想を
お待ちしております。
それが何よりのモチベーションアップとなります。