28・囲い込みで逃げ場を断てばワンチャン
( ・ω・)そろそろ四周年目が見えてきたなあ
(超遠い目)
日本・とある都心のマンションの一室―――
その玄関で、汗だくになって座り込む少女と、
それを出迎えるように一匹の猫が座っていた。
「ぐあっちぃいいー!!
あーもう、ちょっとコンビニ行って来た
だけなのに……
見てよもうこの汗!」
「近くのコンビニまで5分もないでしょうに。
というか、今回やけに帰りが遅いと
感じましたが、何かあったんですか?」
黒髪セミロングの、目付きがちょっと悪い女神の
言葉に―――
お目付け役(猫Ver)が聞き返す。
「それがもう聞いてよ!
ここ、オートロックなんだけど……
玄関ロビーにね!
セミが迷い込んでいたの!
しかも横をそ~っと通り抜けようとしたら、
アタシ目掛けて飛んできやがるし。
何で最短距離で一直線でアタシ目指すのよ!」
靴を脱いで、リビングへ向かう彼女に、
シルバーの長毛種の彼がついてきて、
「モテモテですね、フィオナ様」
「半翅目にモテても嬉しくも
何とも無いわよ!!
異世界モノで異種族間恋愛は珍しく無いかも
知れないけど、せめて哺乳類よこせっての!」
冷蔵庫から冷たい飲み物を出して、それを
ぐーっと飲み干すと、ようやく一息つく。
「妖精とかそういったものだと思えば、
いいんじゃないですか?」
「限度があるわよ。
あの不完全変態の節足動物にどんな
想像をすれば……
あ、でもセミってオスしか鳴かないのよね。
美少年が揃って歌っていると思えばデュフフ♪」
「病気が再発したようで何よりです。
私は信じておりましたよ。
それではそろそろ、本編スタートしましょうか」
│ ■グレイン国 │
│ ■王都ウィーンテート │
「で、ではアルプ、ファジー。
ついて来てくださいっ」
「はいっ!」
「はーい!」
女神・フィオナは―――
第一眷属・アルプと第二眷属・ファジー、二人の
少年を連れて、王都郊外を歩いていた。
護衛にナヴィ、そして同行者としてマルゴット、
メイ、ミモザと一緒に……
ある目的のため、探索に出ていたのである。
「この国にも、フィオナ様が新しく育てられる、
何らかの果物が絶対あるはずです!」
「ボクの家でも出来ましたし、
必ず探しましょう!」
母譲りのグリーンの短髪の少年と、それより少し
年下の―――
ブラウンの髪をした少年が、自分たちが仕える
女神・フィオナに話しかける。
「確かに、この国でもフィオナ様の加護のある
果物が入手出来れば―――
手堅い商売になるでしょうね」
「マジで一気に育つからなあ。
それはアタイの目でも確認しているし」
燃えるような赤い長髪を持つ商人の女性と、
第二眷属の姉が、弟と同じブラウンの髪を
指先でねじりながら語る。
「シモン君の店で、果物はそれなりに見てきて
おりますし―――
わたくし、必ずお役に立って見せますわ!」
第三眷属の妹・メイが、ガッツポーズを作る
ようにして気合いを入れる。
「(まあ、『アンカー』たちもいい落としどころを
見つけてくれましゅたね)」
小声で、縦線の目をした女神の従僕、ナヴィが
主筋にささやく。
「(アタシとしてはどうかと思ったんですけど……
正論過ぎて拒めなかったんですよねえ)」
―――少女回想中―――
【 つか、別行動取るってメンバーも
いるんだろ? ならさ…… 】
その言葉に他の『アンカー』陣も注目し、
次の書き込みの前にフィオナが注文を付ける。
「で、では……!
『アンカー』は今のスレで……300!
聞きたい事は―――
今後の方針!!
出来れば具体的な『メンバー』も!!
―――さあ、アタシを導き給え……!!」
>>300
【 今後の方針:その国で果樹を実らせろ 】
【 メンバー:自由行動のきく眷属 】
「……ど、どーゆー事でしょーか?」
フィオナはおずおずと聞き返すが、
【 あー、だってなあ……
『果樹の豊穣を司る女神』なんだろ? 】
【 その設定、ぜんぜん生かせてないって
ゆーか 】
【 たまにそれっぽい事をしたと思ったら、
生物兵器だったりするし 】
グゥの音も出ない現実を突きつけられ、
女神は押し黙る。
【 後はまあこれを機に―――
眷属たちと『仲良く』なれって 】
【 最初『弟夫』とか呼んでただろ。
即座に次の攻略対象が現れたけど 】
【 さすがに誰一人とくっついていないって
いうのは、ちょっと問題が 】
「いえすさーでございます直ちに
『アンカー』の皆様方の意見を可能な限り
検討実行するものでありますっ!!」
逃げるようにフィオナは回線を閉じると―――
バーレンシア侯爵一行、そして戻って来た
アルプ組にその事を話し、
・バーレンシア侯爵一行
→ビューワー伯爵、シッカ伯爵令嬢と一緒に
貴族層へあいさつ回りに。
・トーリ財閥一行
→ミイト国でも使ったピンホールカメラと、
モデルにはネーブルを用意して各所へ売り込みへ。
(カガミはこれに同行)
・シモン&ポーラ組
→グレイシア王妃様にも献上した果物、
という触れ込みで新規開拓。
フィオナ一行は新たな果実・果樹探しに……
と、各自別々に行動を開始する事になった。
―――少女回想終了―――
「(しかし、いくら拒めなかったとはいえ、
マルゴットさんやメイさんと一緒に……
というのはよろしかったのでしゅか?)」
この二人もアルプを狙っている事は知っている。
その恋敵とも呼べる相手と同行するというのは……
そうナヴィは不安を露わにしたが、
「(え~とぉ、それがですね。
このままではラチが明かない、という事で―――
ちょっと『お話し合い』しましてぇ)」
「(??
……何をでしゅか?)」
小声でボソボソと話し合う主従に、いつの間にか
メイとマルゴットが近付いてきて、
「(ま、まあその……
だって、誰かを選べって事は、それ以外の
人を捨てろって事になりますし)」
「(あの優しいアルプにそんな選択肢があるかと
言われると……
下手をすると、『僕だけ身を引きます』って
最悪の結果に―――)」
二人の話に、それはわかるが恋愛なんて
そんなものでは、とナヴィが思っていると、
「(で、ですからねっ!
そうなるくらいなら共同戦線を張って―――
みんなで攻め込むのはどうかというお話に
なりましてっ。
そもそも、アタシが逆ハーレム狙っている
事自体おかしかったんです!
それならアルプは男だし、男がハーレム作るのは
当然ですよね!?)」
「(当然じゃねぇよ。
ていうかどうしてそう、極端から極端に
走るんでしゅか。
まあ合意の上なら何も言いましぇんが……)」
フィオナの言葉に、呆れて返すナヴィ。
「(ぜ、全員年上ですし……!
囲い込みで逃げ場を断てばワンチャン!!)」
「(そうです!
みんなで回り込んで、追い詰めるんです!)」
続いて話すメイとマルゴットに、ナヴィは
冷ややかな視線で、
「(何ていうか……
まるで何かの漁業の方法みたいでしゅねえ)」
そこへミモザが入ってきて、
「何やってんだい。
さっきからそっちで」
「あ、何でもないでしゅよ。
ただ私のレーダーに、ヘタレ怪獣が3匹ほど
引っ掛かったででしゅ」
「?? へたれかいじゅう?」
フィオナ以外、その単語の正確な意味は
わからなかったが……
女性三人組は、息ぴったりに視線を反らした。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6409名―――
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