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26・時間無制限一本勝負

( ・ω・)そういえば13話以降、

『アンカー』たちの出番が無いな

(いつもの事)


天界、フィオナの実家―――


そこでナヴィ(猫Ver)は、主人である

アルフリーダとその夫、ユニシスに対し

いつもの定例報告を行っていた。


「ふむ、今そんな事になっているのか」


「いつもご苦労様。

 引き続きお願いしますね」


黒髪のやや長髪・褐色肌の軍神と―――


その身と共に腰までの長さを持つ金髪を、

自然になびかせて……

女神が夫ともに立ち並び、


その前に銀色の長毛の―――

鳥のような羽を生やした猫がちょこんと座る。


「しかし、加護がいい香りや甘い味になるとは」


ナヴィはフィオナが木刀に施した加護を思い出し、

確認するようにうなる。


「本来フィオナは―――

 『果樹の豊穣ほうじょう』をつかさどる女神だからね。

 そうなるのは当たり前だし、それでいい

 はずなんだが」


「むしろ刀身を射出するような物にならなかった

 だけでも、御の字(おんのじ)でしょう」


両親は娘の能力を正確に把握し―――

最悪の想定にならなかった事を喜ぶ。


「しかし、以前武器に変化した事がありましたし、

 そういう意味では父親似なんですかね」

(■第3章4話 とらいあんどえらー参照)


「そういう事で父親似と言われてもなあ。

 嬉しいというか困惑するというか」


「でもまあ、フィオナちゃんもまだまだ

 子供ですからね。


 そもそも神と神の間に生まれた子は、

 多かれ少なかれ、両方の素質を受け継ぐのよ。


 そろそろ私寄りの『能力ちから』も、発現して

 いい頃なんだけど」


それを聞いた従僕は、露骨に視線を背け、


「正直カンベンしてください。

 現状で手一杯ですのに、アルフリーダ様の

 能力まで加わったら―――」


「う、うーん……

 そうだな、まだ時期尚早じきしょうそう、かな?」


同性の神も視線を明後日に向ける。


「もー、パパまで。

 少しは娘の事を信用してあげてください。


 私だってあの子の頃は……」


たしなめるようにアルフリーダが口を開くが、

言葉は途中で止まり、


「……そ、そうね、ウン!

 焦ってもよくないわ。

 成長を見守っていきましょう!」


急に態度を変えた女神に―――

ユニシスとナヴィはあえてツッコむ事なく、


「それじゃ、そろそろ―――」


「本編スタートしましょうか」




│ ■グレイン国・王宮中庭施設別室   │




「……フム、これですか」


ガルディ騎士団長は、木剣を手に取って顔に

近付ける。


「一見するとただの訓練用の模造剣だが―――


 面白い効果があってな」


マイヤー伯爵は、二つの木剣を両手に持ち、

それを交差させるように、激しく撃ち合わせる。


あまりの衝撃に木くずがボロボロと床に落ち、


「!? これは―――」


「やはり騎士団長、すぐに気付いたか。


 ほんの少しだが、これには麻痺毒が

 含まれている。


 すぐに揮発きはつして消えるが、な。

 効果もそれほど長くは持たん」


薄いチェリーブロッサムの髪をかきあげながら、

騎士団長は―――

白髪交じりのアラフォーの男の前で、

ひざまずくようにして木くずを拾う。


「こんな子供騙こどもだましが、


 『バクシアの鬼神』、『フラールの剣聖』に

 通じるとでも?」


騎士団長の問いに、初老の男は微笑で返す。


「もちろん無理だろうな。


 だが、手練れというものは―――

 必要以上に情報を気にする。


 並の相手なら、少し体が重くなったと思う程度の

 異常でも……

 一流は『そのまま』にする事はない」


「警戒心を抱かせる事が出来ればいいわけですか。


 しかし―――

 それほどの相手なら、木剣に何かあったと

 気付くのでは?」


あの二人なら、この木剣の仕掛けをすぐ

見破るだろう。

当然の疑問を口にするガルディに、


「これは特別でね。


 二つとも異なる木を削って作られている。

 そして単品では毒でも何でも無いのだよ。

 ・・・・・

 混ぜられて初めて効果を発揮する」


「……なるほど。


 おりしも今、剣闘会のために国中から

 腕自慢の者どもを集めている。


 これをそいつらに使わせれば

 ちょうどいい、と」


立ち上がった騎士団長は、伯爵に視線を合わせる。


「万全をすなら―――

 『バクシアの鬼神』、『フラールの剣聖』にも

 使わせたいが、さすがにそこまでは無理だろう」


「バスタはどうします?

 あのネーブルという少年との対戦は」


伯爵は両目を閉じ、アゴに手をあてて、


「それこそ小細工は必要あるまい。

 あやつに必要なのは傲慢ではなく自信よ。


 それに、勝つにしろ負けるにしろ―――

 目くらましくらいには役に立ってもらわんとな」


その答えにガルディは苦笑し……

改めて木剣が重ねてテーブルの上に置かれた。




│ ■グレイン国・王宮中庭施設   │

│ ■バーレンシア侯爵一行宿泊部屋 │




「ねー、ネーブルはどこー?」


「……ネーブルお兄ちゃんが……

 足りない……」


シンデリン・ベルティーユ姉妹が、従者である

少年の姿を探す。


「だから何度も言ったでしょう。

 剣闘会の詳細を聞きに行ってるって。


 バーレンシア侯爵さんもビューワー伯爵さんも、

 あとシッカ伯爵令嬢も―――

 そちらに行っているんですって」


呆れつつ、黒髪セミロングの女神が対応する。


「カガミが様子見て来ようか?

 忍び込んでー」


赤茶のツインテールをした獣人族の少女が

申し出るが、


「それはやめた方がいいかと思いましゅ」


「戻って来たら話してもらえるでしょうし、ね?」


女神の従僕と、徴税官の娘がそれを止める。


「しかし、一気に人減りましたね。

 アルプとファジーまでいなくなっちゃうしぃ~」


「だから、女神の眷属として―――

 果実を献上しに行っていると言ったで

 しょうが」


フィオナの言葉に、シルバーの短髪に、

獣の目を持つ少年が答える。


アルプ・マルゴットのフラール組と、

ミモザ・ファジーのルコルア組は―――

シモン・ポーラと一緒に、『極上の果実』を

提供するため、厨房へと出向いていた。


「本当はわたくしも行きたかったん

 ですけどねぇ~」


「アルプのお供なら、アタシが行くのが

 スジでしょうがぁ~」


互いに両腕を組みながら、女神と銀の

ロングウェーブを持つ少女が視線で

火花を散らす。


「フィオナさんとメイさんが膠着こうちゃく状態に

 なっている間に、出て行っちゃった

 もんねー」


「そーよ!

 何でナヴィも止めなかったの!?」


カガミとフィオナが経緯を確認し、

その非難の矛先を彼へと向けるが、


「そりゃいきなり2人とも―――

 時間無制限一本勝負をおっぱじめりゃ

 そうなるでしゅよ」


垂れ目の姉と、それとは対照的な無表情の

妹が会話に参戦し、


「途中まではいい攻防だったんですけど、

 最後はダレていましたからね」


「……あれでは売れない……

 もっとお客さんの目を意識して……!」


「「見世物じゃないわ(ですよ)!!」」


トーリ財閥の姉妹のツッコミに―――

女神と第三眷属の妹は、同時に抗議の声を上げた。




「トニックさんとソルトさんが?」


室内に落ち着いた雰囲気が戻ってきたところで、

シンデリンから情報がもたらされる。


「ええ。

 彼らがグレイン国内で得た情報によると―――

 もうすでに剣闘会の事は広く告知されている

 みたい。


 すでに何人もの腕自慢が、名乗りを挙げて

 いるそうよ」


一息ついて、今度はベルティーユが、


「……『枠外の者』『新貴族』については……

 どちらかというと、完全に『新貴族』の方が

 主導権を握っている……


 でも、『新貴族』の国や王家に対する

 忠誠心は……極めて高い……」


それを聞いて、残りの四人は首を傾げる。


「どゆこと?」


「実力主義を標榜ひょうぼうしながら―――

 ちぐはぐな気がしましゅね」


フィオナとナヴィが疑問を口にし、


「新しい体制を求めつつ……

 かと言ってそれほど急激な変化は

 望んでいない?」


メイもまた、推測を兼ねて感想を述べると、

カガミは耳をピン! と立てて、


「あ、戻ってきたよ」


「どっちですか?」


「侯爵様たちー」


そこで彼らとも情報共有するために―――

室内のメンバーは彼らの到着を待った。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在6394名―――



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

基本、土曜日の午前1時更新です。

休日のお供にどうぞ。


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