25・疲れた時に甘味で回復
( ・ω・)執筆ペースが落ちる祝日が
最大の敵(逆恨み)
日本・とある都心のマンションの一室―――
そこに二人の少女と、ペットらしきシルバーの
長毛種の猫が一匹。
テーブルに座ってくつろいでいた。
「さて本日はこの方!
堕天使ちゃんです!」
黒髪・セミロングの目付きがやや悪い少女から、
指名を受けた彼女は戸惑う。
ブロンドのロングウェーブをした髪の―――
天使のような、しかし真っ黒な羽を持った少女が
コホンと咳払いし、
「あの、フィオナ様。
いったい何が始まるので?」
そこへお目付け役(猫Ver)が割り込み、
「ご主人様経由で、聖地で働き始めたと
聞きましたので―――
近況を聞いてきて欲しいと頼まれました。
別段、特に問題が無ければ」
「あー……
そういえば連絡先もアルフリーダ様に
なっておりますからね。
我の方は、問題は起こしていないと
思いますが……」
少し目をそらしつつ堕天使は答え、
「『我の方』は?」
「というと、店の方に何か問題でも」
目ざとく切り返すフィオナとナヴィに、
彼女は首を横に振って、
「いえ、我の羽……
自然に抜けるんですけど、これを何か
持ち帰ってしまう人が多くて。
コスプレ店員の同僚とかお客さん問わず。
ただ、我のコレは―――
『呪物』に近いものなんですよ」
それを聞いて女神の主従はうなり、
「え? マズくないですかソレ?」
「どのような祟りというか―――
効果があるのですか?」
それに対し堕天使は微妙な表情になり、
「我の加護を受けられる代わりに―――
それまでの従来の加護が受けられなくなる、
という感じです。
一応、我は堕天使なので、直接的・打算的な
加護が多い反面……
穏やかで健やかな加護は無くなるかと」
女神と従僕は両目を閉じ、
「直接的・打算的、ねえ」
「具体的に言うとどんな事になりますか?」
そこで彼女は視線を天井へいったん上げて、
「ぶっちゃけますと、まあ―――
金運・ギャンブル運・恋愛運UPの代わりに、
健康運・家庭運DOWNという感じでしょうか」
むむぅ、とフィオナとナヴィは顔を見合わせ、
「まあ確かに、ギャンブル運と金運が
ダブルで上がったら……」
「そりゃ健康なんぞに気を使わなくなっても、
不思議ではありません。
(※個人の感想です)」
三人で納得したようにうなずき、主従はさらに、
「そして恋愛運UPなら―――
家庭運はちょっとヤバくなるかも。
結婚とかもう相手がいるなら特に……」
「でもそもそも、そういう店で働いたり
客として来る人たちに、特定の相手が
いますかね?
(※個人の感想です)」
そこで静けさがしばらく場を支配し、
堕天使が低い声で口を開き、
「それは~……
我も含めてノーコメントと言いますかあ~……」
「いかん!
堕天使ちゃんの翼がより黒くなっておられる!」
「ではそろそろ、本編スタートしますか」
│ ■グレイン国・王宮中庭施設 │
│ ■訓練・練習場 │
「ふーん?
見た感じ、ただの木剣に見えるけど」
「そうですね……
別段、変わったところは特に」
剣の腕に覚えのある侯爵と伯爵令嬢が―――
それぞれ模擬戦用の得物を手に取って確認する。
今現在、訓練場にいるのは剣闘会に出る
メンバーで……
アルプとファジー、ミモザはその前に同行して
いたのだが、やはり剣が使える人間に一度
見てもらった方がいいという事で―――
入れ替わりでこの場に来ていた。
「重さも、特に何らかの差異があるとは」
「そうですね。
バスタ様と戦った時との違いは、
感じられません」
フラール国の伯爵と、ミイト国の豪商の
従者兼護衛を勤める少年も……
似たような感想を漏らす。
「ま、まあ……
パッと見ではわかりませんけれど。
ちょっと試合してみて頂けませんか?」
フィオナの言葉に―――
頬にクロスの傷を持つ青年と、シルバーの短髪に
涼し気な瞳のある青年が互いに構える。
「そうだね。じゃ、ビューワー伯爵。
やってみようか」
「お手柔らかに―――
バーレンシア侯爵様」
それを見て、金髪を腰まで伸ばした女性騎士ふうの
女性と、黒髪黒目の少年が距離を開ける。
「『バクシアの鬼神』と『フラールの剣聖』の
試合……
久しぶりに見ますわね。
ネーブルさんは初めてでしょうか?」
「そうですね。
シッカ伯爵様は―――
ミイト国の王室騎士団の訓練に、一緒に
付き合っているんでしたっけ。
貴女以上と言われる剣の腕……
後学のために、是非」
そして、バーレンシア侯爵とビューワー伯爵が
対峙する中―――
それを女神の主従と、レイシェン・ネーブルが
遠巻きに見守る形で『模擬戦』が始まった。
「はっ! よっと!」
「……フッ! ハァッ!!」
中央で、剣撃が開始される。
お互い、本気では無いだろうが―――
まるで息の合った時代劇の殺陣を見るかのごとく、
両者の剣が交錯する。
「うぉおお……
ゲームか映画でも見ているみたい」
「強いのは知ってましゅたが……
ましゃかこれほどとは。
この世界の人間の中では間違いなく―――
1・2を争う強さでしゅよ」
女神の驚きに、銀髪の……
猫のような瞳の少年が補足するように答える。
「女神様の付き人に、そこまで言わせるとは」
「あの2人の強さ―――
ナヴィ様から見て、どうでしょうか」
ネーブルは『どちらが強いのか』という質問を
喉で押しとどめ……
ややベクトルを修正して聞いてみる。
「んー……
年齢から言って、ビューワー伯爵さんの方が
体力的に厳しいでしゅね。
それを補うように動きを最小限にして、
見切りと受け流しで対応していましゅ」
次にレイシェンから質問が飛び、
「あ、あの!
ではバーレンシア侯爵様は―――」
「こちらは、どうやったら攻撃の勢いを全て
生かせるかに、特化している感じでしゅね。
一見大振りに見えましゅが―――
勢いを殺す事なく、それがそのまま次の攻撃に
繋がっておりましゅ。
弾かれた攻撃ですら。
相手がビューワー伯爵さんで無ければ、
とっくに決着がついているでしょうね」
その答えに、女性騎士といった風体の彼女は
満足そうにうなずき―――
トーリ財閥の従者の少年は、二人の戦いに
目を釘付けにした。
「ふぅ……っ」
「これくらいでよろしいでしょうか、
フィオナ様」
十分ほど経過して―――
ようやく侯爵と伯爵は『模擬戦』を止め、
木剣を下ろす。
「しかし、加護があるというお話でしたけれど」
「私の目には違いが……」
レイシェンとネーブルが困惑しながら語る。
そこでフィオナが片手を挙げて、
「えーと、ではですね。
木剣の香りを確認してもらえないで
しょーかっ」
バーレンシア侯爵とビューワー伯爵は一瞬
『??』という表情になるが、指示通りに
木剣に顔を近付ける。
「……何か、いい匂いがするね」
「ええ、確かに。
得も言われぬ良い香りが」
彼らの感想に、女神は胸(小)を張って、
「アタシの加護を受けたその木剣は―――
果実のような甘い香りがするんですよ!
それに舐めてもらえばわかりますけど、
とても甘くなって」
話の途中でナヴィがフィオナの顔面に
アイアンクローを極めて、
「おうそれが戦闘の最中にどう役に立つのか、
ご説明願おうじゃないでしゅか」
「かか、香りでリラックス?
あと疲れた時に甘味で回復とかあだだだだだ」
周囲はどうつっこめば良いのかわからず、
しばらく茫然としていたが、
「あの、フィオナ様。
そ、そろそろお部屋に戻られた方が」
「そうですよ!
アルプ君とファジー君に―――
戻って来た方々もあまり待たせては」
伯爵令嬢と従者の少年が、話の流れを変えようと
いったん帰る事を促し……
一行はまず部屋に戻る事になった。
│ ■グレイン国・王宮中庭施設別室 │
「バスタは帰してよろしかったので?」
「ああいう手合いは余計な情報を与えん方がいい。
好き勝手に解釈して動き回られると困る」
淡い桜色の短髪をした王室騎士団長と―――
白髪交じりのロマンスグレーの『新貴族』の
初老の男が語り合う。
「しかし……
小賢しい案が思い浮かんだと仰りましたが、
貴方らしくも無い」
「何、陳腐な策を思いついただけだ。
もちろん、私と君には使わんよ。
そもそも小細工が通用する相手とは思わん」
ガルディ騎士団長とマイヤー伯爵は、
互いに視線を交わし、
「ちょっと戦いに彩りを付けるだけさ。
メインディッシュの前にはオードブルが
必要だろう?
そもそも、バスタ君を引き入れたのは―――
『枠外の者』『新貴族』に正面切って逆らう
連中に、警告を与えるためだったしな」
「……なるほど。
お手並み拝見といきましょうか」
彼らは不敵な笑みを浮かべ―――
会話を終了させた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6388名―――
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