23・……いえす下着、のーたっち……
( ・ω・)気温30度って涼しかったんだなあ(爆)
日本・とある都心のマンションの一室―――
そこのリビングで、黒髪セミロングの、
やや強気そうな目をした少女と、
シルバーの長毛種の猫が一匹……
ブラウンのワンカールロングをした、涼し気な
目元を持つ、コウモリのような翼に小悪魔の
シッポのある少女と対峙していた。
「さて本日はこの方!
サキュバスちゃんです!」
「聖地でのお勤めご苦労様です。
是非とも、その感想を聞きたいと思いまして。
と、フィオナ様とアルフリーダ様が」
フィオナとナヴィの言葉を、サキュバスと呼ばれた
少女は『んー』と一息つくと、
「そーですねえ。
この羽もシッポもコスプレという一言で
済んでしまいますし。
正直なところ、拍子抜けという感じ?」
それを聞いたフィオナとナヴィはコクコクと
うなずいて、
「そこらへんは邪神ちゃんと同じかなー」
「ふむ、お困りのような事は無いと」
それを聞くと彼女は困惑した表情となり、
「いやー、それはそれでちょっと問題が」
「と言うと?」
フィオナが聞き返すとサキュバスは、
「あまりにもナチュラルに受け入れられて
いるんでねー。
時々、ここが異世界だという事を
忘れそうになるのよ。
危うく魔法使いかけたりして……
ある意味、危険な場所よねー」
ふむふむ、と一人と一匹は納得しながら
聞き続け―――
「そりゃ確かにちょっとヤバめですねえ」
「人間、2・3人持ち帰ったりとか
してません?」
すると彼女は首を左右に軽く振り、
「確かにまあ、そこそこレベルの高い子が
来る時もあるっちゃあるけどぉ~……
私だって人を選びますよ。
特にナヴィ様を知ってしまった後では―――」
そこでまた女神と従者はうなずき、
「一番高価いエサを知ってしまったら、
それ以外は食べたくないって事でしょーか」
「例えは何ですが、わかってしまうのが
ちょっと悔しい。
まあ、ではそろそろ―――
本編スタートしましょうか」
│ ■グレイン国・王宮中庭施設 │
│ ■バーレンシア侯爵一行宿泊部屋 │
「ふー、やれやれ。
お偉いさんの悪趣味にも困ったモンだ」
グレイシア王妃の謁見、それに王室騎士団長・
マイヤー伯爵との顔合わせを終えた侯爵は、
ソファに深く腰掛ける。
フォックスタイプの眼鏡の奥の三白眼は、
疲れたように半開きとなり―――
青みがかった短髪を人差し指と親指でつまむように
いじりながら語る。
「あの2人が間違いなく―――
グレイン国のトップの実力者と見て、
間違いないでしょう。
彼らほどの者が、『新貴族』とは
思いたくありませんが」
実年齢より十は若く見える、シルバーの
短髪をした伯爵が続く。
「お疲れ様でした、侯爵様、伯爵様」
「シッカ伯爵様とネーブルさんも―――」
第一眷属と第二眷属の少年二人が、謁見に出ていた
四人をねぎらう。
「いえ、わたくしたちは別に」
「それより―――
お嬢様方や、他の女性の姿が見えないの
ですけれど」
ブロンドのロングヘアーをした、女性騎士といった
風体の伯爵令嬢と、短髪の黒髪黒目をした少年が
室内を見回す。
すると一重丸目と少し垂れ目の少年が、
その目を輝かせ、
「それがスゴかったんですよ!」
「このお屋敷、いろいろなところがパカッと
開いて、そこから人が―――」
何を話しているのかわからない四人に、
シルバーの短髪をした猫目の従僕が、
「あの人たちは今、戦っておりましゅので」
「え!? こんな場所で敵の襲撃でも受けたの?」
バーレンシア侯爵が思わず聞き返すが、
「ある意味襲撃ではあったと思うけど」
どう説明したものか悩んでいるシモンより、
アルプとファジーが興奮しながら、
「グレイン国ってメイドさんでも、あんなに
素早く動けるんですね!」
「壁を垂直に走ってました!
ボクもあれ出来るようになりたいー!!」
「止めてくれファジー」
唯一残っていた第二眷属の姉・ミモザが、
弟と同じブラウンの髪をした頭を抱える。
「……グラノーラ令嬢の姿も見えませんが、
どちらへ?」
ビューワー伯爵の問いにナヴィが口を開き、
「フィオナ様と一緒に、洗濯を『手伝って』
おられましゅ」
すると眷属の少年二人が飛び上がるほど驚き、
「そ、そんなっ!?」
「何て恐れ多い事を……!」
扉へ駆け足で向かおうとするところを、
それぞれナヴィとネーブルが制し、
「あー、訂正しましゅ。
洗濯に関わってはいましゅけど、手伝っては
いないと思うでしゅよ」
「どちらかというと奪い合いというか……
とにかく、お2人が考えているような事は
無いと思いますので、ご安心を」
意味はわからなかったが、とにかく必死に止めて
くるので―――
ひとまず二人は部屋の中央へと戻った。
―――1時間後―――
「ただ今戻りましたっ」
「洗濯は滞りなく終了しました」
「……任務完了……」
女神と、トーリ財閥姉妹がまず帰還し、
「むうぅう~……
カガミ、獣人族のはずなのに、どうして
ただの人間がついてこられるのー?」
「愛は種族差を超える……!」
「それごときでわたしたちは止められない」
今度は獣人族の少女と―――
ポーラ・メイ姉妹が続く。
「思ったより敵の多さに手間取りましたが、
作業が終了してしまえばこちらのものかと」
最後にフラールの豪商の娘が締めて報告を終える。
「あの、僕たちの洗濯物を洗うのを、手伝って
頂いたという事ですが」
アルプの質問に、
「いえまあ、別にそれほどの事では」
「直接手を付けてはいませんし」
「……いえす下着、のーたっち……」
フィオナとロングのバイオレットヘアーをした
シンデリン、そして姉と同じ色の髪を自分の
身長とほぼ同じ長さまで伸ばしたベルティーユが
言い訳するように答え、
「でも、触らないと洗えないのでは」
ファジーの当然の疑問に、
「カガミたちは洗う前の勝負をしていたから」
「いくつか取りこぼしましたが、大物は
守り切りました」
「今回は痛み分け……
次は一枚も奪わせません!」
赤茶のツインテールに八重歯のような牙の、
獣人族の少女と、銀のロングウェーブの髪を持つ
姉妹が説明し、
「後は乾かすだけですので、それ以上の手出しは
不可能かと思います」
真っ赤なロングヘアーに、気の強そうな目をした
マルゴットが説明するのを、侯爵の青年と果実店の
跡継ぎの少年は、左右に首を傾げながら、
「洗濯って、そんなに大変な事だったっけ?」
「違うと思いますけど……」
微妙な空気のまま、洗濯の事情説明は終わった。
│ ■グレイン国・王宮中庭施設別室 │
同じ頃―――
割り当てられた別室で、マイヤー伯爵と
王室騎士団の二名が話し合っていた。
「『枠外の者』・『新貴族』に真っ向から
歯向かう愚か者がいるとは聞いておりましたが。
確かに―――
それだけの実力はありました」
桜色の短髪をした青年は表情は笑いながらも、
その鋭い眼光はそのままで、
「只者ではないという事はわかったと思う。
だがあれは私の獲物だ。
君は伯爵の方をお願いしたい」
貴族というよりは騎士を思わせる―――
筋肉質の体付きの初老の男が語る。
「で、では私めは……
シッカ伯爵令嬢を?」
ブロンドヘアーをエアリーにまとめた青年が、
おずおずと会話に参加する。
「その前にバスタ、お前は―――
あのネーブルとかいう少年の方が先だろう」
「し、しかしガルディ団長」
一度敗れている相手、しかも実力差はその身で
知っている。
さすがに勝てないとは言明しないが……
「あの少年に勝てないのなら―――
ミイト国の『剣姫』とやるだけムダだぞ。
それに本来のお前の実力なら、勝てたはずだ」
「は?? え??」
上司の言葉の意味がわからず、困惑する彼に、
「あの少年―――
護衛に特化している……
いや、『していた』のだろう。
ただ、まだ1対1の戦い、それも障害物の無い
広間においての戦闘で、つけいる隙はいくらでも
あった。
おそらく誘われたところへ慢心して打ち込み、
切り返されただけ……
違うか?」
その言葉に副団長はハッとなり、
「た、確かに!
最初は防戦一方かとも思ったのですが」
マイヤー伯爵はそれを聞いて苦笑し、
「確かにバスタ君も―――
一騎打ちであればそうそう遅れはとるまい。
君の剣は全て攻め込んでいると思い込んで……
実はあの少年に受け止められていたという
わけだ」
初老の伯爵は涼し気な顔で分析する。
しかし、
「……ム……」
「??
どうかされましたか、マイヤー伯爵様」
両目を閉じる彼に、ガルディは問うが、
「いや、何か奇妙な気配を感じてな。
敵意ではないのだが、背中がぞわぞわすると
いうか」
「あ、それ私も感じてました」
片手を挙げるバスタ副団長に対し、
「何でしょうな……
特定の言葉が出た時だけ、一気に加速する
ような―――」
いかに優れた彼らでも、自国の選りすぐりの
メイドや侍女たちが、壁と言わず天井と言わず
潜んで聞き耳を立てているとは知らなかった。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6367名―――
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