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21・ごめん、アタシでもするわそれ

( ・ω・)気温よりも湿気がキツい。


日本・とある都心のマンションの一室―――


そこで、家主と思われる黒髪セミロングの少女と、

ペットと思しき、シルバーの長毛種の猫が一匹。


「さて本日はこの方に来て頂きましたー」


「世が世であれば神!

 邪神さんです」


フィオナとナヴィに紹介された彼女は戸惑い、


「いったい何が始まるんです?」


顔の片方をロングの黒髪で隠した―――

ワンレングスの少女は、半開きの目で

二人に聞き返す。


「いやねーママから聖地アキハバラで働き始めたと

 聞きましたので」


「その状況を聞いてみたいと思いまして。


 と、フィオナ様が」


邪神が呼ばれたのは―――

秋葉原の、恐らくコスプレ関係であろうお店で

仕事を始めた事の感想を聞くためであった。


興味津々の女神と、それとは対照的な態度を取る

お目付け役に、


「えーと、まあ……

 結構疲れたというか、難しかったというか」


「ン? そうなんですか?」


「やはり外見とかで?」


邪神の答えに、フィオナとナヴィが聞き返す。


「あ、いや……

 外見についてはほとんど。


 会話にしても、あっさりしていましたし」


彼女の話によると―――

同じ店で働く仲間の女性陣からは、

『なり切ってますね』

『設定細かいですね』

と言われ、


客については、何を話しても向こうの方から

合わせてくれたみたいだった。


「へー、そんな感じだったんですか」


「でもそれなら、別に苦労する事も

 無かったのでは?」


女神と従僕の質問に邪神は、


「いえ、それが……

 初日の終わりに、同じ職場の仲間から、


 『今日は初心者の方々でしたから』って」


「初心者?」


接客では聞き慣れない単語が聞こえ、

疑問の声を上げるフィオナ。


「それで『上級』が来ると―――

 店側にもお客様側にも、お互いにそれなりの

 心構えが必要になると……!」


「上級!? 心構え!?」


「お互いに!?」


女神の主従が一通り驚きの声を上げた後、


「なかなか、一筋縄ではいかない世界でしたわ。

 あそこは……!」


「世界というか異世界というか」


「異界というより魔界と言った方がよさそうな……


 それじゃそろそろ、本編スタートしますか」




│ ■グレイン国・王宮中庭   │




「我がグレイン国にご降臨頂きまして―――

 誠にありがとうございます。

 我が国は、女神・フィオナ様を歓迎いたします」


うやうやしく、その豊かな黒髪を垂れて……

グレイシア王妃が一礼する。


「いや今さらそんな事されても、先ほどの

 ナヴィやアルプ、ファジーにした事は

 なくなりませんからね」


フィオナがジト目でそれに答える。


彼女の言う通り、降臨に付いてきた三人の

少年は―――

文字通り言葉と肉体でもみくちゃにされていた。


「あ、あの~……」


「き、気にしていませんからっ」


グリーンの短髪を持つ、一重の目をした少年と、

ブラウンの短髪の、やや垂れ目がちな目をした、

第一眷属と第二眷属がフォローに入る。


「いやすごかったでしゅからね。


 砂糖に群がるアリのごとく……

 マタタビに突っ込む猫のごとく―――

 私たち以外何も目に入っていないという感じで」


猫のような縦線の瞳と、シルバーの短髪を持つ

女神の従僕がグロッキーになって話す。


「だ、だって仕方がないじゃありませんか!


 目の覚めるような美少年のカタマリが、

 それも二人抱きかかえるようにして、

 そしてそして何と!

 中心の一人に抱き着いて―――


 そりゃ突進するだろ!!」


「王妃様!

 言葉が結構かなり激しく壊れておられます!」


「お気持ちはわかりますが!

 全面的に同意いたしますが!!」


自国の王妃の言葉使いの崩壊っぷりに……

近くにいた侍女や女性騎士がツッコミもとい

いさめに入る。


「ごめん、アタシでもするわそれ」


「そりゃしますって」


「ノ、ノーコメントで」


女神と、第三眷属の妹が銀のロングウェーブの

髪を揺らしながら、素直に同意し―――

第二眷属の姉である三白眼の少女は答えを

保留した。


「そう言われるとねー」


「うん、しない方がむしろ無理」


「……もう誰も止められない……!」


赤茶のツインテールをした、八重歯のような牙を

のぞかせる、獣人族の少女に続き、


同じロングのバイオレットヘアーに、垂れ目と

対照的にビスクドールのような無表情をした

姉妹がうなずく。


「た、耐えたんですよこれでも最初は!

 しかし皆様がよってたかって―――」


金髪ロングの女性騎士といった体の、

レイシェン・シッカ伯爵令嬢がやや頬を赤らめ

ながら語り、


「わ、私はあくまでもアルプ君を守るために、

 ですからね!」


「あー! マルゴットさんズルい!!

 わ、わたしだってえーと、えーと」


真っ赤なロングヘアーのフラールの豪商の娘に、

抗議のようにウェーブがかかったシルバーの長い

髪を持つ、第三眷属の少女が抗議のように話す。


「僕たち、何を見せられているんだろうか」


「ま、まあ……

 グレイン国への降臨は初めてだったでしょうし」


頬にあるクロスの傷を撫でながら、侯爵が

フォックスタイプの眼鏡をクイ、と直し、

白銀の短髪を持つ伯爵の青年が受け答える。


「えーと、その、何だ……

 経験上わかるようなわかりたくねえような」


「理解しようとしてはダメでしゅ。

 性別も思考も妄想も違うんでしゅ。

 我々に出来る事はただ見守るだけ」


褐色肌に黒い短髪の、年相応の生意気そうな

目をした少年の疑問にナヴィが答え―――


ひとまず、初顔合わせは終了した。




│ ■グレイン国・王宮中庭施設   │

│ ■バーレンシア侯爵一行宿泊部屋 │




「―――まあ、とにかくお疲れ様です。

 フィオナ様」


割り当てられた別室で、一行の代表として

バーレンシア侯爵があいさつする。


「ちょ、ちょっとお見苦しいところをお見せして

 しまいましたね。

 いや初めての国でしたし、あんな広いところに

 大勢で移動って今までした事無かったし―――」


「言い訳だけに関しては本当に口が回りましゅね」


女神の主従のやり取りを、周囲はどんな顔を

したらいいかわからないまま受け入れる。


「そんな事より―――

 他の皆さんは大丈夫でしゅか?」


フラールから来た一行にナヴィは視線を向け、


「ア、アタイはナヴィ様におぶって

 もらったからさ」


「僕たちも、とっさに引き寄せられましたから」


「でも、フィオナ様とメイさんが」


アルプとファジーの視線の先には、仲良くソファに

横たわる二人の姿があり、


「いやぁ~……

 一気に5人連れて来るのって、やっぱり

 疲れたわ」


「ええと、それより情報共有を。


 何か、剣闘会やるんでしたっけ?」


その声を皮切りに、ようやくそれぞれの

現状確認が行われた。




「なるほど……

 それで、参加するのは今のところ、

 バーレンシア侯爵様・ビューワー伯爵様・

 シッカ伯爵令嬢様にネーブルさん―――

 で会ってますか?」


「こちら側からはそうだね。

 多分、あの騎士団副団長と、流れとして

 団長も出て来るだろうねえ」


アルプの問いに、侯爵が答える形で説明する。


「他の参加者は―――」


「今のところ、王室騎士団が参加するのは

 確定だと思います。


 団長・副団長以外の選定は

 これからでしょうけど」


ファジーの質問に、ビューワー伯爵が返す。


「あと、シッカ様は女性だけどいいのかい?」


「祝い事というかお祭りみたいなものでしょうし、

 そこまで堅苦しくは無いのでは。


 当然、真剣でもやらないでしょうし」


ミモザの疑問に、レイシェンが答える。


するとそこにフィオナが声だけ割って入り、


「真剣ではないとすると、木剣とかですか。


 いいですねー。

 アタシも木製なら何か作る事が出来るかも」


「フィオナ様?

 今回は剣の腕を競うだけでしゅし、

 しょんな心配はしないでいいと思いましゅよ?」


「余計な事はするなという事ですねわかりません」


「いやわかりぇ」


まだ降臨の疲れが取れ切っていないのか、

予想外の事を口走る女神と、それをたしなめる

従僕の会話を聞きながら―――

時間は過ぎていった。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在6350名―――



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

基本、土曜日の午前1時更新です。

休日のお供にどうぞ。


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