20・お前らは足にでもしがみちゅけ
( ・ω・)久しぶりに早いペースで書けた。
(その分少ない)
日本・とある都心のマンションの一室―――
家主と思われる少女と、ペットと思しき猫が
リビングでくつろいでいた。
「あーれー?
何か今日、誰とも連絡つかないなー」
黒髪セミロングの少女がスマホをポチポチと
操作しながら、寝っ転がってつぶやく。
「邪神さんや悪霊さんたちとですか?」
シルバーの毛並みをした長毛種の猫が、
人間の言葉で聞き返す。
そこへ、室内に声が響き渡り―――
『邪神ちゃんたちの事?
あの子たちなら、多分バイトに出かけて
いるんだと思うわ』
フィオナの母であり、ナヴィの主人である
アルフリーダの指摘に二人は頭を上げて、
「バイト?」
「働いているんですか、あの人たち」
その疑問に、時と成長を司り、見守る女神は、
『ルールー家が身分を保証した時に、
住まいと一緒に、それなりの生活費も渡して
いるんだけど……
せっかく人としての生活を手に入れたのなら、
いろいろ経験してみたいんだって』
彼女の説明を聞いて娘と従僕は、
「へー、そうなんだー」
「なかなか殊勝な心掛けですね。
でもいくら身元保証があっても―――
人外の彼女たちに、普通の仕事は厳しいのでは」
一般論で心配するナヴィにアルフリーダは、
『大丈夫だと思うわよー?
あの子たち、素の外見のまま働けるところが
あったって言ってたし』
フィオナとナヴィは顔を見合わせて、
「え” そんなところ日本にある?」
「素の外見って……
下手したら羽やら尻尾やらある状態って
事ですよね?」
困惑する二人に彼女は続けて、
『私たちの聖地・秋葉原よ。
あそこなら人外の1人や2人―――
混ざったって気付かれないでしょ』
堂々とした答えに対し娘と従僕は、
「何言っているんですかママ。
あそこはまだ日本に編入されていないでしょ」
「ある意味異界ですからね。
確かに相性はバッチリだと思いますが。
それじゃそろそろ―――
本編スタートしましょう」
│ ■グレイン国・王宮中庭 │
グレイン国王都ウィーンテートにある
王宮―――
その中庭にある施設で、王妃グレイシアが
一段高い場でその座についていた。
「降臨……と言われましたか。
しかし我が目で見てみない事には
何とも―――」
豊かな黒髪に涼し気な目元で、扇子で
口元は隠し……
王妃は前に跪く貴族の男性二人に声をかける。
「女神・フィオナ様は―――
眷属のいる地であればどこにでも現れます」
「是非とも、その目でお確かめください」
頬にクロスの傷を持つ―――
フォックスタイプの眼鏡をかけた、薄い青色の
短髪をした侯爵と、
シルバーの短髪の貴族青年が、顔を上げずに
疑問に答える。
「神託で、すでに話はつけております」
「王妃様のご要望により、姿を見せるって!」
まだ少女の幼さが残る、銀のロングウェーブの
髪を持つ第三眷属と、
八重歯のような牙を持つ、赤茶のツインテールの
第四眷属の獣人族の少女が―――
補足するように言葉を引き継ぐ。
剣闘会の話題がグレイン・フラールで
共有された後……
女神一行は、準備やら何やらで忙しくなる前に、
合流した方がいいのでは、という意見が出て、
バーレンシア侯爵がグレイシア王妃にその事を
言上したところ―――
是非ともその降臨の場に立ち会いたい、と
申し出があった。
そこで眷属たちは元より……
王宮中庭施設で、一行でお出迎えする事に
なったのである。
「神託は見た事があるけど……
降臨は初めてかしら?」
「ん……そうかも……」
やや垂れ目の姉と、人形のように物静かな
雰囲気を持つ妹―――
お揃いの長いバイオレットヘアーを持つ、
トーリ財閥の姉妹が奥で控え、
「ナヴィ様の実力は知っていますので―――
疑うわけではありませんが」
「俺も初めてかもな。降臨見るのは」
黒髪黒目の、中世的な顔立ちのトーリ財閥の
従者と、対照的にガキ大将のような顔立ちの
黒い短髪・褐色肌の少年が隣り同士で待機する。
「バーレンシア侯爵様がお認めになった事。
間違いなどございません」
「まあ私は何度も拝見した事がありますし」
ファンタジーに出て来る、金髪ロングの
女性騎士の伯爵と、真っ赤なロングヘアーに
気の強そうな目をした豪商の娘が、見守りながら
その時を待っていた。
「……!」
「来るよー!!」
ポーラとカガミが同時に視線を上げて
反応する。
同時に、広間がまばゆい光に包まれ、
「こ、これは!?」
「これが、女神・フィオナ様の降臨……!」
グレイシア王妃お付きの侍女や女性騎士たちが
ざわつき始め―――
光の中から声が……
『やべぇ!
こんな広いところに降臨なんてした事
ないから―――』
『しっかりするでしゅ!
しょれに、今回は私たちだけじゃ
ないんでしゅよ!
ただでさえアルプ君とファジー君の衣装の
選定にも手間取ってギリギリなのに』
『し、仕方ないでしょ!
アレはママの意向も絡んでいてですねえ!
でもこのままじゃホントやばい!
マジやばい!!』
『うみゅう~!!
アルプ君ファジー君、しっかり掴まるでしゅ!
ミモザしゃんは背中に!!
お前らは足にでもしがみちゅけえええ!!』
何やら混乱しているようなやり取りが聞こえ、
やがて光が収束する。
はっきりと視界が戻り、そこに見えたのは―――
獣のような目をした、シルバーの短髪を持つ
少年が―――
丸っこい一重の目を持つ、グリーンの
短髪の年下の男の子と、
気弱そうな垂れ目がちの目と、ブラウンの
短髪を持つ同性の子供、
二人を両手に抱きつかれるようにして抱え、
そして背中には―――
三白眼の少女を背負い、腰を割って立っている
姿だった。
「おおう、何とか到着した?」
「みたいですねえ~……」
その彼の足元で、猫目と垂れ目の中間のような
目をした女神と……
姉と同じロングウェーブの銀髪を持つ少女の
声が聞こえて来た。
「ナ、ナヴィ様っ」
「申し訳ありません!」
第一眷属と第二眷属の少年が、女神の
従僕から離れ、
「わ、悪ぃ。
おんぶしてもらっちまって」
ミモザがその背中から降りると、ようやく
ナヴィは解放された。
「おお……!」
「なんと神々しい……!」
「場所の指定に協力してくださり、
感謝いたします―――」
いつの間にかグレイシア王妃を始め、
メイドや護衛騎士たちがフィオナの前まで
歩み寄り、
「ふ、ふふん♪
眷属や信者のためですから、これくらいの事」
神としての威厳を保とうと女神は、床に
うつぶせになっていた体勢からすぐに立ち上がり、
服に着いたホコリを払う。
「アタシが!
このアタシこそが!!
果樹の豊穣を司る優しき女神、フィオナ―――」
自己紹介とアピールを兼ねて、彼女が胸を張って
高らかに口を開いた途端、
その横を王妃・次女・女性騎士たちが通り抜けて、
「あのっ!
先ほどの、3人一緒に固まっていたヤツ、
もう一度やって見せて頂けません!?」
「あ、後ろの女性は結構ですので」
「その衣装は何ですか!?
上からでも白い肌がうっすらと……
とても素敵ですわあぁあ!!」
フィオナの後ろ、ナヴィとアルプ・ファジーが
囲まれ、もみくちゃにされながら質問攻めを
受け始めた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6337名―――
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