18・言い訳が世界一ヘタクソか
( ・ω・)仕事エンジンの余力で小説も
書ければなあ(願望)
日本・とある都心のマンションの一室―――
黒髪セミロングの少女と、大人と少女の
中間くらいの、天使のような羽を持った
ブロンドのロングウェーブの同性、
そして黒髪ロングのポニーテールをした、
いかにも服装と同じく和風の面長な少女、
首までの長さの金髪をウルフカットにした、
いかにもな元気いっぱいの女の子―――
少女たちは合計四人でテーブルを囲んでいた。
「我の時は―――
領地の全員を信者に、と言われた事も
あったわね」
「おおー、さすがは堕天使ちゃん。
スケールが大きい!」
堕天使と呼ばれた少女に、女神・フィオナは
素直に驚く。
「あたくしの場合……
全財産、それにお屋敷、だったかしら……
その辺りでは一番大きな……」
「悪霊ちゃん美人だもんねー。
それくらいポンっとくれちゃうかも。
私は―――
山のヌシとか、そこらで一番強い獣の
毛皮だったなー」
そこに、唯一の異性が部屋に入って来て、
「お茶でしゅよ。
……って、いったい何の話をしているん
でしゅか?」
シルバーの短髪に、やや縦線の猫目の少年が、
それまでの会話に入る。
「やー、求婚された時にね?
どれだけの物を差し出されたかっていう」
フィオナは片手をひらひらとさせながら、
従僕に答え、
「……今のところ堕天使ちゃんがナンバーワン
ですね」
「邪神ちゃんとならいい勝負しそう」
悪霊とワーフォックスが次いで語る。
「確かに、崇拝対象でしゅから―――
差し出すものもレベルが違うでしゅよね」
ナヴィの肯定に、主筋の女神はぐいぐいと
顔を近付け、
「ね、ね?
アタシだったらどれくらいだと思います?
女神ですよ女神様!
それも新人、生粋のぴちぴちの!」
そこで少年はんー、といったん悩んで、
「牛二頭ってところじゃないでしゅか?」
「どこの部族の結婚式だ?」
それを見ていた堕天使・悪霊・ワーフォックスの
三人組は、
「さすがナヴィ様。
今日もSっ気が半端ないですわ」
「……ああ、あのキレ味抜群の言葉に
袈裟懸けに斬られてみたい……」
「天然というか、野生を感じるよー」
他の少女たちの評価に彼は向き直って、
「まあ趣味は人それぞれでしゅけど……
しょれではそろそろ、本編スタートしましゅね」
│ ■グレイン国・王宮中庭施設 │
│ ■バーレンシア侯爵一行宿泊部屋 │
「はい、ではこちらへ洗濯へ回す衣服を
お入れください」
「バーレンシア侯爵様はこちら、
ビューワー伯爵様はこちら、
ネーブル様はこちら、
シモン様はこちらになります」
「あ、女性のはこちらにまとめておいて
くださいませ」
言葉使いこそはていねいだが―――
洗濯物の回収にやってきたメイドたちが持ってきた
それは、男性陣の箱はそれぞれ個別で豪華な
物なのに対し、女性用のそれはおざなりで……
「いえ、侯爵様の物はわたくしが洗いますので」
金髪ロングの―――
身長の高い、いかにもな女性騎士の体の
レイシェン・シッカ伯爵令嬢は、
バーレンシア侯爵用の箱をガッシリとつかみ、
「ネーブルのは結構ですよ?」
「ネーブルお兄ちゃんの物は……私たちの物。
その汗の匂い一つに至るまで渡さない……!」
ロングのバイオレットヘアーに、ややトロンとした
目付きの姉と―――
姉と同じ色のロングのストレートヘアーを持つ、
日本人形のように無表情の妹が、綱引きのように
従者の箱を引っ張る。
「シモン君のも結構ですわ……!
わたしが洗いますゆえ」
銀のロングウェーブの髪を持つ、まだ幼さの
残る少女も、箱をガッチリとつかむ。
「いえあの、主人が従者の服を洗濯するというのも
どうなのかと」
「なあ、ポーラ。
洗ってくれるっていうのなら、別にいいんじゃ」
黒髪黒目の、ビスクドールのように顔の整った
少年と―――
真夏にたくさん遊んで日焼けしたような、
ガキ大将のような褐色肌の少年が、
主人の姉妹と常連客をそれぞれいさめる。
「それで、あの―――
どうしてグラノーラ様がビューワー伯爵様の
衣服を押さえているのですか?」
「いえ、何となく……
これを渡したら伯爵様に申し訳ないような
気がしまして」
真っ赤なロングヘアーと、勝ち気に満ちた
芯の強そうな表情の豪商の娘が、メイドと
箱を引っ張り合う。
その光景を見ていた赤茶のツインテールをした
獣人族の少女が、八重歯のような小さな牙を
光らせて、
「別にいいんじゃないの?
ただの洗濯でしょー。
カガミ、面倒だから渡すよー」
そこでメイド陣営は活気付き、
「そうですよ!
カガミ様の言う通りです!」
「私たちはただ、お仕事としてこれを
洗濯するだけでございます!」
「別にこれを洗濯する前に、本能のままに
着たり嗅いだりするわけじゃありませんから!」
最後の言葉を聞いたレイシェンが箱を分捕り、
「言い訳が世界一ヘタクソか!!」
「クッしまった!
このような巧妙な誘導に引っ掛かって
しまうとは……!」
一人のメイドが悔しそうに箱を手放す。
「ふざけないで!
ネーブルの脱ぎたての服を使用するのは
主人だけの特権よ!」
「お兄ちゃんに抱きしめられる多幸感を
味わえる……
これは女を狂わす麻薬と言っても過言では
ないもの……」
シンデリンとベルティーユ、姉妹の言い分に
ネーブルは頭をかいて、
「そんな事してたんですか、あんたら」
そこでシモンは彼女の方を向いて、
「……ポーラ?」
「わたしはそんな事はしません!
でも他人に使用されるのは何かイヤ」
「お、おう……
そ、それはそうと侯爵様たちの姿が
見えないんだけど」
そこにいないバーレンシア侯爵とビューワー伯爵に
助けを求めるように、シモンは周囲を見回した。
│ ■中央・謁見の広間 │
その頃、同じ施設内で―――
頬にクロスの傷を持つ、やや青みがかった短髪の
貴族青年と、
同じく貴族青年の、ホワイトシルバーの髪に、
長身の割には細身と思える伯爵が跪いていた。
「ええと、王室騎士団との手合わせという話は
聞いておりましたが―――」
「剣闘会……
とは何でございましょう」
一段上の玉座から、王妃・グレイシアが
口を開き、
「実は、取り巻きの貴族どもから提案が
ありまして。
王室騎士団・副団長のバスタを倒すほどの
腕前の少年がいる―――
さらに『バクシアの鬼神』『フラールの剣聖』に
加え、『ミイト国の剣姫』まで我が国に揃った
機会に、国内の腕に覚えがある者たちを集め、
大会を開催しようではないかと」
ハー、と呆れながら、彼女はボリュームのある
黒髪を流れるままにして両目を閉じる。
「もちろん、今の話は決まった事では
ありません。
わらわとしても、返礼に訪れた客人にする
話ではないと思っています。
ですので、お断りなされても何ら問題は」
すると、侯爵と伯爵の二人は顔を見合わせ、
(どうする?ビューワー君)
(私は―――
女神・フィオナ様の名を、序列上位国に
知らしめるいい機会かと)
(あー、そういう考えもあるか。
何だかんだ言って僕も女神様にはお世話に
なってるし、それじゃ僕も出ようかな)
やや温度差のあるノリで会話を済ませると、
「参加するのは何人くらいでしょうか」
「これまでは、顧問や指導など、教える立場
でしたので―――
一人の剣士として出場し、胸を借りるのも
いいかも知れません」
周囲にいた女性騎士やメイドからは密かに
黄色い声が上がり……
王妃は彼らの答えに目を丸くしながらも、
「さ、さようですか。
ではそのように……
我が国の勝手な申し出に付き合って頂き、
心より感謝いたします。
予定は追ってお伝えいたしますので」
こうしてバクシアとフラールの貴族は、
新たな予定を受け入れた。
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
その頃―――
第一眷属・アルプの家では……
「……ん?」
「どうしたんでしゅか?」
グリーンの髪を首まで伸ばした童顔の女性と、
シルバーの短髪の中性的な少年が、ある光景を
前に質問する。
「え、えっと、あの」
「お母さんから、たまには肩でも揉んで
あげなさいって言われたので、それで
やってみたら」
ブラウンの短い髪の―――
姉とは対照的な、気弱そうな目つきをした
少年と、
グリーンの短髪に丸顔の少年が答え、その前には、
女神・フィオナと、シルバーのロングウェーブの
少女が―――
イスに座ったまま気を失っていた。
「え、笑顔のまま気絶していやがる……」
「器用でしゅね」
アルプとファジーはどうしたものかと
困惑していたが、
ナヴィから、幸せそうなので食事の時間まで
このままで、と放置される事になった。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6322名―――
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