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17・それはそれ! これはこれです!

( ・ω・)ちょっと仕事が

忙しくなりそうな予感(悪寒)


日本・とある都心のマンションの一室―――


家主と思われる黒髪セミロングの少女と、

顔の片側をストレートの黒髪で隠している同性、

そしてブラウンの髪をワンカールロングにした

三人の少女が、寝そべったりあぐらをかいたりして

くつろいでいた。


「うーん……

 今は復刻イベくらいしかエサがありませんね」


「まー今は充電期間だと思えば」


女神・フィオナの言葉に―――

邪神はその細目を閉じるようにして答える。


「ていうか、(外見が)年頃の女の子が床で

 ゴロゴロしないでくだしゃい。


 いくら絨毯じゅうたんの上だとしても―――

 ドアの近くにいたら、踏んでしまうか

 しれましぇんよ?」


そこに、シルバーの短髪をした―――

少女と言われても納得してしまいそうな

美少年が通りかかる。


「あ、その時はどうぞ容赦なくお願いします」


サキュバスの少女は、八重歯をキラッと光らせて

さわやかに注文する。


「危ないって言っているんでしゅよ。


 しょれにそういう時はたいてい、料理や

 飲み物を運んでいるかも。


 それをかけられる事になっても

 いいんでしゅか?」


そこで少女三人は立ち上がると―――

まるで戦隊ヒーローもののように各自ポーズを

取って、


「我々の業界ではっ!」


「「「ご褒美ですっ!!」」」


それを見たナヴィは、フー、とため息をついて


「そんな業界、すぐに滅んで欲しいでしゅ。


 まあそろそろ、本編スタートしましゅね」




│ ■フラール国・アルプの果樹園  │

│ ■アルプの家          │




「ん~……」


「お~……」


フィオナに割り当てられた部屋で……


ぐてーっと伸びるように上半身をテーブルの上に

投げ出している女神と―――

銀髪の、いかにも上級国民のお嬢様といった、

ウェービーヘアーの少女が、背もたれに背中を

預け……

天井を見上げるようにして疲れた声を上げる。


「しょれでフィオナ様、メイさん。


 ……何で同性同士で手を繋いで

 帰ってきたんでしゅか」


呆れながら、ナヴィがツッコミを入れる。


「あ、いや、そのぉ」


「どちらから先に手を繋ぐか、けん制し合って

 いたら、アルプ君とファジー君がそのまま」


けん制というよりは、誰が先に手を差し出すかで

二人で戸惑ったりためらったりする姿が彼の頭に

浮かび……

そしてそれは正確に状況を推測していた。


「いいいやでもだってー。

 2人でアルプを取り合ったら、ファジー君が

 気まずくなるってゆーかー?」


「そそそそーですよー。

 アルプ君だってそんな事になったら、

 いい気分はしないでしょうしー」


彼女たちの言い訳を聞きながら、ナヴィは

じーっと二人を見つめ、


「普段から女物の服を強制したり、女装させたり

 するのは―――

 あの2人に取ってはいい気分じゃないと思うん

 でしゅけど」


「それはそれ!」


「これはこれです!」


何でこういう事ばかり息ピッタリなんだろうなあ、

と思っても彼は心の中で止めておく。


「あ、でもでも―――

 美少年2人が仲良く手を繋いで歩いていくのを

 見れただけでも収穫と言えます!

 ね、メイさん」


「確かにアレは尊い光景でした……!

 それだけでも今回は価値ある、実りある

 行動と言えます!」


「だめでしゅこの人たち。

 早く何とかしないと―――」


そこで不意に、フィオナは従僕の方を向いて、


「そういえばナヴィ。

 あなたの方はどうだったのよ。

 アタシたちの事ばかり言って」


「?? どう、とは?」


次いでメルが彼に視線を向け、


「ミモザさんと一緒だったんですよね?

 そっちは何か進展は」


その質問にナヴィは首を傾げ、


「私とミモザさんは別に……

 一緒に見回っていただけでしゅが。


 時々虫や何かに驚いたのか、途中から

 腕にしがみついてきていましゅたが、

 別段それくらいで」


「ハイお疲れ様メシの時間ですよおぉお!!」


大声と共に、ボーイッシュな外見の―――

首までブラウンの髪を伸ばした少女が

乱入する。


「ほー?」


「何かに驚いて……ねえ?」


部屋にいた同性の二人は、横目でミモザに

刺すような視線を向けるが、


「ホラさっさと食堂行って!

 メシが冷めちまうからさ!!」


三人を押し出すようにして―――

四人は食事のため移動した。




│ ■グレイン国          │

│ ■王都ウィーンテート・某所   │




「ふむ、それで?」


その顔は痩せて頬が目立ち―――

白髪交じりの短髪の、それでいて首から上とは

対照的な肉体を持つ四十代くらいの男性が、

ある人物を前に先をうながす。


「だ、だから―――

 バーレンシア侯爵と立ち会う事は出来なかった。


 そしてトーリ財閥の護衛とかいうガキに」


まだ二十代とみられる、金髪をエアリーに

まとめた、身分の高そうな青年が、釈明の

ように話す。


「その報告は聞いたよ。


 私がわざわざ手配してあげたにも関わらず、

 王妃様の前で無様な姿をさらし、目的も

 果たさず帰ってきたと。


 口ほどにもない―――

 まさか実際に、このような言葉を語るとは

 思わなかったがね」


テーブルに座って相対する若者に対し、

年上の男性は淡々と声を発する。


「それで、どうしたいのかね?

 何か言いたい事があるのではないか?


 ―――バスタ騎士団副団長」


「マイヤー伯爵様に、今回の件……

 何とか口添えしてもらえないかと」


それを聞いた男は苦笑を浮かべ、


「バカも休み休み言いたまえ。


 私はバーレンシア侯爵に、けん制と警告の

 意味を込めて―――

 圧力をかけるために君と組んだのだぞ?


 言ってみれば君と私は対等の関係だ。

 そして君は私の要望を満たさなかった。


 どこにかばう理由がある?」


正論で返された青年は言い返す代わりに、

殺気をはらんだ表情で目前の伯爵を

にらみつける。


「納得しない、という表情だね。


 いいだろう、君に挽回ばんかいの機会を

 与えてやろう」


「機会……とは?」


希望の光が見え始めたのか、バスタは

表情を和らげる。


「何、簡単な事だ。


 私とミイト国のシッカ伯爵令嬢が、

 かつて婚約していたのは知っているだろう?


 同じ武の名門としてな」


「それは知っておりますが」


意図がわからず、彼は重ねて聞き返す。


「君を打ち負かしたトーリ財閥の護衛という

 少年にも興味が出てきた。


 どの程度の実力なのか測ってみたい。


 実際に戦った君と手合わせすれば―――

 大方のところは知れるだろう?」


「それは、そうかも知れませんが」


すでに最盛期を過ぎたであろう伯爵。

それに現役騎士団の自分が挑む……

いくら何でもとバスタは思考を巡らすが、


「もし私に勝てたら、先ほど君が言っていた事も

 考えよう……

 いや、必ず実行する事を誓おう。


 これでどうかね?」


「それならば」


青年はこころの奥でほくそ笑む。


なるほど……

失敗した以上、何も無しでかばう事はしないが、

形式上これで名分を保つという事か。


貴族社会というのは面倒なものだ―――

そう考えながら、彼は『対戦』に向けて

マイヤー伯爵と共に場所を移動した。




「あ……が……」


三十分ほど後―――


訓練場と思われる一角で、片膝をついて

木刀を杖のようにしてすがりつく、

バスタの姿があった。


「フム……


 王妃様の言われる通り、王室騎士団の人選の

 見直しを、提言しようかとも思ったが―――


 副団長としての実力は申し分ない。

 とすると、そのネーブルとかいう護衛の少年の

 実力は本物という事か」


汗ひとつ流さず、息ひとつ切らず……

マイヤー伯爵は眼下の青年を見据えていた。


「あ、あなたは一体……」


「……速度も力も何もかも君に及ばない、

 この年寄り(ロートル)に負けた理由がわかるかね?


 未熟……ただそれだけの事だ」


そこでバスタは、王妃の前での彼らの言葉を

思い出す。


かつてネーブルは、シッカ伯爵令嬢と

手合わせした事があったという。

そして完敗したとも。


そのシッカ伯爵令嬢の元婚約者が、

目の前の伯爵。


しょせんは貴族の旦那芸とあなどっていたが、

身を以てそれが間違いだったと思い知る。


「しかし、まあ―――

 こうして久しぶりに若い者と手合わせして、

 いい考えが浮かんだよ。


 君の事は何とかしてあげよう。

 当然、まだ私のために動いてもらうがね」


敗者に拒否権は無く―――

彼は一度上げた顔を、ゆっくりと下へ

落とした。




カシャ☆


―――女神フィオナ信者数:現在6315名―――



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

基本、土曜日の午前1時更新です。

休日のお供にどうぞ。


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