16・キ・ミ・タ・チ・ハ・ド・ウ・シ・カ?
( ・ω・)もう始めの茶番がメインで
いいんじゃないかな(錯乱)
日本・とある都心のマンションの一室―――
家主と思われる黒髪セミロングの少女が、
褐色肌の、短い黒髪の青年と対峙していた。
「フィオナ、元気にしてたかい?」
「パパー♪」
軍神・ユニシスは笑顔で飛び込んできた娘を
受け止める。
「お珍しいですね、ユニシス様お一人とは。
ご主人様はご一緒ではなかったのですか?」
シルバーの長い毛並みの猫が、首を傾げる。
「う~ん……
もしかしたらこっちに来てるかなって思って
いたんだけど。
やっぱりダメだったかあ」
「どゆこと? パパ」
お目付け役のナヴィと一緒に、女神も首を傾げる。
すると父親は頭をかきながら、
「実はママと一緒に地球まで来たんだよ。
ただ、ママがどこかの付き合いで少しお酒が
入っちゃっていてね。
日本には到着したけど、気付いたら離れ離れに
なってしまったんだ」
それを聞いた少女と猫は、
「へー、ママでもそんな事あるんだ」
「大丈夫なのですか、それは」
心配する一人と一匹の頭をユニシスは撫でながら、
「夫婦だし、ボクにもママの居場所はある程度
わかるよ。
ここに来たのは、もしかしたらと思って
確認しに来ただけだから」
「あ、じゃあ大まかな場所は把握しているん
ですね?」
ナヴィの問いに軍神は、
「そうだね。
奥羽山中でママの足跡を見つけるところまでは
いったし―――」
「何かUMAの目撃情報みたい」
フィオナが無の表情で父親に答え、
「もっと東北寄りに行ったのかも知れないなあ。
じゃ、引き続き探してくるよ。
もしママがこっちに来たら、そのままここで
待ってるように伝えてくれ」
「承りました」
そうしてユニシスは、その場でシュン、と
瞬間移動のように消え……
女神がお目付け役の従僕を抱き抱えると、
「それじゃそろそろ―――
本編スタートしましょうか」
│ ■グレイン国・王宮中庭施設 │
│ ■バーレンシア侯爵一行宿泊部屋 │
豪華な内装ではないが、洗練された調度品が並ぶ
ホテルのロビーのような一室で―――
複数の男女がくつろいでいた。
アラサーの、痩せ気味とも思える薄い青色の
短髪をした貴族が、フォックスタイプの
フレームの眼鏡を直しながら―――
ソファに背中を預ける。
頬にあるクロスの傷とは対照的に、表情は
緩み切って、
「ふへぇ~……
みんな、お疲れ様」
「バーレンシア侯爵様こそ、大丈夫ですか?」
ブロンドのロングヘアーをした、女性騎士といった
体の伯爵令嬢が、彼を気遣う。
「いきなりこんな事になるとは―――」
「何事も無く終わって良かったですけど」
ホワイトシルバーの短髪の貴族の青年と、
同じ国の出身の、真っ赤なロングヘアーが印象的な
豪族の令嬢が、ホッと一息つく。
「でもあれ、本当にトラブルかしら?
最初から仕組まれていたんじゃ」
「……それは無いと思う……
シンデリンお姉さま……
……出迎えの方々はほぼ女性で構成されて
いましたし……
乱入してきたあのバスタという人だけが男……
多分……本当にトラブル……
想定外……」
ミイト国・トーリ財閥の姉妹―――
バイオレットのロングヘアーをした女性と、
同じ色の髪を自分の身長と同じくらいまで
伸ばした少女が語る。
「まあ何にせよ、ネーブルさんに取っちゃ
災難だった事に違いねぇぜ」
「でも、こんな事があるという事は……
今後も気が抜けないかも」
日焼けしたような褐色肌の、黒い短髪の少年と、
ウェーブのかかったロングの銀髪の少女が、
トーリ財閥の従者の少年を気遣う。
「んー、それについてはもう大丈夫だと思うよ?
突っ掛かって来て返り討ちだもん。
王室騎士団にもこの事は伝わったと思うし、
こっちが穏便に収めたのに―――
これ以上やからすのは恥の上塗りになるしね」
「だといいのですが」
侯爵様の言葉に、黒髪黒目の少年は深く
ため息をつく。
「ところで、あの……
カガミさんの姿が見えないのですが」
ネーブルの指摘で全員、周囲を見渡し―――
赤茶のツインテールの獣人族の少女がいない事に
気付く。
そこにノックがされ、メイド・侍女らしき女性が
複数入ってきた。
「お風呂のご用意が出来ました。
どうぞこちらへ」
「あ、ええと―――
カガミという少女が見えないんだけど、
どこ行ったか知らないかな?」
バーレンシア侯爵は一人行方不明だという事を、
正直に伝える。
「カガミ様ですか?
『ちょっと庭を見回ってくるー』と、
外へ駆け出してそのまま……」
「お戻りになりましたら、浴場へご案内
いたしますので」
そこで一行は、彼女の行先が一応把握されて
いる事に安堵し―――
男女別に別れ、お風呂に入る事にした。
「にゅふふふふ……
ここの地形及び建造物の構造は理解した。
今やこの一帯はカガミの手の中……!」
その頃―――
渦中の少女は暗闇の中にいた。
正確にはある天井裏に忍び込んでおり、
そしてその下は……
『うわ、すっげーな!
さすがは序列一位の国』
『ここが備え付けの浴室と言うんですから……
ちょっとした家くらいの大きさでしょうね』
シモンとビューワー伯爵の声が聞こえ、
『多分、女性の方はもっと広いんだろうねえ』
『でしょうね。
基本的に、女性専用施設のようですし』
バーレンシア侯爵とネーブルの声が響く。
その光景を天井裏からのぞき込み、
怪しげな笑いを表情に張り付ける。
「しかし天井が高いなー。
湯気もあって、これじゃ見えにくいったら。
しかーし!
獣人族の視力を甘く見てもらっては困る!
この程度でカガミを止められると……!」
そこで獣人族の少女は、暗闇の中に―――
自分とは別の気配がある事に気付く。
獣並の視線の先、そこには……
懐中電灯のような照明器具を持つ女性が数名。
彼女たちはしばらく固まっていたが、
カガミの方から動き、ジェスチャーのように
伝える。
“キ・ミ・タ・チ・ハ・
ド・ウ・シ・カ?”
そこで彼女たちも無言で手をパントマイムのように
動かし、
“タ・マ・シ・イ・ノ・
ド・ウ・シ・ダ”
そこでカガミは両手で、彼女たちとガッシリ
握手を交わすと―――
おそらくは『それ』専用に設けられたで
あろう穴から、下の光景を堪能する事にした。
「へー……
案外細いんだな、ネーブルさん。
あれだけ斬り合えるんだから、
もっとガチガチの体かと思っていたのに」
シモンが湯舟に浸かりながら話し掛け、
「あまり筋肉をつけ過ぎると―――
今度は動きにくくなるんですよ」
「そーそー。
何事もバランス良く、だねえ」
貴族の二人が代わるように答え、
「そう言うシモンさんこそ、結構腕が
たくましいといいますか」
「あー、俺は青果店の跡取りという名の、
肉体労働者だからなあ。
体のいい荷物持ちだし、嫌でもこうなるよ」
彼らの何気ない会話の上で―――
『ブフォ』『ぐふぅ』『デュフフ』と、
押し殺した笑い声が交わされているのを
知る由も無かった。
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
「……あら?」
その頃―――
第一眷属の少年の家では、息子と同じグリーンの
長髪を後ろで縛った母・ソニアが家事をしながら
みんなの帰りを待っていたが、
そこへ、シルバーの短髪をした女神の従僕と、
ブラウンの髪を首まで伸ばした、第二眷属の姉が
手を繋いで帰って来た事に気付いた。
「ナヴィさんとミモザさん……
あらまあ、いつの間に」
年長者としてか、一児の母としてか―――
貫禄のある笑みで出迎えようとすると、別方向から
残りの四人が帰ってくるのが見えた。
一人は同じグリーンの短髪をした自分の息子・
アルプで、もう一人はブラウンの短髪の、
第二眷属―――
ファジーであった。
その二人が手を繋ぎながら歩いてきて、
さらに後ろに少女二名の姿が。
それは女神・フィオナと……
銀のロングウェーブの髪をした第三眷属の妹が、
ぎこちない表情で少年二人と同じく―――
同性で手を繋いでおり、
「あらまあ……
こっちはまだまだねえ」
頬に片手をつけて、彼女はため息をついた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6309名―――
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