14・美少年は別腹と言いますし
( ・ω・)今度はカガミを忘れていた。
(12・13話を修正)
日本・とある都心のマンションの一室―――
家主と思われる黒髪セミロングの少女が、
寝転がりながらスマホの画面に見入る。
「おぉ~……
邪神ちゃんたちの助けもあって、周回も
順調ですねえ。
GWもそろそろ終わりの時が近付いてます。
最後まで気合いを入れねば―――」
そこで、ペットらしき長毛種の猫が、
大きく口を開けてあくびをし、
「地球では毎日が日曜日のあなたが何を言う。
GWの意味わかってますかね?」
「G・W!
期間です!!」
それを聞いたナヴィはふぃっと横を向いて、
「それじゃGWじゃなくGAになるでしょうが。
しかし、本当に他にする事ないんですか?
毎日毎日遊んでばかりで―――」
「こ、これもですねっ。
地球の異文化や人の営みを調査する
ためなのですよっ」
フィオナの言い訳のような答えに、彼はフー、と
一息付いて、
「まったく、理由付けだけは上手くなって」
「り、理由付けなんかじゃありません!
それにですねえ!
世間一般ではお休みにも関わらず、
こんな素敵なイベントを作ってくださる
方々がいるんですよ!」
そこで女神はヒートアップして、
「「ちゃんとやってあげないと可哀そうじゃ
ありませんか!
休みの日こそかき入れ時というお仕事の
人だっているんです!
そういう人にも答えてあげるべきなんじゃ
ないかとアタシは思うんですよ!
わかりますかフツーの人が休んでいる時に
何かあった場合にとスタンバイしている
人の気持ちが!!」」
「オイ作者にお前の精神、
乗っ取られかけているぞ。
まあ茶番の尺稼ぎも取れましたので、
そろそろ本編スタートしますね」
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
「前回のあらすじ―――
何とかして進展出来ないか、『アンカー』に
相談した私は……
まず2人きりの状況を作り出す事を推奨され、
その協力者として『ミモザ』さんを指定
されたが―――!?」
「ついに解説役に成り下がったか。
まあでも、『アンカー』に答えを出された
ようで何よりでしゅ」
銀髪の従僕の少年が女神にツッコミを入れ、
「でもまー、確かに攻略難易度としては……
ソニアさんよりは若干マシかなあ、と」
「母と姉なら、ガードの緩そうなのはそっち
でしゅかね。
それで、ファジー君から狙うのでしゅか?」
その問いにフィオナは両腕を組んで、
う~んと悩む。
「いやアタシはあくまでも本命はアルプで、
しかしこの状況で2人きりになれるのは
どっちもオイシイといえば」
「いざとなってヘタレましゅたね。
まあいつもの事でしゅが。
しかし―――
2人きりとまではいかなくても、メイさんと
一緒に、彼らと2対2になるくらいの機会は
いくらでもあったのでは?」
そこへ、名前を呼ばれた銀のロングウェーブの
髪の少女が、忍者のようにシュタッ!
と出現し、
「甘いでござりますぞナヴィ様。
確かに、アルプ君とファジー君が一緒に
行動している事は多々ありまするが、
その時はお義母様かミモザさん、どちらかが
必ず同行しておりますゆえ」
「君はどういうポジなのでしゅか?」
一応ツッコミを入れた後、彼は状況を確認し、
「ではまず……
その2対2となる状況を目指してはいかが
でしゅか?
まあその前に、『アンカー』で取り決めた事を
実行しゅるために―――
ミモザさんと話す必要がありましゅが」
ナヴィの提案に、女神は眉間に人差し指をつけて、
「しかしね~……
ガードするために常にそばにいるって
感じだし。
あちら側にもこう、メリットというか
取引出来る何かが必要な気がするんですよ」
「うみゅ。
今回はちゃんと脳みそを使ってましゅね」
「褒める時も決して責めの手を緩めない。
さすがナヴィ様……!」
従僕の答えにすかさず第三眷属の妹が賞賛する。
フィオナはそのまま会話を続行し、
「でも確かに初期目標はそこですねえ。
『アンカー』で決めてしまった以上は」
「まずはミモザさんに何とか、4人になるのに
同意して頂きませんと……
『だぶるでえと』にもなりません」
少女二人が考え込む中、少年は続けて、
「でしゅがそこまでに至ったとしましても……
二人きりになった際、良い雰囲気を維持する事が
出来るかどうか―――
とてもお二人には無理だと思うのでしゅが」
言葉がそのまま刃や矢となって、女神と少女に
突き刺さる。
「いいい、いいんですよっ!
それよりまずミモザさんですっ!」
「彼女が納得しなければそこまでです!
それが終わってから考えれば……!」
フィオナとメイは同時に動き―――
第二眷属の姉の下へと向かった。
「で? 何でアタイは呼ばれたんだい?」
首まで伸びた、弟と同じブラウンの髪を
なでながら、ミモザは同性の二人に問う。
「いやぁ~、ちょっとですねえ」
「協力して頂きたい事が」
商人のように揉み手をしながら、フィオナと
メイは微笑む。
「そりゃ、ナヴィさんにも内緒でって事?」
女神の付き人であるはずの彼の姿が見えないのを
目ざとく確認する。
「まあ、ナヴィは知っているというか何というか」
目が泳ぐ女神を前に、ミモザは頭をかきながら、
「取り敢えず話を聞こうかい」
こうして、フィオナに割り当てられた部屋で―――
3人の密かな話し合いが行われた。
「……なるほどねぇ。
いやしかしファジーを狙うかどうかは
置いといてさ。
フィオナ様もメイさんも、アルプさん一筋じゃ
なかったのか?」
『二人対二人の状況を作りたいので協力してくれ』
という相談を受けた彼女は、まず疑問を口にする。
「えーとそれは何と言いますかー。
このままでは進展が無いのでその打開の
ためにですねー。
それに、美少年は別腹と言いますし」
「いや確かにアルプさんが本命であり
メインディッシュではありますけどー。
他に極上のデザートとか出てきたらそりゃ
手をつけずにはいられませんよね?」
外見は年の近い同性の言葉に、ミモザは
頭をガシガシとかいて、
「同意を求められても困るんだけどさあ。
まあ気持ちはわからなくもないけど」
そこで彼女はフィオナとメイに顔をずい、と
近付け、
「……なら、アタイの頼みもちょいと
聞いてもらえねーか?」
そこで三人は再び、ひそひそと話し合いを始めた。
│ ■グレイン国・王宮中庭 │
「あちゃー……」
頬にクロスの傷を持つ、フォックスタイプの眼鏡を
かけた、青みがかった短髪のバクシアの侯爵と、
「見かけによらず強いんだな―――」
「そうですね、シモン君」
同じバクシアの、短い黒髪をしたブラウンの肌の
少年と、銀のロングウェーブをした髪をもつ
徴税官の娘が感想をもらす。
「やり過ぎとは思いますが、仕方ありませんね」
「まあ、ケガもしていないようですし」
ホワイトシルバーの短髪の―――
フラール国の伯爵と、真っ赤なロングヘアーの
商人の女性が、目前の印象をそのまま口にする。
「対人戦での実力はそれなりかと」
「うーん、そこそこ強かったと思うんだけどなー」
金髪のストレートロングの髪をした、女性騎士と
いった風体の伯爵令嬢と、
獣人族の少女が、その赤茶色のツインテールを
揺らしながら、事もなげに答える。
「怒らせなければ、まだ手の打ちようも
あったでしょうに……」
「……自業自得……」
バイオレットのロングヘアーを持つ女性と―――
同じ色の、身長と同じくらいの髪を持つ少女……
トーリ財閥の姉妹が呆れた口調で語る。
その彼らの目の前には……
模擬戦用の、刃を潰した刀の切っ先を床につけて
跪く、エアリーの髪形をした金髪の騎士の男が、
その彼の前には―――
黒髪黒目の、12、3才くらいの少年が、
同じく模擬戦用の刀を構えて立っていた。
そして、最上段から声が―――
「バスタよ。
ネーブル殿をトーリ財閥の『愛玩用』と
見くびっておいて―――
その結果がこれかや?
一度、王室騎士団の人選を見直さねば
ならぬのう」
グレイシア王妃はその長い黒髪を揺らしながら、
しかし声には怒りとも見下しとも取れない感情が
こもる。
「か、返す言葉もございません……!」
バスタと呼ばれた青年は顔を上げられず、
ただ己を恥じていた。
相手の実力を見誤った事。
さらにその相手は、自分が挑もうとした
『バクシアの鬼神』、『フラールの剣聖』
どちらでもなかった事。
しかも、本来自分が入る事の出来ない、
王家の施設にまで入り込んで……
厳罰すら覚悟していた彼の身に―――
バーレンシア侯爵の言葉が聞こえてきた。
「いえ、彼もまだ若いですし―――
王室を守る騎士団なのですから、これくらい
血気盛んな方がいいですよ。
ヘンに礼儀正しいよりは。
それに、王妃様の目の前で血を流すわけにも
いかなったでしょうし……
そこは2人ともわかっていたでしょう」
『あくまでも双方、本気ではありませんよ~』
『お遊びですよ~』
と、彼は擁護する。
「侯爵殿がそう仰るのであれば―――
そういう事にしておきましょう。
バスタ、バーレンシア侯爵殿のお気遣いに
感謝するのですね。
……下がりなさい」
「は、ハハッ!!」
こうして予定外の乱入者は去り―――
当初のメンバーが残された。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6292名―――
( ・ω・)最後まで読んでくださり
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