10・実害はありませんので(精神は別として)
( ・ω・)評価pt1000獲ったどー!!
(次の日に1000未満になってそうで怖い)
│ ■天界市役所・地上滞在受付 │
「では、えー……
5人分の書類、確かに」
「お疲れ様でしゅ。
いつも申し訳ありません」
神々が行き交う施設の中……
カウンター越しに、眼鏡の職員らしき人物と、
シルバーの短髪の少年が書面を確認し、手渡す。
「いえいえ。
ナヴィ様にはいつもお世話になっておりますし。
今回の件も、なるべく近場で注意して頂ける
との事。
感謝のしようもありませんよ」
「まあ、狙いは私だったようでしゅので、
無関係というわけでもないでしゅから」
彼らが言っているのは―――
地上でナヴィに絡んできた、邪神・サキュバス・
堕天使・悪霊・ワーフォックスの人外の少女たちの
事であり、
フィオナと同じく、人間という身分で賃貸を
用意されたので、その住所確認の書類を
天界の担当者へ届けに来たのである。
「しかし……
保証人を申し出たのもそうですが、
アルフリーダ様はよく引き受けられましたね?
こう言っては何ですが―――
あの方は、他の女性は絶対近付かせないと思って
おりましたから」
「あ~……
それは多分、私がターゲットだったのと、
場所が地球だったからだと思いましゅ。
しょれに―――
あの5人では、アルフリーダ様に取っては
子供同然、相手にならないかと」
その答えに、職員は各種書類を立てて
トントンと揃え、
「確かに、神クラスでもありませんから―――
実力差も明確ですしね。
そこまで気にする必要はありませんか」
それに対し、ナヴィは横に目をそらしながら、
「あとはまあ……
地球での日本文化を収集するのに、
ちょうどいい手駒といいましゅか」
「それを天界で広められているので、
少し問題になっているのですが……
あちらに持ち出しているわけでもなし、
規制する法が無いんですよね……
無理だとはわかっていますが、ナヴィさんや
旦那様から注意とかは」
職員がすがるように聞いてくるが、彼は首を
左右に振って、
「言って聞くと思いましゅか?
趣味の範囲で止めている間は、スルーして
おくのがいいかと。
それではそろそろ、本編スタートしましゅね」
│ ■ミイト国 │
│ ■シンデリン(トーリ)家屋敷 │
「じゃあそろそろ行こうか。
えーと……男性陣はこっちだっけ?」
頬にクロスの傷を持つ―――
フォックスタイプの眼鏡をかけた、薄い青色の
短髪をした侯爵が、他のメンバーに話しかける。
「こちらはいつでも」
「女性陣はあっち側だけど……
ここに来るまでは別々じゃなかったのに
何でだ?」
シルバーの短髪の貴族青年と、黒髪に褐色肌の
少年がそれに応じながら馬車に乗り込む。
「グレイン国のグレイシア王妃様はじめ―――
他の貴族夫人や豪商の方々にいろいろと
追加して持っていくそうですから。
いろいろと。ええ、いろいろと」
黒髪・黒目のトーリ財閥の従者兼警護の少年が、
どこか遠い目をしながら答える。
「あー、そういえばあの2人……
トニック君とソルト君は?」
話題を変えようと、バーレンシア侯爵が情報屋の
話を振ると、ビューワー伯爵が、
「すでに先日発ったようです。
各地の『女神の導き』に連絡を取り、情報共有
してから、本拠地であるオリイヴ国へ向かい、
その後グレイン国でまた合流するとの事」
次いで、シモンとネーブルが、
「トーリ財閥の連絡用馬車を使ってもいいって
事だったから―――」
「遅くても我々の一週間後には到着するでしょう」
そして四頭引きの大型馬車は動き始めた。
「ぬうぅうう~……
いつの間について来たのやら」
「……印刷工房の前で……
突然……降ってきた……」
男性陣が乗る後方のもう一つ大型の馬車―――
その中で、長いバイオレットヘアー持つ20才
くらいの女性と、同じ色の自分と同じくらいの
長さの髪を持つ10才くらいの少女が、獣人族の
少女を前にうなる。
「言ったじゃん。
屋根つたって来たってー」
赤茶のツインテールの少女は、トーリ財閥の姉妹に
あっさりと答える。
「聞いているのは移動経路ではなく、
どのようにしてそれを知ったのか何ですけど」
真っ赤なロングヘアーをした、フラールの豪商の
娘が、呆れながら話す。
「んー、野生のカン?」
「それはそんなに便利な言葉じゃ
ないんですけどねえ」
銀のロングウェーブをした髪の、第三眷属の
少女がため息をつく。
「そういえばポーラさんは、シモン君と一緒に
買い物に出かけていたんでしたっけ」
「……惜しかった……
ネーブルも……いたのに……」
シンデリンとベルティーユがそちらへ視線を
向けると、彼女は片手を振って、
「さすがにわたしにそんな度胸は無いわよ。
むしろよくネーブルさんを連れていけたわね?」
「まあ、彼女たちの場合は従者という事もあって、
命令権と護衛としても同行させられますし」
いかにも騎士といった鎧姿の、金髪ロング・長身の
女性が話に参加する。
「レイシェンさんは、侯爵様やビューワー伯爵様と
ご一緒に、騎士団へ行ってたんですよね?
私は実際にあの人の腕前を見た事がありますが、
伯爵様もお強いのですか?」
シンデリンの質問に彼女は両目を閉じてうなずき、
「人間で、あの方々と対等に戦える人は
少ないんじゃないでしょうか。
そもそも領地で盗賊はおろか、熊やオオカミの
群れを相手に単身で相対出来る戦闘能力です」
「うん。ネーブルさんも強いけど―――
あの2人は別格かな」
カガミも認めるその強さに、馬車の中で
『お~……』と感心の声が上がる。
「……訓練に……なるの?」
ベルティーユの素朴な疑問に、シッカ伯爵令嬢は
「まあ騎士団の連中は適当にあしらわれ―――
最終的にはバーレンシア侯爵様と、
ビューワー伯爵様の模擬戦を見て参考に、
という形でたいてい終わりますね。
あのお二人の好守が、剣撃が、打ち合いが……!
それはもう汗を流しながら組んずほぐれつ激しく
尊くって、ああ……!」
両手で自らの体を抱きしめるようにして、
くねくねと動くレイシェンに対し―――
「ふむ……
もっと詳しくお聞かせ願えますかな?」
「……味方の戦力を正確に把握するのは……
とても……重要……」
いつの間にか姉妹が眼鏡をかけてその中心を
クイッと上げ、
「今後においても役立つと思いますので」
「ぜひとも詳細をお願いいたします」
ポーラとマルゴットも同じように眼鏡を装備し、
馬車内の中、レイシェンを囲むように迫った。
「……ん!?」
「……!」
同じ頃、バーレンシア侯爵とビューワー伯爵が、
女性陣の前の馬車の中で、同時に肩を震わせる。
「どうかしましたか?」
「敵の気配とか……!」
シモンとネーブルが二人の反応を見て問うが、
「いや、今何か強烈な寒気というか悪寒が」
「私も―――
急に背筋が凍るような感覚に」
2人の少年はいったん顔を見合わせ、
「風邪ですか?」
「馬車を止めて医者に―――」
すると侯爵と伯爵は軽く首を左右に振り、
「大丈夫だよ。
それほどの事はないから」
「しかし、何でしょうか……
視線と言いますか、魔物かおぞましい何かに
狙われたような」
バートレットの言葉にシモンは首を傾げ、
ネーブルは何かを察したように目を細く
一文字にして、
「それは多分相手が病気の場合ですね。
実害はありませんので(精神は別として)、
放置しておきましょう」
「ん? あ、ああ」
「わかりました??」
理解出来ずとも、体はどこか納得したようで
貴族位の二人は空返事をして―――
馬車はグレイン国への道のりを進んだ。
│ ■フラール国・アルプの果樹園 │
│ ■アルプの家 │
「お義母さまっ!!
薪割り終わりましたー!!」
「こちらは肥料の運び込み完了しましたっ!」
黒髪セミロングの女神と、長い銀髪を持つ
第三眷属の妹が同時に帰宅し、声を上げる。
「お疲れ様でした、お二人とも。
あ、ちょうど今アルプとファジーちゃんが
お風呂あがったところですので―――
着替えを手伝ってあげてくれませんか?」
グリーンの長髪を持つ20代後半と思える
外見の女性が、フィオナとメイを暖かく
迎え入れ、
「了解ですわお義母さま!!」
「行ってまいりやすぜっ!!」
そう言うと二人は光の速さで消え去った。
「ん~……
大丈夫なんでしゅかねえ」
「ソニアさん、アタイもちょっと不安
なんだけど」
シルバーの短髪の女神の従僕と、
首まで伸びたブラウンの髪の第二眷属の姉が、
不安そうに見送る。
すると第一眷属の母はニッコリ笑って、
ナヴィとミモザを手招きすると、
「だって、ホラ」
ドアを少し開けて、三人で廊下の先を見る。
そこには風呂場の脱衣室の前で何やら揉めている
二人の少女がいて、
「ななな何を迷っているんですかメイさん。
この扉の向こうに理想郷が広がっていると
いうのに……!」
「そそそそんな事言うならフィオナ様から
お先にどうぞーなんですけどぉ?」
「いやいやここはレディーファーストですよ!?」
「レディーしかいないんですけど!?」
その光景から視線を戻すと、
「ね?」
「勢いはあるんでしゅけど、いざという時に
ヘタれるんでしゅよねえ」
「ある意味、似た者同士なんだよなー……」
それぞれが感想を口にした後、静かに
ドアを閉めた。
カシャ☆
―――女神フィオナ信者数:現在6252名―――
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